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2009/03/03

星の友情

 大分市の「いいちこホール」で
講演会。
 
 ぼくはずっといいちこの講演会だと
思っていたのだが、実際には会員二〇〇〇人
の女性たちの組織だった。

 電通の佐々木厚さんも
いらっしゃる。

 『涙の理由』と、『赤毛のアンに学ぶ幸福
になる方法』の話をした。

 2004年から4年にわたって行われた
南直哉さんとの対論のゲラ(新潮新書)
が上がってきて、
 新潮社の「ホッピー・マスター」こと
金寿煥さんから送られてきた。

 その中で、私は南直哉さんに
自分の本質を言い当てられた。

 「行雲流水」。(一処に留まることの
ないこと)

 ぼくは、きっと一生そうやって
生きていくのだろう。

 ゲラを読んだ後に、「まえがき」
を書き始めた。

__________
 若い頃、先輩にお前は不平家だと面と向かって言われたことがある。なるほど、きっとそうに違いない。どんなに年をとっても一向に丸くならない。表面をいくら取り繕ってもダメだ。時々必ずボロが出る。
 激烈なるものがわが内面にはあるのだ。そして気付いてみれば、私が信頼する親しい人たちは皆、一人残らずその内側に激烈なるものを秘めている。今でも盛んに噴煙を吹く活火山。時折思い出したように火柱を上げる休火山。あるいは、ほぼ活動を中止してしまった死火山。いずれにせよ皆、意識下にはマグマがたまっている。
 どんなに学問が進んだとしても、私たちの生は必ずこぼれ落ちる。ましてや、死はそのさらに先を行く。そういった事情に通じているか、知ってはいても定期的に肝に銘じる習慣を持っているかどうかで、ある人の精神性の形成は変わってくる。
 人間の魂にとって一番危険なことは、自らが依って立つ体系が生や死の問題を扱う上で十分であると錯覚してしまうことではないか。
ソクラテスの言う「無知の知」こそが魂の態度における唯一の要なのだということが心にしみ渡る。「もう、これで十分」という風に思った時に、心の窓は曇り始める。そうなってしまってはもう、世界は生まれ落ちた時の新鮮なる表情を見せてはくれない。
 世の中を見渡せば、自分の立場を信じて疑わぬ人がどれほど多いことか。自らの優越性を誇らんとするばかり、他者の姿が見えなくなる人たち。どんなに論を尽くしても、伝わらない哀しみ。無意識の中には、次第にマグマが溜まって行くのである。
 そんな折に南直哉さんに出会った。初対面で、その眼差しに射貫かれた。この人にならば、精神の地下に伏流する炎の話をしても通じるだろうと思われた。知というものの限界を、空気のように自然に呼吸している人。そのような「奇特」な存在が、この現代の日本で心臓を鼓動させているとは思わなかった。

(続く)
___________

南直哉さんと私は、「星の友情」。

ニーチェの『悦ばしき知識』にあるように、
お互いに遠くに相手の姿を認め合いながら、
再び相まみえるまで、人生という
虚空の中を流れていく。

南直哉さん、またどこかで会いましょう!

Star friendship.— We were friends and have become estranged. But this was right, and we do not want to conceal and obscure it from ourselves as if we had reason to feel ashamed. We are two ships each of which has its goal and course; our paths may cross and we may celebrate a feast together, as we did—and then the good ships rested so quietly in one harbor and one sunshine that it may have looked as if they had reached their goal and as if they had one goal. But then the almighty force of our tasks drove us apart again into different seas and sunny zones, and perhaps we shall never see one another again,—perhaps we shall meet again but fail to recognize each other: our exposure to different seas and suns has changed us! That we have to become estranged is the law above us: by the same token we should also become more venerable for each other! And thus the memory of our former friendship should become more sacred! There is probably a tremendous but invisible stellar orbit in which our very different ways and goals may be included as small parts of this path,—let us rise up to this thought! But our life is too short and our power of vision too small for us to be more than friends in the sense of this sublime possibility.— Let us then believe in our star friendship even if we should be compelled to be earth enemies.

http://www.geocities.com/thenietzschechannel/diefrohl7e.htm 

3月 3, 2009 at 06:54 午前 |

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コメント

知らない英単語が幾つかあったので、ライトハウスをペラペラとめくってみて、全文を通して読みました。わぁ。なんてホットな関係性なんだろう!
こんなに気持ちよい文章を久しぶりに見ました。
自分の心が傷付くことを恐れ、他者へのコミットに二の足を踏んでしまうのは、実にもったいないことですよね。私は、ダンナと子供と関わり合って時間を重ねたことにより、自分の中にある色んな感情に気付くことが出来たと思っている人間の一人です。きっと自分一人だけを心配する人間のままでいたとしたら、きっと物事や人間の本質についつ考えることなく生きてただろうなぁ…と家族との今までの時間の流れを心より愛おしく感じてます。
言葉であらしめられなかった部分を、うまく代弁して頂いたような気持ちです。言葉って難しいと感じることが多々あるけど、それでも言葉があるからこそ、ヒトとつながっていられる。生きている限りに、日々私なりの勉強をして生きたいと思った朝でした。
ありがとうございました。

投稿: ゆみっち | 2009/03/04 10:03:30

なんと深い友情、南直哉さんとの対談本たのしみです!

無知の知、謙虚である姿勢忘れないように自分に念を押し。他者の姿が見えるように。先生の激烈なるものに、先生や御著書などからふれ私の眠っていた死火山にも少し火がつきました。まだ上手には噴火?出来ません。練習中です。人に優しくあるには強くなくてはならない、誰かを助けたいと思うと更に知慧がないとあかんと最近つくづく思います。。気持ちだけでは壁は砕けない。学ばなければ。
 
そんな朝ではございますが、先生本日もお風邪などひかぬよう健やかにお過ごし下さいませね。
(/●^∀^)/☆☆☆

投稿: wahine | 2009/03/04 7:22:59

茂木先生お早うございます♪

今朝はうっすら雪が積もりましたよ。

いいちこもさることながら、先生ホッピーマスターって。笑

先生の御著書や対談本が続々、出版されますね!うかうかしていられやしまへん。

『偉人たちの脳 文明の星時間』も明日でしたよね。

星の友情、ニーチェがワグナーへ送られたのですね。初めて知りました。春は別れと出会いの季節。この時期にピッタリのとても素敵な友情のエッセイと、深く心にしみました。
互いに1つの目標に向かっていたかのような二艘の船。やがて、使命と全能の力のもとに別々の道へ。万が一相逢っても互いを見知ってはいないだろう。様々な太陽と海が私達を別々な者へと変えてしまっているのだ!互いに疎遠になるしかなかったということは、私達の上に臨む法則!まさにそのことによって、私達はまたお互いに尊敬しあえる者となるべきである!過ぎし日の友情の思い出が一層に聖なるものへ!それはおそらく私達の真に様々な道や目標がささやかな道程として包みこまれるような、巨大な目に見えぬ曲線と星辰軌道が存在する!こういう思想にまで自分を高めようではないか!だが、あの崇高な可能性の意味での友人以上のものでありうるには、私達の人生はあまりに短く、視力はあまりにも

投稿: wahine | 2009/03/04 6:57:52

こんにちは

マグマ(火)の元素で作った考えは、マグマに属する事になり、今の私自身は、少し落ち着いた、水の元素の考えが必要だと思っています。(^^)

投稿: マグマのクオリアby片上泰助(^^) | 2009/03/04 6:24:49

茂木健一郎様

大阪の講演会に参ります。

茂木さん、いつも本当にありがとうございます。

茂木さんを見守ってくださっている方々のおひとり
の木南勇二さんにビリケンさんを用意させていただ
いております。ご多忙だとは存じますが、
受けとっていただけたら幸いです。
笑ってくださいませ。

なら国際映画祭の日は、私は監督のところに
いると思います。ぜひ、遊びに来てください。

投稿: Yoshiko.T | 2009/03/04 3:43:37

茂木健一郎様

>空に星があることを忘れているんだね。

>相対性理論によれば、星がどんなに遠くに
>あっても、光がそこから私に届く間、
>固有時は経過しない。

>だから、星はぼくらとつながって
>いるんだよ。

バリ島にいらした時に書いておられました。
読ませていただくと、
とてもやすらかな気持ちになりました。

南直哉さんのこと「涙の理由」で
書かれていたと思って、さがして
しまいました。 

星の友情を感じているおかただったのですね。

「問いはあるけど、答えはない」

この言葉も、生きることを楽にしてくださり
そうです。

現代、茂木さんのご活躍は絶対に必要だと思う
毎日です。ありがとうございます。
どうか、よろしくお願いします。

投稿: Yoshiko.T | 2009/03/04 0:07:32

南さんとの出会い。とても深いものを感じます。
星の友情も素敵な言葉です。
赤毛のアンでは、ギルバートとアンが友情を結び、生涯の伴侶となりましたもの(o^∀^o)どうやら…私、それがアタマにあるみたいです。

投稿: 奏。 | 2009/03/03 22:36:42

茂木さん!いいなぁー!!
✷星の友情!✴!☆⋆✮✱✶〰✧
そういう自分の深い所を感じて解ってくれる人は少ない!
だから、貴重な大切な存在です。
(だからってことも無いでしょうが。)
いいなぁー!!!

茂木さんのレベルは高いでしょうに!!
南直哉さんはすごい方なのでしょう。
ときに、私はダライラマ14世が好きです。テンジン・ギャツォ。
当たり前のことを初めて知るかのように、分かり易く説くのです。
何かを分かっている人と言うのはどこか突き抜けていて私たちを俯瞰できるのでしょう。
私はその域に生きている内に達せるかどうか。
お腹が空いてイライラする様ではまだ先は長いです。
(正確に言うと、お腹がすく事で不機嫌になりやすくなり、満足しないことが起ると余計に反応してしまうという事です。…同じ事か!!!!)

2000人全て女ってすごいですね。
お疲れ様です。

「涙の理由」物凄く読みたいです!
でも、まだ買っていません。
茂木さん達の話を聞く前に自分なりに考えてみたい内容です。
イチローは2007年あの瞬間の涙の理由はわからないっていっていましたね。理由、わかった頃か、涙したこと、忘れているか。

私は理解不能な涙を流したことあったかなぁ。
茂木さんの考えの結論は本で表明されているのでしょうね(♯^^♯)。
読める日が楽しみです。

(早く読んでくれよぉーって¿?¿?!(^^)!)

投稿: 夏輝 | 2009/03/03 22:02:50

2週間ほど前、茂木さんが私の夢の中にいらっしゃいました。それでなんとなく気になってこのブログにアクセスするようになりました。

昨夜はとても生きていられないほど悲しい思いにかられて眠れなかったのです。

今朝になって更新された内容を読んでびっくりしました。

私も「星の友情」で結ばれていたい人がいてその人は南の山に住んでいらっしゃいます。猫中毒かもしれません。

ひょっとしたら茂木さんは私のことを知っているのかなって思ってしまいました。

そんなはずはあるわけないのですが代弁していただいたような気がします。
ありがとうございました。


投稿: よはね | 2009/03/03 21:24:30

こんばんは…きょうは関東も、冷気のツボにスッポリとはまって、道行く人は凍えております。

地上がこんな時でも、大気圏、成層圏の先にある暗い宇宙に輝く恒星たちは、己の寿命の尽きるときまで、変わらぬ光を投げかけている。

南直哉さんが仰った“行雲流水”…行く雲の如く、流れる水の如く…。

常に1ヶ所に落ちつく事無く、常に俊敏にまた堂々と、活躍し続ける茂木さんその人を、見事に言い表している言葉だなぁ、としみじみ思う。


人生、もうこれでいいや、これで十分、ということはない筈だ、と常に思う。人生は有為転変があたりまえだし、生涯、決して「今ある自分の境涯」にまったりと満足してはいけないのだと思っている。

身体の成長は、年とともに止まることがあっても、魂の成長は「これで十分オーケーだ」と思って止めてはいけないのだ、と。

無限に広がる自分の寄って立つ次元は、自分が知っていることよりも、知らないことのほうが、遥かに膨大で数えきれないほどにあると、常に自覚していなくてはならぬと思う。「無知の知」を死ぬまで自覚し抜いていかねば、精神の芯が腐る気がする。

「無知の知」は魂が死ぬまで成長を続けるための、必須な姿勢のように思えてならない。

『星の友情』とは何という、美しい友情なのか。お互いを本当に心から分かり合える友を持つことは、人生の掛け替えのない、一生ものの宝なのにちがいない。

互いに「無知の知」を知覚した人同士だけが、星の輝くような友情を分かち合える…。

南さんと茂木さんの友情が、これからも星のように輝き続けてほしいと思う。

投稿: 銀鏡反応 | 2009/03/03 20:19:50

ハイドンとモーツァルトの友情を思い浮かべました。
同時期において、彼らは異なった進路で相互影響し、当時では最先端の古典主義音楽を樹立していった偉大な星たちですよね♪
1785年1月、モーツァルトが自宅にハイドンを招いて、「ハイドン四重奏」の試演会を開いた時の様子を想像するだけで、胸が高鳴ります。
遠く離れていても、二つの星が互いの音楽を認め合い、信頼と友情で二人の心が結ばれていなければ、時代を遥かに超越した宝物のような作品の誕生は、なかったかも知れませんね。

投稿: シリンクス | 2009/03/03 17:08:02

>南直哉さんと私は、「星の友情」。
そんな友情もありなんですね。

最近茂木先生のお話に出てくる
ニーチェさんの『悦ばしき知識』って、
そんな友情話が含まれてるっていうのも興味深い。

私の倫理の先生も、深く教えない分いつか触れる将来を考えて、
名前だけは、印象に残しておきたかったのかなぁ。
ここで紹介するには、恥ずかしいですから、ひかえておきますが、
ニーチェの名は一番覚えてた。そして、よかったぁ。。。

私も、茂木先生のようにいろいろ本が読めるとようになりたいものです。

投稿: Natural2 | 2009/03/03 13:12:27

茂木さん

「今、ここからすべての場所へ」は本当に素晴らしい本でした。
私は大好きです。
一度では足らず二度読みましたが、今の自分の心が感じるところが
そこかしこに存在していたのです。
その個所をノートに書きだしてみました。なぜだかわからないの
ですが、深く心に刻んでおきたいと強く思ったからです。
時間をおいてそのノートを見たとき、どんな風に思うか、少し
楽しみです。

私はここ2年くらいの間に、茂木さんの行動やお話、書かれる言葉を
通して星を見つけたのだと思います。

投稿: yuzuriha | 2009/03/03 12:59:49

茂木健一郎様
『行雲流水』でもだからこそ!ア-トや芸術が心の深奥に必要なのですよね!

投稿: mic | 2009/03/03 12:10:01

茂木ィ先生おはようございます。(・ω・)/
確かに茂木先生は「韋駄天けんちゃん」だと思います。
もしくは風神雷神?
風は常に新しいものを私達にもたらしてくれるのです。
マグマを秘めた茂木さん、生きてる人だなぁ~ \(^_^)/
魅力的な人は皆さんマグマを秘めてますね。
芸術は爆発だー!って岡本太郎氏も看破されてましたし!

松江行きたいな~きっとnostalgiaの原風景があるのでしょう。
いつかきっと行きたいです…!

投稿: 眠り猫2 | 2009/03/03 8:25:29

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