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2009/06/30

That's the spirit.

That's the spirit.

The Qualia Journal
30th June 2009

http://qualiajournal.blogspot.com/

6月 30, 2009 at 11:01 午前 | | コメント (4) | トラックバック (0)

プロフェッショナル 藤本幸人 

プロフェッショナル 仕事の流儀

夢を語れ、不可能を超えろ

~燃料電池車開発・藤本幸人~

藤本さんの取り組まれているのは、
水素による燃料電池車の開発。

エネルギー源として、貯蔵、
運搬の上で大きなメリットを
持ち、また水素、酸素、水の
間で循環することから
環境に対する負荷も少ない。

技術者の矜恃とは、画期的な
夢の技術をもって社会を
根底から変えることだろう。

藤本さんに、夢を現実にしようと
する男の自負を見た。

NHK総合
2009年6月30日(火)22:00〜22:49

http://www.nhk.or.jp/professional/

すみきち&スタッフブログ
Nikkei BP online 記事(produced and written by 渡辺和博(日経BP))

6月 30, 2009 at 11:01 午前 | | コメント (9) | トラックバック (4)

脳のトリセツ 

茂木健一郎 新連載 「脳のトリセツ」
第一回

週刊ポスト 2009年7月10日号

http://www.weeklypost.com/090710jp/index.html

6月 30, 2009 at 11:01 午前 | | コメント (3) | トラックバック (0)

文明の星時間 フリン効果

サンデー毎日連載
茂木健一郎 歴史エッセイ

『文明の星時間』 第70回 フリン効果
サンデー毎日 2009年7月12日号


http://mainichi.jp/enta/book/sunday/ 


抜粋

 ニュージーランドの心理学者ジェームズ・フリンは、人間の知能について、興味深い現象を報告している。
 先進工業諸国では、過去数十年にわたって、標準的なテストの結果として得られる人々の平均知能指数が上昇し続けているのである。オランダでは、30年間で約21の知能指数の上昇が見られた。イギリスやベルギー、ノルウェーなどの諸国でも、同程度の上昇が報告されている。人々の平均知能指数が上昇し続けているというこの現象は、発見者の名をとって、「フリン効果」と呼ばれるようになった。
 知能指数は、人間の多様な能力の一部分に過ぎない。よく、歴史上の天才の知能指数はどれくらいだったかということが議論されるが、知能指数だけで、その独創性がわかるわけではもちろんない。
 それでも、知能指数は、人間の「頭の良さ」の一つの目安にはなることは確かである。フリン効果が示すことは、過去数十年間、人間の「頭の良さ」は上昇し続けているということである。

全文は「サンデー毎日」でお読みください。

本連載をまとめた
『偉人たちの脳 文明の星時間』(毎日新聞社)
好評発売中!

6月 30, 2009 at 08:07 午前 | | コメント (3) | トラックバック (0)

海の香り

関西方面から帰る新幹線は、
名古屋を過ぎると
なぜか安心して眠ってしまう。

東京駅に降り立つと、
まだほんの小雨のようだった。

関西では、あれほど強く降って
いたのだが。

海の香りがする。

なぜか、どこまで行っても、
海の香りがする。

無意識の中の何かが
迎えに来たのだろうか。

朝倉千代子さんからメールを
いただいた。

From: 朝倉 千代子
To: Ken Mogi
Subject: 奇跡の人でした
Date: Tue, 30 Jun 2009

茂木様

神戸ロケ、トランポリンはじめ、
ありがとうございました(^^)

河原でのインタヴュー、三人の話を聞きながら、
茂木さんの言葉にじっと耳を傾け、
質問に嬉々とした様子でお母さんの手に言葉を
綴る井上君を見ていて、
実はちょっとグッと来てました。

真っ直ぐで、やさしくて、とっても無垢な世界の住人なんだなぁと。

本当に、人間として、自分を表現する手段
を手に入れることが出来て、
今、伝えたい言葉がある。

キムとお父さんに会った時にも感じた
汚れの無い精神というか、のびやかな心・・・
目の当たりにして、泣きそうになるのは
無くしてしまったからですね・・・きっと。


朝倉  


野田燎さんと。


井上智史さん、お母様と。



笠原裕明さん


朝倉千代子さん


東京駅の丸の内北口に出る。

階段の上の金属の覆いが、
ぺこんと少し変形している。
きっと、取り付ける際に何らかの
理由で変形して、そのままに
なっているのだろう。

電子が雲となって飛び交い、
トンネル効果やテレポテーションが
頻出する中、
かくも長き年月にわたって、
同じ形状を保っているということの
驚異。

量子力学的効果を勘案しなければ、
マクロな物体の安定は説明できない。

神秘は、ごくささいなことの
中に隠れている。

私は海の香りに包まれてあった。

6月 30, 2009 at 08:03 午前 | | コメント (13) | トラックバック (1)

2009/06/29

You must live

You must live

The Qualia Journal
29th June 2009

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6月 29, 2009 at 08:09 午前 | | コメント (9) | トラックバック (0)

智史さん

朝倉千代子さん、笠原裕明さんと
東京駅で待ち合わせ。

新幹線で新大阪。乗り換えて
芦屋へ。

井上智史さんを訪問する。

井上さんのご両親を交えて、井上さんと
お話しする。

井上さんが、その脳の潜在能力を
開花させるきっかけとなった
野田燎さん
のセッションを、井上智史さんとともに
体験する。

世界的なサクソフォン奏者、作曲家である
野田さんが生のサクソフォン演奏をして、
ピアノの伴奏が併走し、
それに合わせて井上さんと一緒に
トランポリンの上でジャンプした。

トランポリンの上に落下してぐんと
沈み込むその際の身体の反応や、
空中にいる時の浮遊感。

音楽のリズムやメロディーと
相まって、なんとも言えない高揚感が
生まれた。

野田燎さんが取り組んで来られた音楽行動療法
から得られた知見は、
Brain Injury誌上の論文 
として発表されている。

Therapeutic time window for musicokinetic therapy in a persistent vegetative state after severe brain damage
Ryo Noda; Yukio Maeda; Atsuo Yoshino
Brain Injury, 1362-301X, Volume 18, Issue 5, 2004, Pages 509 – 515


Abstract
Objective: To determine the therapeutic time window in which musicokinetic therapy (MKT) could be of potential benefit for a persistent vegetative state (PVS), this study analysed the relationship between the timing of MKT and changes in PVS score following MKT. Methods: Twenty-six patients who fulfilled the definition of PVS were treated consecutively by MKT employing a trampoline with live music performance for 3 months. The PVS score ranges from 0-30 and the condition which meets the definition of PVS is never scored greater than 20. Results: As compared to patients with brain damage caused by trauma (n = 12) or subarachnoid haemorrhage (SAH; n = 9), those caused by other cerebrovascular accidents (n = 3) or anoxic encephalopathy (n = 2) appeared to demonstrate a much smaller improvement in their PVS score. When the patients caused by trauma or SAH were analysed in isolation, the effects of MKT were clearly better in those patients in whom the MKT was initiated within 6 months after brain damage. Among nine patients caused by trauma or SAH who had been in a PVS for more than 12 months, however, six (66.7%) demonstrated improvement of their PVS score by 5 or more and four (33.3%) reached a post-MKT score of greater than 20. Conclusions: These findings suggest that, contrary to the commonly held belief, the therapeutic time window for MKT is far greater than 6 months, insofar as patients with brain damage caused by trauma or SAH are concerned. Although the benefits of MKT were not proven directly, this inference is consistent with the hypothesis that MKT can induce an improvement in the clinical condition of PVS patients.


石切生喜病院を、井上智史さんたちと
訪れる。

智史さんを長年にわたって診察してきた
前田行男院長とお話しする。

井上家で、智史さんが描いた数々の絵を
見ながら、お話をうかがう。

井上智史さんは、各地で個展を開いてきた。

まっすぐで、愛にあふれた素晴らしい絵の
数々。

http://www.a-creation-d.com/selectiinoue.html 

智史さんにとっては、このように表現が
できるようになることが、一つの画期的
事件であり、自分自身の内面を映す
鏡を見いだすことでもあったのではないか。

智史さんは素敵な人だった。

6月 29, 2009 at 07:34 午前 | | コメント (19) | トラックバック (3)

2009/06/28

世界文化社『カラヤン』

世界文化社『カラヤン』

ベルリン、ウィーンなど、カラヤンゆかりの
土地を取材しました。

大賀典雄さんとの対談も収録されています。

「レガート」という視点からセレクトした
カラヤンの名曲を収めたCDが付録で
ついています。

amazon


6月 28, 2009 at 06:45 午前 | | コメント (15) | トラックバック (0)

Basic income

Basic income

The Qualia Journal
28th June 2009

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6月 28, 2009 at 06:05 午前 | | コメント (10) | トラックバック (0)

リアリティ

PHP研究所で
アインシュタインのことについて
話す。

アインシュタインは、一貫して
リアリティの問題に向き合って
いたのだと思う。

有名なEPR paradox
(Einstein–Podolsky–Rosen paradox)の論文は
Can quantum-mechanical description of physical
reality be considered complete?
と問う。

1905年の論文でも、結局、
アインシュタインはニュートン的
時空の存在のリアリティを問うたのだ。

食事に行こうと、横田紀彦さんたちと
歩いていると、半蔵門の方から関根崇泰が
歩いてきた。

「運のいいやつだな!」
と関根に言う。

このところ関根がかわいそうだったので、
香港に行った時買ってきた
白地に赤い人が踊っているスウォッチを
あげた。

人がくねっているのだけれども、
そのうちの一人が、
関根の研究テーマのごとく腕を交差
させている。


関根くんにあげたスウォッチ。


汐留の日本テレビ。

世界一受けたい授業の収録。

マッコウクジラやアジア象の脳の
ホルマリン漬けがスタジオに来る。

象の巨大な小脳。

クジラの脳の絶対的容量は、
人間の脳よりもむしろ大きい。

杏さんがナチュラルで
良かった。

海豪うるるさんのスタジオへ。

うるるさんが、私のために
サプライズの料理を用意して下さった。


うるるさんが料理をしている
間に論文を書く。

「撮影の準備ができました」
という声で、ぱちりと映る。


PHP研究所の渡辺智子さん、
編集者ライターの露木朋子さん
がテキパキと仕事を進めていく。

再び汐留へ。

世界一受けたい授業の竹下美佐子さんや、
倉田忠明さん、鈴嶋直子さんたちと
歓談。

電通の佐々木厚さんや、広報の滝沢富美男
さんも同席。


関根崇泰は、今田耕司さんよりも、
米村でんじろうさんに似ているということが
判明した。


倉田忠明さんと



倉田忠明さん、竹下美佐子さんと。

(photos by Atsushi Sasaki)

6月 28, 2009 at 05:54 午前 | | コメント (12) | トラックバック (1)

2009/06/27

Self-reference

Self-reference

The Qualia Journal
27th June 2009

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6月 27, 2009 at 08:49 午前 | | コメント (6) | トラックバック (0)

いもやがうまく見つからない

マツケンスタジオで、
CDの収録。

PHP研究所の福井寛子さんと、遠藤部長。

50分余りにわたって、
いかに人間としての総合力を身につけるか
についてお話しする。

仕上げなければならぬ仕事が
複数あり、必死にそれらを
こなしながらお茶の水へ。

「いもや」を探してみようと思った。

学生時代、幾度となく通った
てんぷらの店。

天丼を注文して、出来上がるのを
待つのが楽しみだった。

確か、そう、海苔の天ぷらも
揚げてくれて、ご飯の上にのせて、
最後に出汁をかけてくれるのではな
かったか。

お腹を空かせて、その一連の動作を
「今度はぼくの番だ」と眺めている
のが好きだった。

ところが、いもやがうまく
見つからない。

このあたり、という裏通りを
しばらく徘徊したけれども、
脳裏に残る白い印象の暖簾は
見つからなかった。

諦めて、待ち合わせ場所の
「山の上ホテル」に向かった。

ホテル内の天ぷら屋の、立派な
天丼。

美味しくいただいた。


山の上ホテルの天丼


浅田稔さんとの対談。

久しぶりにロボットと脳科学の
関係について議論できて、
楽しかった。

鍵になるのは、「身体性」
をどのように普遍化して考えるか
ということ。

浅田さんはいつ会っても
元気である。

その背後には、硬い決意があるのだろう。

仕事をしながら、東京都現代美術館へ。

博士課程の学生の石川哲朗から
メールをもらっていた。

____
Date: Fri, 26 Jun 2009
From: ishikawa
To: kenmogi

石川です。

美術館を見る時間が少しありそうなので、講演の前に鑑賞してきます。
プロフェッショナルの長谷川さんの回は
おもしろかったのを思い出しました。
あの後、石上さんの空飛ぶ銀色の巨大な箱を
見に行きました。すごかった。いい美術館
だったので、今日も期待しています。

石川哲朗

_____

10月から開催されるラグジュアリー展
のプレイベントとして、
深井晃子さん、長谷川祐子さん 

そして私がお話しする。

長谷川祐子さんは素敵なネックレスをされていた。

聞くと、ベネツィア・グラスだという。

長谷川さんは、文脈とか関係なく、
疾走するから好きだ。

そのことを言うと、「いろいろ考えても
仕方がないと思っているのよ」と長谷川さんは
言った。


長谷川祐子さんと。

四谷で田谷文彦と待ち合わせる。

田谷の親族の方のご依頼で、雙葉学園
で講演をする。


雙葉学園に通う娘さんたちの
お父さんたちの集まり。

みなさんとても親切で愉快な
人たちばかりで、大いに楽しかった。

田森佳秀が東京に来ているというので、
落ち合う。

風花に行ったら、康芳夫さんが
いらした。

猪木対モハメド・アリ、
オリバー君来日などを手がけた
天才プロデューサー。

田森佳秀と、康芳夫さんの間で
話が盛り上がる。


康芳夫さんと田森佳秀

読売新聞の鵜飼哲夫さんが
いらっしゃる。

夜風に吹かれて、仕事のことを
考えながら帰る。

公園の森をジョギングしていて、
二日続けて蛇に出会ったことを
突然思い出した。

どうも、いもやがうまく見つからない。

6月 27, 2009 at 08:36 午前 | | コメント (27) | トラックバック (2)

2009/06/26

Anne and Katherine

Anne and Katherine

The Qualia Journal
26th June 2009

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6月 26, 2009 at 07:17 午前 | | コメント (7) | トラックバック (1)

私が変身したアインシュタインは

『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の収録。

特殊メイクアップアーティストの
江川悦子さんがゲスト。

打ち合わせの時に、「茂木さんを誰かに
変身させてもらいましょう」
と言われて、即座に
「アインシュタイン!」
と答えた。

小学校の時に伝記を読み、ブルーバックスで
相対性理論を知って以来、ずっと
私のヒーローだったアインシュタイン。

10歳にして、
とにかく、アインシュタイン
の成し遂げたことが一番偉大で、
アインシュタインが最も
素晴らしい人だと
確信してしまったのだ。

私の願いは受け入れられ、
スタジオでアインシュタインになること
なった。

結果に驚愕!

私は本当にアインシュタインに
なってしまった。

皆が驚嘆して、「おお!」と叫んでいる。

歩き回ると、誰もが一緒に
写真を撮りましょう、とねだってくる。

アインシュタインさんは、時に
オチャメに、そして時には
温かく、たくさんの人と
写真に収まった。

休憩時間が終わり、次のスタジオ
の撮影のために、特殊メイクを
外した。

鏡の向こうからは、元の
自分が現れた。


アインシュタインだった男

不思議な体験。
アインシュタインはどこに行って
しまったのだろう。

有吉伸人さんが言う

「茂木さんが普通の姿になって
戻ってきた時、さっきまでのあの人は
どこにいってしまったのかと、
強烈な喪失感がありましたね。」

江川悦子さん、あなたは天才だ!

私がアインシュタインになった
姿がどのようなものであったか、
2009年7月7日(火)
放送予定の「プロフェッショナル 仕事の流儀」
「魂をゆさぶる顔は、こうして作れ

~特殊メイクアップアーティスト・江川悦子~」
の回をお見逃しなく!


収録後、NHK出版の大場旦さんが
いらした。

この度、生活人新書の編集長に
なられるのだという。

よっ! 編集長! 長年の盟友、
オオバタンの栄転に、元アインシュタインも
喜んだ。

今年の「おじさん温泉」は、
大場旦編集長と行くことになりそうである。


大場旦さんのご栄転を喜ぶ。

収録は、無事すべて終わった。

食事をしながら、「脳活用法スペシャル」
の打ち合わせをする。

有吉伸人チーフプロデューサーや
細田美和子デスクと
最初に会ったのは、2005年5月18日
だった。

その時のことが、翌日のクオリア日記
ごく短く書いてある。

「もう4年前ですね」と有吉さん。

「あれ以来、ぼくはリーガロイヤルホテルに
行っていないんですよ。」としみじみと
有吉さんが言う。


「ぼくは、あの時、細田さんがあまりにも
おきれいなので、アナウンサーとか、
キャスターの方かと思いました」と
私が言うと、細田さんが「またあ!」
と言って照れた。

「私も、最初に会った時、女優さんかと
思いました」と住吉美紀さん。

「もう、そんなことばかり言って」
と細田さんが笑う。


細田美和子さん

楽しい夜が更ける。

その頃、私が変身したアインシュタインは、
光速で宇宙を移動しながら、
いつまでもどこまでもその姿のままでいて。

6月 26, 2009 at 07:02 午前 | | コメント (26) | トラックバック (3)

2009/06/25

眞木準さん

眞木準さんの突然の訃報に接し、大変驚くとともに、深い悲しみの思いにとらわれています。

エンジン01の会合などで、眞木準さんの温かいお人柄に接し、さまざまなことを教えていただきました。

先日、今年のエンジン01のポスター撮影の際ににお目にかかったばかりで、その時はお元気だったのに、あまりにも突然のことで言葉もありません。

広告の世界で多くのすぐれたお仕事をされてきた眞木準さん。ポスター撮影の際のスタジオで、てきぱきと指示を出されるその姿に、「さすがは眞木さん」と感激するとともに、これからもいろいろと教えていただきたいと思ったばかりだったのですが。

本当に残念でなりません。

ここに、生前のご厚情に心から感謝するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。



2009年2月、浅葉克己さん、眞木準さんと、
「朝日広告賞」の審査会にて。
林真理子さんの日記より)

6月 25, 2009 at 09:15 午前 | | コメント (8) | トラックバック (0)

Ten seconds

Ten seconds

The Qualia Journal
25th June 2009

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6月 25, 2009 at 08:56 午前 | | コメント (6) | トラックバック (0)

課題も夢も

東京大学駒場キャンパスで、
認知神経科学の授業。

運動場のある裏口から入った。
弓道部の橫を抜ける。

15号館に近づいていくと、
教室で、授業が始まるのを
待っている学生たちが
いた。

その様子を見ていると、
なんだか胸がざわざわして
くる。

あの群れの中に、かつて、
私も塩谷賢もいたのだ。

教室に着く。池上高志が
イントロダクションしてくれて、
話し始めた。

心脳問題、自由意志の問題、
そして、自己の社会的構築に
ついて。

授業が終わった後、ファカルティ・
クラブで池上高志や、学生たちと
喋った。


残照たっぷりの夕方が、
いつしか
電灯に照らされた緑が
命そのもののように綺麗に
映える夜に移行して。

國吉康夫さんがたまたま
いらしていて、しばらくお話した。

BigDogのことなど。

駒場に学生としていたのは
たった二年間だったが、
いくつかの光景はまるで
昨日のことのように鮮明に
覚えている。

化学の実験をする棟の橫。

当時はまだ冬眠明けのクマの
ようにスリムな身体をしていた
塩谷賢と立ち話をしていた。

塩谷が、「茂木よ、無限の先に、
もう一個無限を置いたらどうなると
思う?」と議論を吹っかけて
きた。

一学年に
1500人くらいいる理系の
学生のうち、10人くらいしか
とらない授業にいくと、
必ず塩谷賢がいた。

佐藤の超函数論とか、
場の古典論とか、
吉田夏彦さんの論理学とか。

吉田さんの論理学は、最初は
10名くらいでスタートして、
最後は僕と塩谷の二人だけに
なってしまった。

池上高志とは学年が一つ違うが、
池上もやはり、佐藤の超函数論を
とったらしい。

池上高志が、笑いながら言う。

「なんで佐藤の超函数論
お前もとるんだよ〜
今日お前が授業でやった
ファインマンの話とか、
非交換関係とか、
英語の話とか、オレが昨日
文系の物理の授業で話したことと
同じじゃないか。」

課題はわかっている。

課題も夢も、20歳の頃から
何も変わっていやしない。


池上高志

6月 25, 2009 at 08:30 午前 | | コメント (15) | トラックバック (3)

2009/06/24

How to create a stone

How to create a stone

The Qualia Journal
24th June 2009

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6月 24, 2009 at 08:04 午前 | | コメント (14) | トラックバック (0)

リストの手紙

集英社の
榊原宏通さんからメールをいただいた。

_____

Subject: エクラ:榊原です
To: kenmogi
From: h_sakakibara
Date: Tue, 23 Jun 2009

茂木健一郎様


 先日は小誌インタビュー取材に
ご協力いただきましてありがとうございました。
以前と変わらない疾走感のあるお話、とても興味深かったです。


 点ではなく線状に美しく展開する旅に価値があるという件は、
音が点から線になって旋律になっていく、豊かな表情を得ていく
過程にたとえることができるように思いました。
単体の音には、原理的には明るい/暗いの差はないんですから。
(同じ音があまりに長く続くと不安に陥るということはありますが)


 限られた要素を組み合わせて編集し、それ自体よりももっと豊かなものにする。

そうとらえると、旅のアレンジももっと楽しくなります。

特に、尾道に溶け込んでいくような茂木さんの旅は、とても参考になりました。
より遠くへ、より多くの場所へと無理に求めるのではなく、そこで徘徊してみる。

小さな鍋で静かに煮詰めるような茂木さんの旅に、色々と想像が膨らみました。

 では、まとめが終わりましたら、再びご連絡します。

貴重な時間をありがとうございました。


エクラ 榊原宏通

_______

すぐれた編集者というものは、
自分で書いちゃった方が早いんじゃ
ないか、というくらい世界のことが
見えていて、言葉使いも巧みである。

榊原さんのメールに、そんなことを
思う。

世の著者たちは、番を張っているんだから、
大いに精進せねばならぬ。

PHP研究所の木南勇二さんが
迎えにくる。

車の中で、村上春樹さんについて
談義する。

主婦の友社「mina」
の取材。

今度PHPから出る本について。

角川書店の
「怪」
誌上の荒俣宏さんの連載記事のために
対談させていただく。

「荒俣コレクション」のうち、妖怪や
心霊写真を見ながら、人間の脳における
現実と仮想の関係を論ずる。

荒俣さんの奥様がいらしていて、
ワインをいただいた。

トスカーナのLUCE、2005年。

太陽のラベルが、とてもきれい。

お心遣いに感激する。
とても素敵な雰囲気の奥様。


NHK。

「プロフェッショナル 仕事の流儀」
の打ち合わせ。

特殊メイクアップアーティストの江川悦子さん
の回。担当は、粟田賢ディレクター、
細田美和子デスク。

住吉美紀さんが、あれこれと
アイデアを出す。

三田。

中村紘子さんのご自宅にて、
対談させていただく。

しばしば、人生経験が音楽性を豊かに
するなどというが、
そんなに簡単なことではないと中村さん。

才能というのは、持って生まれた
災厄のようなものでもあり、
オーラがあり輝いているピアニストは、
同時に、どこか寂しげな様子もしている。

ピアニストであることの困難。

心の芯が震えた。


収録が終わった後、
日本テレビの古野千秋さんから
メールを頂いた。

_____
To: KENMOGI
From: 古野 千秋
Subject: 「深夜の音楽会」お礼
Date: Wed, 24 Jun 2009

茂木健一郎さま

本日は中村紘子さんとの対談ありがとうございました。
雑誌掲載のこともあって2時間という贅沢な収録時間を頂きテレビとしては考えられないような贅沢な一日でした。

10分の対談を収録するにあたり、今回のようなお2人の化学反応の行方を見守るだけというディレクションも初めての経験でしたが、「悪魔の一滴」という言葉が導かれて何か時間をかけた甲斐があったというか、お2人のお話に耳を傾けているだけで濃密な時を収録できたことに感謝しています。

あの場に居た皆様にとって充実した時間となったことを嬉しく思っています。

改めて貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございました。
放送は9月9日の深夜になりますが、よろしくお願いいたします。


茂木さんのピアノに向かうショットを添付いたします。

日本テレビ 古野千秋

__________



中村紘子さんと。


中村紘子さんの
ピアノの橫には、フランツ・リストの
自筆の手紙があった。

「あっ、リストですね!」
と叫んで、拝見しているうちに、
中村さんが、「そういえばここにもあったわよ。」
と、引き出しからリストの手紙を
取り出した。

受け取り、読んでいるうちに、突然中村さんが
「それ、あげるわよ。」
と仰った。

「えっ」と驚く。

「引き出しの中で、フォークの間に挟まって
いたんだから、それ、あげるわ」


「そんな、貴重なものを。」

「いいのいいの。差し上げます」

中村紘子さんがにこにこしながらおっしゃる。

中村さんの温かい気持ちが、太陽のように
降り注いで、深い感謝とともに受け止める。


Chere Madame

で始まる5頁にわたる手紙には、最後に、

フランツ・リスト
(18)57年 5月10日 ワイマール

との署名があった。


リストの手紙

6月 24, 2009 at 07:33 午前 | | コメント (23) | トラックバック (1)

2009/06/23

プロフェッショナル  藤田浩毅

プロフェッショナル 仕事の流儀
アンコール!

まぐろ一徹、意地を張れ

~まぐろ仲買人・藤田浩毅~

まぐろ仲買人、藤田浩毅さんの回が、
反響にお応えしてアンコール放送になります!

藤田浩毅さんの人生は、決して順風では
なかった。

さまざまな困難がありながら、
とにかく「いつかは自分はマグロを扱う」
という初志だけは変えなかった。

一度決めてしまえば、その目標に
関していえば、あくまでも無骨に
「同じこと」を貫く。

藤田さんの生き方を自分の人生と
共鳴させる。

NHK総合
2009年6月23日(火)22:00〜22:49

http://www.nhk.or.jp/professional/

すみきち&スタッフブログ

Nikkei BP online 記事
たった一言から人生を変える力
〜 まぐろ仲買人・藤田浩毅 〜
(produced and written by 渡辺和博(日経BP))

6月 23, 2009 at 07:29 午前 | | コメント (8) | トラックバック (4)

文明の星時間 ハワイ・マレー沖海戦

サンデー毎日連載
茂木健一郎 歴史エッセイ

『文明の星時間』 第69回 ハワイ・マレー沖海戦

サンデー毎日 2009年7月5日号


http://mainichi.jp/enta/book/sunday/ 


抜粋

 『ハワイ・マレー沖海戦』が封切られたのは、1942年12月3日。太平洋戦争のきっかけとなった1941年12月8日の真珠湾攻撃から、一年経たない時点での公開であった。
 真珠湾攻撃の場面は、戦後「ゴジラ」や「ウルトラマン」の特撮で有名となった円谷英二さんの担当。精巧に組み上げられた真珠湾の特撮セットを用いた映像は、今日見ても色あせていない。
(中略)
 真珠湾へ接近を続ける艦内では、飛行機乗りたちが集められて、アメリカ艦隊の「シルエット・クイズ」が行われている。教官が白地に黒の艦船のシルエットを見せて、「さて、これは?」と尋ねる。若い兵士は、「これはですな、えーと」とわからずに頭を掻く。教官は、「なんじゃ、自分の嫁さんの名前を忘れてどうするんじゃ」と問いただす。
 「これはお前の目標じゃろうが」と畳みかける教官。「ウェスト・ヴァージニア!」と兵士がやっと思い出す。「今さら手遅れじゃ。」と教官。皆が笑う。
 さらに、問題は続く。「さあて。今度は間違えるな。さ、これだ!」「カリフォルニア!」別の兵士が首尾良く答える。「よしっ、轟沈!」教官が上機嫌に笑う。
 「さっ、これは?」「はい、テネシー!」「いかん、いかん。これは、オクラホマじゃ。このマストが、『オ』の字に見えるじゃろうが。この煙突が、『ク』じゃ、『ラ』じゃ、『ホ』じゃ、『マ』じゃ! よく見ると、オクラホマに見えるじゃろうが。」「はい、見えます。」「もう遅い!」
 最後の問題である。「さあ、これは?」「アリゾナ!」「よし。轟沈!」
 教官が締めくくる。
 「しかし、みんなせっかくハワイに婿入りするんじゃけん、自分の嫁さんの名前くらいしっかり覚えておけよ。いいか。」「はい!」「そうじゃないと、水くさいと言うて、振られるぞ。」兵士たちが笑う。

全文は「サンデー毎日」でお読みください。

本連載をまとめた
『偉人たちの脳 文明の星時間』(毎日新聞社)
好評発売中!

6月 23, 2009 at 07:27 午前 | | コメント (4) | トラックバック (1)

Brain and heart

Brain and heart

The Qualia Journal
23rd June 2009

http://qualiajournal.blogspot.com/

6月 23, 2009 at 07:22 午前 | | コメント (6) | トラックバック (0)

タマムシの木

Daniel Dennetの
Freedom Evolvesを読みながら
移動する。

汐留。

ベッキーさんが「助手」
になって、さまざまな人たちの
悩みに答えた。

「マンバギャル」の人は、
渋谷にもう一度マンバギャルを
増やしたいのだと言った。

今10人くらいしかいないのだという。

私は、少数派であることは
いいことではないかと言った。

そうしたら、その女の子は
少し考える表情になった。

「マンバギャル」のメイクをしていると、
本当に中身を好きな人しか
近寄って来ないから、
本物の男を見分ける
手段になるのだという。

近くから見る
ベッキーさんの瞳の中には、ひまわりの
花が一輪咲いていた。

電通の佐々木厚さんとカレーうどんを
食べる。

カレーうどんは、時々猛烈に
食べたくなる。

半年に一回くらい。
きのうはその日だった。

辛みの奥から
来るうまみに舌鼓を打つ
佐々木厚さん。


カレーうどん



佐々木厚さん



佐々木厚さんが舌鼓を打つ。


集英社のエクラ編集部の
榊原宏通さんと仲田知之さんに
会った喫茶店は、まるで小津安二郎の
映画に出てくるようなたたずまい。


小津安二郎的なカフェ

榊原さんが、「他社の仕事ですが、
茂木さんはこんなところに行って
いたでしょう」と出したメモを
見てびっくり。

『和樂』の「日本のクオリア」の
連載で旅した先が、びっしり手書き
で記してある。

このところ、手書きのメモ自体、
見ることが少ない。
綿密な調べ上げに、榊原さんの
凄みを見た。


編集者の凄み。「榊原メモ」。


仲田知之さん(左)と榊原宏通さん(右)


廣済堂にて、
井上智陽
との本の収録。

井上は、小学校の頃からの親友である。

廣済堂の入り口には、井上の本
『かまくら楽食日記』
がディスプレーされて
いた。


ディスプレーされていた『かまくら学食日記』。


対談中、井上智陽が、こんなことを言った。

「今でもけんいちろうとのことで覚えているのは、
小学校2年か3年の時、遊びに行ったら、
けんいちろうがタマムシを捕りに行こう、
と言って、しかし、そのタマムシが
いる木の上の方から降りてくるのは
もう少し経ってからだから、それまで
待っていようと言ったこと。
けんいちろうの家にいったら、けんいちろうの
お母さんが焼きそばパンを出してくれた。
今でも、その焼きそばパンが鮮明に
目に焼き付いている。
それで、時間になって、神社の森に
行ったら、けんいちろうが「この木だ」
と言った木の上から、本当にタマムシが
降りてきたのでびっくりした。
あの頃、けんいちろうは、そういう細かい
ところまで観察していたんだね。」

タマムシの木のことはよく覚えている。

白い肌を見せた枯れた木で、そこで
タマムシが発生していた。

晴れた日に見上げると、キラキラと
虹色に光る美しい姿が、少しずつ、
にじり寄りように、木肌を降りて
来ていた。

タマムシの木が健在だったのは、
数年のことだったのではないかと
思う。

そのうち、その木は枯れて、
虹色の美しい虫たちの姿も
見えなくなってしまった。

6月 23, 2009 at 06:55 午前 | | コメント (9) | トラックバック (1)

2009/06/22

Up where the air is clear

Up where the air is clear

The Qualia Journal
22nd June 2009

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6月 22, 2009 at 07:49 午前 | | コメント (7) | トラックバック (0)

ポニョの気持ち

テレビ朝日

「サンデープロジェクト」。

田原総一郎さんとお話しする。

田原さんは、予定されて
いたことと全く違う方向から
話を飛ばしてくる。

「自分の聞きたいことは、どうしても
聞いてしまうんですよ。」
とスタッフの方々。

司会の小川彩佳さんも、
田原さんの突然の振りにどう
対応したら良いのか、修行中との
こと。

ソニー本社にて、「ソニーサイエンスプログラム」 
の講演会。

子どもたちと質疑応答したり、
終了後、読売新聞の
ヨミウリ・ジュニア・プレス 
のちびっこ記者たちの取材を受けたりする。


ソニーサイエンスプログラムでは、
夏のワークショップ
の参加者を募集しています。

子どもたちがサイエンスの感覚を
つかむ、素晴らしいチャンス。

締め切りは、6月30日。

ご興味のある方はぜひご参加ください!

海豪うるるさんのキッチン・スタジオにて、
PHPの料理の本の取材。

カレーを二種作る。

うるるさんの指導で、美味しい
カレーができた。

横田紀彦さんが秘蔵の映画を見せた。

ぼくは、カレーとか、ラーメンとか、
カツ丼とか、そういう好物はいつでも
隙さえあれば食べたいと思っている。
とは言いながら、毎食というわけには
いかないから、いつも寂しい思いを
抱いている。

ソニーサイエンスプログラムの前、
品川駅前で、博多ラーメンの
店を見つけて、広報の滝沢富美男
さんと入った。

しめしめ、とトンコツスープを
味わった。

隙さえあれば、ラーメンを
食べようと思っている。
それでも、週に一回も食べていない。
そんなことを考えていて、ふと、
親友田森佳秀の
愛犬ポニョのことを思い出した。

ポニョは、隙さえあれば
ご飯をたべようと思っていて、
しかし、食べ過ぎると
怒られるので、ずっと我慢している。

ある時、田森が、家を
出た振りをしてバタン! と
ドアを閉める音をさせて、
そっと部屋に戻ってみると、
ポニョが、「ぼくは一人だ!」
とばかり、大喜びで
コタツの上に
乗って、そこにあった
食べ物をむさぼり喰っていた
のだという。

その時のポニョの気持ちが
よくわかる。

本当はもっとやりたいのに
やらないで我慢している
ことはたくさんある。

世界はポニョの気持ちで出来ている。



田森佳秀氏と、2006年、
エルミタージュ美術館にて。

6月 22, 2009 at 07:19 午前 | | コメント (30) | トラックバック (5)

2009/06/21

Spiritual embodiment

Spiritual embodiment

The Qualia Journal
21st June 2009

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6月 21, 2009 at 07:45 午前 | | コメント (9) | トラックバック (0)

持調子

私は子どもの頃からbook wormの
気があった。

小学校3年の時には学校図書館
にあったSF童話シリーズを数十冊
全部読んでしまった。

図書館から5冊本を借りてきて、
一気に読了、ということもあった。

このところ、活字中毒が復活してきて、
ちょっと暇があると何か読んでいる。

お台場のフジテレビにて、
『ベストハウス123』の収録。

打ち合わせや収録の合間に
空き時間があるので、
「ちょっと散歩してきます」
と言って、本を一冊持ち、
廊下にたたずんだり、
トイレに隠れていたりしながら
読み継ぐ。

竹内薫
『理系バカと文系バカ』(PHP新書)を読んだ。

夏目漱石の『それから』には「持調子」
という言葉が出てくる。

三千代に久しぶりに会った代助が、
三千代というのはこういう女だったと
思い出すのである。

____

「待つてゐらつしやれば可かつたのに」と女らしく愛想をつけ加へた。けれども其調子は沈んでゐた。尤も是は此女の持調子で、代助は却つて其昔を憶ひ出した。

夏目漱石『それから』より
______

『理系バカと文系バカ』を読んで、
竹内薫の持調子を思い出した。

ちょっとジャズが流れているようで、
明るくて、それでいて一番底に
ある種の寂しさがあって、
人間としての温かさがある。

竹内薫と私は、大学時代からの
親友である。

あの頃、将来何か文化的なことを
したいと言いながら、二人とも
どうやってそれをすれば
良いのかわからなかった。

ある時、竹内が、本の企画を
出版社に持ちこむと言い出した。

落ち前のひょうひょうとした
実行力で、本当に行動して
しまって、それが編集部にも
受け入れられて、竹内薫の処女作が
出た。

日経サイエンス社
『アインシュタインと猿』である。

竹内は、「イラストも自分で描くんだ」
といって、
確かclassicかSE/30のマウスを使って、
ひょいひょいと絵を描いて見せていたっけ。

あの頃から、竹内薫という男の本質は変わらない。
それが、学生時代からの親友の私には、
ありありと見える。

トイレに座って『理系バカと文系バカ』を
読みながらそんなことを
思い出していると、
そろそろスタジオに上がる時間である。

廊下に出ると、朝倉千代子さんが
私を探している。

スタジオの橫の「前室」に入る。
周囲の方と雑談する。

時間になる。一人ひとり呼ばれる。
スタジオに入る。観客席の人たちが
拍手をする。

座るとまもなく、フロアディレクターの
方が「では、本番始めます!」と声を
上げる。

それぞれの現場のプロたちのきびきびした
動き。

築地の市場の、朝の様子に似ている。

6月 21, 2009 at 07:22 午前 | | コメント (21) | トラックバック (4)

2009/06/20

Mastery of admiration

Mastery of admiration

The Qualia Journal
20th June 2009

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6月 20, 2009 at 09:13 午前 | | コメント (8) | トラックバック (0)

ヘンな手

渋谷のセルリアン・タワーで
市川海老蔵さんとお話しする。

今年の3月19日にお目にかかって以来。

クオリア日記『かぶく』

あの時、「御曹司というものは
一度は反発して、それから戻ってくるのが
良い」と思った。

そのことを海老蔵さんに言うと、
「親が偉かった」という。

自分が反発して、暴れていた時に、
団十郎さんは
何も言わずに見守っていてくれた。

だから、時が満ちて、歌舞伎の世界に
戻ってきて、いったん戻ってきたら、
今度はいよいよ本気で取り組んでいる。

自ら戻るバネの力は本物である。

なるほどと思った。へたに引き戻そうと
するのはよくない。

それで引き戻されるようでは、器が小さい。

また、負けん気の強い子ならば、引き戻されて
たまるかとますます反発して、本当に
ふっとどこかに飛んでいってしまうかも
しれない。

面白く、出色の対談になった
と思う。

二度お目にかかって、ぼくは、海老蔵さんのことが
本当に大好きになった。

会話が、渦のようにぐいぐいと
動き回って、火花や雷鳴がとどろくのである。

Graziaの大久保さんからメールを
いただいた。

______

From: 大久保 洋一
To: kenmogi
Subject: 本日はありがとうございました Grazia大久保
Date: Fri, 19 Jun 2009

茂木健一郎さま

本日は海老蔵さんとの対談、本当にありがとうございました。
とても楽しく、まさに天才同士の言葉のかけあい、
海老蔵さんの新しい魅力が引き出された取材で、
編集長も現場にいたのですが、歌舞伎好きの人間として
至福の時間だったと興奮していました。
五右衛門の話、歌舞伎は奇跡だという話、スパルタの必要性、そして
龍とセミの話・・・・・今からどうまとめるか、とても楽しみです。
(個人的には「今の世の中、男性と女性の感情を持っていないと
生きていけない」という茂木さんのお話がとても納得できました)

原稿あがり次第、またお送りします。

よろしくお願い致します。

Grazia大久保

_____

大久保さん、お世話になりました!


大手町の日経サイエンス編集部。

慶應大学の下村裕さんと対談する。


下村さんは、高速で回転するゆで卵が
立ち上がるプロセスを解明して、
「ネイチャー」誌に発表。
大きな反響を呼んだ。

その解明の物語は、御著書
『ケンブリッジの卵』
に詳しい。

下村さんも、ケンブリッジに留学され、
トリニティ・カレッジに関係して
いたこともあり、
イギリスの学問風土のことも含めて、
話が弾む。

それが役に立つかどうかではなく、
知的に面白いこと。

そんなことを追求できる
人生の時間は幸福である。

梅雨の曇り空の下、
下村さんと、科学のたのしみについて
ゆっくりとお話できたことは、
ずっとずっと心に残るだろう。


ソニーコンピュータサイエンス研究所

脳科学研究グループの会合
The Brain Club。

箆伊智充くんと私が論文紹介をする。

組み手のillusionの話
になって、皆が一斉に両手を
組み始めた。

ヘンな手がたくさんできました。



関根崇泰くんのヘンな手。


野澤真一くんのヘンな手。


石川哲朗クンのヘンな手。


田辺史子さんのへんな手。

6月 20, 2009 at 08:56 午前 | | コメント (21) | トラックバック (4)

2009/06/19

朝日カルチャーセンター 脳と美

朝日カルチャーセンター 脳と美

第3回

2009年6月19日(金) 18時30分〜20時30分

詳細

6月 19, 2009 at 07:08 午前 | | コメント (6) | トラックバック (0)

Today's opposition

Today's opposition

The Qualia Journal
19th June 2009

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6月 19, 2009 at 07:06 午前 | | コメント (5) | トラックバック (0)

未来のふくらし粉

未来のふくらし粉

プロフェッショナル日記
2009年6月19日

6月 19, 2009 at 06:56 午前 | | コメント (4) | トラックバック (1)

河瀬さんの不在

『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の収録の合間にNHKの廊下を
歩いていて、ふと不思議な感覚に
なった。


しばきちさんや、かわぼうさんが
向こうから歩いてくるような
気がする。

デスクからチーフプロデューサーに
なって、しばきちさん(柴田周平さん)は
盛岡放送局に、かわぼうさん(河瀬大作さん)
はクローズアップ現代に移動して
いった。

もう、プロフェッショナルの収録現場に
来ることはないはずなのに、
無意識の習慣というのは
恐ろしいもので、なんだか
廊下の向こうから「茂木さ〜ん」
と手を挙げながら来るような
気がする。


誰もいない廊下


送別会から2週間。
「ぶーんと手を広げて」


不在を感じた時、
人は寂しさを覚えるのだろう。


物理学者のリチャード・ファインマンが
その著書
Surely you're joking, Mr Feyman
の中で、奥さんのことを思い出す
シーンが脳裏に浮かんだ。

--------

I had obviously done something to myself psychologically: Reality was so important -- I had to understand what really happened to Arlene, physiologically -- that I didn't cry until a number of months later, when I was in Oak Ridge. I was walking past a department store with dresses in the window, and I thought Arlene would like one of them. That was too much for me.

From Surely you're joking, Mr Feynman
-------


収録の後、控え室で
いつものように日経BPの渡辺和博
さんと感想を話し合った。

有吉伸人さんがやってきて、
どしっと座った。

「椅子に座らないんですか」
と聞くと、
「いや、どこでも、隙があれば
ジベタに座っちゃうんですよ。」
と有吉さん。



べたっ


ぺこりん


すっくり

有吉伸人さんの三面相

ゲストの藤本幸人たちもそちらに
いらっしゃるというので、十階の社会情報
番組の部屋に上がると、
「クローズアップ現代」に移動した
河瀬大作さんが山口佐知子さん(さっちん)
と話していた。


河瀬大作さんと山口佐知子さん


「さっき、河瀬さんの不在を
感じていたのですよ。」と心の中でつぶやいた。

6月 19, 2009 at 06:35 午前 | | コメント (18) | トラックバック (1)

2009/06/18

APCAP 2009 call for papers.

The fifth Asia-Pacific Computing and Philosophy Conference.
1st & 2nd October, 2009, at
University of Tokyo

You are invited to submit an abstract of up to 1000 words by 15th July, 2009.

There are eight tracks. I am going to chair the "Social Construction of the Self" session.


Social Construction of the Self

Track Chair: Ken MOGI

The self is a phenomenologically salient and functionally important aspect of human cognition. The discovery of the mirror neurons (i.e., cells in the prefrontal cortex representing actions of the self and others) has added a new and important dimension to the empirical investigation into this fundamental aspect of existence. Findings in cognitive neuroscience have revealed how the self is constructed through the interaction with others. The self is a socially constructed, embodied phenomenon. Various aspects of cognition, e.g., active vision, sensori-motor coordination, perception of time, body image, emotion, and memory, make sense only in reference to the self. Here experts from neuroscience, philosophy, artificial life, physics and other fields discuss the newly emerging science of the self. The session will be empirically based while trying to be theoretically enterprising at the same time.

AP-CAP 2009.

6月 18, 2009 at 07:36 午前 | | コメント (2) | トラックバック (0)

Sunset

Sunset

The Qualia Journal
18th June 2009

http://qualiajournal.blogspot.com/

6月 18, 2009 at 06:51 午前 | | コメント (9) | トラックバック (0)

何かがつながったような

秋葉原の街は変わった。

学生時代から、訪れた回数が
とても多い通り。

本郷から、不忍池を抜けて、
広小路をずっと歩いて、
秋葉原まで何度散策したことだろう。

ダイビルが出来たり、
つくばエクスプレスが開業したり、
昔の面影はない。

駅に確かラーメン屋があって、
一度食べたいなと思いながら
通りすぎていた。

いつ見ても、人々がカウンターに座って
いた。

確か、一度だけ、入って見たのかしら。

秋葉原の街は、一人でただひたすら
さ迷い歩いた記憶とともにある。

ダイビルの中の会場。
インテレクチャル・カフェ シンポジウム2009
にて、『脳科学の未来』と題してお話する。

主催は経済産業省と、日本経済新聞社。

猿渡敬志さん、西成活裕さん、藤井直敬さん、
正木信夫さんと、おなじみの方々が会場に。

お昼のブレイクで、早稲田に向かう。

国際教養学部での授業。

ヒロは、少し遅れてやってきて、
いつものように最前列に座って、
やっぱりいろいろ発言していた。

ミナとその仲間たちもさまざまに。

one-shot learningとbody imageの
話をした後、
タルコフスキーの「惑星ソラリス」と
「ストーカー」の一部分を見た。

授業後、グルジアからの留学生が
やってきた。

流暢な日本語を話す。

「先生に、ぜひ見てもらいたい映画
があるんです。」

「どんな映画?」

「先生が、この前の授業で、天才
というのはぶらぶらしていなければならない、
というようなことを言われたでしょう。」

「ああ、ロマンティック・アイロニーか。
default networkと関連して話したね。」

「この監督は、そうやって、本当に
ぶらぶらしているんです。ぶらぶらしながら、
映画を撮るんです。」

「なんていう映画?」

「歌うつぐみがおりました、っていうんです。」

「そうか、忘れないように、このパワーポイントの
ところにメモっておくよ。」

「今度の授業の時にもってきましょうか?」

「いや、だいじょうぶ。アマゾンで買うよ。
ありがとう。いい映画なの?」

「もう、三十回くらい見ています。」

きっと、ロシアの映画を見せたので、
故国グルジアの名作を思い出したのだろう。

なんだか、何かがつながったような、
そんな感動を覚える。

グルジアの、真面目そうな彼が教えて
くれた映画の注文は、後にさっそく済ませた。

幻冬舎の大島加奈子さん、石原正康さん
がいらっしゃる。

石原正康さんが
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
に出演された時に、執筆していた
白川道さんの長編が、ついに完成
間近だとのこと!

ベストセラーはこうして生まれる 編集者石原正康

大島加奈子さんと話す。

「たけちゃんマンセブンは元気ですか?」

「ええ。元気です。」

「原稿のこと何か言っていませんか?」

「茂木さんから原稿が来るはずなのに、
来ない、おかしい、おかしいと毎日
言っていますよ。」

「・・・・・・」


たけちゃんマンセブンこと、増田健史氏

佐伯チズさんとの対談。

佐伯さんは、本質をまっすぐに見つめる、
さっぱりとした素敵な方。

初対面だったが、話が盛り上がって、
笑い声の絶えない二時間となった。

佐伯チズさんとの対談は、
幻冬舎の雑誌GOETHE
に掲載される予定です。

6月 18, 2009 at 06:38 午前 | | コメント (18) | トラックバック (2)

2009/06/17

Cloud of regret

Cloud of regret

The Qualia Journal
17th June 2009

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6月 17, 2009 at 07:35 午前 | | コメント (7) | トラックバック (0)

「そうかあ」

時間があって代々木から
原宿まで明治神宮の中を
抜けることができるととても
うれしい。

古代ギリシャに逍遙学派
があったように、think walkは
知的生活にとって必需である。

しかし、その流儀は実は難しいのであって、
特定のことを考えれば良いという
のではない。

軽い感覚遮断の下、脳のdefault networkを
うまく遊ばせなければならない。

その時、無意識下からさまざまな
agendaが浮かび上がってくるが、
それらの色とりどりと
いかに付き合うのか、追いつ追われつ、
居付き居付かず、バランスを
とるのは一つの芸術である。

波の間でたゆたっている
うちに、あっという間に
神宮と代々木公園のすばらしい緑は
わが視野の中を流れていった。

『プロフェッショナル 仕事の流儀』
班が新しい居所を得たことは既報の
通り。

新打ち合わせ室で、初めてのミーティング。

燃料電池車の開発のエクスパート、
藤本幸人さんがゲストの回。

担当は、座間味圭子ディレクター。

目新しい空間で、なんとなくウキウキする。

斯界で有名な、座間味圭子さんの
「目力」がVTRに表れた。


山口佐知子さん、座間味圭子さん


座間味圭子さん、有吉伸人さん


有吉伸人さん、山本出さん、住吉美紀さん


すみきち(住吉美紀さん)行きつけ
のとても気持ちの良い店で、
さっちん(山口佐知子さん)、
すみきちと一緒に
ご飯を食べていると、クローズアップ現代
にチーフプロデューサーとして栄転
されたかわぼう(河瀬大作さん)
がやってきた。

仲間というものはいいもんである。
見た瞬間にほっこりする。

すみきちは店の趣味が良い。

電通、カネボウの方々と、ミーティング。
化粧と行動実験について。


再びNHK。

「デジタルラジオ」の収録。

矢内理絵子さん
茂木大輔さんをゲストにお迎えする。

矢内理絵子さんは生活において
あまり迷うことなく、
レストランのメニューでも
服でも「これだ」と即断即決するが、
唯一悩むのが将棋の決定的局面での
指し手なのだという。

そして、日常においては不安定になることは
ないが、タイトル戦などを前にすると、
不安定になる。

本番を迎えると、開き直ってすっと
落ち着くのだという。

生きる中で、矢内理絵子さんを唯一
悩ませ、不安定にさせるのが
将棋であるというのが美しいと思った。

矢内理絵子さんのことがもっと知りたい方は、
共著の『女脳』をご覧ください。

矢内さんは、6月18日から「女王」戦

五番勝負に臨まれる。

矢内さんの健闘をお祈りいたします。


矢内理絵子さんと。

茂木大輔さんのことは同じ茂木だから
以前からとても気になっていて、
お目にかかれてうれしかった。

オーボエはとても繊細な楽器で、
それがゆえにか、人間の声のような
温かい音色となる。

木管楽器はオーケストラ曲の中で
ソロで演奏する局面が実は多く、
その時にはやりがいがあると同時に
テンションが高まるとのこと。

茂木大輔さんは近年、指揮もされ、
レクチャーコンサートを開催されている。

ベートーベンやハイドン、モーツァルト
などの偉大な作曲家の残した作品を
最も深く、広がりをもって理解する
方法が指揮をすることなのだという。

なるほど。自然言語による表現とは
ベクトルの異なる純度と強度をもって、
指揮はすばらしい音楽に私たちを
導いてくれる。

茂木大輔さんのお話はまるで
即興のジャズを聴いているようで、
私は同じ茂木として実に心地よく
スイングできた。

茂木さん、これからもご活躍ください!
そして、同じ茂木として、よろしく
お願いいたします。


茂木大輔さんと。

プロフェッショナルの後の
爆笑学問に池上高志が登場する。

ぼくの大好きな畏友、池上高志のチャーミングな
ところが出ていて、ぼくは画面を見ながら
ずっと微笑んでいた。

終わってすぐに、池上に電話した。

「いやあ、良かったよ」と言うと、
池上高志は、「そうかあ」と照れくさそうに
言った。

6月 17, 2009 at 07:18 午前 | | コメント (18) | トラックバック (4)

2009/06/16

プロフェッショナル 中村征夫

プロフェッショナル 仕事の流儀

沈黙の海で、生命を撮る

~水中写真家・中村征夫~

中村征夫さんは、あんなに素晴らしい仕事を
していて、
それでとても謙虚である。

海という、とてつもなく巨大なものと
向き合う。

その中で培われた、中村さんの
感性。

とても把握しきれないくらい大きなものに
挑み続ける。

そんな人生は幸いである。


NHK総合
2009年6月16日(火)22:00〜22:49

http://www.nhk.or.jp/professional/

すみきち&スタッフブログ

Nikkei BP online 記事(produced and written by 渡辺和博(日経BP))

6月 16, 2009 at 07:03 午前 | | コメント (19) | トラックバック (1)

文明の星時間 鯨肉の味

サンデー毎日連載
茂木健一郎 歴史エッセイ

『文明の星時間』 第68回 鯨肉の味
サンデー毎日 2009年6月28日号


http://mainichi.jp/enta/book/sunday/ 


抜粋

 あれは私が大学院の博士課程に在籍していた頃のこと。ふとしたことで、研究室の先輩たちと鯨の肉の話になった。当時、日本の国外では、すでに捕鯨に反対する運動が盛んだった。
 鯨の肉の味は、子どもの頃からお馴染みだった。母親が、よく、近所の店で鯨ベーコンを買ってきてくれた。半透明でジューシーな肉が、赤く縁取りされている。巨大な鯨のどこの部分なのかわからないままに、美味しく頂いた。
 給食でも、鯨肉の竜田揚げが出た。鶏肉に比べるとちょっと硬くて、かすかなクセがあった。それでも、とても美味しかった。大好きなメニューだった。
 そのように、鯨肉の味には親しんできたように思っていた。それでも、国際的な反対が強まる中で、無理して鯨を捕り続けることはないかな、と当時の私は考えていた。それで、研究室の先輩たちにそのような考えを伝えた。
 「人間が飼育できる牛や豚を食べられれば、それで命はつないでいけるのだから、鯨を捕りに行く必要はないのではないか」そんな趣旨の言葉を漏らしたのではないかと思う。
 猛反発を喰らった。「君には、何もわかっていない」というのである。
 「他に食べる肉がなかったんだよ。牛や豚なんて、貴重品だったんだ。鯨の肉しか、食べるものがなかったんだよ。」
 「そうよそうよ。」
 いつもはやさしい言葉をかけてくれる、先輩の女子大学院生も、そのように同調した。
 「鯨の肉が贅沢品なんて、当時の事情を知らない人が言うことよ。」
 私から見てせいぜい数年前に生まれた先輩たち。そのわずかな差が、鯨肉についての決定的な認識の違いにつながっていたらしい。

全文は「サンデー毎日」でお読みください。

本連載をまとめた
『偉人たちの脳 文明の星時間』(毎日新聞社)
好評発売中!

6月 16, 2009 at 06:53 午前 | | コメント (11) | トラックバック (1)

Anticonsciousness?

Anticonsciousness?

The Qualia Journal
16th June 2009

http://qualiajournal.blogspot.com/

6月 16, 2009 at 06:47 午前 | | コメント (4) | トラックバック (1)

牛乳を飲んだあの店

VLSI symposiumでお話する。
開会式直後。アメリカの半導体関係者も多数。
来年は、ハワイで開催されるとのこと。

ふだんと違う分野の方々の前で話し、
議論をするというのは本当に楽しい経験。

質疑応答もレベルが高く、大いに
刺激された。

ソニーの若林整さんや、
パナソニックの丹羽正昭
さんには大変お世話になりました。

ありがとうございました。

竹内薫
が入院したというので、
心配していた。

入院直後に竹内薫本人から電話をもらったが、
私は香港だった。

すぐにコールバックしたが、つながらなかった。

昨日午後に電話をしたら、しばらく経って
本人から電話が来た。

マイコプラズマ肺炎で入院したら、
虫垂炎も見つかって、
そっちの手術をした由。

「明日にでも退院できそうな感じだよ」
と言っている。
元気になってきたようで、安心した。

竹内との関係は、何というのか、
お互いに将来何をやろうかと
夢見てうろついていたころの
盟友で、他の何ものにも代え難い。

もし、私の大学生時代を夏目漱石の
『三四郎』のような小説に仕立てると
すれば、
その中には間違いなく竹内薫と、
塩谷賢が出てくるだろう。

竹内とは、特に、銀座のあたりを徘徊して
いたので、今でもゆかりの場所の近くを
通るとはっとよみがえることがある。

とりわけ、牛の石焼きを食べて、
牛乳を飲んだあの店。

竹内と、一体何回行ったことだろう。

まだあるかしら。

薫は、少し最近忙しすぎたのだと思うから、
とりあえず無理をせずに、ゆっくり治して
ほしいと思う。

また、竹内薫と会って、楽しく話したい。

今晩は、楽しみだ!

『プロフェッショナル 仕事の流儀』
に引き続いて、池上高志
『爆笑学問』に出る。

どちらも、みなさん、お見逃しなく!

6月 16, 2009 at 06:23 午前 | | コメント (9) | トラックバック (3)

白洲千代子展

白洲千代子展が、
銀座7丁目の石川画廊 
にて開かれています。

詳細 

今週の木曜日まで!

白洲千代子さんは
畏友白洲信哉の妹さんですが、
やや乱暴な
兄貴と違って非常におしとやかで、
やさしい人です。

その繊細な感性が、作られるアクセサリーにも
反映されています。

皆様、ぜひお出かけください!

6月 16, 2009 at 06:09 午前 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2009/06/15

Void

Void

The Qualia Journal
15th June 2009

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6月 15, 2009 at 06:39 午前 | | コメント (7) | トラックバック (1)

うまく形成される

香港から成田へ。

私はコンピュータゲームが
実は好きなのだが、
最近はとんとやる時間がない。

それでも、
飛行機の移動中などについ
「魔が差して」座席についている
ゲームをちょこっと
やってしまう。

「上海」をやった。3回やって
クリアできないので、ふてくされて
眠る。

東京から新幹線で京都に向かう。

明けて今朝、
VLSIに関する国際会議
発表をするため。

香港はとても良かった。

中国の文化に、英国の文化がアマルガム
されて、
さらにはさまざまな国の文化が
加わる。
すべてが混ぜ合わされて、しかし
それでも有機的統一を
失わずに、活き活きとしている。

日本語もうまく取り入れている。

「の」をうまく使う。

例えば「優の良品」のように。

野澤真一が、香港の人は「の」を「的」のように
使っている、と指摘したのはさすがだった。

文化的純血主義は、一種の怖れの
現れだろう。一定の作用を持つだろうが、
発展性がない。

歴史的事実を見れば、どの国の文化も
スモール・ワールド・ネッネットワークの
中でお互いに影響を与え合っている。

ちょうど、細胞の中の遺伝子配列そのものや
エピジェネティックスが変化しても、
有機体として何とか吸収されて
それなりのかたちにまとめ上げて
しまうように、
一国の文化もまた、さまざまな影響を受けたとしても最後にはうまく形成される。

だから、有機的組織体の可能性を信じて
飛び込んでしまえば良い。

ひとりの人間もまた、同じことだろう。

6月 15, 2009 at 06:30 午前 | | コメント (24) | トラックバック (3)

2009/06/14

Immediacy

Immediacy

The Qualia Journal
14th June 2009

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6月 14, 2009 at 07:06 午前 | | コメント (7) | トラックバック (0)

精励の果実

 私の発表は無事終わる。

 香港を歩く。

 中国の文化と、イギリスの文化と、
さまざまな文化が入り混じった街。

 南の風土のやさしさからか、
あちらこちらで佇む人たちがいる。

 公園で将棋に興じる人たち。

 ベンチに腰掛けて、ゆったりと
笑う人たち。

 相変わらず年の行った人たちの
表情に心を惹かれて、
 それはつまり、彼らが一生懸命
生きてきたからだと気付く。

 微笑みは、精励の果実である。


 

6月 14, 2009 at 06:41 午前 | | コメント (19) | トラックバック (1)

2009/06/13

Cloud

Cloud

The Qualia Journal
13th June 2009

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6月 13, 2009 at 07:53 午前 | | コメント (11) | トラックバック (1)

サンゴの卵

会場となっているのは、香港理工大学。

到着すると、ちょうど
coffee break。

David Chalmersがいた。

Davidは、私の髪を見るなり、
nice hair styleと言った。

David の髪型はキリストのようである。

今年から、一年の半分はNYUに
いることにしたとDavid。

「キャンベラは世界で最も偉大な都市とは
言えない。そこに5年もいたからね。」

「でも、世界最大の噴水があるでしょ。」

「それは、ただ、ぶわっと水が出るだけだよ。」

「年のうちのいつニューヨークにいるかが
肝心だね。」

「それについてはよく考えて、6月から
12月までにした。」


Stuard Hameroffにも挨拶する。

ブレイクが終わる。ちょうど、David Chalmers
のトーク。

いかに、どのような条件の下で、心的表象は
脳の外にも延長していくか。

Davidの話しぶりは、いつ聞いても
excitingである。


Stuart Hameroff(左)とDavid Chalmers(右)

午後のセッション。
物理のセッションに出た。

日経サイエンスの対談でご一緒した
平藤雅之さんが、量子トンネル効果に
ついて話した。

ポーランドから来たおじさんが、
不思議な魅力で聴衆を惹き付けた。


ポーランドのWlodzimierz Klonowskiさん。


科学は自由である。

それは、
満月の夜に、一斉に放出される
サンゴの卵にも似て。

6月 13, 2009 at 07:41 午前 | | コメント (18) | トラックバック (2)

2009/06/12

龍馬

「エンジン01」事務局の
椎名未明さんから、新たな
坂本龍馬写真を頂きました。


6月 12, 2009 at 09:02 午前 | | コメント (17) | トラックバック (2)

Advent of Gabriel

Advent of Gabriel

The Qualia Journal
12th June 2009

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6月 12, 2009 at 08:40 午前 | | コメント (7) | トラックバック (0)

ゆかしい

香港は、全体的に山がちの地形で、
山がそのまま海に落ち込んでいるような
ところが多い。

中心部も、建物が密集しているが、
そこから少し外れると山の森である。

ここには、ずいぶんたくさん蝶が
いるんだろうなあ。

そんなことを思いながら、タクシー
の車窓から外を眺めていた。

日本語は中国語から表記をもらっていて、
発音は心許ないが何とか読んで意味も
推定できる。

時々、微妙にずれた言い回しに出会って
にやりとする。

たとえば、「小心地滑」。

鉄道駅で最初に見つけた時、
思わず歓声を上げた。


フェリー乗り場で見つけたのは、
「行人天橋」。

夏目漱石の小説の主人公のごとく、
生きる意味を追求する人が、
やがて天の橋を歩いていく。
そんなイメージが浮かんだ。


街は密集度が高く、
建物の間を行く道も、高架になっていたり、
街中の公園も段差をうまく生かして
いたり、空間感覚がだいぶ異なる。

香港に比べたら、東京は、新宿や
渋谷でさえもずいぶん
広々としたところだったなと思えて
くる。

香港の人々の顔が好きだ。
とりわけ、年齢がある程度行っている人。

広州の温暖でのびやかな風土。
イギリスの影響。
中国への返還。

さまざまなことをくぐり抜けてきて、
実に良い表情をしている。

夕食の時に隣り会わせた香港の夫婦の
様子にもしんみりとした。

ゆかしい、という言葉が込み上げてくる。

6月 12, 2009 at 08:14 午前 | | コメント (15) | トラックバック (3)

2009/06/11

Hong Kong

Towards a science of consciousness 2009
で発表するため、本日からHong Kongに
行きます。

日曜日に帰国の予定です。

http://www.asiaconsciousness.org/TSC/

Abstract 

The contingent brain.
Ken Mogi

Charles Darwin once remarked in a letter to Asa Gray that biological systems are governed by “laws in the background” and “contingency in the details”. In the context of modern cognitive neuroscience, contingency signifies the co-existence of regularities and irregularities in the interaction of the subject with the environment. The robust handling of contingency is essential for perception and cognition, posing important problems in the maintenance and updating of body image (Sekine and Mogi 2009, Neuroreport 20, 467-472), decision making in the presence of uncertainty (Glimcher and Rustichini 2004, Science 306, 447-452). The mixture of predictable and unpredictable events makes it necessary and possible for the brain to support an open-ended learning process.
Here I discuss the significance of contingency in considering the neural correlates of consciousness (Crick and Koch 1998, Cerebral Cortex 8, 97-107). Neurophysiological evidences suggest that qualia arise from neural activities within the brain's network, in which the neural activities are often full of unpredictable noise. The "default network" (Raichle et al. 2001, PNAS 98, 676-682) may be a part of the brain's system of handling the unpredictability in a robust way. The seemingly "Platonic" perfection of qualia such as the "redness of red" from the subjective point of view is thus in a marked contrast with the reality of the physical processes in the brain. There is apparently an intriguing co-existence of regularities and irregularities, the former reflected in the phenomenology of qualia and the latter manifesting itself in the often chaotic dynamics of the neural activities. The enigma of the co-existence of the regular and irregular in the neural correlates of qualia is central to the mind-brain problem, and forms a continuous spectrum with issues concerning contingencies in cognition in general, often discussed in the functional and therefore more tractable contexts (Doya et al. eds. 2007, The Bayesian Brain, MIT Press).
Although the concept of response selectivity (i.e., the mapping between external stimuli and brain activities) is certainly useful in analyzing the single unit recording and brain imaging data, ultimately the nature of the neural correlates of consciousness is to be accounted for in terms of the mutual relationship between the neural firings in the brain (Mach's principle in perception, Mogi 1999 in Riegler and Peschl eds. Understanding Representation in the Cognitive Sciences, 127-134). The cognitive processes associated with the robust handling of regular and irregular events should similarly be characterized in terms of the internal connectivity between neural firings in the brain. The small-world network structure (Watts et al. 1998, Nature 393, 440-442) in which regular and irregular connections co-exist, provide an important constraint on the common framework bridging the neural correlates of qualia and the cognitive processes of contingency handling.

6月 11, 2009 at 06:48 午前 | | コメント (8) | トラックバック (0)

Experimentation.

Experimentation.

The Qualia Journal
11th June 2009

http://qualiajournal.blogspot.com/ 

6月 11, 2009 at 05:29 午前 | | コメント (7) | トラックバック (0)

たけむら

今年の「エンジン01」
11月27日から29日にかけて、
高知で行われる。

そのポスターとコマーシャルを
撮影するために、麹町スタジオへ。

私が坂本龍馬、勝間和代さんがおりょうに扮する。

髪をオールバックにして、髷をつける。

林真理子さんや、和田秀樹さんのヴァージョンも
撮影するとのこと。

三枝成彰さん、眞木準さん、浅葉克己さんが
いらっしゃる。


勝間和代さんのおりょうと。


坂本龍馬になってお酒を飲む。

(these "snap" photos take in the studio by Atsushi Sasaki. The official photos will be released by Engine 01 shortly)

早稲田大学国際教養学部での授業。

ヒロが相変わらずよく発言している。

ヒロ君、きみは変わり者だねえ。

神田「たけむら」。

ゼミThe Brain Clubのスペシャル版。

それぞれがA4一枚のレジュメを持ち寄り、
研究構想を発表する。

スペシャルゲストとして、
塩谷賢
池上高志の両巨頭を迎えた。

池上高志の両巨頭を迎えた。

ベルリンのASSCでの発表を立派に終えた
石川哲朗くんも成田空港から
駆けつけて参加する。


たけむらゼミ。


池上高志


塩谷賢


塩谷賢のお腹。


池上高志が出る「爆笑学問」
は、来週放送とのこと。楽しみ。

「たけむら」は、学生時代から行っている
大切な場所。

『プロセス・アイ』
の中にも登場する。

______


 「たけむら」の建物を見て、軍司が今日ツヨと千佳をここに誘った理由が判った。
 「うわぁ。雰囲気のある建物ね。こんなきれいな木造の家、私東京で初めてみたわ。」
 千佳が興奮している。
 ツヨは、窓にはめられている木の格子の間隔が狭くて繊細なのがとても好もしいと思った。
 「このあたりは、戦災で焼け残ったんだ。」
 軍司が、少し怒ったような声で言った。
 三人は、たけむらに入り、汁粉を注文した。
 塩漬けの桜の花びらが浮いたお茶を飲むと、冷えた身体が芯からあたたまるような気がした。
 「ハワイでは、いつも暖かいから、冷えた身体を中からあたためるという喜びを味わうことができない。」
 そんな意味のことをツヨは言おうとしたのだけど、舌がもつれてうまく言えず、千佳と軍司に笑われた。
 ツヨも一緒に笑って、幸せな気持ちになった。

____________


6月 11, 2009 at 05:21 午前 | | コメント (18) | トラックバック (3)

2009/06/10

Musical instruments.

Musical instruments.

The Qualia Journal
10th June 2009

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6月 10, 2009 at 06:09 午前 | | コメント (8) | トラックバック (0)

通話中

仕事に行く途中など、
明治神宮の森の中を抜ける
時間があると、それだけで
うれしくなる。

いつも代々木側から原宿側に抜ける。

歩きながら考えることは、思考のリズムに
良い。

心地良い感覚遮断となる。

思考の醸成には、完全なる感覚遮断
というよりは、むしろ適度に外からの
刺激が来ていて、それが歩行の
リズムによって整えられるという
方が望ましいと思われるのだ。



明治神宮の森。緑がエネルギーに満ち溢れていた。


NHK。

10階に上がっていって、
これまでプロフェッショナル班が
あった部屋とは逆の方向に
歩いていった。

有吉伸人さんが、「あっ、茂木さん、
こっちこっち!」
と手を上げて、部屋に
案内してくれた。



案内をする有吉伸人さん(後ろ姿)。

プロフェッショナル班は引っ越した。

末次徹さんが仕事をしている。

先日の柴田周平さんと河瀬大作さんの
送別会では、司会をしながら
涙ぐんでしまった末次さん。

今日は、にっこりと笑って仕事を
しながら、ポーズを決めた。


新しいプロフェッショナル班の部屋


ポーズを決める末次徹さん。

細田美和子デスクもさっそうと
仕事をしている。


さっそうと仕事をする細田美和子デスク

新しい打ち合わせ室は、今までのところよりも
少し広かった。

新しい打ち合わせ室

有吉さんが、新居を説明するのが
うれしくてたまらない青年のように、
あれこれと教えてくれる。

NHKを出て、歩いている時、
着信と留守電があることに気付いた。

聞いてみると、さっきの有吉さんだった。

ぼくが来た時、ちょうど電話をかけていて、
留守電モードのまま、電話をおいて
ぼくたちと話していたらしい。

「茂木さん、こちらが報道の方々です。
下の貴賓室にお連れするそうです!」

有吉さんの言っていた「貴賓室」
というのは、ソファのある会議室だった。

有吉さんは電話をそのままにして
忘れてしまったらしく、
留守電は30秒間周囲の会話や
ノイズを拾ったあと、
突然ぷつっと切れた。

あの後、電話が通話中だと有吉さんが
気付いたのは、いつのことだったの
だろうか。

6月 10, 2009 at 05:58 午前 | | コメント (11) | トラックバック (1)

2009/06/09

文明の星時間 美禰子の苦痛

サンデー毎日連載
茂木健一郎 歴史エッセイ

『文明の星時間』 第67回 美禰子の苦痛
サンデー毎日 2009年6月21日号

http://mainichi.jp/enta/book/sunday/ 

抜粋

 「苦痛」。漱石は、美禰子という女性を描く際、甘美なもののうちに感じられる苦痛について書く。苦痛こそが、三四郎にとっての美禰子の魅力の理由である。そして、苦痛こそが、『三四郎』という作品について考える際に本質的なことである。
 三四郎は、大学の美学の教師からフランスの画家グルーズの絵を見せられ、「この人のかいた女の肖像はことごとくヴォラプチュアスな表情に富んでいる」と説明を受ける。官能の歓びを表す言葉、「ヴォラプチュアス」。それで、三四郎は美禰子のことを思い出す。
 「何か訴えている。艶なるあるものを訴えている。そうしてまさしく官能に訴えている。けれども官能の骨をとおして髄に徹する訴え方である。甘いものに堪えうる程度をこえて、激しい刺激と変ずる訴え方である。甘いといわんよりは苦痛である。」
 皆で菊人形を見に行く。美禰子が群衆の中で気分が悪くなる。三四郎が心配して近づく。美禰子がものうそうに三四郎を見る。
 「その時三四郎は美禰子の二重瞼に不可思議なある意味を認めた。その意味のうちには、霊の疲れがある。肉のゆるみがある。苦痛に近き訴えがある。」
 言うまでもなく、美禰子はただ苦痛を与えるだけの存在ではない。三四郎を虜にし、さまざまな夢で満たす存在である。ところが、その甘美な印象を突きつめていくと、苦痛に出会う。漱石はなぜ、美禰子を描く時に、甘いもののうちにあえて痛みを置いたのだろうか。

全文は「サンデー毎日」でお読みください。

本連載をまとめた
『偉人たちの脳 文明の星時間』(毎日新聞社)
好評発売中!

6月 9, 2009 at 08:38 午前 | | コメント (7) | トラックバック (0)

尊重する

尊重する

プロフェッショナル日記
2009年6月9日

6月 9, 2009 at 06:33 午前 | | コメント (1) | トラックバック (0)

プロフェショナル 中村清吾 

プロフェッショナル 仕事の流儀

生によりそい、がんと闘う


~乳腺外科医・中村清吾~

中村清吾さんは、シャイである。
その恥ずかしがり屋の
表情の中に、
人間に対する深い愛情が
潜んでいる。

医療は、もちろん技術も大切
であるが、
他の分野のすべてのことと
同じように、
どのような思いを持って仕事に
向き合うか、そのような精神性の
果実でもあるのではないかと思う。

NHK総合
2009年6月9日(火)22:00〜22:49

http://www.nhk.or.jp/professional/

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6月 9, 2009 at 06:21 午前 | | コメント (11) | トラックバック (4)

The moon girl.

The moon girl.

The Qualia Journal
9th June 2009

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6月 9, 2009 at 06:15 午前 | | コメント (7) | トラックバック (0)

間接話法

昨年、日高敏隆先生といったコスタリカの
旅行記が、ようやく完成して、
集英社の鯉沼広行さんと岸尾昌子
さんに送った。

中野義樹さんの写真も掲載されて、
集英社新書ヴィジュアル版として
刊行される予定である。

ほんの一部だけご紹介すれば、
このような感じである。

_______

茂木健一郎 『熱帯の夢』(仮題)より

 朝露がその表面に周囲の広大を映し出すように、私たちの脳内現象たるクオリアは、世界のさまざまを反映する。だからこそ、意識は適応的であった。私たちは脳髄に閉ざされていて、しかも開かれている。
 世界は、容易にその秘密を明かしてはくれない。身体を一歩離れたところに始まる異界。そこには、心のうちをうかがい知れぬ他者がいる。密林の奥深くに潜む眼光がある。さまざまな色かたちを生み出す、造化の妙がある。人類が誕生するはるか以前から進行してきた、宇宙の物理的過程の悠久がある。
 「菫ほどな小さき人に生まれたし」
 突然、大好きな夏目漱石の俳句が心に浮かんだ。電撃を受けたように、ああ着地したんだ、と思った。その瞬間、コスタリカに来てから見聞きした風景が、光の奔流のように心の中で動き出した。
 路傍に咲く菫のような、小さな人でありたい。そのようにして、自分の周囲にある生きものたちの息吹を、感じていたい。技術の勝利者ではなく、足下に生える草を踏みにじる獣でもなく、ただ、熱帯の樹に着生する愛らしい蘭の花のように、自分自身を含む万物を驚きをもって見つめていたい。太陽を受け、風に吹かれ、ひそやかに息づいていたい。
 たとえ人間が発達させた文明の中では適わぬ思いだとしても、自分が生態系の中の小さな要素に過ぎず、他の万物との交感の中に投げ込まれた、小さな存在であることを実感し続けたい。
 そうすれば、私は、かつて指の間で息絶えていった可憐な蝶たちとも、懸命に葉を運び続けるハキリアリとも、川の中に潜むワニたちとも、空に輝く満天の星とも、対等の存在として映し合うことができるだろう。それが一つの永遠に果たせぬ理念であるとしても。

___________


私の本には、一字一句自分で書いているものと、
お話ししてライターの方が
書いて下さっているものがあって、
それぞれに異なる味わいがあるように
思う。

先日桑原武夫学芸賞をいただいた
『今、ここからすべての場所へ』
 
は一字一句自分で書いたものである。

『音楽の捧げもの』も、私自身が
書いた紀行文である。

文章の生理やリズムに自分なりの脈絡があって、
それが自分にとっては大切な味わい
となっている。

「脳を活かす」シリーズや、
『すべては音楽から生まれる』
などは、私がお話したことをもとに
ライターの方が書かれている。

この際の文章の生理は、厳密に言えばライターの
方のもので、私の文章とは違う。

このような点をとらえて、語り下ろし
の本を別のものとしてとらえる著者
もいる。

しかし、私は、語り下ろしはそれで
いいのだと思う。

そんなことを考えるようになったきっかけは、
実は孔子やソクラテスである。

周知の通り、彼らは自分では文章を記して
いない。

ソクラテスの行動と思想については、
弟子のプラトンが書いた。

孔子に至っては、『論語』はその死後
300年経ってまとめられたものである。

それぞれの言葉の精確なニュアンス、
調子のようなものが、どれくらい
伝わっているのか、実は私たちは知らない。

ソクラテスについて言えば、その生理は
実はプラトンとのアマルガム、
あるいはプラトンそのものであろうし、
孔子については、集団的な無意識が
反映されている側面もあるだろう。


古の聖人たちと、現代の私たちは
もちろん比較にはならないが、
直接話法でなく、間接話法を積み重ねて
いったその先にも何らかの
味わいがあると考えないと
片付かない問題が、この世にはたくさん
ある。

6月 9, 2009 at 06:11 午前 | | コメント (13) | トラックバック (2)

2009/06/08

Milk scare

Milk scare

The Qualia Journal
8th June 2009

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6月 8, 2009 at 08:38 午前 | | コメント (10) | トラックバック (0)

小乗的な修行

先日、新宿で
講談社の中田雄一さんとライターの
大場葉子さんを相手に「15歳の寺子屋」
という本の内容をお話していた時のこと。

私の人生は、大きく分けると(厳密に
分離できるわけではないが)二つの部分から
出来ていると気付いた。

一つは、小乗的なもので、とにかく自分を
高めようと修行をする部分。

もう一つは、その時々で、自分で
置かれた状況においてできるだけの
ことをしようとする部分。

前者はどちらかと言えば自律的である。
そして、後者は他律的である。


中田雄一さんは、
いつも朝日カルチャーセンターの
後の打ち上げでお話していたのだけれども、
そのお人柄の真面目な部分が初めて
胸にしみじみと迫ってきて、
私は何だか感動してしまったのだ。

人は、文脈によってその核心が変わる。


中田雄一さん

日曜日の朝からずっと机に向かって
仕事をする。
自分はやはり小乗的な修行が
好きなのだと気付く。

思えば、小学校の時からそんな風に
やってきた。

これからも、そんな風にやっていきたい。

夕方から、フジテレビの湾岸スタジオへ。

『人志松本のすべらない話 ザ・ゴールデン』
の収録。

サイコロを振って、芸人さんが話をする。
放送されたものを見ているだけでは
わからないこと。

本当に、無駄な部分がなくて、サイコロが
出ると、間髪を入れずに確信を
持って話し始める。

その能力の凄まじい高さに呆れて
見ていた。

彼らは皆、アスリートである。

笑いの迫力は、その人の
抱える闇の深さに比例する。

闇の暗さを光輝に変える「白魔術」
に長けた人だけが到達できる
面白さがある。

朝倉千代子さん、ありがとうございました。

6月 8, 2009 at 07:54 午前 | | コメント (18) | トラックバック (4)

2009/06/07

Queen of Sweetness

Queen of Sweetness

The Qualia Journal
7th June 2009

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6月 7, 2009 at 07:57 午前 | | コメント (8) | トラックバック (0)

女脳 ひらめきと勝負強さの秘密

矢内理絵子、茂木健一郎
女脳 ひらめきと勝負強さの秘密 


(講談社)

将棋の女流名人の矢内理絵子さんと
の対談本です。

大変面白く、また深い本になりました。

まとめて下さったのは、堀香織さん。


みなさん、ぜひお読み下さい!


6月 7, 2009 at 07:42 午前 | | コメント (7) | トラックバック (1)

ずっと眠っていらっしゃる

いつでもどこでも
すぐに眠れるというのは
私の特技で、子どもの頃から
それで随分助かってきた。

このところは忙しいから、
目が覚めるとすぐに仕事を始め、
すきがあるとまたたく間に
眠ってしまう、というのが
生活のリズムになってしまった。

いろいろなところで眠ってきた。

小学校の時、九州の秀和おじさんが
霧島の高千穂峰につれていって
くれた。

夜行列車で小倉を出る。

座席がぽかぽかと温かくて
眠ってしまったが、
山岳経験が豊富なおじさんに、
「座席の下に新聞紙を敷いて寝ると
いいよ」と教えてもらった。

それで、言われたように橫になった。
顔のすぐまえにシートがある。

その狭い感じが実に心地よくて、
ぐっすりと眠って目覚めたときは
もう車窓から差す日が明るかった。

西鹿児島あたりの風景がなつかしい。

十日町にある
ジェームズ・タレルの「光の館」
を訪問した時には、広々とした
廊下で眠った。

ちょうど、虫の声が聞こえる頃で、
小さな音を合わせた合唱を聴きながら、
すやすやと眠った。

同行の人たちは、部屋の中で
お酒を飲んでずっと話して
いたのではなかったかしら。

眠っている人は罪がないように
見える。

うるさい子どもも、眠りに
落ちると静かになる。

どんな大悪人も、眠っているところを
見れば許す気になる。

ファウスト第一部と第二部の間に、
ファウストが眠ることになって
いるのは、ゲーテの趣向の良さである。

理神論では、宇宙を創造した後
神は自然法則というかたちで存在
し続け、介入をすることはないけれども、
ひょっとしたら137億年前から
神様はずっと眠っていらっしゃる
のではないかしら。

6月 7, 2009 at 07:37 午前 | | コメント (24) | トラックバック (1)

2009/06/06

A double sin.

A double sin.

The Qualia Journal
6th June 2009

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6月 6, 2009 at 09:37 午前 | | コメント (12) | トラックバック (0)

はじめてのボトル・キープ

田谷文彦くんは、私と一緒に研究して、
初めて博士号を取得した「一番弟子」。

共著の本『脳とコンピュータはどう違うか』 
もある。


その田谷くんが、この度めでたく「父親」
となった。

田谷俊彦くん。2009年5月22日に
この世に生まれた。

ゼミThe Brain Clubの前に、田谷俊彦くんの写真を
田谷がスライドで見せた。

かわいい。

田谷俊彦くん、ようこそこの世界へ!


田谷俊彦くん。2009年5月22日生まれ。


ゼミの前に、関根崇泰くんが、奇妙な絵を
描いているところを見てしまったので、
実に良い清涼剤となった。


奇妙な絵を描く関根崇泰くん。


関根くんは、ゼミ中も愉快に笑っていた。


ゼミ中に笑う関根崇泰

ゼミ後、 田谷のお祝いのために
五反田の「あさり」へ。



私たちの聖地。五反田「あさり」。


田谷文彦くんと乾杯。


電通の佐々木厚さんもかけつける。



野澤真一くんと、関根崇泰くんが愉快に笑う。


談笑しているうちに、「そうだ、ボトル・キープ
をすることにしよう」
ということになった。

しかも、生後2週間の、田谷俊彦くんの
名前でやろうということになった。

おそらく、生まれて2週間で居酒屋に
ボトル・キープをするというのは、
ギネスブック・レコードなのではないか。

田谷文彦が、父親として、代理で
ボトルに名前を書いた。

本人が読めるように、「たやとしひこ」
とひらがなで書いた。


はじめてのボトル・キープ。

父親の田谷文彦くんが、「なかなかやるなあ」
とボトルを見ている。


たやとしひこ君のボトル・キープ。


なかなかやるなあ。


それから、みんなでそれぞれサインした。


私はいつものように大きな樹木を描いた。


ボトル・キープと、柳川透くんと、関根崇泰くん。

電車で帰る時に、関根が「おしっこがしたい」
と言った。

がまんしている顔はどういう顔だ、
と聞いたら、「こんな顔です」とやって見せた。

電車の中でカメラを取り出すことが
できず、その時の関根の表情をお見せできない
のが残念ですが、確かに何かを我慢している
ような顔でした。

6月 6, 2009 at 08:03 午前 | | コメント (23) | トラックバック (3)

2009/06/05

ぶーんと手を広げて

二週間くらい前から、有吉伸人さんは
「オレは絶対に泣いてしまうかも
しれない」と言っていた。

『プロフェッショナル 仕事の流儀』
でデスクをしてきた河瀬大作さん、柴田周平さん。

お二人が、チーフプロデューサー(CP)に昇進
されて、それぞれ班を離れる。

柴田周平さんは故郷の弘前に近い盛岡放送局に
赴き、番組を制作するとともに盛岡に
配属される若いディレクターたちを
指導する。

河瀬大作さんは、『クローズアップ現代』
の制作に関わる。

柴田さん、河瀬さんとも、若い時から
先輩だった有吉伸人さんと一緒に
歩んできた。

だから、一人立ちしてCPになって
いく今、三人の胸には熱い思いが
去来する。

乾杯の音頭は、住吉美紀さん。

話し初めていきなり、住吉さんが
「もうダメ」と号泣する。

それで、みんなびっくりしてしまって、
しんみりして、ぼくの橫で末次徹ディレクター
が足下を見つめた。

末次さんは幹事だが、やはり、最初の
挨拶で涙ぐんでしまった。

柴田周平さんが「お前、泣くなよ」と
橫から声をかけている。

乾杯した後、有吉伸人さんが
すごい勢いでぐいぐいとお酒を飲む。

「有吉さん、どうしたんですか?」
と聞くと、「泣かないように、今日は
早めに酔ってしまおうと思って」と有吉さん。

有吉さんが、河瀬大作さんの橫に
座って話している。

少し離れた暗がりの中で、ぼくは本間一成
ディレクターと話している。

本間さんが、私に熱い思いを語る。

「有吉さんは、ドキュメンタリーの伝統を
伝えていこうと、本当にがんばっているんですよ。
ぼくも、河瀬さんや柴田さんのような先輩を
見習って、がんばっていきたいと思います。
有吉さんに対する本当の恩返しは、ぼくらの
誰かが、有吉さんを超えることだと
思うんです。。。。
茂木さん、まじめな話をしてしまって、
もうわけありませんでした!」

本間さんと乾杯する。

柴田周平さん、河瀬大作さんの
「仕事の流儀」を紹介する特別版
ビデオが上演される。

若き日の河瀬大作さん。
初々しい姿で、番組中で解説を話している。

柴田周平さんにとって、
あこがれの先輩だった有吉伸人さん。

サンタクロース姿の有吉さんの橫で、若い
柴田さんが笑っている。

河瀬さんと柴田さんの職業は、「デスク」。

これからはCPという名の、生き方がある。

「プロフェッショナル」のゲストに出て
下さった星野佳路さん、木村秋則さん、
中村好文さん、番組のナレーションを
している橋本さとしさんから
お祝いのメッセージが。


解説をする若き河瀬大作さん



若き柴田周平さんと、サンタクロース有吉伸人さん



職業「デスク」。


CPという名の、生き方がある。


橋本さとしさんからのお祝い


パーティーは続く。
いろいろな人が思いを述べたり、
泣いたり、笑いが起こったり。

有吉さんは、あいさつの間はがんばって
泣かないでいてそれから、
椅子に座ったあと、じっとりと目の辺りを
にじませていた。


有吉伸人さん


柴田周平さん


河瀬大作さん


みな別れを惜しむ。


談笑の花が咲く。


番組が始まった頃、河瀬大作さんと、私、
それに小池耕自さんの三人で「極悪三人兄弟」
と名乗っていたことがあった。

小池さんが、「時は過ぎゆきますねえ」
といつになくしんみりとしているので、
僕は、「人生というものは、生前葬をしているような
ものですねえ」と言った。


小池耕自さん


日付も変わる。お別れの時。

住吉美紀さんの姿は、いつの間にか消えていた。

細田美和子さんが、「すみきち、別れの雰囲気が、
もう耐えられなくなってしまったのね。」
と言った。


細田美和子さん、河瀬大作さん、赤上亮さん

僕と柴田周平さん、河瀬大作さんで
写真を撮った。

そうしたら、有吉さんがぶーんと手を広げて
ジャンプしてきた。

有吉さんの体重が、ぼくと、有吉さんのかけがえの
ない後輩二人の腕にかかった。

それが、その夜の最後の感触。


柴田周平さん、河瀬大作さんと。


柴田周平さん、河瀬大作さん、有吉伸人さんと。

6月 5, 2009 at 08:30 午前 | | コメント (22) | トラックバック (4)

2009/06/04

Pain.

Pain.

The Qualia Journal
4th June 2009

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6月 4, 2009 at 08:13 午前 | | コメント (6) | トラックバック (0)

オバマ大統領に言ったのだろうか

リーガロイヤルホテル。

廣済堂出版の川崎優子さん、
井上智陽
ライターの山本信幸さんで
打ち合わせ。「アウェー」について。

井上は、ずっとスケッチを
している。
川崎さんの目は、時折潤んで
いるように見える。
山本さんは、時折的確な
発言をはさみながら、こんがりと
焼けたトーストのように泰然と
している。

早稲田大学国際教養学部の授業。
三番目くらいに座っている
ミナさんと、一番前に座っている
ヒロフミくんが積極的に
発言。


すみだトリフォニーホール。

中村紘子さんのピアノによる
矢代秋雄作曲のピアノ協奏曲、
それに下野竜也さんの指揮、読売交響楽団の
演奏によるシューマン 交響曲第4番を聴く。


深夜の音楽会 
のプロデューサー、古野千秋さんがお招き
下さった。


難しい現代曲だったが、中村さんは
暗譜で弾いた。

温かい安定性に満ちた演奏。

ひだの一つひとつに、精神の光が
届くように。

前半終了後、楽屋に
中村紘子さんを訪問する。

庄司薫さんもいらっしゃる。

後半のシューマンのシンフォニーの
レクチャーコンサート。

下野さんの指揮は情熱に満ちていて、
まるで音楽の精神がマグマとなって
吹き出しているかのようだった。



中村紘子さんと。すみだトリフォニーホール楽屋にて。
(Photo by Tomio Takizawa)


古野さんのアレンジで、近日中に、
中村さんと対談させていただく予定。


一日中、バラク・オバマ大統領のTシャツを着て
歩き回っていた。

面白いことがあった。

タクシーを降りようとした時のこと。

運転手さんがふり返って、お釣りを
渡そうとして思わず「はっ」とした。

どうやら、私のTシャツの胸の
オバマ大統領の顔に気付いたらしい。

それから、運転手さんの言葉使いが
何となく丁寧になって、
「お疲れさまでした」と
送り出された。

あれは、オバマ大統領に言ったのだろうか。

6月 4, 2009 at 07:43 午前 | | コメント (19) | トラックバック (3)

黒田恭一さん

黒田恭一さんの突然の訃報に驚き、
深い悲しみの思いが込み上げます。

ご自宅を訪問し、たくさんの
レコードがある部屋で音楽の
お話をうかがった時の、
やさしく愛に満ちたご様子が
思い出されます。


ここに、黒田恭一さんを偲び、
心からご冥福をお祈りいたします。

茂木健一郎


2008年7月16日 黒田恭一さんと。黒田さんのご自宅にて。

6月 4, 2009 at 07:43 午前 | | コメント (12) | トラックバック (2)

2009/06/03

Cup noodles in the van seat.

Cup noodles in the van seat.

The Qualia Journal
3rd June 2009

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6月 3, 2009 at 08:57 午前 | | コメント (7) | トラックバック (0)

適応とか、適応じゃないとか


学習ということを、所与条件
の下での「最適化」ということ
ではなく、
進化における突然変異と、
その有機的組織化として
考えた場合、とにかく起こって
しまった変異は何とか
取り込まれてしまうのに違いない。

遺伝子の変化は、それが適応的
であるかどうかにかかわりなく、
ある組織的形態に結実する。

同じことは認識のメカニズムにも
あるだろう。

枯れ尾花をお化けと思ってしまうのは、
そういう変化が神経回路に起こって
しまったんだから、仕方がない。

組織体は、それを取り入れ、
進んでいくしかない。

アインシュタインがティーンエージャー
のときに見た、光を光のスピード
で追いかけるというヴィジョンも
同じことではないか。

起こってしまったことは、
そのあとの人生でそれを受け入れて
自ら変化していくしかない。

適応とか、適応じゃないとか、
そうことは後から判ることだ。

______

 脚を切断してしまった人が、時々、なくなっている足の先のかゆみや痛みを感じることがあるそうである。
 総入れ歯をした人が、どうかすると、その歯がずきずきうずくように感じることもあるそうである。
 こういう話を聞きながら、私はふと、出家遁世の人の心を想いみた。
 生命のある限り、世を捨てるということは、とてもできそうに思われない。

寺田寅彦『柿の種』

______

PHP研究所。インターネットを用いた学習法について。

デジタルラジオの収録。海豪うるるさん。

佐藤ゆかりさんの会で「脳と決断力」について話す。

NHKの樺沢泉さんから
メールをいただいた。

From: "樺沢 泉"
To: "茂木健一郎先生"
Date: Tue, 02 Jun 2009
Subject: 収録お疲れ様でした(写真付)【NHK樺沢】


茂木さま


本日のデジタルラジオ「脳力のヒミツ!」の収録
ありがとうございました。

2回目の収録がいきなり外部キッチンスタジオ!?
ということもあり、少々の不安もありましたが、
海豪さんとの息もバッチリで、今回も楽しい収録を
させていただくことができました。

チャーハンの食材を探るくだりでは、すばらしい演技!?
今後の演出にも、是非加味して参りたいと存じます。

おもいきってロケに出て本当に良かったと思いました。
ありがとうございました。

樺沢泉


デジタルラジオの収録現場にて。 

6月 3, 2009 at 07:33 午前 | | コメント (16) | トラックバック (3)

2009/06/02

プロフェショナル 木内博一

プロフェッショナル 仕事の流儀

誇りと夢は、自らつかめ

~農業経営者・木内博一~

木内さんたちは、農業の現場感覚
に基づくさまざまな工夫を
積み重ね、付加価値をつける。

そのことによって、農業の
輝きを増す。

ものごとを一番良く知っている
人たちが、そのことについての
はかりごとをする。

これは、忘れてはいけないこの
世の習いではないか。

仲間たちと、硬い結束で結ばれた
木内さんたちの仕事ぶり。

最後はすべてが「コミュニティ」
に還っていくのだということを
思い起こさせる。

信ずるに足る
コミュニティを作ること。
それは、
すべての知の集大成である。


NHK総合
2009年6月2日(火)22:00〜22:49

http://www.nhk.or.jp/professional/

すみきち&スタッフブログ

Nikkei BP online 記事(produced and written by 渡辺和博(日経BP))

6月 2, 2009 at 07:28 午前 | | コメント (13) | トラックバック (5)

文明の星時間 西田学派

サンデー毎日連載
茂木健一郎 歴史エッセイ

『文明の星時間』 第66回 西田学派
サンデー毎日 2009年6月14日号

http://mainichi.jp/enta/book/sunday/ 

抜粋

 西田幾多郎は、西洋哲学についての深い学識を持っていた。その一方で、自らの参禅の体験にも裏打ちされたかたちで仏教思想にも造詣が深かった。西田は、東西の思想を深いところで融合しようとしたのである。
 「たとえば、色を見、音を聞く刹那、未だこれが外物の作用であるとか、我がこれを感じているとかいうような考のないのみならず、この色、この音は何であるという判断すら加わらない前をいうのである。」
 主著『善の研究』の中で、西田哲学の中心的な概念の一つである「純粋経験」について、西田はこのように書く。座禅する時、人は自然に自分の意識の在りよう自体に注意を向ける。そのような時間の中で、感覚を通してとらえられる周囲のありさまをただ機能的に割り切っている日常の状態から、経験それ自体の持つ意味へと目を開かされていく。 

全文は「サンデー毎日」でお読みください。

本連載をまとめた
『偉人たちの脳 文明の星時間』(毎日新聞社)
好評発売中!

6月 2, 2009 at 07:18 午前 | | コメント (5) | トラックバック (1)

君子、固より窮す。

 総務省。
ICTビジョン懇談会。

 野村総研の村上輝康さんや、
一橋大学の米倉誠一郎さんとお話する。

 座長の岡素之さんが、鳩山邦夫総務大臣に
報告書を手渡す。


 ソニーコンピュータサイエンス研究所

 所眞理雄さん、北野宏明さんと議論する。

 関根崇泰と、コンビニに行きながら
いろいろと話す。

 田谷文彦と立ち話。

 田谷くんは、とてもおめでたい
ことがあった。
 おめでとう!

 井上靖の『孔子』から。

 孔子の一行が旅をしていて、
ある場所で荷物を奪われ、
餓死寸前に追い込まれる。

 子路が、孔子に向って、
投げつけるように「君子も窮する
ことがありますか。」と尋ねる。

 孔子ともあろう人が飢えている
ことが、悲しく、腹立たしい。

 そてれに対して、孔子は、
「君子、固(もと)より窮す。」
と答える。それから、
 「小人、窮すれば、斯(ここ)に濫(みだ)る!」
と付け加える。

 それを聞いた子路は、感激する。
 「この詞を師に口から出して頂いた
ことを思えば、飢餓が何であろう、餓死が
何であろう。」
 
 飢えたればこそ、師からこのすばらしい
詞を聞くことができた、と顔回は心を
動かされる。
 
 春秋時代の諸国を弟子たちと
移動しながらいかに生きるべきかを
模索した孔子。

 その孔子に惹き付けられる井上靖
さんの心情が伝わってくる。

 物語という仮想が硬い歴史的現実に
転ずるかに見える、
 そんなスリリングな瞬間。

 『孔子』は井上靖さん最後の長編。

 満八十歳から八十二歳にかけて『新潮』
に連載された。

6月 2, 2009 at 07:13 午前 | | コメント (11) | トラックバック (3)

2009/06/01

写真なんかには残ってはいない

木村秋則さんのお話が
走馬燈のようにまだぐるぐると
回っている。

無農薬のリンゴなどに挑戦して
しまったから、周囲からいかに
「迫害」されたか。

どれほど、つらい立場に追い込まれたか。

想像してみると、ありありと感じられる。

それでも、木村さんを支えてくれる
温かい人たちがいた。

人間なんて、信じられない。
それでも、人間を信じることが
できる。

名古屋。

東海テレビの番組にお邪魔し、
東海ラジオの収録をする。

内藤剛志さんはとても素敵な
人だった。

小林秀雄の講演について
エレベーターの中で話した。

上田定行さん、青山紀子
さんの「サンデー・イン・ザ・パーク」。

お二人の掛け合いに、心の
芯が踊り出した。

名古屋の街のまだ行ったことのない場所を
歩く。

観音の近くに、古墳があった。


カメラのメモリーとの
接触がおかしくなって、使えない。

心眼で見る。それで思った。

子どもの頃見た風景の数々。
あの頃、カメラなんて持ち歩いては
しなかった。

仲間たちとメンコをする公園の一角。

メンコがうまく風で返るように、
足を突き出して壁にしたり。

「先祖代々」と名前のついた
古ぼけたメンコにあこがれたり。

ジャングルジムの上にいて、
下からボールを当てっこしたり。

あの頃の風や光や表情は、
この脳髄の中に確かに刻まれて
いるけれども、
写真なんかには残ってはいない。

思い出す。ただそれだけで。

退屈など、あり得ない。
いつまでも、脳の中であれこれと
ぐるぐる回すことができる。

夜。トイレに座って、
井上靖の『孔子』を読んだ。

6月 1, 2009 at 08:28 午前 | | コメント (30) | トラックバック (2)