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2009/07/21

「詩」に至る道

小澤征爾音楽塾の
オペラ・プロジェクト公演
『ヘンゼルとグレーテル』を神奈川県民ホールで聴く。

本当に愛らしい、素敵な舞台。

音楽の陶酔もまた。

今回、
ドイツで、このオペラが
クリスマス・シーズンに上演されるのが
通例だということを知って、私は、
ドイツの文化の
一つの奥深く純粋なクオリアをつかんだ
ような気がした。

楽屋に小澤征爾さんを訪ねる。

小澤さんは、ちょうど着替えていて、
青いはっぴのような着物をまとって
いた。

「歌、ちゃんと聞こえていました?」
と小澤さん。

「聞こえていましたよ。」と言うと、
「実は、リハーサルの途中で気付いて
オーケストラ・ピットを下げたんだよね。」
と小澤さん。

「小品のようなオペラだけれども、実は
オーケストラ編成は大きいんだよね。途中に、
ワグナーのような響きもあるし。」

私が
「ライトモティーフのような部分も
ありますね」と言うと、小澤さんは
「そう」と肯かれた。

「オーケストラの編成が大きすぎる、
って怒られたりしてねえ。」

聴く者、見る者はファンタジーのような
美しい舞台に夢中になって、恍惚の
ひとときを過ごすけれども、
作る側はあれこれと工夫をしている。

工夫の一つひとつは「散文的」なもの
である。

ところが、それらの「散文」を積み上げると、
いつかは「詩」が出来上がるのだ。

芸術にかかわるものが、「詩」を知らぬ
はずがない。

ただ、「詩」に至る道が「散文」から
出来ているというだけのこと。

感覚性言語と、運動性言語は成り立ち
が異なる。

その間のギャップを埋めるのが
芸術家である。

どなたかが、「茂木さんまたいらっしゃる
のですか」と尋ねて、
私が答えようとしたら、小澤さんが、
「いやいや、この人はいそがしいから」
と仰られた。

「これから、東京や名古屋、それに
琵琶湖と浜松ですね。」と私が言うと、

「やる度に、うまくなりますよ!」
と小澤征爾さんは言われた。

今回のオペラ・プロジェクトは、若い
音楽家たちにとっての目覚ましい成長の
場でもある。

『ヘンゼルとグレーテル』残りの
公演は次の通りです。
ぜひお出かけください。


7月23日(木)東京文化会館 大ホール

7月26日(日)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール

7月29日(水)愛知県芸術劇場 大ホール

8月1日(土)アクトシティ浜松 大ホール

そうやって話していると、
武満眞樹さんがいらした。

武満さんは
「私が宇宙人みたいだって、本気で
言っていらっしゃるの?」
と言ってから、ぐるりを見回した。

7月 21, 2009 at 06:51 午前 |

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受信: 2009/07/21 7:54:43

コメント

小沢征爾さんとのお話、大変興味深く拝読。
1961年のNYフィル来日時、小沢征爾さんがバーンスタインから
指揮棒を渡されての初々しい姿がここにあります。
http://www.news.janjan.jp/culture/0901/0901316539/1.php

本文にあるごとく、NYフィル・バーンスタインによる
「Young People’s Concert」が「題名のない音楽会」の原点です。
その「題名のない音楽会」に茂木さんが昨日26日(日)に登場されたの
でうれしくなりました。

(ブックフェアの会場で)申し上げた「NYフィルとの
提携による小さな作曲家」コンサートが、19日開催されました。
http://www.news.janjan.jp/culture/0907/0907207458/1.php

10月のNYフィル来日公演が楽しみです。
http://www.news.janjan.jp/culture/0906/0906165227/1.php

投稿: 浜地 道雄 | 2009/07/28 2:06:34

茂木健一郎さま

ところで

現代音楽の作曲家は

ダンドン、ダンドン、ダンドン、ピシャーん

例えばですが
独特なメロディーなのでしようか?

エンジン?という作品でしちか

ベルリン・フィルが日本公演で取り上げ

CDを買いましたが

なにこれ?で
せっかく切符は購入でしたけど公演に行く気持ちが削がれ参らず

指揮者がイギリス出身だから?確かエンジンの作曲家も、確かイギリス出身?でしたか?

ベルリン・フィルはドイツもの、でないと

現代音楽はベルリンの本拠地でして海外公演はドイツなど伝統的なのを!
現代音楽に、ベートーベン的なモーツァルト的なのを聴いたためしがないのは、何故に?

素人の、ふとした疑問です。

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/07/22 7:46:55

茂木健一郎さま

おはようございます

以前、新日本フィル友の会会員に入会していました私

小澤征爾さま指揮での公開練習を拝見しに

小澤征爾さま ある作曲家の作品を指揮と解説

この作曲家は周囲から当時 頭がイカレテいると
しかし 大天才 周囲の人は見抜けず

我々はこの作曲家を研究しなければならない と こういう内容をお話されながら 墨田区でしたか、コンサートホールにての、ふと想い出しました、

野辺山スキー場で小澤征爾さまリフトご一緒にの時

ロシニョールの7Sというスキー板が恰好よく

小澤征爾さまのスキー板が それでした

さて昨晩の半井小絵さんの気象解説

白いバンツでも恰好よい半井小絵さんの週末気象概況のお見立て

東京周辺 曇りとの あとは茅ヶ崎周辺 波は穏やかですと良いですが
沖磯へ釣り

釣具屋さんの磯屋さんに渡船予約の沖磯 今週末は行きたいです。

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/07/22 7:04:34

茂木さん、Hello♪(^-^)元気ですか?走ってますか?それでは茂木さん、また今度です。

投稿: 水饅頭 | 2009/07/22 6:38:34

こんにちは

>ところが、それらの「散文」を積み上げると、
いつかは「詩」が出来上がるのだ。

>芸術にかかわるものが、「詩」を知らぬ
はずがない。

>ただ、「詩」に至る道が「散文」から
出来ているというだけのこと。


偉人の名言は少ない文の中に非常に多くの事を含んでいる。釈迦の「無言の同意」なんて、しゃべっていない、さすが、ゼロを発見した国の人である。

私も、名言を残したいです。(^^)

投稿: 詩と散文のクオリアby片上泰助(^^) | 2009/07/22 3:35:44

茂木健一郎様
散文は積み上げると詩になるというのは
生きることに似ていますね。
茂木さんが優れた芸術家でいらっしゃるのは
日々きめこまやかにクオリアを大事にされている
からですね。なんて豊かな可能性を秘めて
飛翔されていらっしゃるのでしょう。


>ドイツで、このオペラが
クリスマス・シーズンに上演されるのが
通例だということを知って、私は、
ドイツの文化の
一つの奥深く純粋なクオリアをつかんだ
ような気がした。

! 教えてくださりありがとうございます。

武満眞樹さん、やっぱり魅力的ですネ!

投稿: Yoshiko.T | 2009/07/22 1:19:44

こんばんは 茂木サン 。
指揮者 小澤 征爾サン ますますご活躍され その熱意 と 行動力 パワフル!凄いです。
生涯現役 は 歌舞伎の方々も同じ ・・・。 芸術家 は 歳を重ねていくことは 更なる深み となり プラスかと思います。
仕事によっては 体力的なことで 継続は難しいものもあるでしょう
いつかは終わりが 来る事を感じた時 残りの時間をどうしたいのか
どんな自分でいたいのか
そのためには 今何をしたらいいのか
見えて来る 。少し先の自分 から 今の自分にエール!
今は ちょっと 大変な 時だけど きっと いい事が あるから 頑張って
当時の私に ふとそのメッセージが 伝わり、 今の私がいる 。 大切な思い出です
茂木サン の本にも 大切な メッセージ が ちりばめられています 。 ありがとう ♪

投稿: サラリン | 2009/07/21 23:29:51

【工夫の一つひとつは「散文的」なもの
である。

ところが、それらの「散文」を積み上げると、
いつかは「詩」が出来上がるのだ。】

芸術作品を完成させていくために
さまざまな工夫と努力の積み重ねを
されていくのですね。
「散文」を積み重ねると
いつかは「詩」が出来上がる。
希望に満ちた言葉ですね。

大きなものを生み出すために、
心を尽くした小さな丁寧な工夫の積み重ね
をしていく。

芸術はもちろんのこと、
仕事でも、勉強でも、スポーツや人との輪も、
一生の中でいろんな「詩」が、さまざまに、
生まれて奏でられて、豊かな世界になっている
のかなとも、感じました。

投稿: 発展途上人 | 2009/07/21 23:18:08

やるたびに、うまくなるんですね(o^∀^o)

それなら頑張りがいがあります\(^O^)/


私も『詩』を作っていきたいな(*^_^*)

投稿: 奏。 | 2009/07/21 23:05:08

茂木健一郎さま

今晩も恰好よいクオリアの半井小絵さんの気象解説を拝見
週末の東京近郊 曇りの予報は、そのままです。

「散文」 手がかりとでも申しましょうか

ところで、です

小澤征爾さまと茂木健一朗さま 言葉で発する前に意味が通じていて
そう感じるんです

小澤征爾さまと私、リフトご一緒の時 感覚的にお話が叶うお方と、私は感じて小澤征爾さまとの会話が楽しくて楽しくて、でした。

私の場合、文章も感覚的に書いてしまいがち、ですけど。

オーケストラの皆様は 言葉にされなくても判る!あるのでは!!

演奏中 言葉を発するなど、ですから、ふと そういう感覚もお持ちではと。


小澤征爾さまとリフトの上でお話がすすむ程に

こんなに、とても、お心の純粋なお方が

ウイーン・フィル ベルリン・フィルの指揮者として逆にお心が純粋なことで潰れる、ことがなく、そこが不思議に感じてきて、でしたが

滑る時の あの瞬間に集中  あ!これだ!! と

小澤征爾さまの瞬間からの集中力は半端ではない

瞬間に超越されてしまう集中力の次元が桁違いでした。

リラックスと瞬時に集中 そのメリハリが凄い小澤征爾さま
それで、です あ!集中の仕方!そうなんですね!!と
小澤征爾さまから あの時 野辺山スキー場で私は学びました瞬間で集中の仕方。 気のせいではないです。

小澤征爾さまの表現をお借りさせて頂きます

カラヤン先生

カラヤン先生にとても大切にされていた小澤征爾さま
そのカラヤン先生についての書籍を茂木健一郎さまが
そして、その茂木健一郎さまは小澤征爾さまと楽屋にて

楽屋話を そのままも素敵ですが
ぜひ
茂木健一郎さま、小澤征爾さまの書籍も、ぜひに!


クオリアです 

全てはクオリアなんです。

人それぞれの雰囲気と表現されますこと実は 
そのお方のクオリアです お声にされても見た目にされても全て全体におかれてもです、そのお方のクオリアです

あの人 雰囲気が良いな!! それは、そのお方のクオリア

言い切れます

私が何故 ニット帽子にゴーグルでお顔は拝顔が叶わずでも
即座に小澤征爾さまと理解は 小澤征爾さまのクオリアを瞬間的に感じてでしたので それはお顔を拝顔という次元を超越のクオリアです

茂木健一郎さま、クオリアに着目され続けて頂けていたからこそ
私は 小澤征爾さまとリフトでのこと 自分でも納得、ようやくです。

お声と雰囲気で小澤征爾さまと判ったことは クオリアと理解すれば
ごく自然の当たり前のこと。

小澤征爾さまのクオリアは ちなみに私の内面でのことですので
もちろん他の皆様の内面での小澤征爾さまのクオリアとは同じとは限りません

例えるのでしたら このクレヨンの色は青! これが青です!!
全員で青色のクオリアを認識ですが その青のクオリアを他の方には、その感覚に似ていますし、それです。
茂木健一郎さま

正しい書籍を拝読は人生を明るく照らします
事実です

私は茂木健一郎さまの書籍を拝読させて頂きますことに感謝です

小澤征爾さまと茂木健一郎さまの 「 クオリア 」 かなり近く似ている気がします。


小澤征爾さま凄いお方ですが、茂木健一郎さまも本当、凄いお方です。

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/07/21 22:59:20

小澤征爾さん指揮の「ヘンゼルとグレーテル」をご堪能されたのですね。

7月23日の上野での公演、聴きに行きたい…でも生憎仕事や私用が入っていて、とても難しい。残念です。

高校時代、ブラスバンド部の定期演奏会を都内のあちこちの会館で行ったことを思い出す。

練習は然ること乍ら、会館の大きさを見ながら、如何にして、聴きに来てくれるお客さんの心の糸を震わせられるように響かせるか、みんなで懸命にリハーサルし、響きを工夫したものです。

今思えば、あの時はみんなでブラスの響きを、仰るように「散文」のように工夫して組み合わせ「詩」を作っていったようなものなのかもしれない。

誰でもそうだけれど、藝術に魂を捧げている人達は特に、思いの主成分が「詩心」で出来ているのに違いない。

オーケストラの響きの一つ一つが「詩」の「散文」そのもののような…。

この間「カラヤン 音楽が脳を育てる」の付録CDをはじめて聴いた。響きが生命の息吹きの歌のように聞こえてきた。

もっと詩のような響きに、我が耳を浸していたい。そして我が脳内の響きを美しい者にしたいと思う、戻り梅雨の夜。


投稿: 銀鏡反応 | 2009/07/21 20:53:28

生の小澤征爾さん…凄いです。
( ̄○ ̄;)
きっと素晴らしい音楽だったのでしょうね♪
小澤征爾さん… (うっとり)
小澤征爾さんといえば、キーシンと組んだ「ラフマニノフピアノ協奏曲第三番」はよく聴いています♪(凄いですとしか言えない…)
茂木ィ先生、ラフマニノフはお好きですか?
(・ω・)/
ラフマニノフ、はまると大好きになると思います♪
武満さんの作品では黒澤明の「乱」の音楽が大好きです♪
「乱」もたまに見返したくなる作品です♪
またしても勝手なこと書いてしまいました
茂木ィ先生の恋の本、帰りに買いました♪
読むの楽しみです♪
では♪

投稿: 眠り猫2 | 2009/07/21 18:30:52

茂木健一郎さま

本質的に

小澤征爾さまの雰囲気と表現の今までの私

それはクオリアを意識する前までです

今は

小澤征爾さまのクオリア
雰囲気でリフトご一緒で気づきではなく

クオリア!!

説明は本質的には超越のことですが

あえて、なぜ、小澤征爾さまと気づきはクオリアでした

茂木健一郎さま
かなり以前から不思議でした小澤征爾さまと私はなんで気づきが
しかし
パッと視界が広がりました

クオリア

万歳です、実感です。

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/07/21 8:53:18

おはようございます!
小澤さんの舞台、ぜひ見てみたいなぁ✧
小澤さんの指揮をされる姿を生で見たいです✧♫♪♩

投稿: 光嶋夏輝 | 2009/07/21 7:52:12

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