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2009/01/19

文明の星時間 春の小川

サンデー毎日連載
茂木健一郎 歴史エッセイ
『文明の星時間』 第48回 春の小川

サンデー毎日 2009年2月1日号

http://www.mainichi.co.jp/syuppan/sunday/ 

抜粋

 年末も押し詰まったある夜のこと。キャスターをしているNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』の収録後の打ち上げに向かっていた。西口玄関から出て暗い道を歩く大通りから一本入ったところにある、自転車と人しか通らない細い道。私が大好きな、ほっと一息つける小径。
 この下には川が流れているんだろうな。歩みの中にふとそう思った。都市化に伴って、治水上の必要から三面がコンクリートで固められる。生活排水などが流れ込み、泡立つどぶ川となる。やがて、上に蓋をして暗渠となる。人々が行き交う道ができる。
 東京のそこかしこに似たような暗渠がある。ジョギングをする時に通るのが好きで、走りながらいろいろと探し回るから次々に見つける。かつての川の流れから、その土地の風情を想像する。
 この道もまた、かつては川をなして流れていたのだろう。車の音が途切れたタイミングで耳を澄ます。路面の下からかすかに、サーと水が流れる音が聞こえてくるような気がした。
 番組のゲストは、もうすでに道の先にある店にいるはずだった。一緒に歩きながら収録の感想を言い合っている中で、ディレクターがふと、「そう言えば、春の小川はこの近くにあったんですよね。」ともらした。
 確かに、渋谷川の上流にあった「河骨川」がモデルだと聞いたことがある。知識としては頭の中にあったことが、今まさに自分が歩いている暗渠と結びつくことによって、一気にイメージが膨らんだ。
 「春の小川はさらさら行くよ/ 岸のすみれやれんげの花に/すがたやさしく色うつくしく/咲けよ咲けよとささやきながら」
 幼稚園の教室や、小学校の音楽室がよみがえる。なつかしい友の顔。春の桜吹雪。温かいオルガンの音。給食の揚げパンの味。今となっては遠い昔となってしまった、すばらしくも懐かしい生活感情の真ん中に、唱歌『春の小川』は確かにあった。


全文は「サンデー毎日」でお読みください。

1月 19, 2009 at 09:31 午前 |

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受信: 2009/01/24 23:51:35

コメント

茂木先生 こんにちは♪
小学生の頃は家のまわりに里山の風景がありました。春になると山には、わらび、ぜんまい、が生えて、あっ!あそこにある。そこにもある!と夢中で摘んだ楽しさは、どんな遊びより熱中しました。田んぼには蓮華の花やつくし、スミレが咲いて、小川にはいろんな生き物がいて、メダカやタニシやドジョウを取ってきて家の池に放すと、池で赤ちゃんが生まれたりと、ビオトープになってました。タニシは年々大きくなり、父と池の掃除をする時は、「タニシの親分」と呼んで成長が楽しみでした。今は里山風景はすっかり無くなり、ただの不便な田舎になりました。先生の自然のお話しは、私の小さい頃の風景を甦らせてくれるので、大好きです!心の中には今も綺麗な里山の風景があり、季節ごとに遊びに夢中になっている、小さい頃の私がいます♪

投稿: 平井礼子 | 2009/01/22 22:36:42

茂木先生こんばんは♪胸の奥からどす黒い怒りが込み上げてきて人間の愚かさに叫びたくなる…先生の激しい怒りが私にも伝わってくるかのようです。
アメリカ発の金融危機、短期的な利潤追求の果ての破綻、人類のフロンティアは自然の回復にこそある…渋谷の街中に春の小川が復活し、陽光をうけて銀色に光る魚たち、戯れる子供たちの姿が見れたら素敵ですね。
失って気付くもの、破壊するのは簡単ですが元の自然を取り返すのは大変なことです。私の地元では未だに海を埋め立てし、山を切り開きしています。一方では町をあげてグリーンツーリズムやエコを唄い、矛盾を感じずにはいられません。
先生の記事からは色々と考えさせられることが多いのです。
日本の政治家の中で、本気で根底から状況を変えようと志ている方っているのでしょうか。。
 
それでは先生、雨ですからあたたか~くされてお休み下さいませね。(*´ω`*)ノ☆☆☆

投稿: wahine | 2009/01/22 0:35:32

茂木様

こんばんは

こちらは、雪が降っています。

後 少ししたら 春の小川の景色になりますね。

突然ですが、心臓思考については、どう思われますか?

投稿: ちぐさ | 2009/01/21 23:08:42

亡き者にされた小川の精霊の気持ちは如何なるものでしょう。
ハクを思い浮かべちゃった。
これからは私たち一人一人が次世代の為に守っていかなきゃいけないと思います。(もう坂本竜馬を待ってていい時代は終わってしまったのですから!) 
宇宙の営みは強いし、私たちや今存在する大自然が滅んでも、地球の命から見れば大した事件ではないはずです。
私たちの為に自然を残すのです。
言葉を発さない者たちは強くて激しくて、美しいな。

『春の小川』でほのぼの気分になりました。
オルガンの音が響いて、日だまりの中をキチョウがひらひら飛んでいきました。

早く読みたいな。

投稿: 光嶋 夏輝 | 2009/01/19 23:34:35

茂木さんがドイツやイタリアやスイスの旅をしている間、
私は時々、ゲーテの”野ばら”を口ずさんでいました。
時間の外に飛び出しそうになっていました。

投稿: レオナ | 2009/01/19 23:17:18

毎日、ブログ拝見しています。今日のブログを見て、思い出しました。去年、TVで茂木さんの感じてらっしゃることと同じこと言いながら、実際に暗渠となった川を(許可を得て)探検されていた若いミュージシャン?の姿が映し出されていました。確か、最後に歌碑の前で「春の小川」を口ずさんでいらしたと思います。今日の同じ川ではないでしょうか?昔、ゆっくり流れていた時間がいつの間にか、蓋をされ走り去り忘れられているようなそんな事がたくさんあると思います。50代のおばさんの感傷です。これからも、目の覚めるようなお話楽しみにしています。

投稿: nonn | 2009/01/19 16:35:19

潜在植生という言葉があって、僕は時々東京の街を歩きながら、街のない東京を想像して楽しんでいます。
きっと静かな内湾の海に面した森の土地なんだろうなと思います。
山手線の東に続くガケから、沢山の泉がわいて、それが森の中の清流となって海に流れ込む。
そんな風景が、遊歩道となっているかつての春の小川達を巡ると見えてきますね。

投稿: 守屋繁春 | 2009/01/19 13:35:48

潜在植生という言葉があって、僕は時々東京の街を歩きながら、街のない東京を想像して楽しんでいます。
きっと静かな内湾の海に面した森の土地なんだろうなと思います。
山手線の東に続くガケから、沢山の泉がわいて、それが森の中の清流となって海に流れ込む。
そんな風景が、遊歩道となっているかつての春の小川達を巡ると見えてきますね。

投稿: 守屋繁春 | 2009/01/19 12:50:57

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