文明の星時間 社会の若さ
サンデー毎日連載
茂木健一郎 歴史エッセイ
『文明の星時間』 第80回 社会の若さ
サンデー毎日 2009年9月20日号
http://mainichi.jp/enta/book/sunday/
抜粋
イギリスの歴史家、エドワード・ギボンは1776年から1789年にかけて出版された6巻の著書『ローマ帝国衰亡史』の中で、かつては隆盛を誇ったローマ帝国が没落していった理由を追及した。
ギボンは、ローマ人の意識の変質に根本原因を求めた。繁栄が続く中で、ローマ人たちは自ら国を守る気概をなくして、外国人の傭兵たちに頼るようになった。また、キリスト教の来世に対する信仰が、現世の境遇に対するいきいきとした関心を奪ったことも、影響を与えたと考えた。
人間がつくる社会は複雑な有機体であり、その相互作用のあり方もまたさまざまである。ギボンが指摘するローマ人社会の変質は、確かに帝国の衰退とかかわりを持つだろう。一方で、その原因のすべてを説明しているとは言えぬ。
古のローマ人たちは、自分たちの社会に何が起きているのか、必ずしも把握してはいなかったのではないか。一人ひとりは、自分の人生を精一杯生きている。与えられた条件の中で、懸命に工夫をしている。それでもなお、社会全体としては衰退を隠せない。そこに一つの美学を見る人さえ、いたかもしれない。そうしているうちに、やがてローマ帝国は亡びた。
全文は「サンデー毎日」でお読みください。
本連載をまとめた
『偉人たちの脳 文明の星時間』(毎日新聞社)
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9月 10, 2009 at 07:37 午前 | Permalink
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コメント
連載を読ませていただきました。
今のこの島国に住む我々は、かつてのローマ帝国末期の国民のように、自分の国に何が起こっているか把握しきれていない、というわけでは必ずしもないが、それに近い状態なのかもしれない。
高齢化が進み、諸制度が劣化し、徐々に国と社会は衰退に向かっていく…。それでも人々は、衰滅の予感を抱えつつも、懸命に今ある日々を生きている。時には、ささやかな幸せすら感じながら。
そんな状況の中で、ローマのように滅びないためには如何すればいいのか、私達一人一人が、本当はもっと深く、真剣に考えなくてはならないのではないかと常に思う。
衰滅の一つに、衆愚化がある。ソクラテスが亡くなる時代のアテネも、大衆が賢明さを喪い、社会が停滞し、やがて崩壊していったという経緯がある。
私達が賢明さを取り戻すことも、衰滅を免れるひとつの方法なのではなかろうか。
投稿: 銀鏡反応 | 2009/09/11 5:45:58