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2009/01/19

感覚に対する態度

チョコレートの伝道師、
クロエ ドゥートレ ルーセル 
さんに会う。

昨年に続いて二回目。

クロエさんの著書
「THE CHOCOLATE CONNOISSEUR」
 がこの度日本語に翻訳されるが、
その中に対談が収録される予定。

クロエさんは、最近、ボリヴィアのカカオ
栽培の人たちと協力して、品質の良い
チョコレートを作った。

「EL CEIBO」は「永遠の命」
を持つ樹で、切られた後ももとの
姿に再生することができるのだと
いう。

チョコレートを味わうということは、
一つの「態度」(attitude)である。
ふだん何気なく口にしているものに
対して敬意(respect)に満ちた注意(attention)
を向ける。

そうすることで、自分の感覚の中に潜在していた
可能性に気付かされる。

大切なのは、感覚の主観的な性質だけで
なく、客観性の指標をも持つこと。

主観と客観のかけ算の「汽水域」に
本当に興味深い出来事のさまざまが起こる。

チョコレートにかかわっていて
一番難しかったのは、「中立性」を
保つことだったとクロエさん。

ある特定のブランドやメーカーと
協力すれば、ビジネス的には大きな
利益を上げることができるが、
そうすると中立性を維持することが
難しくなる。

「それは一つの選択です。選択の結果、
自分自身の限界もわかります。限界が
わかっているので、いたずらに失望
したりすることもありません」とクロエさん。

クロエさんのトレードマークの
ピンクと茶色の袋に
入った「サバイバル・キット」
をいただく。

これさえあれば、一週間はチョコレートが
持つ、というもの。

取材の方々たちといっしょにいただく。
茶色の塊が、口の中でとろける。
「感覚に対する態度」が喚起される。

作家の佐藤賢一さんと対談。
集英社から全10巻で刊行予定の
『小説 フランス革命』のうち、
第一巻『革命のライオン』
第二巻『バスティーユの陥落』 
の刊行を記念したもの。

佐藤さんとお話するのは、昨年に続いて
二度目。
一度目の対談は、『青春と読書』
2008年12月号に
「偶然と必然が交錯する歴史のダイナミズム」
というタイトルで掲載されている。

http://seidoku.shueisha.co.jp/0812/try01_satou_mogi.html 

この時期は雪でどうなるかわからない
というので、お住まいの鶴岡から
前日に東京入りしたという佐藤さん。

対談の内容はとても興味深く、
いつまでもお話していたいと
いう思いだった。

ルイ16世を始め、多くの人たちが
断頭台の露と消えたフランス革命。

民主主義の理想を実現したという
肯定的な評価とともに、
フランス人たちにとって、未だに
「トラウマ」となっているような
暗部も存在する。

トラウマであるから、フランス人
たち自身が、フランス革命を
直視できない側面がある、と佐藤さん。

日本人だからこそ書けるフランス革命の
真の姿もあるのだろう。

一方、明治維新は、フランス革命のような
恐怖政治を経由しなかったから、
未だに日本人は肯定的にそれを振り返る
ことができるのだと佐藤さんは言う。

その一方で、明治維新が、フランス革命の
ように民衆の蜂起による革命ではなく、
下級武士とはいえ、いわば社会のエリート
層による変革だったということが、
未だに日本人に根強い「お上まかせ」の
メンタリティにつながっている。

昨今の日本は行き詰まっているが、
そのような時に、「自分たちで何とかしよう」
というのではなく、「平成の坂本龍馬」
を期待するという精神態度の中に、
明治維新という成功体験が日本人に
かえって課してしまった枠組みがあるのだと
佐藤さん。

佐藤さんに、鶴岡のおいしいお酒をいただいた。

ありがとうございました!

またお目にかかるのを楽しみに
しています。

そうして、「小説フランス革命」、
長丁場ですが、これからの展開を
ますます期待しています!

1月 19, 2009 at 09:18 午前 |

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受信: 2009/01/20 7:59:35

コメント

茂木先生こんにちは♪大切なのは感覚の主観的な性質だけでなく客観性の指標を持つこと、主観と客観のかけ算の「汽水域」に本当に興味深い出来事のさまざまが起こる…汽水域には亜熱帯ではマングローブ林が、レアな生き物たちが生息する神秘的な水域なのですね。
河口付近は水が冷く、カレントもきついのですが潮が干いてくるとperfectな波が立ちます。感覚に対する態度、主観と客観のかけ算、大変考えさせられます。 
常に中立性を保つことこれは私生活にも置き換えても難しく、“限界がわかっているのでいたずらに失望することもありません”クロエさんの言葉が深く心に響きました。
佐藤賢一さんの「小説フランス革命」も大変興味深いです。
「自分たちで何とかしよう」というのではなく、「平成の坂本龍馬」を期待する精神態度…自己の行動に置き換え色々と反省する点が浮かびました。
それでは、先生、本日もよい1日をお過ごし下さいませ。
(*⌒∀⌒*)ノ☆☆☆

投稿: wahine | 2009/01/20 14:16:55

舌もそうですが、匂いでコミュニケーションが可能かどうか
を考えたことがあります。
たとえば、バラの匂いは「醤油を取ってください」の意味であったり、蓮の匂いを「おやすみなさい」の意味にするとかです。▢
しかし、やはり、言葉ほどの精密なコミュニケーションのキャッチボールはできないのだと思いました。

投稿: NHK | 2009/01/20 9:57:19

チョコを食べる事が
楽しくなりますねo(^o^)o
パブロフの犬のように
思い出せそうです。

投稿: ぱろっと | 2009/01/20 8:18:05

        態度

            態々  ・・ 【強い】 意志

投稿: 一光 | 2009/01/20 8:14:09

茂木健一郎さん
こんにちは。
話は違いますが、by the way, 茂木さんのファンクラブはないのでしょうか?☆

投稿: cosmo | 2009/01/20 4:36:24

舌もそうですが、匂いでコミュニケーションが可能かどうか
を考えたことがあります。
たとえば、バラの匂いは「お腹がすいた」の意味であったり、蓮の匂いを「おやすみなさい」の意味にするとか。▢
しかし、やはり、言葉ほどの精密なコミュニケーションのキャッチボールはできないのだと思いました。

投稿: NHK | 2009/01/20 1:07:27

チョコレートの甘い感じが漂って、何とも心地よい今日の日記。
感覚の主観的な性質だけでなく、客観性の指標を持つこと。そうすることでまた、自分の感覚の中に潜在している可能性に気付きますね。バレンタインデーが近いので、これに続けて。
多分これは、食べる側だけでなく、選んで渡す側にも言えます。美味しく食べてもらいたいし、食べて喜んでもらいたいですもの!
選んで、渡す側も色々考えて渡しますもの。中立性は難しくなりますよね☆

お風邪ひかれているのですね…お身体お大事にしてください!

投稿: 奏。 | 2009/01/19 23:06:33

おはようございます 光茂木さん!!
「中立性」を保つ事って大切だと思います。
ものづくりにおいても、人生においても、冷静さを見失っては天と地しか無くなってしまって、楽しさや喜びを持続できない気がします。

昨日の夜は風が強かったなぁ!
対談聴けなくて、でも用事があったので会場に行きました。茂木さんの声がしたから思い切って挨拶したわ!!あきらめていたから嬉しかった!!
でも余計に心がかき乱されたわ。佐々木さんにもご挨拶したかったのですが、私は由香さんに二人への思いを託したからいっか!と思いました。三人ともウコン、飲んでくれたかな???

でもね、やっぱり次は参加したいし、参加できなくても茂木さんに駆けよってHUG!!して帰りたいな!!
これも中立性を保つ事が難しいですね。私の生活にとっては切実な問題です。
だからその間に少しでも成長します。ふっふっふっ。

茂木さんの存在はお星みたいだ。
近い様で果てしなく遠い。

まずは紫の君になりたい”おかっぱ”より。

明日もいい一日になぁーれっ!!!!

投稿: 光嶋 夏輝 | 2009/01/19 22:56:10

茂木健一郎様
クオリア入門を読ませていただいてから、日々がさらに生き生きとするものとなりました。
とっても感謝しています。
ほかの茂木先生の書物も想像力をゆたかにして読めるようになったように思います。
そのほかのどんなことも。

新しい著書も愉しみです。

投稿: Yoshiko.T | 2009/01/19 20:57:47

チョコレートはカカオから生み出される褐色の薫り高いエッセンス。そのエッセンスの豊潤な味わいの個性を、敬意を捧げつつ、舌の上で堪能する。

そうした態度を貫く茂木さんの姿勢に、私自身も沢山学ぶところが多いと感服しきりです。

食べ物のクオリアを感ずるときも、直に感じるだけでなく、遠くから眺める眼…客観的な指標…を持つことは、本当に大切なのだと、日記を読ませていただきながら感得する。

感覚に対して、客観的な指標を持つことは、万物への丁寧なる敬意に通ずるに違いない。

ところで、民衆が立ち上がって、革命を巻き起こし、民主主義国家を確立したフランス。

そのフランス革命成就のプロセスにおいて、夥しい人々の血が流されていったことを思い返すに、“血で贖われた民主主義へのプロセス”というものは、かの地に住まう人々の生命の通奏低音に深いトラウマを残すものなのだろう…。

もしこの革命が、血で贖う革命ではなくて、無血革命であったらば、フランスの人々の、革命へのトラウマもなかったかもしれない。

しかし、あの当時、フランスの民衆が立ち上がらなければ、地球に本格的な民主主義国家の旗印は翻ることはなかったかもしれない。

ともかく、私達民衆ひとりひとりが「自分達で何とかしよう」と起ち上がらない限り、ものごと全てにおいて、多様性と差異を受容できるような、本当の民主主義世界は成り立たない。

ひとりの「世直しヒーロー」をみんなで待ちわびるのではなく、私達ひとりひとりが、それぞれの立場で「ヒーロー」として「今我々が生きている“世界”を何としても良くしていこう」と、アクションを起こしていくところに、今の日本や世界の行き詰まりを破る手立てがあるような気がする。

投稿: 銀鏡反応 | 2009/01/19 20:15:43

こんにちわ

日本では、民間から官僚職を取り入れると言うと、長年官僚を勤めていないと出来ない、と、言われますが、アメリカでは、大統領が変われば、5000人の官僚が総入れ替えする。アメリカ人に出来て、日本人に、出来ないわけではないと思います。


クロエさんのチョコレートはどんな味なんだろう?。食べてみたいです。(^^)

投稿: 政治のクオリアby片上泰助(^^) | 2009/01/19 19:02:02

これからは、いろいろなものに敬意に満ちた注意を向けようと思います。(なんかトキメキます!)鶴岡のお酒、おいしくてよかったですね。(すごくトキメキます!)

投稿: ふぉれすと | 2009/01/19 14:07:00

親愛なる茂木様
私も生チョコ、大好きです。ゴックン!
フランス革命も興味あります! ただ自国の王家を滅ぼすのは、凄いトラウマだと思います。王家は伝統や文化や家族を象徴していますから… 昭和天皇もフランス革命を研究されていたと聴いたことがあります。興味深いテーマです。
昨日、黛まどかさんとの共著「俳句脳」拝読いたしました。
私も俳句ひねるの好きデス。しかし今まで俳句のhow-to本は読んだことありませんでした。黛さんが型は守らなければならないと仰っていたので反省しました
型を守る制約の中に自由な表現があるのですね。
茂木さんの俳句は余白だ!の言葉は凄いです。長谷川等伯の松林図屏風の余白…確かに俳句の本質かもしれません。茂木さん凄い!!
そして図書館で漱石の俳句集を発見いたしました。漱石の俳句、いいです!私は俳句も和歌も語感だけ綺麗なのはダメですが、人間の血の通ったぬくもりのある俳句や和歌は愛してマス。漱石の俳句には、えもいわれぬ人肌の?温もりがあります。
茂木さん黛さん、素敵な本をありがとうございました。

投稿: 眠り猫2 | 2009/01/19 13:18:17

茂木健一郎さま

私の感覚として

物事を動かすには

フラットな志

そうスキーでのことで私はでした

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2009/01/19 9:28:33

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