パフォーマンスは始まっていた
杉原信幸が参加する展覧会『いつも静かに笑っている』のシンポジウムに出かけた。
シンポジウム終了後、杉原がパフォーマンスをやるというので、展覧会場に行こうとしたら、杉原が戻ってきてしまった。
シンポジウムの客席を見て、「ここでやってもいいですかね」と言っている。
杉原の今回の制作パートナーである広瀬君が、客席のところでずっと佇んでいて、展覧会場に降りて来ないので、急遽予定を変更したらしい。
椅子に手をかけて何かを想っている広瀬君の前で、杉原はビデオカメラを取り出した。
パフォーマンスというのは、その場で消えていく芸術だから、記録をとったり、ドキュメンテーションをすることが重要である。
「杉原、ぼくが撮ろうか」と言っているうちに、ビデオカメラのテープが巻戻り始めた。
巻戻りの音が、ヤケにうるさいなと思っていたら、そうではなかった。
杉原が、甲高い奇声を発していたのである。
アーッ、アーッ、アーッ、アーッ。キーィ、キーィ、キーィ、キーィ
巻き戻しだと思ったのは、杉原の奇声だった。
パフォーマンスは始まっていた。
杉原が発する音を、広瀬君は聴くとも聴かないともつかぬ顔で佇んでいる。そのうち、杉原の方を見始めた。杉原は、ビデオカメラを構えて、広瀬君を撮影し続けている。
広瀬君が、にっこりと笑った。そうして、杉原からビデオカメラを受け取った。
相変わらず、鶏系の妖怪のように身体をかすかに揺らしながら奇声を発し続ける杉原。広瀬君は、そんな杉原に対して、にこにこ笑いながらビデオカメラを向け、そのうち写真をパチパチ撮り始めた。
鶏系妖怪杉原。その顔が、ビデオカメラのビューファインダーの中に捉えられ、フラッシュがたかれ、そうして定着される。
10分余りの時間が流れた。
杉原が、立ち上がる。広瀬君に、額をつけた。広瀬君が笑って、杉原の肩をたたいた。
パフォーマンスは終わっていた。
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パフォーマンスをする杉原信幸と、広瀬君。
2月 27, 2010 at 08:25 午前 | Permalink
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