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2009/04/26

うまく抱きしめよ

宝ヶ池の京都国際会館。

日本生物学的精神医学会で
講演。タイトルは「クオリア論と精神病理」
国立精神神経センターの
福井裕輝先生がお招き下さった。

続いて、シンポジウム「脳と責任能力」
に出席。

他のシンポジストは、
福井裕輝先生(国立精神神経センター)、
十一元三先生(京都大学)
中谷陽二先生(筑波大学)
吉川和男先生(国立精神神経センター)、
司会は大下顕先生(京都大学)

人間の脳は、予想できることとできないことが
入り交じった偶有性に対して適応する
ようにできあがっている。

客観的には同じ状況でも、それを認知する主体
によって偶有性は異なる。

経験をたくさん積んでいる人にとっては
不確実性は少ないだろうし、
経験が足りない人にとっては時に
耐え難い不確実性が存在する。

偶有性は、主観的なものなのである。

不確実性に向き合うためには、
確実な安全基地(secure base)が
必要である。

Bowlbyの言うsecure baseは、
他者(care taker)によって与えられる
ものであるが、より一般に、
感情のシステム内で確実なものと
不確実なものとのバランスをとる
上での基盤へと概念を拡大することが
できる。

偶有性に向き合う過程で、
人間は時にバランスを崩す。

そのことが、一方では精神病理と言われる
ような状況にもつながるし、
他方では「天才」が生み出される
契機ともなる。

偶有性を抱きしめよ。
ただし、うまく抱きしめよ。

偶有性の海の中で、自分を見失ってはいけない。
もし見失ってしまったら、
海に漂っている、確実そうなものを
とにかくつかめ。

確実なことと、不確実なことの
バランスをとることを常に心がけよ。

豚インフルエンザが心配である。
今後、エピデミックやパンデミックに至らないか、
重大な関心を持って見守る必要がある。

英語での情報の方が速くて正確な場合も多い。

swine influenza (swine flu)
2009 H1N1 flu outbreak
に情報がまとめられている。


4月 26, 2009 at 07:38 午前 |

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受信: 2009/04/26 15:44:40

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『茂木健一郎 クオリア日記: うまく抱きしめよ』の中でグッとくる文章がありました。最後のところです。 「人間の脳は、予想できることとできないことが入り交じった偶有性に対して適応するようにできあがっている。客観的には同じ状況でも、それを認知する主体によって偶... [続きを読む]

受信: 2009/04/28 2:13:47

コメント

茂木さんおはようございます。
不確実な未来を前にして自分を見失う危険。
体験する人にしかわからない恐怖。
安全基地がいるのですね。
経験を重ねることで軽減できるのですね。
大切なメッセージを発信してくださって
ありがとうございます。

投稿: | 2009/04/30 22:53:51

こんばんわ

「偶有性」

茂木さんに出会わなければ、知ることもなかった言葉
気に掛けようと思いました

私のアインシュタインは茂木さんです

これからも勉強させていただきます

投稿: | 2009/04/28 23:24:11

茂木様
すみませぬ。遅ればせながらこの日の記載を読み、泣いてしまいました。

「偶有性を抱きしめよ。
 ただし、うまく抱きしめよ。

 偶有性の海の中で、自分を見失ってはいけない。
 もし見失ってしまったら、
 海に漂っている、確実そうなものを
 とにかくつかめ。」

とても心にしみます。
なぜならばこの偶有性に、今まさに押しつぶされそうだからです。
頭ではわかっているつもりでも、どうにもならないことというものをどうコントロールしたらいいのか。夜なのに眠れないとか…。
どうにかがんばります。

投稿: tamaph | 2009/04/28 2:17:54

偶有性を、楽しく上手に抱きしめれるようになりたいです!!

投稿: | 2009/04/27 17:05:14

私、先ほどのコメントで若人という言葉を使いましたが、若人に限らずみんな多くの可能性を秘めていると思うのでみんな幸せになって欲しいですね。

投稿: | 2009/04/27 7:36:27

おはようございます!

朝は眠いですねw
茂木さんは朝早めな更新なので間に合えばと書いてます(^o^)
今回の記事、こうゆう話は大好きです。

こういったわかりやすいお話をほんとうの意味で理解したり、理解したいと思える若人はきっと幸せを手に入れますよね!

毎回良いことおっしゃいますねっ

「お気に入りに登録」です(笑)
では☆

投稿: | 2009/04/27 7:29:31

犯罪と脳というデリケートなテーマのシンポでしたが、コモンローの精神から、ヘーゲル/マルクスの意識論、メディア報道の低俗さに至るまで、正しい意味での知識人・教養人としての立場から、大変バランスの良い議論をしていただいたように思います(例のところで拍手してました)。京大精神科の関係者として一言お礼申し上げます。

投稿: | 2009/04/27 1:03:45

セキュアベースは他者にしか存在しない。
自分の中にそれを見つけようともがく時、経験値はその先の不安と孤独と焦燥を知っている。
自分の全存在を受容し肯定してくれる他者を求める。
絶対不可視なはずの他者に確かな幻想を抱く時、お互いのセキュアベースであり得ることを確信する。 それは満たされた安堵感。
私たちというフィルターを通してしか此の世は色も音も持たない。その確かな対象を通して、
人は初めて具体的な言葉をその先の広い世界に向けて発することができる。
一人称の大いなる飛躍を支えているのは、この豊かな二人称の世界が存在するから。

投稿: | 2009/04/26 23:35:55

他の人の言葉も大切。自身の意志も大切。
偶有性の海を漂ったとき、とにかく確実なものを見つける!
私は、気持ちがふらふらしていた時、いつも確実な…想いに立ち返えれました。でも、その度に、どうしたら良いか分からなくなりました。
そしてこれは、今でもどうしたら良いか分かりません…。

確かなものを探せる目と掴む手をいつも準備しておくこと大切ですね(*^_^*)

投稿: | 2009/04/26 23:00:32

茂木健一郎様

日頃から、偶有性も自ずと然ることだと思い、
いつも心弾む方に駆けて行ったり歩いています。
明るい方向へ無理することなく、偶有性の海を
泳いで行くことが、きっと本当に素敵なことに
出逢っていけるように思っています。
茂木先生のお話をまた伺わせていただけることを
楽しみにしています。

投稿: Yoshiko.T | 2009/04/26 19:54:08

茂木先生、応用哲学会でお話を聞いていました。テレビ局だとか書店のサイン会場だとか色々な場所で先生を見ていますが、今日はじめて本当の茂木先生を見た気がします。学問に対する愛情と情熱、怒りと寂しさ。アカデミアにいるときが一番茂木先生らしいのかも知れません。またお会いできる日を楽しみにしています。

投稿: | 2009/04/26 19:03:36

遇有性を抱きしめる、溺れないようにつかまるものを見つけるまで泳げる「体力」を養う。でなければ、沈んでいくだけだ。よい言葉をいただきました、なんだか力が湧いてきました。生きるということは遇有性とのENCOUNTERに満ちている。努力不足を嘆いても時間は戻らない。さあ、明日はどっちだ?
 仕事柄、外務省や各国大使館へお使いに行くことも多く、豚インフルエンザはちょっと大袈裟に言えば人事でもないわけですが、世界や自分はこれから生き残る「遇有性」に賭ける事態になっていくのかな?などと思ってみたりします。

投稿: | 2009/04/26 18:08:24

茂木先生、こんにちは(・ω・)/
豚インフルエンザ、大変です。 メキシコで1300人以上感染して80人以上の方が亡くなっているので、致死率高いです!!
アメリカでも発症しているので、メキシコ→アメリカ→日本に上陸する可能性ありますね。ゴールデンウィーク終わってからが危ないかも。
しかも潜伏期間が最大10日?ある模様ですから、検疫の時点で具合悪くなくても、帰宅後発症する可能性がある訳です。
慌てて病院にいくとそこで二次感染を引き起こすので、疑われる時は落ち着いて専門外来に行かないといけませんね。
しかし普通の風邪やインフルエンザと、新型インフルエンザどう見分けるのかしら?どうやって変異したのかしら??
鎮静化を祈ってますけど、なんだかリアリティ
がありません(現時点では)
やっぱり、食料買い込んで自宅待機かな~
あとは運ですかね(汗)
自分の母より先には死にたくないです。それだけかな~?ってそんなことないか(苦笑)
死ってやっぱりよく分かりません。
死と太陽だけは直視できませんね…
とにかく、鎮静化しますように!!

投稿: | 2009/04/26 15:18:11

私は今とても異常な空間で生活しています。
クリーンルーム(無菌室)という空間で、
ちょっとした宇宙ステーションと思っていただければわかりやすいでしょう。
この空間外では、今現在の私のカラダの状態ではちょっとした菌にでも冒されやすいので閉じ込められているのです。
ここでの時間は五週間がすぎ、もうじき六週間目に突入しようとしています。
日々接する人間が、限られるわずか6畳間の空間。
親しい人とはガラス越しの会話でしか、やり取りができません。
直に接する人間は医療従事者のみ。
直接の触れ合いは水しかありません。
おかしいですね。
だからシャワーの時間がとても長いです。

ある日、自分の目で見えるカラダの部位を見て、
「私はなぜここにいるのか、私はダレ?」
とふと思ったのです。
ほんの一瞬の出来事でしたが、
自分という人間が個体がわからなくなりました。
パニック寸前でした。
しかし、机の上に置いてある鏡に映る
自分と目が合い、私を確認。
何だろうこの感覚?

それを言葉で的確に説明・解決してくれたのが、
「化粧する脳」でした。
それから私にとって「化粧する脳」が安全基地になりました。

その本よって、私はいま精神に異常をきたすこともなく、
この異常な空間に私を埋没させないためにも、
鏡を意識的に日に何度も自分を見て
自分を確かめています。
小さな社会なを築いています。
「うまく抱きしめる」ことができたようです。

脳との上手なお付き合いが、
自分の心の平穏にもつながり
精神のコントロールが徐々にですが
できるようになってきたと思います。

ヒトはひとりでは生きていけない
生きる意味がない
日々、実体験に基づいて痛感しています。
この実験もうしばらく続く予定です。

投稿: | 2009/04/26 15:11:41

こんにちは。今年から、すっかり茂木さんのファンになっています。易しく書いてくださっている本から選んで読んでいます。
そんな中、いつも考えてしまうことは、「安全基地」についてです。安全基地は、持っている人と持っていない人がいるのか?また、その基地には、大きい小さい、強い弱いがあるのか?
今日のお話では、安全基地は、他者が与えるものとのこと。
春は、移動の時期。新しい環境に対して不安満載だった自分。鬱病かと思うほど眠れなくてマイナス思考だった日々。そんな自分を客観視したとき、私には、安全基地があるのか?と思いました。
結局、逃げずに進んでいる今をみると、安全基地を持っているんだろうと思っています。
安全基地は、与えられるだけのものなのか、それとも自分で開拓し、作りだせるものなのか…?
稚拙な疑問ですいません。茂木さんファン歴の短い人とお許し下さい。
ちなみに本に度々でてくる「無根拠な自信」という言葉が大好きです。

投稿: | 2009/04/26 14:32:44

速くて正確な、クオリア情報も拝見してみたいのですが、
茂木博士の最新の研究結果を拝読(若しくは拝聴)することは、
一般人には無理なのでしょうか?
クオリア・マニフェストを片っ端から開かせて頂きましたが、
リンクが切れていて読めない箇所もありました。
(残念です
今、『脳とクオリア』を拝読しつつ、
ネットで公開されている論文や文献を収集しております。
アートとクオリアの関係について、どうしても、
もう少し突っ込んで調べてみたいので、可能であれば、
最新のクオリア情報が知りたいです!!!
主観性に影響されないクオリアというのは、
絶対に存在しないのかな?
それはもう、存在しないということが、
立証されているのかな???
ということが気になる今日この頃でございます……。

投稿: | 2009/04/26 14:13:23

「secure base / より一般に、
感情のシステム内で確実なものと
不確実なものとのバランスをとる上での
基盤と概念を拡大することができる」

「偶有性を抱きしめよ。
 ただし、うまく抱きしめよ /
 確実なことと、不確実なことの
 バランスをとることを常に心がけよ」

「千と千尋…」のおくされ様(実は河の神)ふうに言うなら、
良きかな~
人の実感を経てなお納得される概念は
すがすがしいですね。
生物学と精神医学、そして哲学や宗教学などが
有機的に響き合い、
新たなリズムで届くのはうれしいものです。

投稿: | 2009/04/26 14:10:00

私が茂木さんに惹かれているのは、偶有性を抱きしめるためなのだと思いました。

うまく抱いて、そして進みます。私はきっと真実が知りたいだけなんです。

投稿: 天音 | 2009/04/26 13:43:48

調べものをしていてたどりついて初めてよませてもらいました。
今日の文に元気もらいました&心のモヤモヤが少しとけました!
感謝しております!!
体に気をつけてがんばってください!

投稿: | 2009/04/26 12:44:55

豚のインフルエンザ(H1N1)が人間に感染し始めた、という問題は、その意外さに驚くと共に、報道を聞くにつけ、実に気になるところですね。

今の今まで、私達は鳥インフルエンザ(H5N1)のほうが新型の人インフルエンザに移行するという、これまでの“予測”を信じこんでいたわけですが…。

自然が齎す脅威というものは、時に私達のそんな予測を裏切って、文字通り不測の事態を引き起こすものだ…。

「私」と言う人間の周りを見まわせば、まさにこういう不測・不確実の事態や不意に起こるものごとが、エーテルのような形で偶有性に包まれた世界の中に無数に浮かんでいるのだ、ということを(ごく最近ではあるが)実感できるようになった。

世を満たす偶有性と、そこから生まれる不確実で予測のつかない事態というのは、時に一個の人間を奈落の底へ落とす「落とし穴」の役をすることがある。また、人間社会を心底脅かす「地雷」のような役も演ずる。

そういう中で如何にして、奈落に落ちないように、また地雷を踏まずにバランスをとりながら、生きていけるか。

もし、奈落に落ち、地雷を踏んでしまったら、自分としてどうやって立ち上がっていくか。独り一回こっきりの人生を歩むためには、そこを模索することも、必要なのに違いない。

一個の人間も世界も、何がきっかけで不測の事態に陥るか全くわからない。タレントの飲酒事件も然りだし、今回の豚インフルエンザ問題もまた然りだ。

インフルエンザだけでなく、世界は全体的に、乱世の嵐が吹き荒れている。偶有性に支配されている我等が三次元の世界も、思いもよらぬ波風が立つ。

その波風にただ驚いて、自分を見失いそうになるときもあるかもしれない。これまでもそうだったし、またこれからもそうなのだろう。

若し自分を見失ったら、仰るように確実そうなもの…哲学、思想でもよし、また(正しい)情報でもよし…を見つけて掴む以外になさそうだ。

掴んだそれがもし、確かな人生哲学なら、それは自分にとって、偶有性に満ちた大海を生涯に亙って“航海”し続けるための「羅針盤」になるはずだと思う。

投稿: 銀鏡反応 | 2009/04/26 11:19:31

毎日楽しみにブログを読ませて頂いてます!

投稿: | 2009/04/26 10:37:36

今朝の東京は快晴です。

ブログの内容と関係なくて申し訳ないのですが
昨日コメントした件の後日談を・・・

ユーミンコンサートチケット10時発売開始のため
ローソン端末機の前に10時ちょっと前からスタンバって
10時1分(たぶん10時を30秒すぎたくらい)にはつながったのに
すでに満席、完売でした。これっていったい・・・

まったく茂木さん講演会とユーミンコンサート
のチケットはまさにプラチナチケットですね。

ところで林真理子さんのブログ拝見したら
昨日はエンジン01の総会があったようでしたが
茂木さんはやはり京都でらしたんですね。

茂木さん、今年もおからだにはお気をつけて
ますますご活躍くださいますよう。

投稿: | 2009/04/26 9:39:06

 茂木先生、おはようございます。そして、ありがとうございます。

 他者(care taker)によって、与えられることにのみ期待するのではなく(しがみつくとか、判断を頼るのではなくて)、自分の心の中に、今までの少ない経験の中から学んだ事や得たものをもとに、安全基地を作ること。自分を自分の支えとすること。自分の判断基準を見直しながら、自分の中に育ててしっかりと持つ事。そのために偶有性の海に漂っている、確実そうなものをとにかくつかんで、消化して基地を強化していくこと。
 これから前向きに生きていく中で、様々な経験を積み、多くの方が書かれた得がたい文章や知識、情報、思いを、自分の中に、疑似体験も含めて、学び吸収すること。確実なことと、不確実なことのバランスをとることを常に心がけて、自分の安全基地を強くして生きていきたいと思いました。偶有性の海の中で、おぼれないで、自分を見失なわないで、他者と向き合うことが出来るようにしていきたいと思いました。本当にありがとうございました。

 英語翻訳エンジンを検索して見つけて、先生が、ブログの最後で教えて下さった「豚インフルエンザの情報」(この数日でメキシコやアメリカ南西部で大変な事になっていることを、初めて詳しく知りました)を読むことができました。近々の正確な情報を知る事の大切さを、学びました。ありがとうございました。

投稿: | 2009/04/26 9:18:21

おはようございます!

昨日めいっぱい雨が降ったので今朝はスッピンのような空模様です。

分からなくなったとただ大海原に漠然とした日もありますが、そもそものベクトルの方向が違っているからだと思いました。
『化粧する脳』P.131~″無私を得る鏡″の章にハッとさせられました。
「個性はスペシャリティである。」
小林秀雄氏が語ったこの言葉は凄いです。

確実なモノをとにかくつかもう!

自分の生に対して磨きをかけよう!

マイペースですが、一つ一つ「クリア―!!」できると思います。
具有性をうまく抱きしめて。 (Big smile(⋆▼✶)♫♬♫)

投稿: | 2009/04/26 8:58:53

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