飛雄馬の変貌
サンデー毎日
2008年11月30日号
茂木健一郎
歴史エッセイ
『文明の星時間』
第40回 飛雄馬の変貌
一部抜粋
幼い頃から父、星一徹に鍛えられた飛雄馬。剛速球投手を目指すが、やがて球質が軽いという致命的な欠陥が明らかになる。
「バッティング投手としてなら理想的」と揶揄される始末。絶対絶命のピンチに立つが、座禅に訪れた道場で、老師の「打たれまいと思うから打たれる。打たれてもかまわない、いや、一歩進んで打ってもらおうと思え」という言葉に開眼し、打者のバットを敢えてねらって凡打に打ち取る「大リーグボール一号」をあみ出す。
荒唐無稽な話ではある。しかし、幼い私の心を動かしたのは、そんな魔球が本当にあるのかという理屈ではなかった。飛雄馬は変わる。座禅をしている中、老師の言葉に突然目覚める。その瞬間、世界が変わって見える。自分の一番の弱点が、武器となり得ることに気付く。そのような認知のダイナミクスが、幼い心にも強烈な印象を残した。
魔球はやがて打たる。負けずに次の「大リーグボール」を創造する。行き詰まる度に、飛雄馬はそれまでの自分を否定し、超越することで次の次元に行く。幼い私を惹き付けていたのは、そのような梶原一騎の「成長のロジック」であった。
(中略)
それにしても、『巨人の星』に描かれている飛雄馬の成長は、昨今の日本で流行っている「脳の活性化」の類の話と何と違っていることだろう。現代人は、どうやら、自分は今までと同じままでいて、脳の機能やら容量やらを拡張したいと思っているらしい。コンピュータの新機種が出て、CPUがこれだけ早くなったとか、ハードディスクの容量がどれだけ増えたというのと変わらないイメージで、自分の脳をとらえている。そんなことでは、本当の成長する喜びには全く触れることができないというのに。
全文は「サンデー毎日」でお読みください。
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11月 21, 2008 at 09:00 午前 | Permalink
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コメント
茂木さん、こんばんは。
私も「巨人の星」は大好きで、二人の姉と一緒に
よく観ていました。
「ドアを開けた瞬間に、世界は今までとは全く
変わって見える。」
今まで生きてきた中で、何度かあった様に思います。
例えば、苦手なタイプの人だな。と思っていたのが、
ある日、「な~んだ、意外と話が合うじゃない。」と
思い直したり・・・。
食べず嫌いで「納豆」が駄目だったのですが、24歳
の時だったかな?! 旅先で食べてみると「美味しい!」
と思い、大好物になったり・・・。
確かに否定が肯定に変わる瞬間というのは、ある日、突然
やってくることはあります。
それは、忘れられない瞬間ですね。
人生まだまだ長~い。
幾度となくあることでしょう。
それが「成長のロジック」であるなら、嬉しいですね!
投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/11/23 0:07:06
おはようございます。
『巨人の星』は私もファンでした。
ずいぶん元気をもらったものです。
たしかにあの頃の「成長のロジック」は、現在とだいぶ違うようです。
もう時代遅れなのでしょうか。
脳の機能を高めるといっても、脳全体のたった数%しか使っていないとすれば、それが数十%になるという保証はありません。
人類が知り得た宇宙の物質、エネルギーは4%にすぎず、残りは未知のダークマター、ダークエネルギーです。
大宇宙と脳という小宇宙が呼応しているならば、「脳開発」など重箱の隅をつつくようなもので、大したことないのでは…。
それより、宇宙と脳に広大に広がる「未知」に驚異を感じずにはいられません。
知識が増えたり、なにかの技術に熟練することは喜びですが、だからといって「魂」も成長するとはかぎりません。
むしろ「魂」が成長することによってこそ、脳も成長するのでは、という気がします。
投稿: 遠藤芳文 | 2008/11/22 10:32:33
尊敬する茂木先生
そうなんです。私も 気がつけば、今ある自分をそのままで変わらずして成長を めざしてました。
状況、環境に応じて対応、変化 進化するためには これまで築き上げてきたものを全部投げ出す、否定する勇気が絶対いるのに
守り通して固める、安定こそが 成長だと信じてそのように努力してきました。
今にやっと イチロー選手の「かわらなきゃ」の言葉の重みがわかりつつあります。
投稿: golfpilates | 2008/11/21 21:36:13
茂木さんが座禅をされるとしたら、夏目漱石も参禅された北鎌倉の円覚寺でしょうか?
投稿: masami | 2008/11/21 20:39:17
茂木先生、おかえりなさい。
「大リーグボール1号」は、
そんな悟りのメッセージが込められていたんですか!
実はそのボール、読者に投げられていたんですね~(^^)/
投稿: ミウラナオコ | 2008/11/21 10:21:46