« 吉田秀和さん | トップページ | 文明の星時間 純粋なるもの »

2009/03/19

魂の探求

パトリス・シェローが演出し、
ピエール・ブーレーズが指揮をした
バイロイト音楽祭の
『ニーベルングの指環』は、当時、
その前衛性が大きな論争を呼んだ。

初演の1976年は、私は中学生。
あれから30年余りが経って、
今その記録を見ると、もはや
古典と化している。

たとえば、『神々の黄昏』
の最後、ブリュンヒルデの自己犠牲。

http://www.youtube.com/watch?v=BmX9N8C8nko

ジークフリートの亡骸に火をつけ、
自らもラインの乙女たちに黄金を返す
ために火の中に飛び込む。

ライン川の水かさが増し、すべてを
飲み込む。遠くでワルハラ城が炎上するのが
見える。

黄金を取り返そうとあわてて飛び込む
ハーゲンも、水に飲み込まれてしまう。

黄金が戻り、よろこんで泳ぐラインの乙女たち。

最後に、旧世界が燃え上がるのを
ひしめき合いながら騒然と
見つめていた群衆の中から、一人、また一人と
立ち上がって、こちらを見る者が現れる。

ラストシーンは、「愛による救済」
のモティーフが流れる中、群衆が全員
こちらを向いて、その一人ひとりの顔が
ポートレートのように心に焼き付けられる。

ずっと虐げられてきた彼らが、ひとりの
人間としての自由を得る。そのような
時代が来た。
 
このような演出をするシェローを、
ぼくは信頼する。

あれは大学生の時、
アムネスティ・インターナショナルの
ニューヨーク支部を訪れた時、
彼らの骨太の思想に感銘を受けた。

あの時の感銘と、シェローの演出から
受ける感動は
太い水脈でつながっている。

竹内薫の日記 
を読んで、改めて思うこと。

インターネットの第一原理。

「ネットに匿名で書かれた意見は、存在
しないのと同じである」

もちろん、匿名で意見を書いたり、それを
読んだりする人がいても、全く
かまわない。

オレは読まない、というだけのこと。

竹内が引用している
「子どもの権利条約」は、
人類の骨太の思想の潮流を示している。

それは、ワグナーやブーレーズ、
シェローなどの偉大な芸術家
の作品と同じように、
人間精神の名誉のために
努力してきた人たちによる、
一つの美しい作品なのだ。

葉加瀬太郎さんと対談。

音楽の話、ロンドン、ドイツ、バッハ、
ブラームス。ヴァイオリンの
楽器としての特質。日本のこと。

葉加瀬さんはロンドンと日本を往復する
生活。

最近のロンドンの様子をうかがった。

初対面でも、何だか昔からの友人の
ように感じる葉加瀬さん。

今度またゆっくりとお話したい。

第三回 shiseido art egg賞の審査。

http://www.shiseido.co.jp/gallery/current/html/index.htm

宮永愛子さん、佐々木加奈子さん、小野耕石さんの
三人の作品について、審査員の石内都さん、鷲見和紀郎さんと
ともにじっくりと議論した。

お話しているうちに、
自分がある作品についてどのように
感じているのか、
そもそも、美術品と向き合う時に
どのような基準を当てはめているのか、
というように、自分自身を探る
作業が進む。

それは、いわば「魂の探求」(soul searching)。

心の奥底を柔らかくほぐしていくような、
とても素敵な審査会だった。

資生堂企業文化部のみなさん、本当に
お世話になりました。

3月 19, 2009 at 05:33 午前 |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 魂の探求:

» ちょっと躊躇しながらも トラックバック 須磨寺ものがたり
急に気温が上がりだし、 春から一挙に初夏のような陽気である。 [続きを読む]

受信: 2009/03/19 10:35:36

» etude41 トラックバック 御林守河村家を守る会
昨日は多忙を極め、ブログをお休みしてしまいまして、 申し訳ございませんでした。 [続きを読む]

受信: 2009/03/19 11:51:27

» etude42 トラックバック 御林守河村家を守る会
鳥羽伏見の戦いのあと、 備前事件、フランス水兵虐殺事件、 天皇謁見の日の朝のイギリス公使襲撃事件、 と立てつづけに血なまぐさい事件が起こります。 [続きを読む]

受信: 2009/03/20 8:24:36

コメント

《寺山修司》氏も 昔から 謂ってましたね!!!(*^O^*)

《匿名》による怖さ…。

P.S.昨日 『 脳を活かす生活術 〜希望の道具箱〜 』購入しましたぁ〜!!!(*^O^*)


〜《茂木健一郎》氏から《sign》の刻 《おたがいに 見えている.》と《言の葉》を添えて戴いた《ピクミンママ。》より〜

投稿: ピクミンママ。 | 2009/03/20 21:40:26

竹内さんのブログを読みましたが、この島国の人間性の、あまりの荒廃ぶりに、溜息が出る思いだった。

「子供の権利条約」という、日本の入国管理法よりは明らかに上位に位置する国際的条約を批准しておきながら、それを平気で破る。そういう我が国の入国管理局、立法府を構成している「官僚」と称する人間の内面には、人間としての広大な「愛」が欠如しているとしかいえない。彼等には人間の骨太な思想、思念というものが、初めからないのかもしれない。

そしてネット世界で繰り返される「人種差別」的発言や、他者への誹謗中傷攻撃・・・これは自分もやられたことがあるから、この手の攻撃の恐ろしさ、いやらしさはじゅうじゅう身に沁みている。

こうした誹謗中傷が蔓延り続けると、今にこの島国は、ネット社会のほうから、崩壊へと向かうに違いない。

今こそ、人間精神の名誉の為に、骨太の思想・人間哲学の復興に、人類はとりくまねばならない。

投稿: 銀鏡反応 | 2009/03/20 14:48:14

茂木ィ先生、お晩です~(・ω・)/
今日は同僚に「奈良の春日大社の鹿っぽい」と言われました。春日大社の鹿と言われたのはさすがに初めてです。
色んな見え方があるんですねぇ ~~φ(.. ) 自分の姿は自分が一番知らないかも知れない…

脱線しました。
インターネットは、私は主に茂木さんのブログとヤフオクしか見ておりません。
この前ちょっと
ネット世界をちら見しましたが、他者の悪口匿名で集団書き込みしてるのは爬虫類的無意識の集合体でした…ヤバい感じがしましたね~
ネットの中傷被害も深刻化しているようですし、こういった爬虫類的無意識世界を放置すると日本が足元から崩壊する可能性があります…(お互いに疑心暗鬼になって人間不信がつのり社会が崩壊する…?)
インターネットの中傷被害で傷付く人が沢山出たり、裏サイトだかで犯罪の温床になったり、集団自殺募集したりするようでは、やはりなんらかの法的手段がより必要になってしまうと思います(表現の自由の問題もありますが)
便利と危険は表裏一体ですよね。火を手にいれた原始人がついに核兵器を生み出した現代、ネットの未来はどうなってゆくのでしょうか…

投稿: 眠り猫2 | 2009/03/20 0:56:06

熱さ、エネルギーの根底には愛があるのだ!と感じさせて頂きました。(いま頃きがついたのかと言われそうですがσ(^^;))

今日はなんやか暑かったですね。その後体調はいかがでしょうか。それでは先生お休みなさいませ。いい夢を。。・゜゜゜゜・。☆★☆★☆

投稿: wahine | 2009/03/19 23:34:19

茂木先生こんばんは♪
「神々の黄金」、アムネスティ、「子どもの権利条約」どれも大変勉強になりとても有り難いです。「愛による救済」先生、現代に足りないものはこれでしょうか。
「子どもの利益を最優先とする原則は、子どもの権利条約の中核であり、絶対に拒否できないものである。私たちは日本に対し、国際的な義務に従い人間としての良識と基本的な人道の観点に基づき、この家族が一緒に日本で暮らすことを認めるよう要求する」(アムネスティのアジア太平洋副部長ロジーン・ライフ)、先生のご友人であられる竹内薫さん「入国管理法より上位に位置づけられる国際条約を無視するのであれば「国際条約」を結ぶ意味などない。」とおっしゃるように日本は子どもの権利条約の締約国にであること完全に裏切っているのだと思います。カルデロン一家に対する、心ない批判は酷い、虐めや人種差別に値すると言っても過言ではないように個人的にも感じました。子ども1人の人権も守れないような日本政府。報道もなにかが違う?私たちが惑わされないようにするには何を見て何を信じればればよいのでしょうか。
 
魂の探求(soul searching)心の奥底を柔らかくほぐしていく、とても素敵ですね。
私、先日の講演を拝聴させて頂き先生の怒りや

投稿: wahine | 2009/03/19 23:22:32

ニーベルングの指環や神々の黄昏、見た事はないですが、今日の茂木さんのお話しを聞いて、愛による救済や、虐げられていた人たちが自由を得るなど。興味津々です(^-^)

以前から思っていたのですが、茂木さんと葉加瀬さんって、持っている雰囲気が一緒みたい(*^_^*)

魂の探求…私が私らしくあるために、考え。行動しよう(о^∇^о)

投稿: 奏。 | 2009/03/19 19:38:01

先日のアサカルで見せていただいた、『神々の黄昏』のラストが、未だに眼の中に焼きついて離れない。

ラインの乙女達に黄金を返すために捧げられた愛は、思うに「我が身を殺して法を広める」「自ら命を惜しまず」という仏典に説かれた(多様な)衆生救済を示す言葉の精神に、真っ直ぐに通じている。


ヴァーグナーの楽劇には、やはり哲理的な概念と言うか、思いというか、そういうものが濃縮されているのではなかろうか。思うに彼ほど、人間世界というものの実相を直視し続け、作品にしていった人はいないのではないか。

そしてそういう藝術には、深い人間の哲理が秘められているのではないか。

私達は、深い人間哲理を秘めているような、優れた藝術作品に出会う努力をしなくてはならないのだろう。魂の探求のためにも。


投稿: 銀鏡反応 | 2009/03/19 19:23:56

茂木さん、shiseido art egg賞受賞者の展示を、是非拝見しにいきたいと思います☆

投稿: smile | 2009/03/19 15:35:14

『ニベルングの指環』
テ-マは愛…
言葉にはならない程。深いです、深いです、深いです…

投稿: yuuki | 2009/03/19 11:17:15

本当に偉大な人は、自分自身の「魂の探求」に全てを賭けて生きているせいか、自分以外の魂にも心から敬意を表し、一人一人を分け隔てなく大切に接してくださる。
茂木さんも、そんな方のお一人だと思っています。
久しぶりのブーレーズさん♪
今日は、楽しくて幸せなクレーの絵が沢山のってる、ブーレーズ著「クレーの絵と音楽」をカバンに突っ込み、たおやかな春の街に出かけてゆきます!

投稿: シリンクス | 2009/03/19 9:51:33

こんにちは

>インターネットの第一原理。

>「ネットに匿名で書かれた意見は、存在
しないのと同じである」

>もちろん、匿名で意見を書いたり、それを
読んだりする人がいても、全く
かまわない。

>オレは読まない、というだけのこと。


発達心理学のピアジェが、物事を理解するのに、「否定」「相互」「相関」「同一性」の螺旋のプロセスがあると主張しています。

否定的な意見は、理解の初期段階であり、ある視点的要素を含んでいるだけに過ぎないと思います。

そのため、インターネットの否定的な意見は理解の途中なのだと思います。この場合、「相互」に持っていくにはもしも自分の立場、相手の立場、他の人の立場等を入れ替えればよいと思います。(ミラーニューロンを働かせる?)。

ウキペディアやgooの「教えて」など、自分である程度判断できる情報なら、匿名でも役に立てる事が出来ると思います。


>初対面でも、何だか昔からの友人の
ように感じる葉加瀬さん。

TVで茂木さんを始めて見た時、「葉加瀬さんの親戚かな?」と、瞬間的に思いましたよ(^^)

投稿: インターネットの評論のクオリアby片上泰助(^^) | 2009/03/19 9:08:32

茂木健一郎様

穏やかな日を過ごされていたようでほっとします。

投稿: Yoshiko.T | 2009/03/19 8:02:36

       人類骨太の思想

          原理に基づく  実践主義


   今の時代相応しい 人の道  個々の説法纏まる日


         似たようなもの老若男女

            

投稿: 一光 | 2009/03/19 6:45:25

コメントを書く