薄ぼんやりとした顕れ
何の変哲もない小径に入っていくと、
家の雑然と散らかった庭から
鶏の声が聞こえて、
歩んでいくと、
ぱーっと爆発したように
鶏たちが走り出す。
親鳥のあとを、雛たちが
おいかけて、そのすぐそばに
痩せた子猫がいる。
過去というものは、たとえ
一秒前でも、もう決してそれに
アクセスできないという点において
絶対的隔離の向こう側にある。
しかし、長き年月を経た過去は、
やはり、その距離が大きいという
だけではない現象学的次元を持つ。
何層にもその後の経験が
重なって、まるでその上に繭が
覆ってしまった白熱電灯のように、
薄ぼんやりとした顕れで
私たちを誘うのだ。
それは時に現実の中に姿を見せて、
「ああ、これか」と脳髄を電撃する。
2月 22, 2009 at 08:42 午前 | Permalink
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プロスポーツの世界にあって、
人を育てて勝つプロフェッショナル達、
3人の男が「勝負の世界」を語る。 [続きを読む]
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コメント
こんにちは
この文を読んだとき、
自分の体が繭でぐるぐる巻きになった夢を見そう..と思いました。
そう思ったら、代わりに博士の夢を見ました。
ちょうど2、3日前にまたお会いしました。
白熱電灯
私は何年か前のことでもすこし前におこったことかのように
くっきり感じられることがあるんですが、
お忙しいからでしょうか
博士にとっては過ぎた事はどんどん、
次から次へ葬られてしまうんですね。
書こうと思っていたこといろいろあったはずが
間をおいてしまったのでわからなくなってしまいました..
お花のかわいいのがいろいろ咲き始めましたね。。
暖かい日が増えて体が動きやすくなりました。
春はもうすこしですね。
お体にお気をつけて
がんばってください
投稿: M | 2009/03/08 15:17:38
空に浮かぶ雲を眺めるように自らを眺め、且つ、さしていた傘を入り口で右に置いたか左に置いたか分かっている。
インド人司祭Anthony de Meloの著作に接してから、そんな風に生きられれば、と望んできました。
それは茂木さんの「脳内現象」の抜粋から考えるに、現象学的意識を持ちつつアクセス意識を持つということなのかな?と思いました。
バリの茂木さんは、もうおしまいですか・・・
ご存知でしょうか?今日は、“灰の水曜日”
カトリックでは、ごミサで灰を額に受ける式があり、健康な人は断食をして過ごすことになっています。
4月12日の復活祭の準備としての四旬節は、今日から始まります。
投稿: masami | 2009/02/25 13:17:38
おはようございます!
今日は喜雨です。
そちらはどうですか?
ガムランが響いていますか??¿?
サンドキャスルに出会えるといいですね。
投稿: 光嶋 夏輝 | 2009/02/23 7:53:01
茂木健一郎さま
二度寝から、さてスキーの準備
私のスキーブーツは
本当の本当
ラング本社のワールドカップ選手専用のアトリエで特別組み立てで特注の特注
実は、それが重要なことなんです
投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/02/23 6:30:00
茂木健一郎さま
書き忘れ
気象解説の半井小絵さんの的確な気象解説が今回も助かってます
今晩も半井小絵さんの気象解説、凝視に耳はダンボ状態にです
一寝入りします
二度寝、 寝過ごしに注意ですね
今日もキロロスキー場さまに元気よく!
投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/02/23 5:39:12
こんにちは
チンパンジーが、コインを自動販売機に入れて、リンゴ片を得る、実験がありますが、過去の記憶が集まって、コイン・リンゴ反応選択性ニューロンが出来るのではないでしょうか?。(^^)
投稿: 記憶のクオリアby片上泰助(^^) | 2009/02/23 4:31:23
土日が休みでした。
今日からまた1週間が始まります♪
朝の3時33分に目覚めたのは遅刻してはイケナイという深層心理が体内時計に働き過ぎた結果でしょうか!?
職場が遠くになったので、毎朝6時には家を出なければなりません。
マイカー通勤なので渋滞に合わない時間に行き、会社にはだいぶ早く着きます!!
帰りは肉体的には疲れてますが、遅刻へのプレッシャーからは解放されます。
投稿: ケン | 2009/02/23 4:17:27
原始的な表現があって、それをクラシックみたいな表現でつつむ。 さすが、茂木さん! フォークギター弾けるけど、実はクラシックギターもひけちゃうんだ!って感じの文章。 楽しいですね! おやすみなさい!
投稿: 中村蔵人 | 2009/02/23 2:18:29
知的な文章、羨ましいですね。 明日は早起きです。 おやすみなさい。
投稿: 中村蔵人 | 2009/02/23 1:57:39
茂木さんに質問があります!
大学の授業で脳について気になったことがあるのですが、
脳の発生で神経管が一本なのにその後、脳胞は二分しているのは何故
なのでしょうか?
自分で調べてもよく分からなかったのでぜひ教えていただきたいです!
投稿: よろし | 2009/02/23 1:27:51
茂木さんのNHK俳句に参加いたしました。楽しかったー。
久しぶりに「俳句脳」の部分が刺激されました。あれだけの短い時間で、万葉集から漱石、子規のこと、現代俳句のことまで。
西洋合理主義に精通しておられる茂木さんが、桑原武夫さん的陥穽におちいることなく、短詩型(和歌、俳句)へ清涼な目を持っておられることに感動。
今度は、内向きでウェットなギョーカイのほう自体が問われていくことかと。
「群れを成して壇と呼ばれるものを形成している人たちは、ハッキリ言ってしまえば終わっている」(『俳句脳』)と言われる茂木さんと「私は壇に興味はありません」(同)と答えられる黛さんとで、何か新しいムーブメントが起きてほしいなあ、と。
『生きて死ぬ私』、『脳と仮想』、『俳句脳』、『今、ここからすべての場所へ』のご著作の系譜は、後年、大きな体系となるであろう”茂木さん詩学”の始まりなのかもしれない・・・。
投稿: 砂山鉄夫 | 2009/02/23 0:29:42
ちょっぴり切なく感じました。何故でしょう。
1番懐かしく愛おしいものは夢にも出てきてくれません。薄ぼんやりとした記憶の中で表情さえも曖昧なのです。
しかし、その繭の中で何よりも美しく存在しています。
ところで先生、バリ島楽しまれていらっしゃいますでしょうか。日焼けした肌にはアロエが良いですよ。(≧ω≦)b
またお時間のある時にでも、先生のお写真など拝見できたら嬉しいのです。
それでは先生にとって素晴らしい&happyなご旅行となりますように~。( ̄ー+ ̄)♪♪♪
Selamat tidur(●ω●)ノシ☆☆☆
投稿: wahine | 2009/02/22 23:54:03
初コメントとなります。
以後宜しくお願いします。
国公立受験を控え、不安が募りますが
茂木先生のブログを拝見することで更なる高みに近づきたいと思い、モチベーションを高め、不安を希望に変えることができます。
これからも愛読させていただきます♪
投稿: Iolite | 2009/02/22 23:47:57
「ああ、これか」という電撃とは、どんな事でしょうか?それは素敵なことなのかしら??どんな事か分からないのが、残念(><)
私も、ぜひ現実で見たいです!(*^_^*)
今日の日記の冒頭部分、のどかな感じがして、気持ちをゆったりとさせてくれるようです(о^∇^о)
投稿: 奏。 | 2009/02/22 19:53:55
今夜の空はどんななのか

24日をピークに彗星がぼんやりと
ダストテイルと共に見えるそうです。
http://www.astroarts.co.jp/special/c2007n3/index-j.shtml
実験教室の先生が今日、教えて下さいました。
大きなビルに囲まれ
夜も働く人々を照らす沢山の照明の傍で
今夜も星が見えるのかどうか。
宇宙(ソラ)の中に居ることは

忘れないでいたいのだけれど。
投稿: ukulele mam | 2009/02/22 17:52:43
茂木先生 こんにちは♪
私は時々「昨日はこうしていたのに、昨日からは今こうしているのがわからないんだ。」と考えます。また「今こんな状態だけど、未来の私はどう思っているのかな?」と思ったことを、今の私が覚えていて、過去のそう思っていた私を思い出したりします。過去=死は、ほんとにどんなに少しの時間でも戻らなくて、その間にはどんな時間の溝があるのでしょうか?未来には行けても過去には戻れないと言うのには、何か戻らなくてもいい理由があるはずです!未来に行けるのは、未来は行ってもいい理由があるはずです!自然の、宇宙の法則がそうなった理由をわかりやすく知りたいと思いました。時々過去になることを意識して、今はもう過去、今過去、今過去と思って行くと過去の先頭に今があるんだと…!先頭はいつも先頭で、けっして抜かれることはないんです。過去の思い出が、「重い出」にならずに、「想い出」になるような過去にしていきたいです♪
投稿: 平井礼子 | 2009/02/22 15:59:42
旅はいいですね。
そんな大きな自然に包まれてみたいです。
目に映るすべての事、カラダで感じたことのすべてが、やがてメッセージとなって、突然やってくる!
大きな大きな繭づくりのために、アクティブに、動き回らなくっちゃ♪♪♪
投稿: シリンクス | 2009/02/22 14:29:39
打撃
的確な打撃
的確な打撃は 陰となり 陽となり
やがて 覚め 醒める! ・・・☆ 顕著
:本日 茂木健一郎著 「脳と仮想」 断絶の向こう側の他者の心
他者の心は 仮想なり 他者との相関 無限なり
繋げるか 繋がるか それが問題 其の一 其の二
相対心
投稿: 一光 | 2009/02/22 13:13:21
鶏と猫のいる風景…それは、バリ島から海を隔てた、この島国に何時頃まで、あったのだろう?
以前母から、鶏の放し飼いの話を聞いたことがある。こけっこけこっこぉー、と鳴く声は毎日のように聞こえ、そしてこれまた毎日のように、産まれたてのタマゴがとれた、という。
タマゴは、母鳥の体温が残っている所為か、それはそれはホカホカだったという。
コンビニやスーパーで、透明なパックに売られている、冷えきったタマゴしか知らない私達には、それは驚異の光景に思えた。
茂木さんが訪れられたバリ島の路地には、鶏の親子が地面をトコトコ駆け回る、ひなびた光景がまだ、残っていたのだなァ。
昨夜TV番組で見た東京の東向島の、下町の光景は、私達の幼少を生きた頃の、もう脳裡にしか残らない、街の光景と重なる。
でもそこは、バリとは違って、灰色の空気が、ただよっていた気がした。
バリ島の休日が、茂木さんの胸に、数多の良きものを残してくれますように。
投稿: 銀鏡反応 | 2009/02/22 13:00:07
こんにちは。毎日拝見させて戴いております。
今日の、脳髄電撃。
宇宙探知機、スピリット。竜巻で身体についた塵が吹き飛ばされて、身も軽く元気に力強く動けるようになった。と、耳にしたとたん、゙ンッ!!゛私の場合も、何年も続いた、あれは、大掃除だったのだ!! 竜巻の時期も本当はいいものなのだ。必要な素晴らしい時期、実は、恵みの現象だったのだ。と、ヒラメキました。 毎日、素晴らしいきずきを有り難うございます。
投稿: ぶらんか | 2009/02/22 12:25:38
茂木健一郎様
..........ジョギングされたのですか?
バリ島の香りがしてきます。
茂木さんの途方もない経験が
「ああ、これ」と導いてくださるのでしょうね。
ありがとうございます。
海を眺めて、星を眺めて、
茂木さんが駆けている。
どんな御本が生まれるのでしょう。
どんな茂木さんに逢えるのでしょう。
投稿: Yoshiko.T | 2009/02/22 11:28:49
兼六園の雪吊り、美しいですね。バリの太陽も、きっと。小学館の西洋絵画の巨匠、毎週のお楽しみです。ルノアールは「人生には不快なものがたくさんある。だからこれ以上、不快なものをつくる必要はない」とひたすら「美しい絵画」を描きつづけたそうですが、私も近年、なるべく美しいものを見るように暮らしてきました。それによって魂が浄化されるように。そうすると日本人からだんだん遠ざかってしまうので、それでも踏みとどまって凝視していると、様々なボランティアに従事する若い人たちが見えてきました。柔らかい心と聡明な知性を持つ素朴な若い人たち。こういう人たちを大切に育ててゆくことがこれから日本に大切なんじゃあないかしらと、思いました。それにしても、
Have a nice job vacation!
投稿: 清水 雅恵 | 2009/02/22 10:51:48
村上春樹氏が『私たちを守るはずの体制が、私たちの壁になり、私たちはその壁に卵のように扱われる…』と言うようなコメントをイスラエルの文学賞受賞式で、言ったと日経新聞にありました。SNSやブログが将来のジャーナリズムに成り得るとある学者さんは言います。以上のコメントと、茂木さんのブログや体験談に寄せられるコメントを読みつつ、目の悪い僕がある夏、我忘れ、阿蘇で見上げた星の照明に見とれたことを思い出しました。現代、経済効率利益追求主義に血眼になっているは周知の通りです。大前氏の最近の著書で藤原氏の『国家の品格』を批判していたことを思い出しました。大前氏は藤原氏の考える情緒主義はポルトガルに成り下がると。なんとなく、文明が栄えた国が、例えばギリシャなんかが、世界経済を賑わすニュースが、あまり見られないのは茂木さんの言う意識の根源があるのかなと思いました。また、阿蘇から星を観に行きたいです。
投稿: 司書 | 2009/02/22 10:11:06
そういうもやもやが立ち昇って
はっと現実で見えた瞬間…。
デジャブみたい。
遠い過去は夢だったように感じることもあります。
パズルのほんの一部、
ピースとピースがはまった時みたい。
投稿: 光嶋 夏輝 | 2009/02/22 10:05:08
一瞬、一瞬…光の速さで私たちの目の前を、「現在」が過ぎる。その中に押し込められた「何かいろんなものたち」もろとも。
「現在」は過ぎ去ってすぐに化学変化をおこして「過去」というものに変わる。
そして私たちの背後の、見えない何処かで、私たちの知らぬ間に、うずたかく重なり続け、今度は「歴史」と呼ばれる莫大・膨大なものに変わっていく。
「歴史」は、時折私たちの目の前に、様々な姿をとって、その巨体をぬっとあらわすことがある。
あるいは城壁、あるいは神殿、またあるいは薄明るく光るカイコの白い繭のようなものとして。
その中に必ず、私達ひとりひとりの、生きてきた時間の“痕跡”がある。
投稿: 銀鏡反応 | 2009/02/22 9:55:16
茂木さん、今日も早いお目覚めですね。(*^。^*)
「小径を入ると鶏?!」・・・これは「夢」ではなく、
「現実」のお話しなのでしょうか?!
う~ん、今、茂木さんはどんなところにいらっしゃる
のでしょう???
過去は1秒前でもアクセスできませんが、「未来」は
夢と共にやってきますね!(笑)
楽しい夢をいっぱ~い思い描いて、お仕事&リラックス
が出来たらよいですね!
どうぞ、素敵にお過ごしください。
投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2009/02/22 9:15:26
茂木健一郎さま
私は今日もオーセントホテル小樽さまの827号室から出陣
キロロスキー場さまにのバスの中
茂木健一郎さまはバリ島
バリバリ!
私はスキーに
茂木健一郎さまはお仕事に
投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/02/22 9:01:28