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2009/02/16

how to argue

大学院生の時に、予備校で講師のアルバイトを
していた。

その古巣の大塚先生が呼んでくださって、
「本校」で講演をした。

いかに受験に向き合うか。

ぼくは思う。受験というものが、もし、
メンバー数が限られた「クラブ」
に入るための技術を競う場ならば、
そんなものは長続きしないだろう。

いったん「クラブ」に入ってしまえば、
あとは油断してしまう。
そういう人は、徐々に輝きを失っていく。

実際、「有名大学」を出ても、
その後どんどん「普通の人」になって
行く例は、枚挙に暇がない。

ぼくは言った。
「受験生よりもぼくの方が
よほど猛勉強しているぞ」

本当に大切なのは、「学ぶ」という
ことに対する情熱を植え付けることである。

そうすれば、今の時代、いくらでも
独学できる。

子どもたちの心に火をつけよ。
自分の心に火をつけよ。

日本の「受験」に対する方法論は、
クラブメンバーになることを唯一の
命題にしているようで、
炎のような向学心を植え付けることには
結局失敗している。
この国の低迷は、そのようなことと
関係しているように思えてならない。

金沢で会った
シックス・センス・リゾート・アンド・スパ
のソヌ・シヴダサニは、今では多くのリゾート
を持ち、環境関係の団体や
イギリスのチャリティーに全歳入の
5%を寄付し、将来はおそらく「サー・ソヌ」
になるだろうと思われる成功者だが、
オックスフォード大学での専攻は英文学
だった。

シェークスピアやカーライルを読んだの
だそうである。

ソヌは、「イギリスの大学はポリテクニーク
ではない」と言っていた。

「大学で学んだことは、いかに議論するか
(how to argue)だけだ」とソヌ。

リゾートを作るためには、現地の政府と
交渉したり、デザイン、システムを考えたり、
採算性を考慮したり、人材の登用に智恵を
しぼったり、さまざまな点において
智恵を巡らせなければならない。

ソヌの言う、how to argueが、そのような場面で
いかに役に立つことか。

日本の大学の受験勉強や、大学で教えられている
学問のあり方を見ていると、how to argue
が教えられているとは、とても思えない。

日本人の知の基盤を、たたき直す必要が
ある。


冷気の底にも、暖かさの種が
感じられるようになってきた。

そこかしこで、梅の花が咲いている。

2月 16, 2009 at 06:44 午前 |

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コメント

久しぶりにブログに訪問です。読むといつもホッとするというか「脳が元気になる」気がします。実は私事で何ですが今年の大学再受験を"一旦"断念、2月下旬渡南米にて出産します。今茂木さんのブログhow to argueを読み思ったのは、確かに私が大学に入り何が楽しかったと言えば友達と一つの課題について書籍を引用しつつあれこれ議論している時でした。私はまた日本の大学に戻り勉強したいと強く思います。再受験まで暫くブランクはありますが常に知的好奇心を失わないように生活していきたいと思います。言葉も知らない国での新生活。茂木さんの書物は勿論スーツケースに入ってます!心配事はパソコンからもブログ登録できるかな?!です笑

投稿: 山川 | 2009/02/18 0:04:33

こんにちは

>日本の「受験」に対する方法論は、
クラブメンバーになることを唯一の
命題にしているようで、
炎のような向学心を植え付けることには
結局失敗している。
この国の低迷は、そのようなことと
関係しているように思えてならない。


プロフェッショナルの番組を見てると、「本物指向だな。」と、思いました。(^^)

投稿: 本物のクオリアby片上泰助(^^) | 2009/02/17 1:26:16

外国にはディベイトの授業がありますよね。私が高校生の時は、非常に羨ましく思っていました。もっともっと国際交流の場が増えたら素晴らしいのに。日本の受験ですが、どうしてもっと意義のある内容に変わっていかないのでしょうか?怒!学びの炎ですが、やはり、周りの人や空間からの刺激や影響は非常におおきく大切で、何故日本はもっとア-トでexcitingな国にならないのでしょうか?国や地域、教育現場や家庭が一人一人が変わっていかなければ絶望的ではないでしょうか。怒!でもしかし、絶望的になるよりは一人一人の力を信じたい。一歩ずつでも前に進みたい。成熟した魅力ある大人でいたい、なんちゃって。

投稿: mic | 2009/02/17 1:24:41

冷静に熱く、友人達が議論をする時間に
自分が一員として参加出来た事を感謝します。
あれは目から鱗が落ちる瞬間でした。

ライオンと虎の対決みたいだった。
でも紳士的で冷静。次の日は普通に相対してるのにまたびっくりしました。
議題はいっぱいあったんだけど、火を噴いたのはアメリカの政治でした。
カナダ人はアメリカに対しては複雑な感情を持ってますので。

普通なら遺恨が残るのではと思って、翌日の仕事の環境を
ちょっと心配したんだけど。杞憂でした。彼らは普通に過ごしてました。
昨日の議論は昨日でお終い。

さっぱりしてるもんだな〜 と思い。
自分もそのように生きたいなと思いました。

投稿: hana | 2009/02/17 0:05:05

国立博物館で開催中の福澤諭吉展
昨日、行ってきました。
志の高さ、権威におもねることなく
自分を律して未来へ邁進するさまに、
改めて感じた圧倒的な存在感。

それにも増して心揺さぶられた
上原良司「所感」。
第二次大戦、特攻隊員として戦死した学生の
死前日に書かれた遺書。
端正な文字が並ぶその書は、不条理を受け入れるしかない
絶望的な状況で尚、冷静に気持ちを綴る22歳の青年の
心のうちを人々に反芻させます。

それを思えば、今は自分を奮い立たせれば
なんでもできる! そんな気がします。
ぐんぐん押し進む頼もしい後姿、
茂木さんにはいつまでも見せていただきたいです。

投稿: やまぼうし | 2009/02/16 22:41:09

子どもたちの心に火をつけよ。
自分の心に火をつけよ。

響く言葉です。

自ら、偉大な先人達や心が惹きつけられるモノに出会って感化されなければ。
常に 自ら、求めなければ。

その身近な手本となる親や大人達は、生き生きとしていなければならないと思う。未来・将来を悩んだり、不安がったり、環境のせいにしていたりしたら、子ども達も それが普通の世界だと思ってしまう。

大いに魅力的な大人が日本中に溢れたら、子ども達は羨ましがって自分も自分も!!って、早く大人になりたいって、一生懸命励むと思う。
今の私が そうなんですから!

「受験生よりもぼくの方が
よほど猛勉強しているぞ」

本当にすごい人って、自分でどんどん勉強して成長しているのですよね!仕事場の魅力的な大先輩のパタンナーは、自分で課題を見つけ、常に勉強してらっしゃいます。(茂木さんくらいから上の年代の女性の方々)その方々のトワルを見るとしびれます。
そして、家に帰ると茂木さんにしびれています✷!(^^)⋆✴
追う立場に在ることは幸せです。

もっと日本人は自分に自信を付けるべき!
その為に もっと自分を追求して、知って、好きになって、興味に没頭・熱中し、得意分野を深めるべき!!!!
語れる思想を持つべき!!!!
先生たちばかりに、役所ばかりに、日本の政治に、求めているばかりでは駄目ですよね。
子どもの親だったら、自分が一番の見本になる覚悟を持っていたい。

投稿: 光嶋 夏輝 | 2009/02/16 22:33:47

知の基盤を叩きわるのに一番効果的な場所は、
自己のミラーニューロンではないでしょうか?

鏡に写っていれのは真実ですか?

ミラーニューロンは、集団において和を尊ぶためには不可欠かもしれませんが、
集団そのものが危機に瀕しているときは、せめてこの危機を議論をする必要がある。しかし、
未だその場所すら見つけられず。

未来を創造する喜びは、生きているがみんなもっている。

投稿: 中村哲士 | 2009/02/16 21:45:04

本当は私達の、誰しもが持っている向学心の「種」。

それを芽生えさせ、成長させ、如何なる世の嵐にも揺るがぬ大樹とする為に、慈愛の太陽の光を注ぎ、厳愛の風を吹かせ、知性の花を咲かせ、人格の実を稔らせる為の、希望の慈雨を降らせるのが、大学の教授を含めた「教職」というものの、そもそもの使命のはずである。

残念なことに、今の日本の大学は、限り無い向学心と可能性を秘めた、将来の精鋭たちを、茂木博士が言われる所のメンバー数が予め決められた「クラブ」のような場所に化しているため、せっかくの精鋭たちが大樹に育つどころか、燃えるような向学心の芽を自ら萎れさせている…としか思えない。

周知のように、知性や智恵は、知識をただ小さな頭蓋に詰めこむだけでは、決して身につかないものだ。

もっと様々なバックグラウンドを持つ多数の人間とやりあい、互いに知の剣をふるってあるいは熱く、あるいは冷静に議論しあうだけの知性と智恵を身に叩きこみ、人格の原石を磨きに磨くような、そういう場に、日本の大学は変わらなければならない。

単なる「頭に知識をつめこんでいるだけの官僚」を作り出すだけの「増産装置」に成り下がっては、何の為の「最高学府」なのか。

新しい時代を切り開くだけの冷徹な知性と輝く智恵と、燃え上がる情熱を胸中に抱えた、本当の智者を育む、真の学びの場に、この小国の大学は、生まれ変わらなければなるまい。

その為にはやはり、全ての教育者ひとりひとりが、本来の使命に目覚めなければならないと思う。

投稿: 銀鏡反応 | 2009/02/16 20:28:27

茂木健一郎さま

今晩も半井小絵さん恰好よく

さて

水曜日から つまり18日から25日まで日本航空さまに飛行機も小樽の宿泊手配もお願いし万全で参ります

半井小絵さんの気象解説 凝視!!! スキーは自然のスポーツですから

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/02/16 20:24:50

こちらでも数日前に、今年はじめて鶯の声を聞きました。そして梅の花も咲いています。オオイヌノフグリも咲いていました。
一歩一歩、春の足音が聞こえてきますね!

投稿: 奏。 | 2009/02/16 19:41:37

買い物にいくときに、
まず街を選び、店を選び、商品を選びます。
そのとき、ブランドの店を選ぶと、その店内では何を買っても、大きな失敗はないでのはないでしょうか。(あります)
それがブランドたる安心感ではあるまいか。
 映画の監督
 書籍の筆者
数々の作品の作り手の世界観(店内)を、一つながりで見ています。

投稿: NHK | 2009/02/16 18:49:42

茂木ィ先生、議論するって日本人の一番苦手な分野ではないでせうか?
アメリカなどは議論の国で、学生の頃から鍛えられるそうですよね。
AとBという対立意見があったらそこで議論して、その後に立場を入れ替えて又同じ議題で論戦をはるそうです。
聴いただけでも頭鍛えられそうですよねぇ…
日本はそういう教育はしていない気がいたします。
反対意見が衝突し昇華されていいものができあがるって、基本だと思いマス。
今ハイドシェックの奏でるモーツァルトを聴いています。
大好きなピアノ協奏曲第9番です。この第二楽章の不意打ちは絶美だなぁ…
春はモーツァルトの季節ですが、モーツァルトの音楽の中には春風も暗黒も真珠の涙も春の嵐も全てが内包されていますよね。
魂の暗黒に差し込む清冽な春の光……
映画アマデウスで使われた有名な交響曲第25番はモーツァルトが17歳の頃の作品のはずです。
若干17歳で、あの暗い危機迫る嵐のような作品を生み出したモーツァルトは、20歳はやく成熟したのではないでせうか… レクイエムを聴くと壮大な宇宙の渦を感じます。
哀しみと歓びの交錯する中を春風のように駆け抜けたアマデウス。これからもっと聴きたいです。

投稿: 眠り猫2 | 2009/02/16 18:23:14

 茂木先生、はじめてコメントさせていただきます。
 この記事を読んで、いてもたってもいられない気持ちに駆られて書き込みをしています。
 全く先生のご意見に同感です。
 自分自身のことを言われているようで、まったく身につまされました。(私は一橋大学法学部の出身です。)
 受験戦争についてのご意見も、まったく的を射ているように思われます。わたしは現在、ドイツの自動車メーカが親会社のメーカに勤めています。日々、ドイツ人とのやりとりにおいても、日本人のディベート力が欠けていることを痛感しています。

投稿: Preppie | 2009/02/16 18:04:30

茂木先生こんにちは♪本当に大切なのは「学ぶ」ということに対する情熱、子どもたちの心に、自分の心に火をつけよ…胸の中で繰り返します。
 
“how to argue”仕事や、人間関係など、生きていく上でとても需要な学びと拝しました。

学はありませんが、向上心は忘れず、進んでいきたいと新たに思います。
時には立ち止まったり、後ろに戻ってしまうこともありますが…(ノ_<。)
 

冷気の底にも暖かさの種が感じられるようになってきた。そこかしこで梅の花が咲いている…白い花のいいかほりが。。道真の「東風吹かば匂ひ起こせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ」がなんとなく胸に。
 
それでは、今週も先生にとって素敵な1週間となりますように。
(*⌒∀⌒*)ノシ♪♪♪ 
☆Me ka Mahalo☆

投稿: wahine | 2009/02/16 15:21:01

魅力的な議論には、会話のリズムや声の調子も大切かなぁと・・・
それだけで印象が、まったく違ってくる。
これを音楽で表現できないか、考える毎日です。
魅力的な音楽、魅力的な文章、魅力的な噺家は、みんなリズムが素晴らしい!

投稿: シリンクス | 2009/02/16 14:02:22

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