「ブー!」たちは「ブラボー!」たちへと
ベルリン滞在、明けて三日目。
お昼をイタリアンで食べていた。
前に座っているのは、講談社の西川浩史さん。
なんだかひもじそうに見えたので、
「ほら、西川さん」とお皿に私の
パスタを少し載せた。
西川さんは、「ありがとう」と言った。
それからしばらくして、また
「西川さん、あちらの方から」
と言って、私のパスタを少し載せた。
それから、みんなの食事を少しずつ載せて
回ってきたお皿からも、「みなさんから」
と言って西川さんのお皿に載せた。
そうしたら、西川さんが、
「もう要りませんよ!」
と言って、突然、テーブルの私との
間にバルサミコやら、オリーブ・オイルやら、
こしょう、グラス、ソルトなどを
並べ始めた。
やがて、もう西川さんのお皿に
載せられないくらいに、障害物ができた。
「うわあ、ベルリンの壁だ!」
テーブルの上に突然出現した
ベルリンの壁。
西川さんが、「そんなに要らない
ったら要らないんですから!」
と笑いながらこっちをにらみ付ける。
「もっとコワイ顔をしてください」
と注文しながら、写真を撮り続ける。
十分コワイ顔になったな、
と思って、満足したが、後で
見たら西川さんの目はやっぱり
笑っていた。
ベルリンの壁の向こうから、
西川さんは笑っていた。
となりでは、「クーリエ・ジャポン」
の古賀義章編集長がクールに食事を続けている。
ベルリンの壁出現! 西川浩史さんは壁の向こうか
らにらみつけるようで笑っていた。
西川浩史さんの横では古賀義章さんが食事を続ける。
ベルリンの中にある大きな公園、
ティアガルテンへ。
西川さんが写真を撮ってくれた。
ティアガルテンにて。(西川浩史撮影)
古賀義章さんと、ベルリン在住の写真家、
サワベ・カイさんの写真を撮る。
古賀義章さんとサワベ・カイさん
シュターツ・オパーにて、
『ローエングリーン』。
シュターツ・オパーの前にて。
新しいことに挑戦し続ける演出家と、
それを受け入れる観客と。
ワグナーを脱構築した演出は、
一幕目、二幕目とも、終わると同時に
正面から大声で「ブー!」
と叫ぶ人がいて、
それをかき消さんばかりに
「ブラボー!」の反響。
シュターツ・オパーでは、
「ブー!」と「ブラボー!」
で「ベルリンの壁」ができる。
演出家の意図が浸透したのか、
あるいは「ブラボー!」のこだまに気圧された
のか、
三幕が終わった後は、「ブラボー!」
しか聞こえなかった。
ローエングリーンはピアノ線につり上げられて
照明の中に消え、
照明ランプが降りてきて、
やがて「ブー!」たちは「ブラボー!」
たちへと変換されてしまった。
11月 9, 2009 at 02:53 午後 | Permalink
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コメント
西川!にっしん!お久しぶり~。もじゃもじゃ頭似合ってます。
投稿: 竹本 惠 | 2012/01/12 18:04:16