東京工業大学すずかけ台キャンパス。
柳川透君の、博士論文最終試験。
柳川くんは、自分が今までやってきた
研究をまとめた後、
今後の展開も熱く語って、
立派にプレゼンテーションを終えた。
その後審査となり、見事「合格」
の判定。
柳川君は、専攻会議や教授会を
経て博士(学術)になることが内定した。
柳川君、おめでとう!
博士になるまではとても長く大変な
道のりだけれども、達成した時の
よろこびも大きい。
試験が終わった後、柳川くんと硬く
握手する。

柳川透博士、おめでとう!
石川哲朗くんが、会場の設営など、
いろいろ手伝ってくれた。
柳川が、「石川、ありがとう!」
と後輩と熱い握手を交わす。

石川哲朗くんと熱い握手を交わす柳川透くん
試験会場のあったG3棟を出ようとしたら、
ガラスの向こうにシルエットが見えた。
何となく、野澤真一かな、と思って、
玄関を出て、振り向きながら歩いて
いたら、バランスを崩して
ドテン! と派手に倒れた。
痛い!
先日走っていて派手にひねって痛めた
右足は、歩く分には問題なく、走る時も
ほぼ大丈夫なまでに回復していたが、
その右足に力が加わってしまった。
「くそっ! 痛いなあ!」
と大声で叫んだ。
野澤真一ではない、男子学生がびっくり
してこちらを見ている。
ドリフのコントみたいだと思ったかもしれない。
出口からの道が、少しスロープがついて
いて、ふり返りながら歩いたので気付かずに
その微妙な傾斜の差で転んでしまったのである。
教訓。
あっ、野澤真一がいると思っても、そっちを
振り向きながら歩いてはいけません。
早稲田大学。国際教養学部での授業。
NHK。
「デジタルラジオ」の収録。
白洲信哉と、あれこれと喋る。
何しろ信哉は予定調和とは程遠い人間だから、
どうなるかとはらはらしたが、
むしろそれが面白い感じになって、
実に楽しく話すことができた。
最後の方で、信哉の印象を
「高貴なる野蛮さっていう感じかなあ」
と評したら、「高貴というのはわかりませんけどね」
と言って照れている。
「だって、ただ野蛮って言ったら悪いかな、
と思って、高貴ってつけたんだよ。」
と言ったら、信哉は、
「確かに、ただの乱暴者、ということに
なるかな」
と言って笑った。

NHKラジオセンターにて。白洲信哉と。
あばれ馬を御そうとあれこれと頑張っている
うちに、こちらもいつの間にか一緒に
踊っていた。そんな感じ。
ディレクターの樺沢泉さんも、「いやあ、面白かった
ですねえ」と満足されていた。
信哉は車で来ているというので、ちょっと遅れて
玄関を出てみると、アルファロメオ
にもうちょこんと乗っている。
電通の佐々木厚さんが、後部座席に座っていたので、
私は助手席に座った。
急ぎの仕事があったので、さっそく
始めようとしたが、アルファロメオは
加速が力強く、しかも信哉の運転は
乱暴というか大胆と来ているからG
がかかる。
「おい、乱暴だなあ」
と言うと、信哉は「ヘヘヘヘヘ」と
笑っている。


(高貴なる)野蛮。アルファロメオを運転中の白洲信哉。
信哉のお母様の白洲明子さんから、
事前に、「信哉のところに行く前に
ちょっと寄ってください」と言われていた。
信哉が、アルファロメオをブロロロロと
音を立てて入れたので、「あっ、来た」
と思われたらしい。
ドアをノックすると、もう向こうに
明子さんがいらした。
愛犬のテスが、くるくると回る。
「茂木さん、桑原武夫賞、おめでとう!」
と明子さん。
「ありがとうございます。」
「これ、副賞。」
明子さんが、「金メダル」を手渡してくれた。
「これはね、小林がギリシャから買って
きたコインに、日本で周りに金をつけた
ものなの。茂木さんだったら、こうやって
エリのところにとめられるでしょ。」
片方に鳥が描かれ、もう片方には
ライオンが描かれている。
繊細な模様が、確かな技量で浮き出されている。
大切なものをくださるその温かいお気持ちが
とてもうれしく、
「ありがとうございます」と頭を下げる。
熊谷守一の「喜雨」を預かる。
私が好きだというので、いつも信哉がかけて
くれる軸である。
金メダルを首にかけ、「喜雨」を持って
信哉のいる3Fに上がる。
飛鳥新社で、白洲信哉の本をつくるという。
今回は、祖父母である
白洲次郎や白洲正子、小林秀雄のことというよりも、
自分自身のことが中心となるのだという。
「信哉のスタイル」のようなもの。
その本の中に収録する対談を録るために、
今回はお邪魔した。
信哉が私をおもてなしするという趣向らしい。
まずは帯に使う写真を撮るという。
私はベートーベン風、信哉はモーツァルト風な
表情を決めろという。
仰せの通り、ベートーベンがペンを持つ
有名な肖像がの真似をして、ぐいとにらみつけた。

お手本の肖像画。
原稿用紙と万年筆を持つ。
何か書かないとかたちにならないので、
白洲信哉についての作文を書いた。

撮影中に書いた、白洲信哉についての作文。
私に続いて、今度は信哉がモーツァルトの
真似をしている。

モーツァルトを決める白洲信哉。
あれは何年前だったか、私が、信哉は
モーツァルトの有名な肖像画に似ている、
と言ったら、信哉は「そんなことはないでしょう」と否定した。

モーツァルトの有名な肖像画。
ところが、その後、信哉はザルツブルクに旅行
した折、件の肖像画の絵はがきを30枚買って
来たのである。
正確に言えば、店にあったものを全部買って
来たのである。
対談。
信哉が用意してくれた鯛、ハモ、そして
三つ葉と螢イカのしゃぶしゃぶを賞味
しながら、あれこれと喋る。
佐々木厚さんが、「これはうまい!」
と叫ぶ。
新鮮な螢イカ。湯を通して口に含むと、
天上のクリームのように甘美なものが
内側から沁みだして、恍惚とする。
「こんな螢イカないでしょ」信哉が
自慢する。
いくら自慢しても良い。本当においしい。
そして、手を尽くしてそのようなもてなしを
用意してくれる、信哉の厚情に感謝する。

懇談する佐々木厚さんと、白洲信哉さん
「喜雨」といい、いつも使わせてくれるお猪口
といい、信哉の酒席は本当に気持ちがいい。
ありがとう。信哉。
このお猪口は、信哉が初めて自分で買ったもの
だという。唐津。
「うちの母親は九州だから、唐津がなつかしい
気持ちになるのはそのせいかもしれない。」
「小倉じゃなかったっけ?
「いや、もっと遡ると、唐津とか、あっちの
方かもしれない。旧姓は牟田口っていうんだ。」
「おや、牟田口という窯があったような気がする
けど。」

熊谷守一の「喜雨」に見入る。

白洲信哉愛蔵の唐津
白洲明子さん、それに信哉の妹の白洲千代子
さんが上がってきて加わる。

白洲信哉、白洲明子さん、白洲千代子さんと
白洲千代子さんは本当に美しい宝飾品をつくる。
今銀座の「ギャラリー悠玄」で展覧会「白洲千代子の世界」
が開かれている。
5月26日まで。
みなさん、ぜひお出かけください!
http://www.msmsorange.com/cgibin/s_news/s_news.cgi
談笑しているのを聞きながら、
明子さんにいただいた「金メダル」を
つくづく眺めると、本当にきれい。

白洲明子さんにいただいた「金メダル」
柳川君は博士になったし、私は「金メダル」を
いただいたし、素敵な良い一日でした。
何よりも、温かい気持ちに包まれながら。
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