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2010/01/19

お前にとっては建築だが、オレにとっては彫刻

 東京に戻って、市ヶ谷の法政大学へ。塩谷賢がやっている科学哲学の授業が最後だから、顔を見てご飯を食べながら少し議論でもしようと思った。

 着いて、トイレに入ったら、外から塩谷の声が聞こえる。
 急いで出て、エレベーターの前でつかまえた。
 「あれ、もう終わったのか?」
 「最後の日は、授業アンケートなんだよ。」
 「そうか。」

 そばでも食べよう、と一緒に歩きだした。

 塩谷は、先日の本人申告によると120キロ。どうしても、横を歩いていると、お腹をポンポン叩きたくなる。
 何回かやっているうちに、本人も気付いて、私が手を動かすと守るようになった。ベラベラ喋り続けながら手をさっと前に出すので、何だか「自動人形」みたいで面白い。

 「反応が早くなったなあ。」
 「なんのこっちゃい」
 「それにしても、大きいなあ。何が入っているんだろう。」
 「皮下脂肪はせいぜい5センチくらいだろ。あとは、腹膜の下にあるんだよ。」

 「そうか。お前、そのうち食糧危機がくるから蓄えているんだ、とずっと言っていたけれども、なかなか来ないな。」
 「いやあ、最近の地球の様子を見ていると、わからないよ。」
 「生活する中で、お腹がじゃまにならないか。」
 「確かに、お腹が出ているから、起きる時にちょっと困る。起きにくいんだ」
「どうやって起きるんだい?」
「まず横にごろっと転がるんだよ。それから起きる。」

 大学入学の18の春からずっと親友関係を続けてきた塩谷とならではの、気楽な会話。
 時々お腹をぽんぽん叩く。その度に、塩谷がさっとお腹を守る。

 昼食のテーブルにつくと、塩谷がさっそく取り出した手帳に見覚えがある。
 「あれ、それ東大の手帳じゃないか。」
 「ずっとこれ使っているよ。」
 「どうして?」
 「慣れているというのもあるけれども、一番大きいのはこれさ。」
 
 手帳の中から取りだした住所録に確かに見覚えがある。
 「それ、前使っていたのと同じやつだ!」
 「そうなんだよ。これがちょうど収まるんだよ。連絡先はここにみんな書いてあるよ。薫君だろ、お前のもあるだろう。田森の携帯番号は、今でもこれでいいのかなあ。」


手帳を取り出す塩谷賢氏

 肉まんを食べながら、英米の分析哲学についての話をした。
 「プラグマティズムと功利主義は違う。」
 塩谷はそうのたまった。

 再び外を歩き始める。

 空間の「強制性」についての議論をする。
 塩谷が、建築と彫刻の話をする。

 「建築というのは、包まれるものさ。強制性が高い。その一方で、彫刻は強制性が弱いだろ。」
 「なるほどなあ。してみると、お前の身体は、お前にとっては建築だが、オレにとっては彫刻なんだなあ。」
 「たまにはうまいこと言うな。」
 「うるさい! お前の身体は、お前にとっては建築なのか。大変だな!」

 私の身体は、私以外のすべての人にとっては彫刻であるが、私にとっては建築である。
 ちょっと住み心地を良くするようにがんばろうと思う。

 本の対談で杏さんとお話しする。
 今は『福翁自伝』を読んでいるという。
 とても真っ直ぐで素敵な人。

 いろいろなことについて、深く考えているということが伝わってきた。

 杏さんは、自分が今やっていることが、後世から見てどのように映るか、考えているのだという。

 「歴女」の、能動的な、そして本来の定義がそこにある。

1月 19, 2010 at 07:48 午前 |

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コメント

世俗をどこか超えているような、塩谷さんのお姿が浮かんでくるようです。

健康な精神と体は、住み心地のいい家のようなもの・・・まさに得心です。

個人々々の姿=肉体は、嗚呼!きっともっとも写実なる彫刻にして精密なる建築物なのに相違ない。

でも、経年とともに、必ずどこかにガタがくるもの。メンテナンスを欠かさずに、少しでも長くこの世に留まっていたいと、ふっと思った。

塩谷さんが何時までもお元気でいらしてほしいと思う。

投稿: 銀鏡反応 | 2010/01/26 22:38:32

 一日3000頁。計算しやすく、実働10時間として、1時間300頁。1分間5頁。1頁12秒。
 なかなか現実的な数字じゃないか。と思ったのも束の間。漫画でさえ15,6秒以上かかっている。
 理解の確認のために、何度も何度も同じ所を読み返す癖が更に時間がかかるようになる。

 付箋とペンは嫌い。

 マーキング機能の付いた電子本なら、遠慮なく目印や書き込みが出来るだろうか?一日も早い普及を望む。

 それまでは…精進だ。

投稿: 岡島 義治 | 2010/01/20 13:44:58

こんにちは 茂木サン 。塩谷サン も温かい方で、仲良き姿が 目に浮かびます(笑)。

昔 兄が 塩谷サンのようなお腹をしていた時は、やはり よく触っていました。
やわらかくて、気持ちよく、なぜか安心するのです。


住み心地の良い家= 生活= 心身 は
私も追求しているテーマです。
セキュアベースを意識していきます。

投稿: サラリン | 2010/01/20 12:19:34

こんにちは

塩谷さんは、アナログなんですね。10年後どうなっているか楽しみです。

> 私の身体は、私以外のすべての人にとっては彫刻であるが、私にとっては建築である。
 ちょっと住み心地を良くするようにがんばろうと思う。


私もちょっと前に、コンビニで散財しました。私もがんばろうと思います。(^^)

投稿: 身体のクオリアby片上泰助(^^) | 2010/01/20 5:33:51

↓(つづき)
そゆえば全然話がちがうんですけど、さっきYouTubeを見てたら、さまぁ~ずの大竹さんが、茂木さんの真似っこしてましたよ!(^〇^)/あははは!ええ、全く似てませんでした(笑)(・ω・)/
大竹さんだとシャープすぎるから、ほっぺのふくよかな三村さんの方が先生に似てると思います!
次は三村さんで真似っこしてほしい
そうだ、テレビ番組も~「お笑い芸人さん×教養番組?」みたいだときっと面白いですよね!
「二時間で分かるさまぁ~ずの日本史」とか~「爆笑問題と旅するアインシュタイン光速の旅」とか~「たけしの意識の起源に迫る!」とか?そだ、茂木先生、「ユダ福音書」が発見されたのご存知ですか?この「ユダ福音書」の追跡だって、ドキュメンタリー番組にしたらなかなか面白いと思います(私だけかもしれませんが)あといつだったか、茂木先生、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」の絵にはおびえがあるって書いてらしたでしょ?
美の巨人たちのHPにその答えになるような仮説が載ってました♪(ご存知かも)ではお休みなさい~(*v_v*)zzZ

投稿: 眠り猫2 | 2010/01/20 0:38:12

なんか、素敵

私の体の作者…わたしでした…
神をのろうところでした

投稿: 羊 | 2010/01/19 23:22:00

mogiさんの友達にはこすっからい奴がいないのが実に裏山椎。みんなノホホンとしていて、しかも本質的な事柄は良く考えている。「類は友を呼ぶ」なのかなあ。人間世界って、もっと嫉妬や羨望、悪意や陰謀が渦巻いているものだと思ってた。mogiさんのエントリを読んでると心が洗われます。サンクス

投稿: タマムシ | 2010/01/19 19:32:59

塩谷さんは安心できますね~

投稿: 眠り猫2 | 2010/01/19 18:08:09

塩谷先生のお顔も和みますね~・・☆
(とってもやさしそう!!)
お腹には幸せの空気がパンパンかも~・・☆

投稿: ふぉれすと | 2010/01/19 13:26:07

あはは~(≧▽≦) 楽しい話です…。
自動人形ですか…。動画の様に頭に浮かびます。
茂木先生と塩谷先生の話を透明人間になって 傍で聞いていたいです。
どんな話でも、興味を持って聞くので勉強になりそうです。
でも「建築は包まれるもの」って意味がわからないので、私の勉強不足です。
『建築』と『彫刻』の違いは よ~くわかりました(^^)
杏さんのお話は、『メタ認知』ですか?未来的な…。
『福翁自伝』って何かわからなかったので 調べてみました。
福沢諭吉の自叙伝なんですね。慶応の方はみなさん持っておられるんだとか?
この時代から 口述筆記があったなんて、びっくりします。
本屋さんに並んでいるだけでは 手に取る分野ではないですが、今日は早速読んでみようと思います。

投稿: ☆山本由樹子 | 2010/01/19 10:16:51

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