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2009/09/05

厚みのある知の源流

比叡山の飯室谷不動堂に、
酒井雄哉さんを訪ねる。

酒井さんは二度にわたり
千日回峰行を成し遂げた
大阿闍梨。


名古屋の朝日カルチャーセンター以来。
『どんな人にも役割が』

お話をうかがっているうちに、比叡山に脈々と
受け継がれる「幻覚」をめぐる文化
に目が啓かされた。
そもそも、心と脳の対応関係から考えれば、
現実と幻覚は原理的に同じだという
こともできる。

身体を追い込めば、illusionを見るのは
いわば当然。

どんな風にそのillusionを見たか、
その「流れ」が大切なのだと
酒井さんは言われる。

そして、illusionを見るのは、
仏への道の途中に過ぎないとも。

山川草木悉有仏性。


途中のillusionにとらわれて
しまっては、かえって「魔界」
に落ちる。

現代人のように、幻覚を例外的な
ものとして無視するのではなく、
それが起こるのは当然だとして、
どのように向き合うのか、
その文化と叡智を積み上げる。

酒井さんのお話から伝わって
くる「天台宗」の知の蓄積には
深みがあった。

知の深みは、歴史に比例する。

日本の大学は、ヨーロッパの
それに比べると歴史が短く、
だから物足りない。

しかし、考えてみると、天台宗は
最澄によって806年に伝えられてから、
1200年。

かくも長き年月のうちに、修行中の
幻覚に対する事例が積み上げられ、
洗練されていくのであろう。

日本における厚みのある知の
源流は、仏教界にあった。


酒井雄哉さん


酒井雄哉さんと。飯室谷不動堂にて。

9月 5, 2009 at 07:50 午前 |

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コメント

茂木健一郎様

密教と健康、武術を研究しております。茂木様の天台密教千日回峰行の本も拝見いたしました。私の場合は真言密教を修行して、合気を日本人で初めて発見した武田惣角「合気の発見」を最近出版しました。NHKの「クローズアップ現代」でも意識・脳のことを言及しておりましたが、「気」のことについては触れておりませんでした。密教の身体観は「身口意」、つまり、体と呼吸(気)と脳が一体となるように鍛錬すれば、脳の潜在能力が発揮され、過去・現在・未来(占い)を当て、病気治療、犯人探し、神通力といった能力が身につき、中国気功と同じ理論的部分があります。禅と脳、気功(太極拳)と脳の文献もありますが、今後は真言密教の秘術と、脳の関係についても研究されるよう、ご期待申し上げます。

投稿: 池月映 | 2009/09/07 11:27:01

体を追い込めばイリュージョンを見るのが当然なら、
こころを追い込めば現実はイリュージョンのクオリアとして体験されることも当然のことなのでしょうか。

自己存在確認のために破壊的衝動に苦しむ人たちの生命線と云える疑問、
その先に進むべき道の方角に光を当てられたような具体的な一文のヒントをここに拝見できました。

とても、うれしいです。

お疲れの出ませんように。

投稿: あなすたしあ | 2009/09/06 23:41:38

こんにちは。
 大局的に見る。自分の細胞の路線をまちがえないでいく。

 癌細胞は、自分が、何処の細胞だったか、忘れてしまって、自分を見失って、自分探しをしている旅人。

 illusionは、道の途中に過ぎない。とらわれてしまっては、かえって、魔界に落ちる。

 
 今、私は、次の自分路線の準備をしています。毎日が、やることいっぱいで充実しています。   これって、幸せなのかな?  と、ふと、思います。

 4時から、スペシャルたのしみに待ち構えている静かな日曜日です。秋の虫もないていて、空気も涼しいです。

投稿: ぶらんか | 2009/09/06 11:45:49

幻覚を視る

  思いもよらぬ  知の核心 に触れていないとも限らない

  意識下にある  思い出のメロディー ♪ 三番までスラスラと唄えて

          驚きの集脳力


   脳の引き出し 大切に仕舞い込んだ  奥から三番目

          今回の知の源泉はそんなところ  

          伏流となりて透明神秘  底 浅瀬に怪魚  ~~~

投稿: 一光 | 2009/09/06 6:07:06

知の深みは歴史に比例するって、深くて重いですね。

投稿: ふぉれすと | 2009/09/06 6:06:34

こんにちは

ヨーロッパでは、科学のマップを数百年作ってきた。
比叡山では、心のマップを、1200年作ってきたのでは?(^^)

投稿: 心の地図のクオリアby片上泰助(^^) | 2009/09/06 1:28:16

茂木健一郎さま

日曜日の常でした
茅ヶ崎の沖磯にお魚釣り
それで深夜の起床が、今晩は就寝の時間として今から寝ます

土曜日の茅ヶ崎で渡船
カワハギとメジナ、そしてアイゴ、ベラ
楽しいお魚釣りです
では就寝!寝ます。

投稿: 高木英樹 | 2009/09/06 0:55:13

【どんな風にそのillusionを見たか、
その「流れ」が大切なのだと
酒井さんは言われる。】

酒井さんとのお話しを終えられてから、
壮大な雲を見上げられたのでしょうか。

自然のわずかな時間に移り行く姿に気が付く
心。
自身の気持ちの中に生まれる姿に気が付く
心。
どんなふうに見たかという心持ちに
同じ自分が同じものを見て、何を感じるか
その時の状態が、何となく自分として
良い状態なのかどうかも、現れてくるような
気もします。
自分の心持ちで、変わって見えることがある。
生きている世界の美しいものを
気が付いて生きて行きたい。
自然の美しさ。人の心の美しさ。

『一日一生』の御著書も拝読したくなりました。

投稿: 発展途上人 | 2009/09/05 23:17:27

幻覚(≒夢)と現実(≒うつつ)は、原理的には同じ…確かにそのような気がしてならない。

幻覚と現実が原理上、フラットな線上にあるというのは、天台宗に限らず、ひとえに仏教そのものが、釈尊による開闢以来、その長い歴史の間に積み重ねた生命についての思索と、さまざまな事例によって、導き出された答えなのに違いない。

生きている中で、私達は幻覚と現実の間を行き来しつつ、しかしなかなか、己の中にあるという“仏性”を導き出せずにいる。そうしているうちに、人生にストン、と幕が降りてしまうことが、往々にして多いに違いない。

しかし、生きていることそれ自体を「仏になるための修行(あるいは、自己の中に秘める仏の生命を開くための修行)」ととらえれば、おそらく死ぬ間際か何時かはわからないが、自己の生命の奥底に、宝塔のように眠っている“仏性”を導き出して、自己が大きく変わることがあるに違いないと思っている。

その過程で、動物だけでなく、動かない草木はもとより、呼吸しない“無生物”である石ころ、そびえる山、流れる河、空気すらも、きっと仏性をそなえているんだ、と観ることが出来るようになるかもしれない。…実際、そういう教えを明記した仏典も、あると聞いている。

思えば「神が全てをつくった」という考えが支配的だった古代に、人間の内面に眼を向け、幻覚を含めた人間精神、ひいては生命の本質と真っ直ぐに向き合って、人間がよりよく生きるには如何すればよいかを、他の東洋哲学よりも、深いところで探り始めたのは、仏教だったのではなかろうか。

そうした叡智(≒英知)の源流を、インド、中国、日本と伝わる間に分厚く積み重ねて、日本に定着してもそうしてきたからこそ、仏教は深いのに違いない。

皆が世知辛い、暗いと不平を言う、今の世ほどに仏教の『分厚い層を成す英知』が必要な時は無い筈だと思う。

酒井さんと茂木さんのツーショットが凄くよいです。白い着物の酒井さんと、黒ずくめの茂木さんの対比が、なんとも鮮やかです!

投稿: 銀鏡反応 | 2009/09/05 21:53:35

どんな人にも役割があるとするなら、私の生は何のため?

私も、少しでも…安心できる場所や支えになれたら。
その時に、生の意味が分かるのだと思います。
現実と幻覚…原理的に同じという茂木さんの言葉に、励まされながら(^_-)

流れを確かめ、流れにのりたい(o^∀^o)

投稿: 奏。 | 2009/09/05 19:25:19

比叡山とは、京都ですかー!

さすが神出鬼没で電光石火の韋駄天茂木ぃ先生デスネ(^o^;)
比叡山、歴史を感じます。

そうだ、隆慶一郎氏の「風の呪殺陣」て、凄く面白かった本を思い出しました!
信長に比叡山を焼き討ちされた僧侶が、今度は呪術で信長に報復するお話だったかな?(でも仏教が人を殺すかって隆氏は比叡山の高僧に一喝され、改稿予定だったのに急逝されてそのままになったのだとか)
隆慶一郎氏は小林秀雄の弟子で、小林氏の生前は怖くて小説は書けなかったのだそうです。
隆慶一郎氏の未完の「花と火の帝」も拝読しましたが、凄く面白かったデス。
隆さん、長生きしてほしかった~!!

あぁまた読み返したい本を思い出してしまいました(><;)

京都いいですね♪
東寺とか養源院とか智積院とか行きたいデス~ぴぃぴぃぴぃぴぃぴぃぴぃぴぃぴ……えっウルサいですか?!(やっぱり?!)
シュン。退場(笑)

投稿: 眠り猫2 | 2009/09/05 18:16:47

茂木先生 こんにちわ

酒井さんと言う方 なにやら スゴイヒトのようで
とても興味をもって今日の茂木先生のブログを読みました。

もっと知りたくて 早速 酒井さんの"一日一生"を amazonしました

以前 お寺に拝観に行った際
やはり そこの住職さんの お話が大変面白くて
スゴイヒトは 国や場所を問わず 居るところには居るのだと生意気にも思いました。

茂木先生のブログを読んでいると
頻繁に ”ヒトの話を聴く事の 大切さ”を 思い知らされます

投稿: Lily | 2009/09/05 16:37:43

茂木先生の毎日のお仕事の量と質に驚くばかりです。

「そもそも、心と脳の対応関係から考えれば、現実と幻覚は原理的に同じだということもできる」これは、どうしてなのですか?
ユングの夢、あるいはマトリックスのかんじ?、またはポッパーの世界第三のような?

投稿: michiko | 2009/09/05 11:39:21

こんにちは 茂木サン 。
比叡山延暦寺の酒井サン
素晴らしい方ですね 。
前回 ブログと同じ 感動 が フツフツ と よみがえります。

酒井サンのような 仏様に 仕えていらっしゃる方を
尊敬いたします。

仏様のもと 安堵し、 人生を歩む事が 出来る力が 生まれるように。

逆境の時も 日常の時も そこに その人の受け入れる神 (的な存在)や、愛してる人が

いらっしゃるか どうかで
心の芯 ・ 真 ができ、
頑張れるのかな と
思いました。

投稿: サラリン | 2009/09/05 10:57:50

茂木健一郎様
比叡山で爽快なお気持ちでおられたのですね。


私ごときの日々の出来事を申しあげるのはおはずかしい
のですが、心からある行動に集中していたとき
illusionを見えました。自分ではわけがわからなくて
なんなのかしら?と思っていました。
>心と脳の対応関係から考えれば、
現実と幻覚は原理的に同じだという
こともできる。
深く受けとめていきたいと思います。

投稿: Yoshiko.T | 2009/09/05 8:41:10

茂木さん、Hello♪(^-^)今日は爽やかな天気ですね♪今♪電車中♪(^o^)уところで、茂木さん♪どんなillusion見たいですか?(^3^)それでは茂木さん、また今度です。

投稿: 水饅頭 | 2009/09/05 8:03:57

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