« ベストハウス123 | トップページ | ホタルのように »

2008/11/13

ブンヤの魂

ヨミウリ・ウィークリー編集部の
二居隆司さんが、朝私の家までいらした。

近くの公園の森を走っている
ところを撮影するため。

一日密着取材をするのだという。

ヨミウリ・ウィークリーの
私の連載も、もう5年以上になる。

あれは、今年の秋が深まる頃。

二居さんが、お話ししたいことがある
というので、東京駅で待ち合わせた。

どうしました? と聞くと、
雑誌が休刊になるという。

「えっ!」

突然の知らせに驚きながら、
いっしょに銀座のアップル・ストアまで
歩いた。

「残念です。」

「茂木さんには、雑誌が続く限り、ずっと
連載をお願いしたいと思っていたのですが。」


さまざまをお話ししながら、ふと
隣りの二居さんを見ると、目が光っている。

あっと思った。

目をぬぐっている。

二居さんは黙って、「茂木さん、これ」
とチョコレートの袋を渡すと、
そのまま雑踏の中に消えていった。

時が経ち、私が『脳から始まる』
の原稿を書くのも、いよいよあと二回
となった。

最後に、
私の特集号を作って下さるのだという。

走る走る。木立の中を走る。

地球の存在を感じる。

霞ヶ関の経済産業省へ。

仕事を終え、再び二居さんと会う。

日比谷公園内の松本楼でカレーを
食べる。


六本木のグランドハイアットホテル。

ニューロマーケティングに関する
講演。

フランス大使館。作家のマルク・レヴィさんと
物語や愛の本質について対談する。

レセプション。シャンパンを飲む。

『英語でしゃべらナイト』のクルーが、
私とマルクが話しているところを
撮影する。


途中で抜けて、丸の内へ。

棋士の深浦康市さんの「王位」防衛を
祝う会。

梅田望夫さんの主催。

深浦さんと乾杯する。

「おめでとうございます!」

梅田さんとお話しするのは、共著
『フューチャリスト宣言』 
の刊行記念の会以来。

「最近ではね」と梅田さん。

「水村美苗さんの『日本語が亡びるとき-英語の世紀の中で』が必読ですよ。ぼくがtwitterについ書いた一言で、炎上したけれども。」

「何を書いたのですか?」

「いやあ。とにかく、すばらしい本です!」

「筑摩書房の伊藤笑子さんも良い本だとメールをくれました!」

梅田さんの目は、新幹線の先頭車両に
似ている。

インターネットの話になる。

「茂木さん、ぼくは英語圏で起きていることを
もとに、『ウェブ進化論』を書いたけれども、
同じことは結局日本語圏では起きなかったという
ことですね。」

「梅田さん、ぼくも、そのことは、よく講演会
で話します。金曜日からワシントンに行くん
ですよ。アメリカはどんな感じなのかなあ。」

「ぼろぼろでしょう。オバマが大統領になった
ことで、気分は高揚しているけど。」

「一方、理念を生み出せない日本の政治。」

梅田さんとボクは、きっと、「敗戦」
の感覚を共有している。
しゃあない。
「焼け野原」からまた何かをつくれば良い。

楽しい談笑が続く。

深浦さんにもう一度「おめでとう」
と心から。

辞して、
ヨミウリ・ウィークリーの人たちの会に行く。

二居隆司さん、笠間亜紀子さん、
そして川人献一前編集長。

向かって歩いている時に、
あることに気付いて
「あっ」と言った。
二居さんが「どうしました?」
と言うので、私は
「いや、ヨミウリ・ウィークリーの記事に
ついてあることに気付いたんですよ。」
と答えて、そのまま流れは別の
話題になった。

テーブルについた時、二居さんが、
「先ほどのは何ですか?」
と聞くので、
「受験情報専門の雑誌と、ヨミウリ・
ウィークリーの受験記事の違いに
気付いたのですよ。」
と答える。

「ほお。それは、どういうことですか?」

「ジャーナリズムだな、と思って。ヨミウリ・
ウィークリーの記事は、受験情報を書くに
しても、何かスタンスが違うんですよ。
裏をとっているというか。客観性を貫く。
さすがはブンヤの魂。
わいわいと持ち上げて煽るだけの
専門雑誌とは違う。」

笠間さんが「裏をとる、というのは面白い
んですよ。」と応える。

「本人の記憶が、年月が経つと曖昧に
なってしまうんで。ご両親が亡くなった時に
世の中ではこんなことがあった、と言われて
いても、年代を調べてみるとどう考えても
あわない、ということがあるのです。」

ふと二居さんの方を見ると、二居さんの
目が光っている。

「だいじょうぶですか?」

「いやあ、いきなり、そんなど真ん中のことを
言われてしまって。」

「二居さん、週刊読売から数えると、何年
編集部にいらしたのですか?」

「もう十数年ですね。1991年からですから。」

「その前は、どの部にいたのですか?」

「支局だけですよ。新聞に入って、それから
支局に行って、あとはずっと週刊読売、
ヨミウリ・ウィークリーです。」

辛い餃子が運ばれてきた。

大地の滋養を味わい、歳月をビールで流す。

電通の佐々木厚さんが合流して
しばらくした頃。

私は席でコンピュータを抱えながら
眠っていた。


ヨミウリ・ウィークリー編集部の方々。
左から川人献一前編集長、笠間亜紀子さん、二居隆司さん

11月 13, 2008 at 08:16 午前 |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ブンヤの魂:

» おくりびと トラックバック ただいま妄想中
きのう。映画『おくりびと』を観て来た。 琴線に触れるとは、こういう事だった・・・と思い出す{/hiyob_uru/} 今年のナンバー1どころか、確実に殿堂入りだろう{/kirakira/} 若院も私も、大の映画好きで。 過去から現在まで、かなりの数の映画を観てきたけれど。 こんな映画があったなんて・・・。すご過ぎる。 第32回モントリオール国際映画祭で、グランプリを受賞したとか。 まったくもって、うなずける{/face_zzz/} 世界で理解される。国境を越えて、 同じ「人間」という土台... [続きを読む]

受信: 2008/11/13 8:25:04

» プロフェッショナル トラックバック あいた日記
先日、Dさんと話していて「プロフェッショナルとは?」という話題になった。 僕はシンプルに、「顧客に価値を提供できる人」と常々思っていたので、そう答えた。 さらに、価値は人に... [続きを読む]

受信: 2008/11/13 23:52:36

» Web 0.0 トラックバック POPO
直立二足歩行 道具 火 言葉 そして インターネット 人類史上のエボリューション [続きを読む]

受信: 2008/11/16 16:04:48

コメント

茂木先生 こんにちは♪
「読売ウィークリー」休刊は寂しいですけど、休刊と言うことは、長~いお休みに入ると言うこと!またの新連載に希望があると言うこと!長~く楽しみにしています(笑)連載で一番印象に残っているのは、先生が野鳥を助けた話しです。たしか、木の下で苦しんでいる野鳥を、みんなは可哀想でしばらく見ているけど最後は行ってしまい、前のレストランから、それを見ていた先生が、お店から箱をもらい野鳥を入れて、近くの動物病院の場所を都庁に電話で聞いて連れて行ったお話しだったと思います。私はお忙しいのに時間は大丈夫かしら?と思い、すごく感激してしまい、野鳥にまで暖かい目を向けられる先生にしか、「心」のクオリアのことは解明は出来ないんだ!と思いました。部屋の中にはいろんな自然の気持ちはありませんから…自然の中に入って行く先生にしか、分からないことだと思います。野鳥のクオリアは人のクオリアと繋がるかしら(笑)♪

投稿: 平井礼子 | 2008/11/15 22:45:56

>霞ヶ関の経済産業省へ。

>仕事を終え...

ヒョウッとして、今週金曜からといえば、ワシントンへはその関連でいらしゃるのでわあ?
なんて思ってしまった。  

今頃先生はこちらに向かっているんだろうと思うと、いずれ、茂木先生のクオリアの講演を聴くチャンスに恵まれたいなあとおもって。このすっきりと気持ちいい青空を横切られるなんて、なんだかちょっと近い日かもと願って。

茂木先生が、ゆったり空の旅を楽しまれますよ~うに(^。^) 

投稿: Natural2 | 2008/11/14 7:22:57

きっとクオリアは虫の知らせなんですね。つながりを感じています。

投稿: NHK | 2008/11/14 3:42:30

水村美苗さんの新しい本が梅田さんの意見で炎上?
もっと、中身を知りたいなあ。じれったい。

私にとっての水村美苗は、朝日の読書欄に載った辻邦生との往復書簡での感心する見解の連発につきる。世間一般に流布している見解を独自に要約してしまう水村さん。辻さんはタジタジのようだった。
そして衝撃的な最終回(友人は深読みというが)。
往復書簡であれほど冷やっとしたことはない。
ただものではなかった。

投稿: fructose | 2008/11/14 2:08:30

こんばんは。

先日のNHKスペシャル、ディジタルネーティブを見て、日本はやはり敗戦していると思いました。

今の日本の状況はどこを見ても焼け野原。

ただ、先生の「脳を活かす」シリーズがミリオンセラーになっていることは唯一の希望です。

このままではいけない、何とかしなくちゃ、との思いが強いから読むのでしょう。

戦後まもなくみすぼらしい英会話本(たしかカムカムエブリボディだったと思いますが)がミリオンセラーになり、日本は元気になっていきました。

なんにもない、なんにもない
焼け広がる野原に
たくましく育つ小さな若芽を見たよ
そうだ、そこからなにかがはじまる
はじまるんだ
なんにもないぼくらは自由だ
きみも、ぼくも古いしがらみしがみついていても
焼け広がる野原に咲くスミレのように
自分を解放しようよ
そこからはじまるなにかは
きっときっと青空につながっている
ぼくらは負けて強くなる
きみは敗戦の達人さ
きみとぼくらは地球の未来さ

とラップ風の音楽を浮かべながら書いてみました。
(最初、ラップにはなじめなかったのですが、最近の日本の若いミュージシャンのラップはいいです。明るさと元気をもらいます)
こんなジジイがラップを好きになるなんて数年前には想像もつきませんでした。

投稿: 遠藤芳文 | 2008/11/14 1:42:00

こんにちわ

梅田さんの事が気なっていたのですが、イギリスでは、「私の息子は優秀である。」と、言っても、問題がありませんが、日本では問題が起きます。日本語の場合、「思う。」と、つけると大丈夫になります。(なぜかは良く分かりません。日本語の不思議です。(^^))

私が、某経済掲示板で、発言していた事は、前向きのノイローゼ状態と言う不思議な状態になりました。そこで、経験から学んだ事をちょっと書いておきますね。(不思議ですが、これを自分で気を付けていると批難を聞いてもあまり腹が立たなくなります。)(^^)


「ネガティブ言語」→「ポジティブ言語」+「否定」に切り替える。


「悪い」→「良くない」
「言葉使いが悪い」→「言葉使いが良くない」
「おまえ暗いな。」→「おまえ明るくないな。」
「馬鹿」→「賢くない」


「ネガティブ言葉+否定」→「ポジティブ言葉+肯定」に切り替える。


「悪い事は止めろ」→「良い事をしろ」
「ふざけるな」→「まじめにやれ」


投稿: ネガティブ・ポジティブのクオリアby片上泰助(^^) | 2008/11/14 1:27:40

『ど真ん中』なことを刺激し合える関係っていいですね。
私もそんな仕事を通して、色々な人と出会って、生きてる感じを味わいたい。
そんな日が来ることを信じて、今を大切に生きよっと。

投稿: しずく | 2008/11/14 1:16:01

ヨミウリ・ウィークリーが休刊…個人的には茂木さんの連載と、小田島隆さんのコラムを毎週楽しみにしていたのですが…。

何とも残念です…。休刊が決まった時、編集に携わってこられた方々がどんなお気持ちでおられたかが、おぼろげですが、察せられます。

このところ、雑誌の発行部数激減などに伴う休刊・廃刊が相次いで世間にアナウンスされているらしい…。

それについて、ものを生み出す、という視点から考えると、編集者の方々にとっては、雑誌はそれこそ作品であり、掛け替えのない「子供」のような存在なでもあるのだろう。

「休刊」が決まってしまう、ということは、編集者の方々にとって、その「子供」を突然失うのに等しい、身を切るように辛いことなのに違いない。

茂木さんの連載もあと2回…ということで、特集号も含めて、心して読まさせていただきます。

この世の全ては、何が如何変わっていくかわからない。今まで親しんで来たものが、急に自分の目の前から消えてしまうことも起こりうる。

また、今まで変化しなかった世界が、大きく変わり、今までとは全く違ったものになることも多々ある…。

新世紀の“敗戦者”であるこの島国も、時が流れ、人の“質”が変われば、世界から尊敬される“勝利者”になれるのかもしれない(そうあってほしい…と願いたい)。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/11/13 22:41:40

茂木先生、こんばんわ。

二居さんやヨミウリ・ウィークリーの皆さんの気持ちや、してきた事が、茂木先生に何らかのカタチで伝わっていたり、分かっていてくださること。。

それを茂木先生が二居さんとのお話しで、二居さんも感じられたのかなぁって。

素敵ですね。

投稿: 奏。 | 2008/11/13 22:02:27

茂木先生、今日も多忙な一日でしたね。お疲れ様でした。

わたしはさる雑誌出版社につとめていたことがあります。記事も書きました。ブンヤのはしくれでしたから、二居さんの気持ちがわかるような気がします。気がするだけですが。

さて、今日『脳のからくり』を読了しました。『心を生み出す脳のシステム』も半分ぐらい読みました。

わたしは専攻が中国哲学でしたが、日本の哲学者がたいていそうなように心身一元論をとっています。さらにいえば竹内先生とほぼ認識が同じです。

ペンローズがああいう仮説を提出していたとは知らなかったのですが、わたしはたぶん正しいと証明されると思います。

ところで、茂木先生は文章が音楽的ですね。理科系の方にはなかなかいないのですが。

クオリアの感動という言葉には触発されました。わたしはよくなぜ小説を書くのかと聞かれるのですが、自分でもうまく言えませんでした。これからは創りたいからと単純に答えることにします。それだけでは駄目なのかと思っていましたが、ふっきれました。ありがとうございます。

投稿: 腹出し | 2008/11/13 21:05:32

そうなんですよ。休刊なんです。さびしいです。元気であれば残りの数か月、お手伝いさせていただこうかなぁと思っていたのですが。
週ヨミの受験記事は、ジャーナリズムですか? ガヤガヤと騒ぎ、挙げっぱなしの記事も確かにありますね。
最近、休刊が残念な雑誌が数々あります。年間定期購読をしている雑誌もあり、なんだか…

お疲れさまです。

投稿: 才寺リリィ | 2008/11/13 17:44:21

はじめてコメントします。
茂木さん、相変わらずご多忙のようですね。
数日前のブログで風邪気味だと書いてありましたが、
その後いかがでしょうか?
10月26日の佐治晴夫氏との対談を拝見して以来、
勝手に親近感を持ち、勝手に心配しております。
今日もマフラーをくるくる巻いて、
なにかと忙しい年末を駆け抜けてください。

投稿: Ryoko | 2008/11/13 17:37:56

「常に裏を取る、客観性を貫く、」ブンヤ魂の一貫性を感じますね。
最近読んだ広瀬隆という方の著書の中に
「他人の賞讃は、己に対する正直な評価を歪める。己の人生の前進は、たゆまず繰り返される自己批判によってのみもたらされる」という文があり、貫くことの難しさを感じていたところだったので、より興味深く今回の 文章を読むことができました。
ありがとうございます。
そして、読売ウィークリー編集部の皆様、長い間おつかれさまでした。これからもどこかで皆様が活躍することを期待してます。

投稿: yone | 2008/11/13 17:09:53

こんにちわ

梅田さんのブログの炎上がWEBのニュースになっていました。私は、掲示板を良く使いましたが、批難を批難で返すのは良くない、無視して、次の話題に移るか、批難する人たちを、納得させる一言が言えるかどうかだと思います。


WEB版ヨミウリ・ウィークリーを期待しております。(^^)

投稿: WEB版のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/11/13 15:12:58

こんにちは。客観性を貫く“ブンヤの魂”…心にズシリときました。ちょうど一息つきながら最近の自分について反省しておりました。
私に足りないもの(山のようにありますが(汗))です。常に客観的な視点をもち続けるということは非常に難しい事だなあと。
出来上がったものにばかり触れていると、裏にある大切な事になかなか気がつきません。雑誌を造るのに何人の方々が動いていらっしゃるのだろう。。
記事からの二居さんの心情に心うたれました。
先生の特集、もちろん拝見させていただきます。
パソコン抱えて眠ってしまわれたのですね。睡眠わけてあげたいです。もしくはパソコンになりたいです。(・ω・)? 失礼いたしました。σ(^〇^;)。。。

それでは午後からもお仕事頑張って下さいませ。(*^∀^*)ノシ

投稿: wahine | 2008/11/13 13:53:14

コメントを書く