「あら、まあ」
駅のトイレに入ろうとしたら、女の人があわてて走ってきた。そうして、車いす用のトイレのドア・ボタンを押した。
するすると、ドアが開いた。
中に、お兄ちゃんが座っているのが見えた。毛糸の帽子をかぶった、今風のお兄ちゃん。彼は慌てていた。それはそうだろう。用を足している間に、ドアが開いてしまったのだ。
女の人は、「まあ、あら」と言って、逃げてしまった。あっけにとられたのだろう。
困ったのはお兄ちゃんである。ズボンをずり下げたまま、カニ歩きしてドアの方に出てきた。
武士の情け。それ以上見ずに、私は歩み去った。
本当は、「あら、まあ」の女の人が、ドアを閉めてあげればよかったのだけれども、それよりも恥ずかしさの方が先だってしまったのだろう。
街に出ると、まるで春のような空気。椿事で温かな気持ちになった。
2月 25, 2010 at 07:42 午前 | Permalink
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