新しいズボン
2009年の正月に買った黒いズボンを、ずっとはいていた。
一週間に一回くらい洗濯するけれども、それ以外はずっとそのズボンを着ていた。春も夏も秋も冬も、そのズボンをはいていた。そのズボンで真冬のドイツにも行ったし、日本の暑い夏も乗り切った。テレビに出たり、講演をしたりした。
「これ、じょうぶだろ」と友だちに自慢していた。「3000円くらいしかしなかったんだよ。」
ところが、寄る年波には勝てず、ついに、一番酷使される部分が破け始めた。右後ろのポケット。財布を入れるところ。応急処置として、左側のポケットに財布を入れるようにした。
ところが、なんだかぎこちない。ボディ・イメージの問題として、落ち着きがない。椅子に座った時にも、財布がふくれて当たる気がする。体積自体はあまり変わるはずがないのに。コンビニで買い物をする時に、左のお尻から財布を出すのが、奇妙な感覚である。
右のポケットの外布には5センチくらいの亀裂が入っている。みっともないこと甚だしいが、その下にポケットの白い袋があるから、それで隠れて何とかなるだろうと思っていた。
札幌で、小菅正夫さんと対談するためにステージに向かったとき、客席の女の人が、「あら!」と声を漏らした。それで、右のポケットの破れがかなり拡大していることがわかった。
講演と、その後の懇親会は何とか誤魔化して乗り切った。みんな気付いていたのかしらん。
今朝になると、右膝のあたりもどうやら怪しい。薄く透けて見え始めている。ズボンが多臓器不全を起こし始めたらしい。
あわてて、空いた時間にお店に飛び込んで、ズボンを新調した。お店の人と話している間も、ズボンのお尻が破けていて、それでこの人切羽詰まってズボンを作りに来たんじゃないか、と悟られているのではないかと気が気ではなかった。
言うことなすことぎこちない。
おかげで、ウェストサイズを10センチ間違えて伝えてしまった。お店の人が測って、正確なサイズがわかった。10センチ小さく言ってしまったのである。見栄を張っていたわけではない。それだけ上がっていたのだ。
でも、おかげで、新しいズボンが手に入った。
ピカピカの君よ、これからよろしく。
2月 21, 2010 at 05:25 午後 | Permalink
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