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2009/04/18

何で、ウィーンにいるんですか

ベルリンからウィーンへ。

街の中に入っていった時、
ここはやはりドイツ語文化圏における
「パリ」だなと思った。

数年ぶりの来訪。

馴染みの場所を確かめるように。

シュテファン寺院。

ホテル「ハンガリーの王」

カフェ・ハヴェルカ。


シュテファン寺院


ホテル「ハンガリーの王」


ホテル「ハンガリーの王」内部。


カフェ・ハヴェルカ

 カフェ・ハヴェルカは、
『プロセス・アイ』 

の第5章に次のように出てくる。
 (小説中では、名前が、「ハルヴェカ」と変更
されている。)

 ウィーンの名物カフェ、ハルヴェカの女主人の目は、何事も見逃さない。
 メインストリートから細い路地を横に入ると、「カサノヴァ」という名前のナイトクラブの風車の形をした赤いイルミネーションが見えてくる。カフェ・ハルヴェカは、このナイトクラブの隣に、気が付かないで通り過ぎてしまうくらいひっそりと店を開いている。小さな入り口から入ると、中には思いも寄らないほど広大な空間が広がっている。夜になると、あちらこちらの小さな電燈に照らし出された、ほの暗い空間の中に人々が座ってそれぞれの時を刻んでいる。カフェ・ハルヴェカは、ウィーンの劇場関係者、作家、ジャーナリストが集まる場所として知られていた。
 女主人は、その日本人が、もう一週間も毎日同じ時間にカフェに来ていることに気が付いていた。
 その男は、いつも同じ、黒いセーターに、青いズボンで現われた。
 店に入る時には、サングラスをかけている。店に入ると店の奥にまっしぐらに突き進む。そして、店の壁際の椅子に壁を背にして座る。
 サングラスを外すと、辺りをうかがうような目で、店の様子を見渡す。 
 そして、手を上げ、ウェイターを呼ぶ。
 黙ってメニューの上の「カフェ・メレンゲ」を指差す。
 ウェイターが話し掛けると、唇をぎゅっと閉じたまま、自分の咽の辺りを指差して、それから微笑した。
 どうやら、
「私は話すことができない」
そう言っているようだった。
 ウェイターが去ると、おもむろに持参したリュックサックを開け、そこから、オレンジ色と白の斑の色の、貝殻のような形のノートブック・コンピュータを取り出す。
 そして、何やら、仕事を始める。
 一度仕事を始めると、男の表情から神経質そうな、辺りをうかがうような様子は消え、周囲のことを気にもとめずに、仕事に没入している様子だった。ウェイターが「カフェ・メレンゲ」をもってきても、軽くうなづくだけだった。時々、思い出したように仕事の手をやめ、周囲をうかがうような目で店の中を見渡した。
 女主人は、常連客と言葉を話しながら、油断のない目でその男を観察し続けた。カフェ・ハルヴェカを常連客にとって気持ちの良い場所にするためには、そこに出入りする人間が、どのような場を回りにつくり出しているか、観察している必要があるからだ。
 観察の結果、男は、カフェ・ハルヴェカにとって、無害な客であると判断された。それどころか、インテリや芸術家が集まり、議論を交わす場という、カフェ・ハルヴェカの理想像に沿った客であり、歓迎すべきだという結論に達した。

 かつて強い印象を与えた女主人の姿は
いなかった。

 女主人はいなかったが、有吉伸人
さんそっくりの人はいた。

 「何で、ウィーンにいるんですか、
有吉さん!」
と思わず声をかけたくなった。

 その人の様子を見ていると、まるで
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の打ち合わせをしているような気分に
なってくる。


ハフェ・ハヴェルカにいた「有吉伸人」さん。
(右側)

 ウィーン楽友協会ホールに入る。

 とても愛らしい、クラッシック音楽の聖地。

 木肌の気配に包まれることも、その魅力の
一つであろう。

 夕刻。ウィーン国立歌劇場
(シュターツオパー)にて、
ロッシーニの『アルジェのイタリア女』を
観賞。

 以前、シュターツオパーに来た時には、
いつも立ち席(シュテープラーツ)
であった。

 黒い服に着飾った上品な婦人が、
「こうやって手すりに自分のスカーフや
ハンカチを縛っておくのよ」
と教えてくれた。

 その時の演目は、リヒャルト・シュトラウスの
『エレクトラ』。

 奇才ハリー・クプファー演出の凄まじい
舞台で、今でも忘れられない。

 ロッシーニの『アルジェのイタリア女』
は番号付きのオペラ・ブッファ。

 オペラが跳ねて、夜の街を歩く。

 少し涼しくなった風が心地よい。


ウィーン楽友協会ホールにて。


シュターツオパーにて。

4月 18, 2009 at 02:24 午後 |

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コメント

やはり、茂木健一郎様だったのですね!

私は今ロータリークラブでウィーンに留学しています。

ウィーン楽友協会のオーケストラのリハーサル演奏の会場であなたを見かけました。席も近かったので驚きました。

黄金ホールはほかのホールに比べてやはり音響が格段に違うと思いませんか?

1曲目はハイドンでしたね?今年が生誕200年だからでしょうか?


お会いできて幸せな1日となりました!

投稿: | 2009/04/19 2:52:20

昨日「偉人たちの脳」を近所の本屋に買いに行ったら置いてなくて
よく利用するセブンアンドワイでネット注文しようとしたら
「売り切れ、在庫なし」!! 
それで今、関東の片田舎の、半分は文房具屋の本屋にもあった
「すべては音楽から生まれる」を読んでいます。
その中にウィーンの国立歌劇場の立見席で観た
エレクトラのエピソードがあって、
いいお話しだなぁと思いました。

夏締め切りの映画シナリオのコンペティションと
自然エネルギーの研究者支援のための資料報告が待ったなしですが
ハナミズキが見頃になり
藤も咲き始めて、そわそわそわそわ…

投稿: | 2009/04/18 21:30:00

今晩は。やっと日記がアップされて嬉しいです。

ウィーンに有吉さんの“そっくりさん”がいらっしゃったなんて、日本から遠く離れた場所なのに、不思議なこともあるものなんですね…!

ご掲載の写真を眺めるだけでも、ウィーンという都市(まち)の美しさが伝わってくる。

シュテファン寺院のモザイクのような屋根がまず印象に残った。

楽友協会ホールの座席に座っておられる茂木さん、なかなかにサマになってると思います…!(微笑)

観客席の床が木のモザイクになっている所に、ぬくもりというか温かみを感じます。

嗚呼、死ぬ前に1度で良いから、ウィーンの街並みを歩いて見たいなぁ。そして本物のオペレッタを是非、シュテープラーツ状態で構わないから、我が生身の耳で聴いてみたい…(無理なのかなァ)。

個人的には、この都市に花咲き、そして残されたクリムトやエゴン・シーレなどの「世紀末」藝術やその時代の建築を、肉眼で見てみたいと思う。


ともかく、茂木さんの“春休み”(…なのかなぁ?)は沢山の『素晴らしいもの』たちの出会いに満ちているなぁ、と思う。

ベルリンといい、ウィーンもそうだけれど…歴史の軌跡を消さずに残しておいている都市は、何処もそこならではの美しさがある(日本においては京都とか奈良なんかがそれにあたるかもしれないが、如何もこっちは“開発”がかなり進みすぎているような気がしてならない)。

きょうも半日仕事が退けて、東京の屋根の下をぐるぐる歩いた。

それなりに、世界の産物には出会えるけれど、そこで、産物の生まれ故郷に行った気になるだけでは、やっぱり物足りない感じがする。

ここ数日の日記を拝見していると、独逸的なものがやっぱり好きな自分がいるのに気付く。

何時行けるか分からないが、死ぬ前に1度は、本当にベルリンやウィーンなどを旅してみたい、と常に願う。

投稿: 銀鏡反応 | 2009/04/18 21:04:27

ウィーンにいるなんて、とっても素敵ですね!!

私はハプスブルク家やエリザベート皇妃、カフェ文化などに興味があるので、ウィーンは憧れの街の一つなんです。

ところで先程、茂木さんの『感動する脳』を読み、とても勇気付けられました。

自分はダメな人間だと決めつけるなんて、そんなのモッタイナイ!もっと自分を信じよう。。。

そう思えるようになりました。「感動」した一冊でしたo(^-^)o

明日は、『赤毛のアンに学ぶ幸福になる方法』を読むつもりです♪

それから茂木さん出演の『ミューズの晩餐』、楽しみにしています☆

投稿: | 2009/04/18 20:54:51

茂木さん、何日か前の日記にイメージとして「頭で弾くベルリン、
ハートのウィーン」とだなたかがおっしゃった言葉が書かれていま
したが、そんな優しい感じが伝わってまいります。

「ドイツ語文化圏におけるパリ」という表現もわかりやすく響きます。

よく日本でも「小京都」と言われますが、そんなたとえと同じような
ことですね?!

ホテル「ハンガリーの王」は、シックでかわいらしいイメージがあり
ますが・・・。
ダーク・ブラウンのカラーとソファーのかわいらしいファブリックが
ミス・マッチ=うまく調和がとれていて、素敵です!

ヨーロッパのホテルは、アメリカよりもお部屋がこじんまりとした
イメージがありますが、フレスコ画があったり、天蓋付きのベッド
が置いてあったり・・・王子様とお姫様が出てきそうなお部屋もあ
り、素敵なイメージがあります。(^^♪

茂木さんは、オペラ三昧の休日を過ごされて毎日、至福の時を味わ
っていらっしゃるのでしょう!
お幸せですねー。(^.^)

どうぞお気をつけて、十分に堪能されて、元気にお帰りください。

では。(*^。^*)

投稿: | 2009/04/18 20:23:45

ウィーン 行ってみたいなぁー!!!!

ウィーン楽友協会ホールの緩やかな床の傾斜と、
飾りっ気が少ないところが素敵です。
掃除しやすそうです!(^^)!

カフェ・ハヴェルカの有吉さん、顔のボリューム感など良く似てます!

シュターツオバーは黄金色と赤で華やかな場所ですね。
茂木さんの蝶ネクタイが一層気分を引き立てますねぇ!
私も音楽会に合わせて着飾って聴きに行きたい!!
次の機会はそうします!
その方が楽しいハズです!

今日、渋谷駅で茂木さんが表紙の『THE BIG ISSUE』を掲げているベンダーを見かけて、「それが欲しい」って言って買いました。
「これはね、もうSOLD OUTなんだけど、まだ2冊ならあるから」とオヤジさんは言っていました。
「(そんな貴重な号を)あざーす!(=ありがとうございます)」と言って立ち去ると、
「ちょっとちょっと、これこれ、」って引きとめられ、
earthday money credit 50r という水色の券を一枚くれました。
切符くらいの大きさです。
この通貨は渋谷が発祥地で、"r"という単位は"春の小川"のriverから来ているとホームページに書いてありました。
「また茂木さんと繋がった!」って思って嬉しく感じました。

…! 今、ラジオを『world air current』を聴いていましたら!
茂木さん、葉加瀬さんとの対談ってこの番組だったのですね!
おお~\(♯~~♯)/✷✧✶⋆✫✷―♫♩♬✿
来週が待ち遠しいです!!!!

ではでは、素敵な滞在を!!!!

投稿: | 2009/04/18 20:07:51

こんにちは

> 「何で、ウィーンにいるんですか、
有吉さん!」
と思わず声をかけたくなった。

有吉さんの遠い祖先の末裔かも?(^^)

写真、「ウィーン楽友協会ホールにて。」、「シュターツオパーにて。」を見て、TVの取材ですか?、番組でウィーンの様子と有吉さんが見れるのを楽しみにしております。(^^)

投稿: | 2009/04/18 17:47:15

私も、以前は立ち見席で見ておりました。
長すぎる拍手を仕切るオペラ慣れした常連風おばちゃまが印象的でした。
しかし、なんと言っても、オーケストラピットからのシルクタッチの生音(なまおと)が忘れられません。
音を肌の感触として感じた、衝撃的な出来事でした。
ウィーンの街は、懐かしむだけで、幸せになります。

投稿: | 2009/04/18 16:15:03

茂木健一郎様

日本は新緑が萌えてとっても心地よい陽気です。

茂木さんにとって大事な時間を過ごしておられること
がひしひしと伝わってまいります。
存分に堪能してらしてくださいませね。

ヨーロッパを、バスや列車でまわったことがあるのですが
シュテファン寺院が視界にはいってきたときの、めぐった
ときの激しいほどの輝き、すべてに、初めての慶びを感じた
記憶が蘇ります。モーツアルトの結婚式もこの寺院でおこな
われたのではなかったでしょうか。
それから、ウィーンのチョコレートも美味しかったことも
想い出します。
茂木先生、このご旅行は御本や番組になるのでしょうか?
広報で、あちらこちらで塾のようなことされてください
ませんでしょうか?
いなかに暮らすもののためにもお願いいたします^^

ふと思ったのですが、歌舞伎はJapanese operaと言える
のでしょうか?

なぜか、茂木さんはオーストリアだと思いました。

投稿: Yoshiko.T | 2009/04/18 16:01:39

茂木健一郎さま

ムジークフェラインでのお写真

びっくりな事実

ムジークフェラインで!
超越されてます茂木健一郎さまは本質を。

投稿: | 2009/04/18 14:55:56

茂木健一郎さま

凄すぎの極みです

あえて

有り得ない事実の展開

ザルツブルク

ベルリン

ウイーン


カラヤンそのものの軌跡を茂木健一郎さまは具現化

凄すぎです。

投稿: | 2009/04/18 14:36:48

茂木健一郎さま

ムジークフェラインに
国立歌劇場

ウイーン音楽の魂ですね。

凄すぎ

投稿: | 2009/04/18 14:32:39

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