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2009/11/24

日高敏隆先生

日高敏隆先生の訃報に接し、
深い哀しみの思いに打たれました。

思えば、小学生の時から
蝶の研究をして学生科学展などに
発表していた私が、日高先生の
『蝶はなぜとぶか』に出会って、
動物行動学の面白さに目覚めたのでした。

以来、日高先生の著作をたくさん
読んで、育ちました。

大学院生の時には、日高先生が翻訳された
『鼻行類』に見事に「かつがれ」、医学部図書館に
わざわざ「掲載論文」を探しに行ったりしました。

そのように、たくさんのものを受け取った
日高先生に、図らずもお目にかかり、
いろいろとお話する機会を得たのは、
人生における何よりの僥倖でした。

東京や京都にて、お話をうかがうことを
重ねたのです。

とりわけ、
昨年の夏、日高先生とコスタリカにご一緒に
旅行した経験は、生涯の宝ものと
なりました。

ジャングルのさまざまな生きものを見て、
子どものように目を輝かせていた
日高先生のご様子を、忘れることが
できません。

折に触れ、日高先生から発せられた
鋭くも深い言葉の数は、いつまでも
私の心の中に残っていることでしょう。

日高先生は、生物たちにとっての『環世界』
について論じるなど、深い哲学、世界観を持った
方でした。

日高先生の深い思想を示すエピソードを、
一つ想起したいと思います。

私たちのゼミにいらして下さった日高先生は、
「おばけ」の話をなさいました。

タクシーの運転手さんが、女性を乗せた。
ある場所で、突然いなくなった。

てっきり「おばけ」だと思ったが、
よく調べたら、合理的な説明ができた。

世の中の多くのものが、「おばけ」
のようなものである。

日高先生は、そう、看破されたのです。

そして、日高先生は、今日私たちが絶対的な
ものと思い信じている科学的な真理でさえ、
本当は「おばけ」かもしれないと
おっしゃったのです。

私の魂は、その時、震撼したことを
告白します。

そのような深い洞察に満ちた言葉が
人の口から生み出されることは、
滅多にない。そのように感じました。

ここに、日高先生に教えていただいた数々の
ことに深く感謝するとともに、
そのお人柄の温かさを忍び、
深くご冥福をお祈りいたします。

日高先生、本当にありがとうございました。
そして、お疲れさまでした。

茂木健一郎


コスタリカのジャングルにて、日高敏隆先生と。
(2008年8月14日)

11月 24, 2009 at 08:25 午前 |

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コメント

お背中の宇宙が騒々しくなりますね

投稿: hisako | 2009/11/26 0:04:57

日高 敏隆先生の ご冥福をお祈りいたします 合掌

一期一会 生前の先生にお会いし、たくさん教えて頂き、出会いの 大切を感じます。
「好きなことを 思いきりやりなさい。」
と 教えて頂いているように感じました。

投稿: サラリン | 2009/11/25 11:21:55

茂木先生 日高敏隆先生の訃報、本当に残念ですね。
朝カルの対談での「おばけ」の話しには、引込まれました。日高先生と言えば、なんと言ってもコンラート・ローレンツ博士の「人 イヌに会う」です。日高先生が翻訳されなければ、私は本の存在も知らない訳で、本当に感謝しております。この間のコスタリカには、元気に行かれたばかりだと、思っておりましたのに、お具合悪かったのでしょうか?ご冥福をお祈り致します。
(昨日 コメント入れさせていただいたのですが…これは無事に届きますように…)

投稿: 平井礼子 | 2009/11/25 11:05:57

一昨年末、日高先生と茂木さんの対談を拝聴しました。
おばけの話、東大と京大など楽しい内容でしたが、

中でも印象深かったのは、このやりとりでした。

茂木さん「他の動物になくて、人間だけにあるものって」、

日高先生「それは美学です」。


日本は日高先生を得て幸いでした。

ご冥福をお祈りします。

合掌

投稿: limy | 2009/11/25 8:31:58

学生時代お会いしたことがあります。
八王子大学セミナーハウス。
懐かしいです。
デズモンド・モリスの話しをした記憶が。
でも、確か熱を出されて帰らたような気が…。
違ったっけ?
合掌。

投稿: そらまま | 2009/11/25 1:45:25

茂木健一郎さま

今晩の半井小絵さん
髪型がお洒落で素敵でした。そして週間予報
もう少し経ちますと
12月も表示されますね師走です。

茂木健一郎さまが日高先生より受けられました良い感性

私の甥っ子、茂木健一郎さまの書籍より良い感性を受けて欲しい
それで茂木健一郎さまと日高先生、森林に参られました書籍、甥っ子に持たせました

おじさん預かっていきます

茂木健一郎さまの書籍
甥っ子は私から借りていくとのこと

真面目だから甥っ子も。

日高先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/11/24 23:29:17

夕刻、帰宅してPCを立ち上げ、「日記」にアクセスし、この文面を拝見しました。…驚き、かつ信じられない気持ちです。

日高敏隆先生が亡くなられた…。まるで真実でないことのように感じられる。

茂木さん、何卒お力を落とされませぬように…。

思い起こせば3年前だったか、新宿住友三角ビルにある「住友ホール」で、日高先生と茂木さんとの対談を拝聴した。

日高先生が蛾の生態や「環世界」についての、非常に興味深い、奥の深いお話をされていたのを思い出している。


今から思うに、あの対談が、少なくとも私自身が日高先生のお姿を拝見した、最初で最後だったのだ。

私も日高先生の文章に「風の旅人」ではじめてであった。生物の不思議に触れた、深くて面白いエッセイ。今も覚えているのは、虫はもう幼虫や蛹になっているとき、すでに成虫の身体が出来ているのだ、というお話。

衝撃的であったこのお話のお蔭で、私の頭にあった昆虫に対する、ある種の思いこみが、ものの見事に粉砕された。

科学的な真理すらも実は「おばけ」にすぎないというお話も衝撃的で、今となっては申し訳ないが、ある種の抵抗を覚えたものだ。

よく考えれば、科学的真理というものも、ある種の「幻影」のようなものなのかもしれない。日高先生はそれを「おばけ」と表現為されたのかもしれない。

『熱帯の夢』を思い返しながら、日高先生の、永遠の少年のようなお姿の1篇に、この書を読みながら、触れていたのだろうと、今になって思う。


日高先生のご冥福を心より深くお祈り申し上げます。

投稿: 銀鏡反応 | 2009/11/24 21:59:21

茂木先生のこの記事にただただ驚いています。私は海野さんの小諸日記を通じて日高先生のお人柄に憧れ、朝日カルチャーに通ったことによって茂木先生と日高先生の対談を拝聴することができた幸いなる者です。
 私の予期していた通りの風貌とそのお話に、こんな先生がいらっしゃるということが分かっただけで、馬齢を重ねてきた甲斐がある、人生も捨てたものじゃないと思いましたし、特に質問コーナーにおける若い人への御答えは慈愛とはこういうことなのだと感じました。
 つぶやくようなたった一言の先生の即答に漣のような笑いが起こり、会場はあっという間に春風に包まれました。
 心から日高先生のご冥福をお祈り申し上げます。

 そして、様々な局面において、触媒の役割を当然のこととして自ら引き受けていらっしゃる茂木先生のご健康を改めてお祈り申し上げます。
 

投稿: M | 2009/11/24 20:34:59

茂木先生、こんばんは

先生の大切な方のご訃報に触れ、
先生のお悲しみのお心をお察しし、私も哀しいこころに
なりました、お二人のお心の交わりの裾にもよることのできない私ですが、ご冥福を祈らせていただきとうございます

一筋の道を歩まれた方の、お化け の発言にに茂木先生が震撼となさる思いを受けられたとのことに、感銘を受けています

少しずつ師とのお別れあ増えて行くのは、学究の方にとっての心の大きな痛手であられますでしょうね・・ どうぞお力落しを少しでもいやされますように、机下より祈っております

この師弟のお写真を拝見し、茂木先生は、どなたにも愛され、可愛がられ期待されておられるのを感じます

昨年の夏といえば、78歳高齢の先生とのコスタリカの旅!

私の様なものからも、輝くような貴重な旅と記される旅の様に想像されます

有名なケツクアールくらいしか知らない私ですが
素晴らしい昆虫との出会いもあったことでしょうね^^

今夜もテレビでお目にかかりますね、
良い夕べをお過ごしくださいますように
                     reiko.G

投稿: R.グランマ | 2009/11/24 16:54:13

茂木健一郎さま

甥っ子に、書籍をあげました
詳しくは夜に書きます

日高先生に茂木健一郎さまは影響を受けられたように私の甥っ子は茂木健一郎さまより良い影響を受けて欲しいと思い
昨日
甥っ子は書籍を持って帰りました。

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/11/24 12:26:38

日高さんは最も影響を受けて大好きな人の一人です。
茂木さんも日高さんのことを好きだと知ったとき、うれしかったのを覚えています。とても残念です。
こころからご冥福をお祈り致します。

投稿: Hiroaki.Yamada | 2009/11/24 11:21:39

茂木さん、おはようございます。
「日高先生」、残念ですが天寿を全うされて、とても素晴らしい
人生だったことでしょう・・・。

昨年の「コスタリカ」でのご様子が、私にとってはとても印象深
く、茂木さんとご一緒にご旅行が出来て、しかもその「本」の完
成をみることが出来て・・・よかったですね!!

たくさんの「生物行動学」の著書もありますので、私たちの記憶
から「日高先生」が消えるということはありません・・・。

ご冥福をお祈りいたします・・・。

投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2009/11/24 9:36:27

日高敏隆先生に哀悼の意を捧げます。ココロのどこかをくすぐって下さる書物のなかにはいることが出来ました。いっぽんの輝いている蜘蛛の糸でありました。
お写真素敵ですね。こんな永遠の少年たちが世界に気づきを撒き散らして一生を捧げられるのでしょう・・。
茂木さまどうぞお体ご自愛くださいませ

投稿: 井上良子 | 2009/11/24 9:26:56

いいお写真ですね。

投稿: nico | 2009/11/24 9:21:49

茂木健一郎様

日高敏隆先生の訃報をこの日記で
知りました。

日高先生の御存在を文字や写真とともに
ふれらることがありますときには
心を潤わせてくださいました。
感動させてくださいました。

『熱帯の夢』はどんなに嬉しかったことでしょう。

この場を拝借させていただきまして、
日高先生の御冥福を心よりお祈りさせてくださいませ。

投稿: Yoshiko.T | 2009/11/24 8:55:12

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