« 脳とこころを考える | トップページ | 活断層 »

2008/12/13

あたたかき冬

以前、日本経済新聞に「明日への話題」
を連載させていただいた時、
こんな文章を書きました。

 歳末のこの季節は何となく慌ただしい。「年末進行」に追われ、忘年会をはしごしているうちに、いつの間にかクリスマスが近づいてくる。
 数年前の今頃、私は空港のレストランにいた。となりの席に五歳くらいの女の子がいて、妹に話しかけていた。
 「ねえ、サンタさんていると思う? 私はねえ、こう思うんだ・・・」
 その一言を聞いた瞬間、人間にとって「仮想」が持つ意味に思い至り、私は思わずはっとした。
 子供にとってのサンタクロースの真実は、それがこの現実の世界に存在するかどうかで左右されるのではない。一年に一回、自分に無償の愛を注いでくれる人がいる。そのような仮想の切実さこそが、子供の心に訴えかける。
 目の前にでっぷりと太った赤服の男を連れてきて、ほら、これがサンタだよ、と言っても何の証明にもならない。現実には存在せず、しかし目を閉じればありありと見える仮想だからこそ、サンタクロースは私たちの心の中に居場所を持つ。そのような思いを基に、私は『脳と仮想』という本を書いた。
 イギリスに留学している時、クリスマスが「善意の季節」と呼ばれることを知った。普段は厳しい競争社会の中で懸命に生きている大人たちも、この季節だけは童心に返り、周囲の全ての人たちに対して善意のまなざしを向ける。寒空の下、人々の心は暖かく燃え上がる。
 現実が時に厳しいからこそ、サンタクロースは必要とされる。その仮想の由来するところに思いをはせ、しみじみとこの季節を楽しみたいと思う。

子どもの頃、飼っていたジュウシマツたちが、
止まり木の上で身を寄せ合って
眠っているのが印象的でした。

みなさま、あたたかき冬を。

12月 13, 2008 at 07:34 午前 |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: あたたかき冬:

» 金融危機(7) トラックバック 御林守河村家を守る会
危機が新たな段階にはいりました。 GMの破綻です。 リーマンのときもそうでしたが、 アメリカの傍若無人ぶりも ここに極まれりという感じです。 アメリカの産みだした 金融工学という錬金術にまどわされて、 世界が塗炭の苦しみを嘗めさせられているときに、 アメリ... [続きを読む]

受信: 2008/12/13 7:49:07

» さんたくロースいっちょう! トラックバック なるなる文庫の絵本まんが日記
クリスマスシーズンとなりました。 これまでは、街中やらテレビやらが発してくるクリスマスムードを横目に暮らしていたのですが 今年は、身近の者がクリスマス商戦に参戦するという環境になり もうちょっと、積極的にクリスマスムードの波に乗ってみようと思いました。... [続きを読む]

受信: 2008/12/13 8:37:22

» それぞれの、”タラ” トラックバック わりとノーテンキ
取引先が電話をかけてきて、「すでに納入してもらった商品の支払いを、先延ばしにさせ [続きを読む]

受信: 2008/12/13 9:03:47

» 答えは無数 トラックバック ただいま妄想中
今朝の新聞を広げ、今年の漢字が『変』であることを知る{/book/}{/buta/} たぶん、オバマさんを代表とした『CHANGE』の意味なんだろうと 思いつつも、パッと字を目にした時の、自分の印象は 「へん・・・。」→何かがおかしい、の意。 だった。{/face_ase2/} でもなぁ〜、ひとつの言葉・文字でも 読み方&意味、発信する側&受け取り手などによって ガラリと異なってしまったりするもの、なのかもなぁ、、。 こんな話がある。 「象とは、なんぞや??」の問いに対して。 ... [続きを読む]

受信: 2008/12/13 10:44:21

» 小学校時代にタイムスリップした トラックバック 須磨寺ものがたり
店の片付けをしようと表に出ると、 久し振りにお見かけする小学校時代の先生の姿を目にし、 私の視線に気づかれた先生が立ち止まった。 [続きを読む]

受信: 2008/12/13 10:52:42

» 党首会談(10) トラックバック 御林守河村家を守る会
タイトルと内容が ずいぶんかけ離れたものになってしまいました。 麻生と小沢の党首会談を見た絶望から、 そのような政治家を選びつづけてきた 私たちにとって、 民主主義とはなんだったのかを 考え直しているのでした。 前回は個の発生というところまででした。 世界... [続きを読む]

受信: 2008/12/14 7:31:23

» 「善意の季節」 トラックバック Metal NEKO -Blog from the studio-
茂木健一郎さんが、ご自身のブログで書かれていた言葉が、とても心に響き、余韻のようにいつまでも残っています。 イギリスに留学している時、クリスマスが「善意の季節」と呼ばれることを知った。普段は厳しい競争社会の中で懸命に生きている大人たちも、この季節だけは童..... [続きを読む]

受信: 2008/12/25 12:49:07

コメント

今年こそは!。。。なんて思う

今年こそは。。。

今年こそは。。。

わからない。

幸せを考えると、果てがない。。。

みんな、幸せに。


投稿: 中村蔵人 | 2008/12/18 11:18:20

小さい頃から、クリスマスはワクワクする行事でした。

それは、大人になっても続き、恋人ができても続き・・・

でも、良き恋人に恵まれず「おれ、クリスチャンじゃないからクリスマスはやんないよ。金も無いし」
と言われる年もあり・・・(苦笑)

クリスチャンだけのものなのかしら?と酷く落ち込んでいたなぁと懐かしく過去を思い出しました。

でも、やっぱり、この心のワクワクは錯覚ではないんだなぁと、茂木さんの日記を読んで、思いました。


善意の日

とても、いいですね☆

大人にも、クリスマスは必要なんですね。
自分の心(わくわく感)が、自分にそれを伝えていたわけですね。

皆さんに愛を!
自分に愛を!(笑)

メリークリスマス☆

投稿: 小絲まめ | 2008/12/15 12:52:23

彼氏のいない若い女子 彼氏のいない若い男子が
この季節は地獄だ イルミネーションなんか見たくもない
と言っているのを 毎年よく聞きます
実際クリスマスは離婚や自殺も多いらしいですよね
殺伐とした気持ちでこの季節を過ごしている人たち全員に
今回の茂木さんのブログを読ませてあげたいです

あまりにも感動したので 丸暗記して口伝えで言い回ってます

投稿: laphroaig | 2008/12/14 23:55:47

みんなが云う「サンタさん」が居た
プレゼントをくれる「サンタさん」が居た
わたしはそれとは別の「サンタさん」に祈っていた
とてもとても精神的な祈り
物質的なものを介して「彼ら」の「サンタさん」は「私」に届いた
みんなの云う「サンタさん」が現れて
衣装の中に普通の人間が入っていて
それは誰かのお父さんで
仕事帰りにケーキ買って帰る予定で
そんな「彼」が商業的な挨拶で「メリークリスマス」と告げても
私は彼の中にサンタさんを見るだろう
(そんな私の生まれ育った家庭は禅寺…まぁなんでもありってことで)

投稿: A STRAY SHEEP | 2008/12/14 1:06:40

茂木先生こんばんは♪記事からじんわり温かくなるような、優しい陽だまりを感じさせていただきました。
“あたたかき冬”とても素敵な言葉ですね。『脳と仮想』も改めて拝読させていただき、感慨深い内容が沢山あり、再び胸に響きます。
寒空の下人々の心は暖かく燃え上がる…私も沁々とこの季節を楽しみたいと思います。
いつもステキな先生に感謝を込めて☆☆☆
それではお休みなさいませ。良い夢を(●´∀`●)ノシ

投稿: wahine | 2008/12/14 0:06:33

こんばんは。

いろいろと厳しい折だからこそ、
“あたたかき”の表すところに様々な思いが込み上げてきます。
心温まるお言葉により、
目の前の現実を乗り切れそうな気がしてきました。


今宵はふたご座流星群が現れるそうです。
あいにく悪天候で観測は難しいようですが。
眺めることができなくても、それでも、
思い浮かべることはできます。
かつて訪れた天体が残していった星屑の軌道を。
私たちの住む星がそこに交差する現象を。
軌道や法則の美しさを。天体のミューズを。
静寂の銀河に浮かびながら、
夢想する悦びに浸りながら、仮想の切実さに寄り添いながら、
「今、ここ」と「かつて、彼方」の両時空を愉しむのです。


年末が近づくにつれ、気持ちも慌ただしくなりがちですが、
手元のあれこれに追われながらも、
時にはため息の出るような遥か遠くを想っていたいものです。


茂木先生の文章を読んで思いました。
たとえ苦しい日常にあったとしても
きっと、生は悦びに包まれているはず、と。
たとえば、『善意の季節』を知った瞬間に。
あるいは、『あたたかき冬』、その言葉自体の持つ
温かさに触れた一瞬に。


投稿: s.kazumi | 2008/12/13 23:37:13

サンタクロース信じてましたね~朝枕元の靴下にお菓子がいっぱい入っていて、プレゼントがおいてあった時の思い出はスイートですね。
サンタさんつかまえるだって頑張って深夜まで起きてたりしてて(笑)親に感謝です。
確かに世の中厳しいですが、見えないサンタクロースは常に存在するのではないでしょうか。骨髄バンクでドナー登録されている方は20万人いらっしゃるとか。この前本で知りました。私はまだドナー登録していないのですが善意の方がこれだけいらっしゃるのです。それを思うと、心がホカホカします。

投稿: 眠り猫2 | 2008/12/13 23:08:57

茂木さん、こんばんは。
今日は、暖かい一日でしたね。

茂木さんは、お元気ですか?!

この季節、茂木さんの「脳と仮想」は、
ぴったりの本ですね!

一年に一回のイベントですものね、クリスマスは。
茂木さんは今年のクリスマス、
どうやって過ごされるのでしょうか?

私は、今年も仕事です。
毎年、27日までは仕事。
その後は、‘おせち’休みです。(笑)

茂木さんこそ、暖かいクリスマスを!
そして、素敵な年末・年始をお過ごしください。
(まだ、少し早いですね、(*^。^*))


投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/12/13 18:35:46

サンタクロースとクリスマスと愛、慈しみ。

今年は久しぶりに、この時季、心がほんのりウキウキあたたかくなってます。


そして…みんながそれぞれ、大切な人と過ごすクリスマスの一時を楽しみたいですね♪

投稿: 奏。 | 2008/12/13 18:31:16

茂木健一郎さま

同感です。
サンタクロースが本当に存在するかどうかではなく、
無償の愛や思いやりといったものが
心に訴えかけるのでしょうね。

子供の頃、感じたことを色々とノートに書き綴っていたのですが、
その頃の私はサンタクロースはひとりひとりの心の中に存在すると書いていました。
茂木さんの文章を読んであの頃の自分が懐かしく思い出され、
ほんの少しだけあたたかな想いにつつまれました。

投稿: 奈美 | 2008/12/13 15:43:28

大人になるにつれ、プレゼントというのは、何をもらうかよりも、
人から受け取る気持ちの方がうれしいものになっていくような気がする。
子どものときはそうじゃなかった気がする。
プレゼントが一体何かということに全神経が集中していた気がする。
誰がそれをプレゼントしたかなんてそんなに重要なことではないのかも知れない。

投稿: masanori | 2008/12/13 14:50:56

風は冷たいけれど、心が暖まる冬を過ごしたいものですね。

今年、クリスマスの華やかさとは対照的に、明日への糧にするための生活手段を突如断たれ、
路頭に放り出される不安に怯え、寒風の中、心も体も凍り付いていく人々の話が絶えない。

サンタのような無償の愛を注いでくれる存在を求めているのは、子供たちばかりとは限らない。

のっぴきならぬ苦境に立たされているすべての人々にこそ、その愛は注がれてほしいものだ。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/12/13 13:11:02

茂木先生と皆様へ

Don't get so busy that you miss
Giving just a little kiss
To the ones you love
And don't even wait a little while
To give them a little smile
A little is enough

How many people are crying
Some people are dying...
How many people are askin’ for love

Don't save it all for Christmas Day
Find a way
To give a little love everyday
……

And so I'm offering this simple phrase
To kids from one to ninety-two
Although it's been said
many times, many ways
Merry Christmas to you
……

A very merry Christmas
And a happy New Year
Let's hope it's a good one
Without any fear

And so this is Christmas
And what have we done
Another year over
And a new one just begun

(クリスマスソングから拾いました)

どうかよいクリスマスを!

投稿: 遠藤芳文 | 2008/12/13 11:54:11

うぃーっしゅ
風邪引かずにがんばってください
よっ!
現代の公然なる知性!

投稿: 大統領 | 2008/12/13 11:19:01

茂木さんの書かれた文章を読みながら、
いろんなことを連想しました。

虚仮不実のわが身である、わたしにとっての
「現実」と「仮想」の定義は、相も変わらず謎でありますが。

クリスマスに限定されることなく、いついかなるときも
無償の愛を注いでくれる「人生のサンタクロース」は、
南無阿弥陀仏であると思いました。

もちろん、わたしにとってのお話ですが・・・。
文章を読んでいて、なんだかあたたかくなりました。
茂木さん、あたたかき冬を。


投稿: 月のひかり | 2008/12/13 10:43:42

茂木健様(先生→)勝手にそう呼ばせて戴きましたm(__)m

毎回blogを心待ちにしています。私は、毎年12月の年末が、気持ち的に苦手です。いきなり時間や景色だけが慌ただく変化するのです。ああ又、年末と言う時間を通りすぎなければいけない。でも、クリスマスツリーは綺麗だな、そうだ聖書を読んでみよう、ん-何が真実なのか、考えてみたところで分からなくなるばかり。あ-私はどうしてもっと気楽に生きられないのかしら-。なんて思ってみたり。話は変わりますが、ここ数年前から私はヨガや絵を描き始めたり、アロマなど癒し系にハマっております。茂木ケン様の本を読みながら、今日も神様にお祈りをしてみようかと思います。ありがとうございます。

投稿: mak | 2008/12/13 10:02:59

茂木健一郎さま

そういえば

アメリカのどの組織で? 覚えてませんが

サンタさんがトナカイのソリで移動をレーダーでしたか?追跡?とか
確か以前に現在もされているかは存じ上げませんが数年前のニュースで

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2008/12/13 9:35:20

お早うございます。 今日は私も朝、早くから仕事です。「仮想」とは、人にとって大事な部分を占めている様に私も思います。「脳と仮想」って、素敵な本ですね! また、改めて投稿させていただきます。 今日も一日、お元気にお過ごしください。

投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/12/13 8:15:38

コメントを書く