かぶく
市川海老蔵さんとお目にかかり、
対談させていただく。
海老蔵さんの舞台では、2004年の
『助六由縁江戸桜』の縁起が
記憶の中に鮮明に残る。
海老蔵さんは、
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
を見て下さっていて、出かける前などに
かけて「気合い」を入れているとのこと。
ありがとうございます!
海老蔵さんは、市川家の
御曹司。
ものごころついた時には、
すでに歌舞伎の世界を空気のように
自然に呼吸していた。
一時期、重圧や伝統に反発していた
という海老蔵さん。
その話を聞いて、なるほど、
正統なる「御曹司」の生き方というものは
そのようなものかと思った。
世間では、親や家の敷かれた
路線に従う子どもはどうしても
「ひ弱」なイメージがある。
素直過ぎると、覇気に欠ける
ということになるのだろう。
むしろ、海老蔵さんのように
いったんは猛烈に反発して、
伝統の中から飛び出す、という
くらいにあばれる。
その後で、伝統の中に還っていく。
「今は歌舞伎のことしか考えない」
というくらいに、熱烈に回帰する。
海老蔵さんの生き方には、
そんなダイナミズムがある。
そのような「スィング・バイ」の生き方を
するのが、正しい御曹司というものなのだろう。
初対面とは思えないほど、お話
するのが楽しかった。
リズムが心地よい。
予定を大幅に超えて、最後は
WBCの中継を見ながらご飯をご一緒した。
現代において「かぶく」ためには
どうすれば良いのか。
ただおとなしくしていれば
いいと言うものではない。
枠から飛び出し、習慣を壊し、
突破する。
それでいて、いつかは、
新たな「正統」となる。
乱暴者のようでいて、
実は本当の意味で伝統を引き継いで
いたのはあの人だった、と言われるように
なる。
そのような生き方は難しいが、
しかしこの上なく価値がある。
現代において、「かぶく」
ためにはどうすれば良いのか。
そんなことを一生懸命考えた。
海老蔵さん、またお目にかかる
ことを楽しみにしています。
海老蔵さんは4月に名古屋の御園座で
5役を演ずる「雷神不動北山櫻」の公演がある。
海老蔵さんのすばらしい舞台を、
みなさんぜひご覧下さい!
真鶴へ。
研究室の合宿。
三ツ石海岸に集合。ビールを飲みながら
いろいろと議論する。
刺身を食べたあと、宿でさらに議論。
朝、露天風呂に入ったら、
お湯がなかなかでなくて、星野英一が
「冷たい、冷たい!」と叫んだ。
歌舞伎には、「本水」という演出法が
ある。
本水を浴びて、星野英一が、
「つめてえ、つめてえ、あっ、こいつは
はるからつめてぇわい!」
と叫んだ。
柳川透が、少し垢抜けたと思ったら、
H&Mのジャケットだった。
3月 20, 2009 at 08:06 午前 | Permalink
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コメント
茂木健一郎様
毎朝、クオリア日記を心待ちにしております!!!考えれば、脳に全てがあると言えますし、全ての事物が外にあると言うのが間違いだとも言えますし、でも確実な事は人間や動物や自然は確実に存在する訳で。ああ、でも井上陽水ではないですが、傘が無い。。。。なんちゃって。ああ、魂のひりひりが。。。。ああ。
投稿: spider | 2009/03/22 20:45:11
茂木先生こんにちは♪
現代において"かぶく"ためにはどうすればよいか一生懸命考えた…先生が一生懸命考えて下すっているのだからうちも懸命に考えにゃあならん!と思い無い頭をつかいます。ムムム※∞ΩΥ☆?!
先ず、"かぶく"初耳!
"Swing by"なにぞや、と調べてみましたところ驚きです。
天体の万有引力および公転運動を利用することにより、燃料を殆んど使わずに軌道を変更し速さも変える。太陽極軌道探査機ユリシーズは一旦木星に行き1回のスイングバイで黄道面からほぼ直角に方向を変えて太陽の南極側へと向かった。
直接太陽へ向かうのではなく他の惑星の力を得て、更に方向を変えて飛ぶ、なんてダイナミズム!!
枠から飛び出し、習慣を壊し、突破する。乱暴者のようでいて実は本当の意味で伝統を引き継いでいたのはあの人だったか…このような価値のある生き方が出来たら素晴らしいのだろうと思います。海老蔵さんステキですね!
"かぶく"ためには本当の意味で自立し、新たな私の視点でしっかり見なければならないのかもしれないです、一度壊したもの、捨てたものに還るのにはそれ相当の覚悟もいる。と自分なりに考えてみました。
やはりずっと親のスネをかじって生きている人はどうしても軟弱に
投稿: wahine | 2009/03/21 15:09:37
無秩序が絶えず規律と戦い、その戦いからポエジーや生まれる。
モーツァルトやバッハが大好きだったクレーの絵には、心地よいリズムのような秩序の中に、ファンタジーがいっぱい詰まっている。
現代において「かぶく」には、秩序と混沌の闘争を超越することでは?
そこで初めて、自由で独創的な詩情にあふれたファンタジーが生まれる気がします。
投稿: シリンクス | 2009/03/21 10:45:56
こんにちは
海老蔵さんは、人一倍歌舞伎に思いがあり、伝統から飛び出し新しい歌舞伎をつくる。そこで、新しいベクトル、伝統のベクトルが合成され進化する。そのため、歌舞伎は何百年も進化してきたのだろう。
また、私たちも含む、生物たちも数十億年そうして、進化してきたのだろう。(^^)
投稿: 歌舞伎のクオリアby片上泰助(^^) | 2009/03/21 2:55:43
茂木健一郎さま
私、大好きな半井小絵さんの気象解説を拝見
土曜日は晴れ!春の晴れ!との
でも、福岡は雨がとか
え? 福岡?
半井小絵さんは、あまり福岡の天気に触れないので印象的でした
福岡といえば
全日本スキー連盟ナショナルデモの沖 聖子選手が福岡の会社に所属されながらスキーをされている
小樽出身の沖 選手の先輩
輪島さんの、お父さんと数年前に偶然、路線バスにて一緒でした私
その確認で輪島さんのブログに、お父さん?確認し、そうでした、との
その輪島さんのブログによく沖 選手も出ていたので
今は輪島千恵さんのブログには興味はなく
今回のスキー技術選前から沖 選手のブログに投稿は、小樽天狗山スキー場に沖 選手、ご家族で参られをブログで拝見し
沖 選手、スキー大会でご活躍して欲しい、それで沖 選手のブログに投稿なんです
ただ、私も小樽天狗山スキー場に参りますが沖 選手を拝見したことはないし、
沖 聖子選手
1982年うまれ、との
私、1984年にカラヤンとベルリン・フィルのコンサートを普門館に聴きに参りでしたので
時が流れている実感を痛感
ところで
今年、ゴールデンウイークまで雪、保つのかな?
三寒四温
どころではない
春の陽気!
半井小絵さんの笑顔からも春の実感です。
投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/03/21 0:40:13
反発した時期があったからこそ、その魅力をハッキリ感じ取れた今があるんでしょうね。
だから…それは、人生で必要な時間だったということ(о^∇^о)
それが分かれば…無駄な時間ではないんです(*^_^*)きっと(^_-)
投稿: 奏。 | 2009/03/20 20:01:39
先日、友人と「政治の世襲は困るけど、歌舞伎の世襲は納得」と話していました。『ものごごろついた時には、すでに歌舞伎の世界を空気のように自然に呼吸していた』人が、きびしい修行やしきたりに耐える説得力でしょうか。そこからさらに、恋愛!や、家族の病や、日常に起因するさまざまな感情を醸成して、今に生きる人たちに伝え、鮮やかに突きぬけて「かぶいて」いただきたいと思いました。
投稿: 島唄子 | 2009/03/20 17:03:23
息子と一日サッカーボールを蹴りっこしていました。泥で足が滑って、息子は二回ほど、頭まで泥だらけに。夕方にかけ、気温がさがり、着替えさせるたびに一枚ずつ増やしました。こんな母として当たり前のことに「ありがとう」と言ってくれる息子は、本当に神様がくれた宝です。
職場の上司は無能なのか何なのか、私の顔を見れば「うまくやれよ」としか言わない。同じ「…やれよ」でも、「思いっ切りやれよ」とか言えないもんですかね。と思いつつ、私の耳は他人の独り言は聞こえないので、無視無視。かぶきたくてもかぶけない人もいるでしょう。私のようにかぶかない人生は一瞬たりとも生きられない星の下に生まれたものもいるのです。これが私なのだと気付いたのは最近のことです。
投稿: プンスカ | 2009/03/20 17:02:04
茂木ィ先生、ご機嫌いかがですか?(・ω・)/
真鶴合宿楽しそうですね~♪
歌舞伎はかぶくが語源なんでしょうか?かぶくというと、前田慶次郎や織田信長が浮かびます。男の美学でもあるんだなぁ~女がかぶくとはほとんど言いませんものね。
歌舞伎ももともと大衆がお上に物申すメディアの一つだったのではないでしょうか?
かぶくことができるのは、精神が自由で骨太の人なんだと思います。
今の社会は確かに何かが狂ってるなぁ…
木をみると、まず太い幹があって枝があってその先に柔らかい葉っぱがついてます。象だって移動する時は子象を大人の象が囲んで移動しますよね。強いものが弱いものの盾となり支える社会が、幸せな社会の在り方ではないかしらと強く思います。今強いと思っているものも、時がたてば必ず弱いものへ変化するのですから。盛者必衰の理哉。まぁ強い弱いという二元的価値観もまた幻想ですが…多分…
変化しないものはこの世に何一つないのだと思います。うん。
投稿: 眠り猫2 | 2009/03/20 13:54:10
市川海老蔵さん、というと、お茶のCMや大河ドラマ「宮本武蔵」の鬼気迫る演技などが、個人的に印象に残っている。父君の團十郎さんが白血病で倒れられた時、凛として歌舞伎の舞台に立たれていたのも、また記憶に新しい。
海老蔵さんが「宮本武蔵」に出演されていたのは彼がまだ「新之助」と言われていたころだったが、連綿たる伝統が息づく歌舞伎世界で、ただその伝統にしがみつく事無く、新たな領域にチャレンジしゆく、画期的な姿勢が、その頃から海老蔵さんに溢れていたように思う。
歌舞伎界のエリート、御曹司だからといって、大人しく伝統の中に埋没して生きるのではなく、大いに「かぶいて」、伝統に染み付いた「しがらみ」の鎖を切り、枠を破って風穴を開けていった、ということは“ちっとやそっと”な、並大抵の意志では出来なかったのではなかろうか。
新世紀に入っても、まだこの島国では、様々なしがらみとか、枠や規定が生きていて、若い世代がその中で窒息しそうになっている。
その中でただ大人しくしていれば、何時かは世の権力的な存在のいう通りにしか動かない、意志のない『ロボット』のようになってしまうだろう。
如何なる芸能も…歌舞伎であってもオペラであっても…その中に息づく伝統的スタイルを只管守ることは、確かに大切なことには違いない、が、そのことばかりにこだわっていては、何時かはその芸能の“魂”は死んでいくだろう。
海老蔵さんのようなしがらみを打ち破り、革新を齎す「かぶく」人がいたからこそ、歌舞伎はその“魂”を今も連綿と保っているのだと思う。
ところで、海老蔵さん以外にも、革新的な歌舞伎俳優としては、個人的にも、中村獅童さんが印象的だ。獅童さんも、歌舞伎の伝統に埋没せず、映画やドラマなど、違うジャンルに果敢に挑みつつ、歌舞伎の舞台に立ち続けている。
この二人をはじめ、新しい力が、歌舞伎の世界の“魂”を新しくしてくれることを願ってやみません。
投稿: 銀鏡反応 | 2009/03/20 13:23:15
茂木健一郎様
市川團十郎さんの重厚でダイナミックな舞台と
普段の愛嬌のあるお人柄に惹かれております。
在籍NGOの代表が團十郎さんの奥さまと
仲良しなので海老蔵さんの大阪舞台、見に行きます。
かぶく、坂本龍一さんが思い浮かびます。
思いがけないことをしても、さまになる。
おちついていることと、激しさとを合わせもって
いることは大事かもしれません。
投稿: Yoshiko.T | 2009/03/20 10:28:28
おはようございます!(^^)!
三ツ石海岸、石が連なっていてボーっとするにいい場所ですね。
Google earthでは男っぽい海岸に見えました。
太平洋からの日の出、素晴らしいでしょうね!!
余談ですが、海の近くに住む時、東の日の出を選ぶか、西の日没を選ぶか迷いません?¿(*^^)¿?
どっちも素晴らしいのですよね〰!
「かぶく」の、語源から派生、素敵ですね。
茂木さんの姿勢。
”タカさん”もそうですね。
「かぶく」、全ての活動において必要だと感じます。
今日初めて知った単語でした。
昔から存在した単語なのに、すごく前衛!!
こんなにいい単語、私、今日からたくさん使います!(^^)!
星野英一さんは“本水”を知っていてその口調になったのですか??
その機転、素晴らしい!!
生活に芸術が生きている気がします!(^^)!
豊かだなぁ!! L'Art de vivre!!!!~✿
H&Mのジャケット姿、見たいな!!
春はうきうきしてお洒落したくなりますねー(♯^^♯)V~♬♪―♩♫♩✮
投稿: 夏輝 | 2009/03/20 9:37:20
茂木さん、もうじき桜満開の、季節が訪れますね。春のウォーキングコ-ス、桜並木の向こう側、海岸の波打ち際へ、と決めました。
投稿: life | 2009/03/20 9:27:16