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2008/11/24

白洲信哉どっとjp

 もう自分がワシントンにいた
ことなど身体が忘れ始めている。

 「君は君 我は我也 されど仲よき」

 「この道より我を生かす道なし この道を歩く」

 「之をつくった時は 生きた氣がしたろう」

 ふと見上げると、仙川の駅である。

 ページに目を戻してみて、まさにちょうど、
そのところを読んでいたことに気付いた。

 湧水と池と武蔵野の自然が残る「仙川の家」と呼ばれたこの家で・・・・

 『武者小路実篤画文集』(求龍堂)

 ぼくはこのような一致を偶然だと
考える。シンクロニシティにそれ以上の意味を
見いださない。
 しかし、世界がゆらぐことは確かだ。

 調布駅から歩いていくと、
通りに立っていた福島さとみさんが
手を挙げた。

 新しき村が出来て、90年経つという。

 展覧会を見ながら、ゆかりの話を
うかがう。

 理事長の石川清明さんは、実篤
の様子を間近で見てきた。

 「描いていて、先生一字忘れてしまって、
先生、抜けていますよ、と申し上げると、
あっ、そうか、と付け加えると、まるで
はかったようにぴったりと収まるんですよ。」

 講演会会場へ。

 現実と理想のはざまにゆれる
人間は、内なる自然を制御不能の恵みと呪い
として認識す。

 そんなお話をした。

 是非に、とお誘いいただいて、
武者小路実篤記念館と、旧邸を
訪ねる。

 トンネルを抜けると、湧水から引いた水を
蓄えた大きな池があった。
 
 「先生は、水のあるところに住みたい、と
ずっと思っていらしたようです。」

 理事長の福田宏さんが言われる。

 「先生の夢は、鯨を飼うことだった
そうです。二つ池があったら、一つの方で
鯨を飼って、もう一つの方で何だったっけな、
何かおおきな生きものを飼いたいと思われて
いたそうです。」

 鯨を飼いたかった白樺派の文豪の机は、
とてつもなく奥へと長かった。


武者小路実篤の仕事机

 時は飴のようにぐにゃりと進み。

 新宿駅の地下の片隅でしゃがんで
仕事をし、できあがりをメールで送信する。

 新宿御苑の「せお」

 店の前に里文出版の井藤丈英さん、安藤博祥さん、
上野昌人さんがいらっしゃる。

 小部屋をのぞき込むとまだ誰もいない。

 リュックを放り込んで、「一周してきます」
とあたりを散策した。
 
 ひんやりとした空気が心地よい。

 道を曲がる。店の前には誰もいない。

 さては来たな、と入ると、白洲信哉が
でんと座っていた。

 男五人で小部屋に収まり、骨董の
話をする。

 信哉は例によって唐津など自分のおちょこを
持参する。

 ふぐ刺しを食べていたら、「まだふぐの皮は
ありますか」と主人に信哉。

 「あります」

 「じゃあ、こういうザクじゃなくて、でろりと
そのまま持ってきてください。お腹のところ」

 やがて運ばれてくる。小鍋の湯に通す。

 「ちょっと透明になってきたらいい頃合いですよ。」

 濃厚なやさしい弾力を歯や舌で受ける。

 「クオリアというのは、いい概念を見つけたね」
と信哉。

 「何にでも、クオリアって言えるんだからねえ。」

 話の流れで、インターネットの話になって、
意外なことを言う。

 「ぼくもブログを始めたんですよ。」

 「えっ、ほんと?」
 
 「白洲信哉どっとjpですよ。」

 「本当だ!」

白洲信哉ブログ 

 「写真を撮れ、って言われているんだけどね。
デジカメってやつ、持っていないんだよ。それ
ちょうだい。」

 「これあげるとデータがなくなるから困るな。
そもそも、デジカメどう使うか知っているんですか。」

 「撮ったあと、その何を送ればいいんでしょ。」

 「パソコンに取り込むのです。」

 「取り込む? それは何ですか。」

 「あのねえ。」

 信哉の表情がどんどん変わるのが面白くて、
パチパチとった。

 ぼくはちゃんと取り込めるゾ。

 一度、あなたの顔はモーツァルトに似ている
と言ったら、「そんなことはない」と言っていた
信哉だったが、ザルツブルクに行った時、
絵はがきを大量に買い込んだらしい。

 「だって、確かに似ていると思ったから。」

 人の表情の中に、無限の自然あり。

 わたしゃ、自然にほだされました。

11月 24, 2008 at 06:45 午前 |

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コメント

はじめまして。

私は今日mixiの日記を書いてる時に
武者小路実篤のことばがふと浮かんだので書いたんです。
さっき、ここを見て
「あ~私も武者小路実篤のシンクロの話にシンクロしてる!!」
ってちょっとうれしかったので
思わずコメントさせていただきました。
このブログはホワンとして心地よいですね。

投稿: チサ | 2008/11/26 1:18:41

武者小路実篤の原稿を見ました。
日曜日、河野道勢の展覧会で。

棚のダルマがなんとも素敵ですね。
ゆらぎました。

投稿: HAL | 2008/11/26 0:04:23

茂木 様

”新しき村90年”の講演を聴講した者です。
(実篤記念美術館でお帰りの際、入り口にいた男です。)
講演ありがとうございました。
最後質問が上手くまとまらずに講演が終わってしまったので、少し書かせて頂きます。
理想と現実と自然(欲望と解釈しました)ということですが、僕が思っている事は、今の日本人は理想と現実がまずリンクしていなく、全く別個に存在している様にしか思えません。
新しき村にしても現実にどう取り込んで生かすのかが重要だけど、大多数の人が”認識”で終わっているように思います。
それとはまた少し話が違うのですが、僕は柳宗悦に興味があり、民藝が日本の将来の鍵の一つになると思い少し首を突っ込んでいるのですが、最近民藝についての解釈が柳本人の考えとかなり違ったものが出回っている様に思えてなりません。もちろん民藝関係者からもです。
そこで茂木さんの民藝について意見を聞いてみたいと思いました。
柳の著作に対する率直な感想など何かの機会に発表して頂けないでしょうか。
僕は松岡正剛さんや茂木さんのような学術や藝術等のジャンルを超えたものの見方をセンス良く出来る方が今の時代に本当に必要だと思っています。
特に民藝のような物を介在した哲学を語る上でそういった視点は特に重要だと考えているので、これからも様々な視点で言論される事を期待しています。

投稿: majima | 2008/11/25 10:58:56

高校生ながら、茂木先生の本を読ませていただいてます。
最近、ホームページデザインを研究しており、興味を惹く色や配置になどついて奮闘してます。
目の動きや脳の働きなどをインターネットで少しずつ探っていると、デザインにもヒントが自分の中に生まれてくる感覚があります。
人間を研究することによって、人間の中に生まれ、人間以外のところで結果を作るのってこんなことなのかと思ったこの頃です。

投稿: pit | 2008/11/25 1:39:40

武者小路実篤さんの仕事机を始めて見たんですが、信じられないくらいに長いですね。

なんか、ものおきに便利そうでいいですね。


投稿: peko | 2008/11/25 0:08:58

こんばんは♪
今日は雨振りでしたが濡れませんでしたか。(>_<)
ワシントンから帰国されてからもゆっくりされているご様子もなく、お身体大丈夫かなあと。。勝手に心配しております(・ω・`)
白洲信哉さんのお写真ナチュラルで大変素敵ですね♪確かにモーツァルトに似ていらっしゃる気がします!わたしゃ、自然にほだされました…先生、白洲さんにめろめろでしょうかしら。(照)ブログも閲覧させていただきます。
先生方が河豚をつついている頃、私も無二の友と再会し、もつをつついておりました。
世界がゆらぐことは確かだ…偶然を証明することはできないのでしょうが、そういうものを体験すると、全身に衝撃が走りその瞬間、目の前がカーッと眩しくなります。これは私のクオリアですが。
現実と理想のはざまにゆれる人間は内なる自然を制御不能の恵みと呪いとして認識す…こちらは一体どういうことかと必死に考えております。
白樺派の文豪「武者小路実篤画文集」も拝読してみたいと思いました。私も鯨を飼ってみたいです。(*´∀`*)

投稿: wahine | 2008/11/24 22:37:10

人の発する言葉や行動は、その人らしさ が、自然に出ていて。。

気付くと、す〜っと引き込まれている…という人に、会ったことがあります。

凄いなぁと感じました。

私の“私らしさ”大切な事だと思います。
それと同時に、あの人の“あの人らしさ”も大切で、どちらも大切な物。

投稿: 奏。 | 2008/11/24 22:03:22

茂木健一郎さま

千葉県は鴨川 
昨日に参り一泊しての海釣り
実は昨日、鴨川の港にあります弁天島 大賑わいで釣り場がなく
鴨川から館山寄りの フラワーセンターそばの磯に行こう 

でも、そこは釣り場へ行くのに難儀 潮が満ちた時 危険とフラワーセンターの方 そして、そのフラワーセンターには なんと磯釣りセンターという海の釣堀があるんです

よっぽど入ろうかと 実はウチの おやじ黒鯛を釣ったことがないので
今回は どうにか おやじに黒鯛を釣ってもらう! 

海の釣堀も魅力的でしたが 何かの時にと 再度 弁天島に参り
どうにか釣り座も そして30センチ位のメジナを私は釣りの昨日

本日 ウチの おやじに黒鯛を釣ってもらいたい ただ
NHKお天気解説の半井小絵さん
本日の天候 のちに雨と先週予報されていたので午前中と

撒き餌を撒いて 撒き餌が利く5メートル位離れて ウチの おやじ
30センチ位の黒鯛 カイズと言いいますが釣る事が出来て
そして雨
半井小絵さん 凄い!! 安全を考え すぐに撤収

武者小路実篤さまの
抽選に漏れて釣りに参って それはそれで良かったという感じです。

でも本当 凄い半井小絵さんズバリお天気解説!! 助かりました。 

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2008/11/24 20:10:57

 ぼくはちゃんと取り込めるゾ。
  私もちゃんと取り込めますよ、
 そしてPhotoshop Elementsで楽しんでもいます。

  コメントは「制御不能の恵みと呪い」・・・♪

投稿: 本川 直子 | 2008/11/24 19:14:30

二晩続けての
特別 楽しそうな 美味しそうな 素敵そうな
お酒の席を拝見させて頂きました。
白洲信哉さんの
どんどんアップになっていき
こちらを向くようになっていく
パチパチ撮られた写真は、仲良しさんだからこそ撮れるものですよね。

投稿: 穂 | 2008/11/24 18:52:53

自分の好きなものが 並んでる
視線を上げた前に 並んでる
ほっと、して にやって、してたのかしら
空想の海に 何色の鯨が 何頭 泳ぐのかしら
どんな 歌を 歌うのかしら
やっぱり その内 空を 泳ぐのかしら? 

投稿: no name | 2008/11/24 18:17:55

         柿     掛け軸     

      白洲信哉さん  頭上に上がる  日の丸の旗 


               


              


              

投稿: 一光 | 2008/11/24 17:56:03

こんにちわ

「クオリア」は、反応選択性ニューロンの反応選択性ニューロンの意識側の概念に相当する概念ではないでしょうか?


お酒が似合うモーツァルトのブログ、ブックマークに登録しました。(^^)

投稿: 何にでもクオリアby片上泰助(^^) | 2008/11/24 15:17:14

初めてブログ拝見させてもらいました(´∀`)茂木先生の本を最近読んでいます。茂木先生のファンになっちゃってます。今宮崎駿の67年見てまーす。

投稿: 愛子 | 2008/11/24 13:47:07

茂木さん、こんにちは。
大阪は、今、雨が降り出しました。

茂木さんのブログや音声ファイルをお聴き
していると、子供の頃に読んだ本や作家の
お名前が登場し、懐かしくなります。

モンゴメリーを始め、シェークスピア、
トルストイ、スタンダール、そして今日は
武者小路実篤。

今、改めてその言葉に目を通すと、重み、深み
を感じます。
本というのは、「もう、読んだ。」で終わらせる
のではなく、大人になってからも読み直すべきものだなぁ~
と今日、思いました。

「シンクロニシティ」ですか・・・。
‘意味のある偶然の一致’ということでしたね?!
不思議だなぁ~と思うことが、時々、ありますが
そういえば、「新潮」の中で小林秀雄さんが少し
語っていらっしゃいましたが、あれもシンクロニシティ
でしょう?
人と人を繋いでいくのも何かこの‘シンクロニシティ’に
よるものがあるように思いますが?!

「現実と理想のはざまに揺れる人間は、内なる自然を
制御不能の恵みと呪いとして認識す。」とは?!
やはり、茂木さん、mp3が恋しいですね!
講演をお聴きしたいです。
まだまだお時間がかかるのでしょうか?
Nさんに頑張っていただかないといけませんね。(笑)
研究の方がお忙しいのでしょうか。

「鯨を飼いたかった」というのは、何ともユニークですね!
そして、ダイニング・テーブルの様なこの長机。
奥の方には骨董品が置かれているのでしょうか?
緑が目に入ってきて、落ち着ける感じがいたします。

「ふぐ」と言えば、大分県。
豊後水道で鍛えられた‘豊後とらふぐ’は絶品です!
ふぐの皮和えも有名ですが、お刺身、てっちりなどなど・・・。
今が旬の高級食材ですね!
食べたくなりました~。(笑)

「白洲信哉」さんは、日本人離れしたお顔ですね!
私は今回、「新潮」での対談を通して白洲さんについて
は、茂木さんが投げかけられたことに対して冷静に受け
止められ、語っていらっしゃることが実に‘大人’だな!
と感じました。

茂木さんと共鳴しつつ、でも、考え方の違うところが
特に面白く読めました。(笑)
今日、小林秀雄さんのCDの感想と併せて後ほど・・・。

では、今日もお健やかにお過ごしください。

投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/11/24 12:27:43

オトコマエですね~信哉さん。
叔父と叔母の両方のDNAを確実に受け継いでいる感じが、
お顔を拝見しただけで伺えてしまいます。
お酒を飲む姿が絵になっています。
この写真はお酒にCMにそのまま使えそうですよ。

シャンプーハットの小出水どの(芸人)に似ていると言ったら
どういう反応をされるでしょう?
いや、彼もオトコマエなんですよ。

投稿: pteron | 2008/11/24 12:16:17

う~ん、白洲さんの表情が何とも和んでいらして、いい感じですね…。拝見すればするほど、惚れ惚れしてしまうような、素敵な表情です。

よく拝見すると、やはりどことなく、おじいさまの小林秀雄さんの面影もあるような。

武者小路実篤が、自宅の池で鯨と、もうひとつ大きな生き物を飼うという夢をもっていたとは…何かスケールの大きなものを感じる。

武蔵野の新しき村に実篤の生きてきた日々にも、常に理想と現実に挟まれたことによって生まれる、人の持つ内面の自然の一面である、激しい葛藤と深い懊悩がきっと渦巻いていたことを思うと、文学でもその他の芸術でも、創作の大きな糧の1つとなるのは、その葛藤と懊悩なのかもしれない…。

実篤のような文豪でなくても、個々の人間はその葛藤や懊悩と、ずっとお付き合いしながら、一生を生きていくのだろう。

ところで、白洲さんがブログを開設されたそうで…。この文章を書き終えたら、早速アクセスしたいと思います。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/11/24 11:42:19

白洲信哉さんの写真をみつめていたら、

小林秀雄の「響き」のなかにあった「勾玉について」を聴きたくなりました。
何度聴いても心打たれます。

感謝

投稿: たーじい | 2008/11/24 9:32:18

茂木先生、はじめまして。
のんと申します。
先日、朝の番組で先生の「脳を活かす子育て」を拝見いたしました。
現在、子供に携わる仕事をさせていただいているのでとても勉強になりました。
有難うございます。
先生がこちら(関西)で、講演会をされるときには
ぜひお勉強させていただければと思っております。
どうぞ宜しくお願いいたします。
白州信哉先生…モーツァルトに似てらっしゃると思いました。^^
人の表情の中に無限の自然あり…素敵です。^^

投稿: のん | 2008/11/24 8:54:14

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