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2009/12/24

「ちきゅう」の上で

養老孟司さんに最初にお目にかかったのは、
養老さんが『日経サイエンス』上で
やっていた対談のゲストに呼ばれた
時だった。

「初めて会う気がしないね」
と養老さんが言われたことを
昨日のことのように覚えている。

その『日経サイエンス』の
対談シリーズを担当させていただく
ことになった時、何とも言えない感慨があった。

中学校の時から、購読していた。

思い切り背伸びして、科学の世界に
あこがれた。

マーティン・ガードナーの
「数学リクリエーション」
のコーナーを熱心に読んだ。

ぼくの大好きな雑誌、日経サイエンス。

現在の担当は、古田彩さん。

古田さんは
量子力学の基礎に詳しく、
Many Worlds Interpretationに基づく
理論を構築しているDavid Deutschと
親しくされている。

その
古田彩さんが、「対談シリーズは、現場に
出かけていくようにしませんか」
と言って下さってから、
さまざまな場所にお邪魔している。

今回うかがったのは、清水港に
停泊中の「ちきゅう」。

水面下数千メートルの海底から、
さらに数千メートル掘ると
到達する「マントル」。

そのマントルに至る掘削を
人類史上初めて実現するという
グランド・ミッションを掲げて
日本主導で進められているのが、
「ちきゅう」のプロジェクトである。

中心メンバーである倉本真一さんに、
「ちきゅう」の中をご案内いただきながら
説明いただいた。

初めて見る「ちきゅう」の船体。

大きい!


「ちきゅう」の雄姿

船の中は国際的な雰囲気。

クルーも研究者たちも、さまざまな
国籍の人たちが集まっている。

まさに「ちきゅう」規模の大プロジェクト。
科学においては、「初めて」に何よりも
価値がある。

マントルは、地球の体積の約83%
を占める。

地震波の測定などから、さまざまな
推測がなされているマントルだが、
実際にはどのような性質を持っているのか。

「ちきゅう」がマントルに至る掘削に
成功した時、そこには思いがけない
「サプライズ」が待っているかもしれない。

倉本さんと「ちきゅう」船内を歩きながら、
何とも言えない知的高揚を覚えた。

すでに、「ちきゅう」は掘削オペレーションを
始めている。

「地震の巣」の一つである「南海トラフ」
においても、掘削オペレーションを
成功させた。

マントルへの掘削を実現するには、
数多くの技術的、科学的課題を
解決しなければならない。

トーマス・クーンが「科学革命の構造」
で言う「パラダイム・シフト」に
最もよくあてはまる科学分野の一つが、
地球科学。
たとえば、「大陸移動説」や、
最近の「スノウボール・アース」
など、従来の常識ではとらえきれないような
新しい考え方が、地球の見方を一新させた。

地殻、マントルが長い時間をかけて
ダイナミックに循環しているというのが
最近の地球像。

現在問題とされている気候変動の
問題を理解するためにも、
地球内部を含めた物質循環の
プロセスの理解は欠かせない。

「ちきゅう」が掲げている
目標が達成される日が来ることを
心から祈り、応援したい。

掘り出された地層の円筒状のサンプルは
「コア」と呼ばれる。

実験室でサンプルを見せて
いただいて、その美しさに息を呑んだ。

「現物」だけが持っている迫力。


これが手に入れたかった! 「コア」の実物。

このサンプルを地上にもたらすために、
多くの人が言うに言われぬ苦労を
重ねてきたのだ。

こいつらだって、ずっと地球の内部で
眠っていて、
まさか自分たちが地上に連れ上げられる
なんて夢にも思っていなかったろう。

詩情と科学の論理が交錯する。

コアは、地上に持ってくると
どんどん変質してしまう。

「生鮮食料品」のようなもの。

すぐに非侵襲計測などをしなければ
ならないのだけれども、
そこは科学者の性。

現物を見ると、ついつい「これは
こうだ」などと議論を始めて
しまうのだそうだ。

そこを、「はい、気持ちを切り替えて」
と作業に徹するのが難しいのです
と倉本さんは言った。


「コア」の解析を終えて研究者がつくったという
記念のモデル。仕事を達成した解放感が
あふれる。


各ミッションの後に、そのプロセスで起こった
顕著な出来事をデザインするコンペが開かれる
とのこと。このような遊び心も、プロジェクトを
進めていく上で欠かせない。

居住スペースや、食堂を見せていただく。

長い航海の中で仕事の質を保つには、
気晴らしも欠かせない。

卓球台があった。

「卓球は人気があって、トーナメント戦が
あるのです」と倉本さんは言った。


「ちきゅう」内の卓球台



「ちきゅう」の居住スペースの様子。


居住スペースで考えにふける倉本真一さん


通りすがる人が「ハーイ!」
と言って去っていく。

楽しい中に緊張した空気が漂う
この科学プロジェクトが、
大きな実を結ぶ日が来ることを
みんなで見守りたい。


「ちきゅう」の食堂。さまざまな食文化に対応する。
おいしかった!


食堂の片隅には、クリスマス・ツリーが。


恩田裕治船長、私、倉本真一さん

12月 24, 2009 at 09:08 午前 |

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受信: 2009/12/24 12:19:56

コメント

おはようございます。

先生
このお船はものすごくたのしそうですね。。
ふつうの家のようです。 乗ってみたい。

マントルまで掘り進んでしまうなんて.. 驚きました。
何かが起こってしまいそうな気がします..
どきどきします。

コアもすごくきれい。 
間近で見てみたいものです。

起きた出来事をデザインで残すというのは、
とってもしゃれていますね。
こんなところで働けたら楽しそうです。

ほんとうにちきゅうが入っているみたいなお船に思えました。

イブの夜に、スピノザを読み始めてみました。。(笑)
5部までのタイトルが、ほんとうにこころ魅かれるのですが
中はものすごく難しいんですね。。

困ってしまいました。

英語だとどうなるんでしょうか。。
訳が難解になっているということはあるでょうか。

もうすこし頑張ってみようと思います。

アインシュタインの若い頃のお写真
ツイードよいですね..初めて見ました。 

お体にお気をつけて、
よいクリスマスを

投稿: M | 2009/12/25 11:06:51

And ,,,


先生、私はですね、あのですねこちらを拝見した時この土で造ってみたいーー!と思いました。叱られそうですが,,
うーどのような質感なのでしょう。


先生、お写真もステキです。長々とスミマセンが本日もどうかお身体には気をつけて行ってらっしゃいませ~。ヽ(*⌒∀⌒*)ノΩΩΩ

投稿: wahine | 2009/12/25 7:37:58

茂木さん,日経サイエンス古田さん。

 将来「ちきゅう」でマントルまで掘ろうと計画している一人です。今度の記事に「ちきゅう」を選んでいただいて有難うございます。次の日経サイエンス楽しみにしています。
 人類未到のマントルに到達し,そこから新たな地球観を展開できる日を目指して頑張ります。

 マントルは固体で,それが少し溶けて出来たのがマグマであること,マントルまで掘ってもマグマが噴出するわけではないということをまず皆さんに知って頂きたいですね(^^;)。「科学リテラシー」の向上!日経サイエンスさん,今後とも宜しくお願いします。

投稿: abenatsu | 2009/12/25 7:36:56

茂木健一郎さま

ふと

妹夫婦は子供たちとともに北海道へスキー

三泊四日との
ちょうど私が北海道に入る日も重なる日がありますが私は小樽ですので
でも本当
発信機など付いていたら
ニアミスみたいに北海道という地球の一部地域にて
もっとも妹たちはツアー形式のリゾートスキー場ですので小樽に普通に宿泊しての私みたいにのスキーではなく

ウチの母
妹夫婦たちのスキー
三泊四日
すぐにの短い北海道!と
私を基準にしているウチの母
私の場合は12日間ですので私を基準にしましたら、そうですが

私は宿泊自体が普通に
お手頃に抑えて
もっとも独身の一人でスキーの私、ツアー形式のようにリゾートスキー場にのは参加人数が二人からの、そういうツアー形式のスキーは出来ないんですよね

さて
また、ひととき
しばし睡眠、です。

投稿: 高木英樹 | 2009/12/25 3:43:47

普段書店で、日経サイエンスを手に取る事は殆んど無いのですが次回是非、書店で探してみたいと思います。

投稿: m | 2009/12/25 3:22:02

茂木健一郎様
なんと多様な夢を探索する「ちきゅう」
「ちきゅう」のことを多くの人の心に届けてくださる
日経サイエンスの企画に感謝致します。
多国籍のものがともに生きるすがたがもっともっと
社会に伝わることを祈ります。

Anyway
Happy Merry Christmas,Mr.Mogi!!

投稿: Yoshiko.T | 2009/12/25 2:58:58

こんにちは、二度目の投稿失礼します。

ちょっと思ったのですが、景色を見るとき私たちは点では無く、面でみていますよね(3Dの立体でも良い)。この時、脳の発火だけではなく、発火の接続性も考えなくてはならないですよね。光の量子の実験で、レーザーを6分割して、光以上の伝達速度の相関を調べるの実験がありますが、これに似た量子的相関伝達ネットワークがあるため、意識上、景色を見ると、点では無く、面(同時性)として見えるのではないでしょうか?

投稿: 神経ネットワークのクオリアby片上泰助(^^) | 2009/12/25 2:13:29

こんにちは


マントルまで穴を掘り、コントロール出来ると、島とか簡単に出来ちゃうのではないでしょうか?

オランダは、神ではなくオランダ人が作った土地呼ばれるように、日本も島をいっぱい作っちゃいましょう。(^^)

投稿: ちきゅうのクオリアby片上泰助(^^) | 2009/12/25 1:41:49

茂木健一郎さま

今晩の半井小絵さん
恰好よいの極みでした

クリスマスイヴですから
サンタさんの赤いお洋服と思いながら気象解説

白い素敵なお洋服
恰好よい!
北海道の週間予報も、しっかり拝見、もちろんです。

茂木健一郎さま

清水港と聞きますと
黒鯛釣りで有名な港として連想です

ところでです
地球の日本
その日本で絶滅しましたトキが今、日本の空、佐渡島から本州にと自由に飛んでいる

佐渡トキ保護センターという完全隔離された保護体制
そして各地の動物園に譲渡され、と思いきや
日本の空を自由に羽ばたいて
凄いです絶滅したトキが日本の空に復活

9太郎
きゅうたろう、というトキ
キュウーちやん
と言いましたら今までは、九官鳥
しかし今はキュウーちやんは私の中では
トキの9太郎です
冬を無事に乗り越えて欲しいです9太郎だけでなく全てのトキたち

地球
四季があり素晴らしい
雪が降るからこそ、スキーが出来るんですよね。
元日の小樽天狗山スキー場さんで、ご来光とともにの滑走イベント
楽しみです

クリスマスイヴは、いつも通り普通の私
私なりの大イベントは
元日のスキーです。
さて
寝ます。

投稿: 高木英樹 | 2009/12/24 23:23:38

ちきゅう…素敵な船ですね☆
「初めて」に価値があるのは、科学だけではなくて、日々の生活でも、言えないかしら?

地上に持ってくるために、沢山の人の苦労をまとい、連れ上げられたコア。

まさか連れ上げられるとは思っていなかったかもしれませんが…もしかしたら、未知の世界を見てみたかったから、ワクワクしているかもしれません(*^_^*)

各ミッションで開かれるコンペは、後で思い出になりますね(´∀`)

投稿: 奏。 | 2009/12/24 23:19:11

プファ〜ッ(^o^)у(笑)茂木さん、Hello♪(^-^)お久しぶりですね♪宝物探しに行ってたのです♪(まずはワンカップ大関を全身に浴びて(だけど大関って笑)(コツンッ笑)♪ストック数個を持って♪助け船にのって♪にゃんこを抱きしめながら♪宝の地図を見ながら♪いざ出陣♪(笑)(^o^)у途中で屋台から美味しそうな香りも楽しみながら♪ク〜強いでしょ♪(^o^)у因みにワンタン私もスキ♪(^o^)у助け船は潜水艦にもタケコプターにも♪なんにでもなってくれるのです♪(^o^)уそれから♪え〜っと♪(笑)とにかく♪宝物の場所とか♪輝き♪手にいれたい♪気持ちとかを確認できたのです♪(^o^)уでも今はまだ(笑)ずっとそこには居られないからシブシブ(T-T)(笑)それで今は私だけでこっそりと♪(笑)何時かは(早目がいいな笑)一緒に皆を招待したいからと思ってて♪今も探検中♪(笑)(^o^)у大きな実を結ぶ日が来ることをみんなで見守りたいほしい♪叶うかな?(笑)ここだけの話(笑)にこにこでいるよ♪(^-^)&(^3^)まずは♪あいうえお♪時々♪ABC♪音程を意識しながらのばす所とかもバランスよくね♪だけど真実は1つだけ色々な♪苦しい想い♪狂おしいきつい手♪キズついても♪キズつく過去がこわいの?こy♪二度過去には♪♪ささいな子♪にこにこどこにも♪(^3^)だけには♪(^3^)だけ(ハニー笑)話させさせないとか本当で真っ直ぐな色々な気持ち05:足して2(明かしすぎちゃった(笑)けどいつものお礼にね♪優しいままでよかった(^o^)уだけど茂木さん♪…??ところで、茂木さん♪前髪似合ってますね(笑)それでは茂木さん♪また今度です♪(^3^)

投稿: 水饅頭 | 2009/12/24 21:09:12

茂木先生、クリスマスイブの朝に
とてつもない大きなプロジェクトのニュースと
ちきゅう という船と働きを教えてくださってありがとうございます

研究のスケール、大きいですね~
すれ違う方々に、は~い! いい感じですね、

採取されたコアのある棚、まるで、現代アートみたいです、、、、

先生がいらしたアイラ島の、ジンジャーさんが採り出したピートを
思い出しました、^^ 地球のコアもいろいろですね^^ 
ピートはベビーコア?^^

船内のクリスマスツリー、素敵です、
神様は、どんなところでも、幸せを伝えてくれますね

明日はクリスマス!
☆を見上げ、涙の時にも、優しさと救いのあることを忘れないで
生きていきたいと思っています

今年の私の神様からのプレゼントは、茂木さんとの出会いでした
茂木さんありがとうございます!

クオリア日記の皆さんの心にどんな場所にいても、星が輝いていますようにと祈らせていただきたいとおもっています

                  reiko.G

投稿: R.グランマ | 2009/12/24 12:05:52

養老先生、とにかく大大大大大好きです!☆!

コア、私もこの夏に「現物」を見ました!☆!

倉本さん、お話とっても楽しかったです!☆!

投稿: ふぉれすと | 2009/12/24 9:49:02

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