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2009/02/18

A系列

電通でミーティング。

品川プリンスホテル。服部幸應さんと
対談。


第1回全調協食育フェスタにて。

銀座にて、講談社の西川浩史さん、
ペダルファーブックス
の米津香保里さんと打ち合わせ。

PHP研究所の木南勇二さんたちと
銀座の「水谷」に行く。

先日『プロフェッショナル 仕事の流儀』
にご出演いただいた藤田浩毅
さんがいらしいて、お話しする。


PHP研究所へ。横田紀彦さんも
ご一緒して、いろいろとお話しした。

マクタガードの時間論
においては、
「過去、現在、未来」のA系列、
「より早い」「より遅い」のB系列、
それに順序構造であるC系列の関係が
議論されている。

このうち、時間の変化を担っているのは
A系列である。かつて「未来」であったものは
「現在」になり、やがて「過去」になる。

この、私たちが誰でも知っている移行が
時間の本質であるが、この変化を
記述しようとすると無限後退に至る
ことをマクタガードは論じた。

「今」の特別は奇跡である。

「今」に没入するしかない。

奇跡に段階や等級などない。

ものみな、そのままあるだけで、
奇跡である。


____________

 万物は流転する。何事も、「今、ここ」に安定してとどまらない。それでも、この世に生を受けた以上、自分の限りある滞在時間のうちくらいは、何かしっかりしたものを掴んでおきたい。そうでなければ、「今、ここ」でさえ、自分のものとすることができない。足元が揺らいで、一歩も歩くことができない。
 かつて、フルマラソンを走って、つくづくわかったことがある。自分自身の身体は、それ自体の中において「何とかしなくては」ならないのであって、誰も助けてくれはしない。沿道で歓声を送る観衆も、半分に切ったバナナやチョコレートを差し出してくれるボランティアの人も、共に走る友も、自分のフィジカル・コンディションを助けてなどくれない。
 最初はそれなりのスピードで、やがてゆっくり、そして最後にはとぼとぼと前に進む自分の身体は、この宇宙の中で絶対的な孤独であり、その中で進行している「分子の交響曲」がどのような調べを奏でるか、それによって果たして自分がマラソンを完走できるのか、それとも途中で倒れてしまうのかが決まる。
 ふらふらと走りながら自分が手術台の上の患者になったように感じられる。外科医のメス捌きも、麻酔医の深謀遠慮も、人工的に呼吸や、心拍や、その他様々を助けてくれる装置も、最終的には全て自分の生命維持に対する間接的な応援団に過ぎない。手術台の上に横たえられた患者の身体は、孤独なマラソンを走っている。誰も患者の代わりになることができない。生きるか死ぬか、やがて意識を取り戻し、にこりと笑って日常生活の中に戻っていくことができるかどうかは、全て、患者の身体という一つの有機体の固有の力学にかかっている。
 富める者も、貧しき者も、賢き者も、愚かな者も、誰も「今、ここ」にあるただ一つの肉体から逃れることはできない。これは、実に、人間の生の絶対唯一の条件である。人間とは、生きている限り、一生手術台の上に横たわる患者のような存在である。ただ、病院の治療室という特殊な条件の下で一般普遍的な状況が顕示されているだけに過ぎない。
 自我は、宇宙の無限の広がりをあたかも自らのことのようにとらえる。それどころか、この宇宙が数限りない可能性の一つに過ぎないということも認識する。遙か彼方に模様が蠢いているのが見える、そんな万華鏡をのぞき込むようなことも平気でしてみせる。人間の意識は、「今、ここ」にある脳髄によって確かに生み出されているにもかかわらず、遠く、存在し得ないものまで志向することができる。
 私たちは手術台の上の患者である。自我が依って立つものは、抽象的概念でも、情報でも、ましてやお金などというものでもなく、結局は自分の「身体」でしかない。それにもかかわらず、人間は無限をとらえることができると勘違いしてしまう。「今、ここ」の身体に永遠に束縛されているにもかかわらず、真空には実は10の100乗以上の可能性がある、今私たちが住んでいる宇宙はインフレーションの過程でキノコのようにボコボコ生まれてきたもののうちのたった一つに過ぎないなどと嘯く。「今、ここ」の有限と無限定な志向性の間の乖離に、私たちは引き裂かれている。

茂木健一郎『今、ここからすべての場所へ』 (筑摩書房)より
_________

2月 18, 2009 at 07:20 午前 |

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コメント

こんばんは
バリはこんにちはですか。。

博士はたまに大胆なことをされるんですね。
すこしはらはらしました。

あるがままで奇跡。
このごろの日記はとくにすてきですね..
今日も。

NHKで来週の土曜に白洲次郎さんのドラマがあるとのことで
どうかと思ったんですが、
予告を目にして、出演者のお話など聞いたら、
すこしたのしみになりました。

そこで次郎さんが
ノーブリス オブリージュ。 
と言った場面を日記を読んで思い出しました。


星はかわらないですね..
ひさしぶりに見られました。

尻餅をつくまでに
知らぬまに消えて見えなくなるものもあるのでしょうか..


こちらは朝の四時半をすぎました。

お疲れが癒えたらよいですね。

おやすみなさい

投稿: M | 2009/02/22 4:50:06

一足先にへのコメントでしたが、コメント欄間違えてしまいました。(ノ_<。)
スミマセン。(T_T)

投稿: wahine | 2009/02/19 19:32:02

茂木先生こんばんは♪
読者の1人として、言わせて下さいませ。柳川さんおめでとうございます。(≧∀≦)ノ♪♪♪
 

先生のお言葉は自分への叱咤激励として胸に刻ませていただこうと拝しております。


今日はどっしり凹みました。(/_;),

何故ならば、これはどういうことなのか。と考えているうちに、自分の書いている事がまさに無知の知の欠如を晒しているような文章のオンパレードではなかろうか・・とグサリときたからです。
 
今日は大いに落ち込み反省会しようと思います。

 
●追伸●
先生はまだまだこれからお仕事でしょうか。日中は春のようですが夜は冷えますから、暖かくされてお帰り下さいませね。(*・ω・*)ノ☆☆☆

投稿: wahine | 2009/02/19 19:28:53

もぎさん。もぎさんの文章とよぶのか言葉とよぶのか・・はカラダの中で何かが揺すぶられるの。なんだろう。

投稿: 井上良子 | 2009/02/19 11:45:02

茂木ィ先生、おはようございます\(^_^)/
インターネットで、無知の知の欠如を露呈している文章が多いってドキンとしました(汗)
茂木さんの言葉は、坐禅している時にバチンと打っていただくのに似ております。
林望さんと対談も出版されるのですね。
楽しみにしていま~す。

投稿: 眠り猫2 | 2009/02/19 8:41:45

茂木健一郎さま

朝、8時8分 には
宿泊先のオーセントホテル小樽さまからキロロスキー場さまへの無料バス
セピアライナー号に乗るので、毎日、
朝食は7時から
今の時間に起きる、良いのですが

となりの部屋であろう
紳士

ハックしよーん!!

大きな、くしゃみ三連発が今朝、目覚まし時計替わりに

さてさて
半井小絵さんの気象解説、的確で昨日は氷点下と前日に解説
昨日は一枚、多く羽織り暖かい!感じで北海道は小樽に参ることが出来ました

茂木健一郎さま
スキー、仕事ではないのですが
7時からの朝食も、そこそこでないと8時にはオーセントホテル小樽さまのロビーにいないと

独身の一人でスキー
朝の慌ただしさは逆に
良いみたい

規則正しい

寄宿舎?

そこまでは

しかし

のんびり気分では

ハックしょーん

逆に、笑えて気分の良い目覚めの朝です

起きます!

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/02/19 6:32:59

今、ここに、自分が在る…という“奇跡”。

その“奇跡”を、私達は瞬間瞬間、感じながら、生きているように思う。

時にはそのことを、魂の奥歯で、うんと噛み締めながら、思いを廻らし、“イマココ”の奇跡に幾許でも感謝したいものだ。

投稿: 銀鏡反応 | 2009/02/19 4:57:44

茂木健一郎様

先一昨日、『今、ここからすべての場所へ』購入致しました!

投稿: m | 2009/02/19 1:50:44

『色即是空 空即是色』
 
有限である物体の中に居て・・
無限を むさぼろうとする「意識」の実体とは なにか?

いったい・・ 存在の根源とは どういうものなのか・・?

そんなコトが 知りたくて 知りたくて・・!!!

計り知れない 『とらえどころのない なにか☆』を
いつも・・
感じては 涙があふれたり、 ただ 呆然としたり・・


けれど この「味わい」が 愉しくて! 愛しくて! 切なくて!


そんな命の中・・ 時空を 無邪気に漂ってる わたしです♪

茂木先生の おコトバは とても 深くて 深くて・・

脳内麻薬が にじみ出すほどに! 感銘を受けています☆☆☆


わたしも「赤毛のアン」の世界が 大好きで、

詩が浮かんだり、音楽を奏でたり、
香りを愉しんだり・・

瞑想していたり、空想していたり、
肉眼で 捉えられないものに 想いを はせていたり・・


たくさんの「錯覚」に操られるのも 認識しながら
『感覚』を 大切に生きてる ひとりの女性です。


茂木先生の おはなしが もっともっと 聴きたくて!!

さいきん どんどん 惹きこまれていくのを 感じています♪♪


茂木先生という・・ ひとりの 生温かな 意識の中に、
「無限の宇宙」を 感じるから。。。

投稿: Mari | 2009/02/19 0:51:54

茂木健一郎様

茂木さんの言葉はいつもとても愛情深い
ということを感じます。
どうして、そんなにお優しいのですか?

ある番組の中で、
「今僕にいろんなアイディアがやってくるのは、
やってくるのを待っている状態は、
子どもの頃、森の中で蝶が飛んでくるのを
じっと待っていたことが役に立っている、
出来事は、時間をかけてその意味がわかるんです」
というようなことをおっしゃっていました。

愛情深い言葉を、私たちに語りかけてくださるのは、
茂木さんのいつ頃のご経験がそうしてくださるの
でしょうか? ちょっと気になります。


今日、茂木さんの日記を読んで、近くの小さな
森を走りに行きました。とっても楽しかったです。

私の子どもの頃の、おとなになってからの、
走っていた経験が、今ふたたび走るように
なったことを感謝しています。

投稿: Yoshiko.T | 2009/02/18 23:27:46

茂木先生、今日も1日お疲れ様でございます♪

ものみな、そのままあるだけで奇跡である…生きていること、存在そのもの。とても奥深いのです。。奇跡。
 
未来、現在、過去、時間の本質をたどると無限後退に至るとは。だからこそ今この瞬間を大切にせよと言うことでしょうか。
 
肉体から逃れることは出来ない、そう考えると何だか急にとても不自由でちっぽけに思えて。

魂は身体を得ることで自由を失った。今ここに縛られているから、人は自由に、遠い宇宙に憧れを抱くのでしょうか。
 
負けて倒れ込みながらもなお、無限を語り続ける。負けた方が自由…全てを心から受け入れることが出来たとき本物の自由を手にする事が出来る。ということでしょうか。

先生、もう少し自分なりに考えてみたいと思います。m(, ,)m

投稿: wahine | 2009/02/18 23:21:51

おおォっ❢
マラソンと手術と人生が掛けられるとは…!!
(まだそこまで読んでおりません(ーー゛)

15㎞しか走った事ありませんが、それでも走りの自分との戦いのじれったさ、めんどくささ、きついのに諦めきれないもどかしさを感じ、それでも自分はきっと数時間後にはやり遂げているはずだ!!という、期待・希望を捨てきれず、前に進むしか てとてと足を進めるしか ないのです。

なんなんでしょうね。 あれは…。
確かに、他の誰でもなく、自分の精神活動によって自分の肉体が引き受けるしかない。
選択は一つでも、宇宙の可能性のインフレの内の最高の一つを自分は享受できるはずだと思い込んでいる。
だから私はとりあえず”今”を信じて、自分の選択を信じて、前に進めるのだと思う。
強引g my way !!!!(*^^)ピースッ~♫♩♩〰♩✶

ねっ! 茂木さん!!!!

投稿: 光嶋 夏輝 | 2009/02/18 22:56:47

マラソンは人生と重なりますね。もちろん、音楽にも。
一歩一歩のスライドにひたすら集中して、はるか遠いゴールに向けて走るマラソン。
かたや、人生は、目の前にある課題をひとつひとつこなしていくこと。
そんな「今」の積み上げが、長い人生を振り返った時に、自分の一番行きたかった場所に到達するか、その近くまで来てるんじゃないかと、改めて考えさせられました。
それには、「今」を奇跡と認識し、「今」に没入しなければならないわけですね。
この世に生まれてきた以上は、限りある時間を無駄にしないよう、精一杯、生きていきたいと思いました♪

投稿: シリンクス | 2009/02/18 22:14:50

今日のお話し、分からないところを何とか調べましたが…よく分からなくて、頭ぐるぐるいっています(;^_^A

どうゆうことなのでしょうか??アキレスと亀や、マクタガートの時間論とは??
でも…『今ここからすべての場所へ』読めて嬉しいです゚+。(*′∇`)。+゚

茂木さん(о^∇^о)
ありがとうございます!

投稿: 奏。 | 2009/02/18 21:42:22

親愛なる茂木ィ先生~(>_<)

今帰り電車です。今日は色々大変でしたが(((゜д゜;)))このブログを支えに?頑張りました。フラフラ~
今ここに没入する。今ここにあることが奇跡って言葉が支えになりました。
取り組むべき課題がある時、どんな状況でもベストを尽くさないと、その時間は虚しいですものね。
茂木さんは瞬間瞬間を燃焼されてますね。
かっこいいです
アントニオタブッキがインド夜想曲って著書のの中で、「肉体はスーツケースみたいなものだ」と言っていました。
確かにレンタルスーツケース?かもしれませんが、このスーツケースは宇宙から私だけが引き受けるしかないのだから、今ここを燃焼して生きていきたいと思います。
キリスト教の瞑想家シレジウスの言葉で「安らぎが最高善である」という言葉が好きです。
禅の「無事是貴人」て言葉も支えになってます。
この場合の無事は何事もないのではなく、有事の非常事態でも平常心を保つことだと思います。
今日は色々勉強になりました。
茂木さん、いつも支えになるお題をありがとうございます。
m(_ _)m

投稿: 眠り猫2 | 2009/02/18 20:51:58

脳だけでは、自我は生じないと教えていただきました。
つまり、脳と体は補完的だということでしょうか。
その身体は、
自分で選択できるものではなく、
一時、与えられているものではあるまいか。
唯物論。それでは

遺伝子の4文字の記号のパタンの組み合わせは
天使の宝くじではあるまいか。

投稿: NHK | 2009/02/18 19:15:48

A系列は知りませんでした。ABC分析は知ってますが!!
小売業で販売動向を分析する指標で、よく売れる商品をAランク、普通に売れる商品をBランクあまり売れない商品をCランクにします。
Aランクの商品が売れ筋商品と呼ばれます。 Cランクにも入らない商品は死に筋商品です。 『プロフェッショナル』に出演するゲストは特Aです☆ 特Aは僕が勝手に作りました♪(爆) 勿論、茂木さんも特Aです☆
Aランクの壁を突き抜けた所に特Aは存在します!!
最初はCランクから始まり、何とかBランクになります。その後は高原状態が続き、結果が出せないのでAランクの評価は貰えませんが、革新的な発想で愚直な努力を続けると、突然に霧が晴れた様に目の前の風景が変わります♪結果はAランクを飛び越えて特Aになります☆ スポーツで例えるとイチローや北島です。独自の理論で、ある時点から爆発的に成績が良くなってます♪(爆)
僕の方法論も最初は全く評価されませんでした×(泣) それでも続けていたら、突如として売れ始め経常利益が3倍以上になりました!!
間違われて、直属の上司がヘッドハンティングに遭ったほど、強烈なインパクトを内外に与えました!?((((゜д゜;))))

投稿: ケン | 2009/02/18 11:20:25

こんにちは

奇跡の木(宇宙)の奇跡の実(人間)、実の中に種があるように感じます。(^^)

投稿: 奇跡のクオリアby片上泰助(^^) | 2009/02/18 8:31:13

今に集中したい!と思いました。

投稿: ふぉれすと | 2009/02/18 8:03:21

おはようございます!『今、ここからすべての場所へ』
是非読ませていただきたいと思います!

田舎なので、なかなか新刊が書店に出ないのですが。
すぐ注文させていただきます☆

>ものみな、そのままあるだけで、
 奇跡である。

朝一番、感動で震いました。また来ます!

投稿: 月のひかり | 2009/02/18 7:48:07

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