冬のフェア
北本壮さんから、『脳と仮想』 が
新潮文庫の「冬のフェア」というものに
入ったとメールをいただいた。
確かに、この季節にふさわしい読み物と作者としても
思います。
まだ、サンタクロースに会っていない
人が、この本を通して会ってくれたら
いいなあと思います。
北本壮さんからのメール
From: T Kitamoto
To: Ken Mogi
Subject: 『脳と仮想』冬のフェア入りです!
茂木様
先日はお目にかかれるチャンスだったのにウィル
ス性咽頭炎とやらにやられ、お目にかかれず残念
でした。
『脳と仮想』が新潮文庫の年末年始のフェア、
「発表! 今、読みたい新潮文庫2009」に入りま
した!
これでガンガン増刷がかかってくれるとうれしい
っす。
新潮社 北本壮
北本さんのガンガンな気持ちがうれしいです。
『脳と仮想』まえがきより
2001年の暮れ、私は羽田空港にいた。朝一番の飛行機で旅行から帰ってきて、レストランでカレーライスを食べていた。私の横に、家族連れがいた。五歳くらいの女の子が、隣の妹に話しかけていた。
「ねえ、サンタさんていると思う? 〇〇ちゃんは、どう思う?」
それから、その女の子は、サンタクロースについての自分の考え方を話し始めた。
「私はね、こう思うんだ……」
その先を、私は良く聞き取れなくなり、カレーライスの皿の上にスプーンを置いた。
「サンタクロースは存在するか?」
この問いほど重要な問いはこの世界に存在しないという思いが、私を不意打ちしたのだ。
サンタクロースが五歳の女の子に対して持つ切実さとは、すなわち仮想というものの切実さである。サンタクロースは、仮想としてしか十全には存在しない。サンタクロースの実在性を証明しようとして、目の前にでっぷりと太った赤服、白髭の男を連れて来たとしても、私たちはしらけて笑うだけだろう。
五歳の女の子にとっても同じことである。サンタクロースが決して目の前に姿を現さないことなど、彼女だってきっと知っている。サンタクロースは、決して「今、ここ」には現れない。目の前に置かれた赤いリンゴのように、生き生きとした鮮明な質感(クオリア)として体験されるような形では、サンタクロースは決して体験され得ない。しかし、それにも関わらず、いやだからこそ、サンタクロースは五歳の女の子にとって、おそらく私たち全てにとって、切実な存在なのだ。
私たちの仮想の中のサンタクロースは、ぼんやりとした姿をしている。現実の世界で出会うサンタクロースの似姿のイメージに影響されながらも、私たちの意識は、その本質をとらえきれない、あやふやな存在として、サンタクロースという存在を把握し、予感している。うすぼんやりとしか見えないからこそ、サンタクロースは5歳の女の子にとって、そしておそらくは大人たちにとっても、切実な存在なのだ。
サンタクロースという仮想を生み出した宗教的、文化的、歴史的偶然を引き受けつつ、現代の私たちもまた「仮想の系譜」の中に連なり、サンタクロースを夢見ている。
子供向けのファンタジーなどと馬鹿にしてはいけない。私たちの心の中の、サンタクロースという仮想の現れ方、その私たちの現実の生活への作用の仕方の中にこそ、人間が限りある人生を生きる中で忘れてはならないなにものかがある。
サンタクロースは存在するか?
この問いに対して、どのような答が可能か?
このような、一見素朴な疑問を持ったことが、仮想というものを考える私の旅の始まりだった。
歳末の空港でふと耳にした女の子の小さな声をきっかけにして、私は、人間にとって仮想というものが持つ意味を、もう一度徹底的に考えてみようと思った。
私たちが「現実」と「仮想」と呼んでいるものたちのそもそもの成り立ちについて考えることで、意識を持った不可思議な存在としてこの世界に投げ込まれている自分自身の生について、改めて振り返り、よって生きる糧としようと思ったのである。
11月 8, 2008 at 08:18 午前 | Permalink
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» こどもの頃の「仮想」 トラックバック 須磨寺ものがたり
今日の茂木健一郎さんの「クオリア日記」に、
「脳と仮想」のまえがきにある「サンタクロース」の話が書かれてある。
サンタクロースは仮想の世界のものだが、
なんとも怪しい存在なのがミステリアスで楽しい。... [続きを読む]
受信: 2008/11/08 10:24:57
» 脳と仮想 トラックバック ☆カウンセリングルーム心の休憩所blog☆
茂木健一郎さんの、「脳と仮想」という本を読んでいます。
思い返してみると、私が茂木健一郎さんという方の存在を知ったのは、今精神科医をしている先輩から買って頂いた、「脳はいかにして神を見るか」の本を読んでからです。
何だか難しそうだったので本棚に置いたままにしてあったのですが、ある時ふと思い立って読んでみると、心を探求している私にとって、あまりにも興味深い内容。
この素晴らしい本を日本語訳してくれたのは誰だろう、ということで、そこではじめて知ったのが茂木健一郎さんでした。
... [続きを読む]
受信: 2008/11/09 0:07:08
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コメント
茂木先生お早うございます♪
こちらのご本まだ途中ですが芸術作品に心を傷つけられた時の感触…。私はラ・セレスティーナにあった時、暫くその場を動けず、その感動は言葉に顕せられなかっのですが、先生が漱石や源氏物語に感じたように、傷つけられたのだと。優れた芸術は私たちの心を傷つける…なんと美しい言葉でしょうか。表紙の柔らかなアイボリーも冬を思わせ、この季節にふさわしい素敵な一冊なのです。
それでは、今週も良い1週間をお過ごし下さいませ。(*^∀^*)ノシ
投稿: wahine | 2008/11/10 7:40:22
こんばんは。
河合隼雄先生のご著書『心の扉を開く』の中で、「素晴らしいのでぜひ読んでみてください」とのことで『脳と仮想』が推奨されていたかと思います。
私が6歳のとき、前もってサンタさんへお手紙を書くといいよ、と母に言われ、「きてぃちゃんのぬいぐるみをください。」と希望しておいたところ、クリスマスの日、プレゼントと一緒に手紙が添えてあって、「ぬいぐるみがなかったので、きてぃちゃんのとけいでがまんしてね。」と。その紙の裏面には、大根1本98円とかロース100g○○円などと印刷が(スーパーの広告)してありました。サンタクロースの夢が打ち砕かれた瞬間でした。マヌケな思い出です(笑)。
大人になった今、サンタクロースへの切実な想いこそ失せましたが、サンタクロースに代わる、切実さの対象を自らの内に設定し続けることはできると思います。
無きものを想うこと。不在と向き合うこと。それらは甘美であったり、時にはもがくほどの苦しみを伴うこともありますが、間違いなく生に奥行きを与えてくれているのだと思います。
『有限の現実世界と、無限の仮想世界の両者を生きることが人間の運命なのだとすれば、私たちは、そのダブルバインドな状況からくみ上げることのできる喜びを感謝を込めて味わうべきなのだろう。』(by 第9章 魂の問題)
real とimaginary の関係は概念上の問題ではなくて、まさに両方の軸があって、その世界を私たちは生きているということなのでしょうか。
河合先生だったら「仮想をおおいに遊んだらよろしい。」と笑ってくれないでしょうか。
投稿: s.kazumi | 2008/11/09 22:37:49
茂木さん、こんにちは。
サンタクロースは、間違いなくいます。
私はまだ茂木さんの『脳と仮想』を読んでいないのですが、(ぜひ読みたい!と思っています。)
多分、茂木さんはサンタクロースに「会った」んですね。
たとえば目に見えないからといって、それがないという証拠にはなりませんよね、、。愛情や、思いやり、優しさ、喜びや希望、こころが美しいということ、ものごとの真実、、ここではない世界がそこにあるという気配、、、とくに子どもたちに、そして人にとって大事なことを、そういうものは目には見えないけど、確かにあるということを私達はみんな知っていますよね。見えなくても、あるということを確かに感じていますよね、、。人は、そういうものに本当には生かされていると私も思っています。これはとても大切なことですよね。
こういうことを考えていると、暖かい気持ちになります。
私は子どもに尋ねられたら、ひととおり話を聞いて、そしてやっぱりおしまいには、「いるに決まってるよ!」とにっこり答えます。
投稿: yukarita | 2008/11/09 18:29:40
先生、サンタさんは 北海道の出張所に居て
事務員さんが 可愛いお手紙くれるんですよ。
それから 北欧のどっかにも居て 小人さん達と 仲良く暮らしてるんです。
ソリに乗る前は 冷えないように 毛糸のパンツはくのかも。
それから 太ってるサンタさんもいるし
スマートで かっこいいサンタさんもいるんです。
茂木先生に似てるサンタさんもいるし、
見習い中サンタさんは 失敗だらけで 先生サンタさんに 怒られちゃうんですよ。
(笑う♪?)
投稿: hi | 2008/11/09 1:41:12
サンタさん=愛のカタチ。
と、ふと思いました。
冬のフェア入り、おめでとうございます!
投稿: 奏。 | 2008/11/08 21:47:07
モギ―先生、こんばんは。
脳と仮想は、本当に素晴らしいご本で、皆様に是非読んで戴きたいと思います。 冬のフェアにぴったりですね!読まれた方は、特別な冬の充実を味わえる事と確信いたします。 サンタクロースのお話は、印象深い入り口ですね。こうしてあらためて読ませて戴きますと、いちだんと☆☆☆☆☆
モギ―先生が、奇蹟なんていたるところに溢れているときずかさせてくださいましたが、仮想も、なんと、なんと、あれも、これも、この世にあふれていることでしょう!!私は、毎日、そのことにきずいては、びっくりして、感動しています。それくらい、人間たちは、より良く、生き抜くために、切実なる願いを托す仮想というものを必要としてきた・・・人類の歴史。もしかしたら、キリストの復活も? 頭が限りなく柔軟になり、思い込みが、突然に覆されてしまうようでした。 私にとって、特別な一冊です。記憶に残るメッセージを感じて、読み終えたあとは物の見方が変わりました。
投稿: ぶらんか | 2008/11/08 20:55:24
『荘子』の中にある、胡蝶の夢のたとえを連想しました。
われわれにとってリアルなことは、外界にある物の世界だけではないとわたしは思います。
もしもわれわれが物にしか関心がない、即物的な生き物ならば、およそ人間の最高の営みと賞賛されていることは、一切なかったことでしょう。
わたしは脳科学に明るくありませんが、たぶん脳の発達がまずあって、それからわれわれが人間的と呼ぶ営みが為されるようになったと思っています。
それはそれとして、仮想とはまったく不思議なことのように思います。
投稿: 腹出し | 2008/11/08 15:10:12
「脳と仮想」新潮文庫”冬のフェア”入り、おめでとうございます、
あと、あわせて、大変遅ればせながら、PHP「脳を活かす」シリーズ100万部突破おめでとうございます。
サンタクロースのことについて、個人的によく考えてみると、実はうちにはサンタは”来ないこと”になっていたそうだ。それでも、親にねだってツリーを買って飾ってもらい、世間並みにクリスマスを楽しんでいたようだ。
サンタは本当は、キリスト教の実在する聖者だったのだが、何時しか、みんなの頭の中にそれこそ、ぼんやりとした形で存在している。仮想の生み出した幻の「まれびと」といってしまえばそれまでなのだが。
私や茂木さんぐらいの世代が幼少だったころは、クリスマスイヴにサンタさんがやってきて、プレゼントをたくさんくれると心から信じている子がまだたくさんいたと思われるが、今の子供たちは、サンタの存在を信じているのだろうか?サンタという仮想の存在にすぎないものに、切実さを感じているのだろうか?
人間にとって仮想とは何ぞや、そしてこの先、何がどうなるかわかったもんじゃないこの自己の生というものについて、懸命に思いを巡らす茂木さんの思考軌跡を「脳と仮想」を読んでたどりながら、仮想は感覚と同じく、生きているということと裏表のように密着しているものなのだ、ということを感じていた。
ひょっとすると、この「仮想する」という行為は、私たち人間だけに許された一つの大切な特権ではないのかと、ふと浮かんだ。犬や猫には視覚、嗅覚などの感覚はあっても仮想はきっとできない。仮想がなくては、文化や芸術、思想を私たちは生み出せなかったかもしれない。
仮想するということは想像する→創造する行為と直結している。何を作り、生み出すにも仮想することから始まる。
今日は東京も寒いです。
投稿: 銀鏡反応 | 2008/11/08 13:15:19
サンタクロースを信じていた子供の頃をふと思い出しました。
今思うと不思議な感覚ですね。
『脳と仮想』読んでみたいと思います^^
投稿: hann | 2008/11/08 10:33:48
おはようございます。
息子が小さい頃、クリスマスの朝、「夜、サンタさんを見たよ」と言ったことがあります。
「で、どんな姿だった?」と私。
「よくわからないけど、影が見えたよ。あれは絶対サンタさんだ」
息子にとって、サンタクロースは実在の人でした。
数年前からの私の「仮想」は、「名もなき天使たち」の存在です。
彼らは「天使」と呼ばれることを拒否しますが、それでも彼らの愛にあふれたメッセージに接すると、天使と思わざるを得ません。
いい年して何をバカなことをと思われるかもしれませんが、この「仮想」が私の救いになっています。
苦しみ悲しみ、怒り、悩みにまみれていても、常に魂は「絶えざる無垢の喜び」にさらされています。
そして「苦しいときは「苦しい」、悲しいときは「悲しい」と言いなさい。そうすることで、魂は守られるのです」とやさしく諭してくれます。
地上で強風が吹きすさんでいても、その上では陽がさんさんと輝き、星がきらめいているように、私たちの魂は、常に「聖なる領域」と接しているのだと思います。
これは「仮想」かもしれませんが、私にとってサンタの実在よりも確かなものです。
投稿: 遠藤芳文 | 2008/11/08 9:21:29
ファンです。
我々が認識する全ては仮想(意識)なんですよね。
それ以外は無意識。
フィクションとノンフィクションが溶け込んでいきます。
投稿: NHK | 2008/11/08 9:20:15
ファンです。
我々が認識する全ては仮想(意識)なんですよね。
それ以外は無意識。
フィクションとノンフィクションが溶け込んでいきます。
投稿: NHK | 2008/11/08 9:16:40
『脳と仮想』新潮文庫の年末年始のフェア入り、おめでとうございます。
また読みたい、と思っていたところでした。
細切れ時間に手にとって読めるように、文庫本を購入してあちこちにおいておきます。
『読書の秋』(昨日が立冬でした)です。\(・・)/
投稿: kahoru | 2008/11/08 9:10:05