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2008/11/22

控え室

東京芸術大学の音楽学部の
片隅にすわり、コンピュータを開けたら、
ちょうど須甲松伸先生が通り過ぎた。

「あっ、須甲先生!」

と立ち上がった。

お誘いいただいて、授業に伺ったのである。

教室に行き、荷物を置いて、
喉が渇いていることに気付いたので、
自販機を探した。

男子学生が缶コーヒーを買っている。

ぼくは長いボトルの水を求めて、
財布のクォーターやダイムの
中から円を探りあてた。

講義を終えて、喫茶室に。

学生たちが10名くらい一緒に歩いてきて、
いろいろと話す。

ピアノ科の三人が、ボクが描いた
ヘタクソな絵を見せ合っていた。

「音楽学部の学生はどうですか?」
と須甲先生がお尋ねになるので、
「美術学部のやつらに比べて、より
エレガントな感じがします」と答えた。

芸大の先生方と議論する。

脳科学と芸術の関係はどうあるべきか。

「本筋」のことは、ジェームズ・タレルの
作品に見られるように、認知神経科学の
最先端の問題を、作品のブレイクスルーと
結びつけることであろう。

そして、アートの資格を神経科学の言葉で
パラフレーズし、追認するのではなく、
むしろ、新しきものが生み出される
プロセス、多様性の背後の普遍性を
支える基盤にフォーカスを当てることによって、
一つ「メタ」な見地からアプローチすること
だろう。

そうすれば、何ものかを生み出そうと苦闘
している学生たちに、本当の意味で
資するはずだ。

移動中はとにかく仕事をする。
秋が深まる東京の街並みを見るのは
チラチラとした瞬間だけ。

新宿住友ホール。

椎名誠さんは、いつものように風を
まとって現れた。

「どこからいらっしゃったのですか?」

「いやあ、今日は家ですよ。」

椎名さんは、ハンガーにコートとマフラーを
かけた。

黒いマフラーからひだひだが
下がる。

椎名誠さんといると、見慣れた
はずの住友ホールの部屋が、
プロレスの試合前の控え室
のように思われた。

11月 22, 2008 at 11:56 午前 |

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コメント

茂木先生おはようございます。
椎名さんとのプロレス試合、楽しませていただきました。
なかでも「怒り」に関するお話が大変興味深かったです。現代日本に蔓延するオートマティックな過保護は、疑問を持ち自分で思考し時には反発する力を、私達から奪ってしまったのかもしれません。その結果、自己責任のもとで自己決定する強さを持った人間が、少なくなってしまったのかもしれません。椎名さんが「弱い奴が増えていることが恐い」とおっしゃっていましたが、私もまったくそうだと思いました。まずは、「場(というか空気)」ではなく「個」として自分の頭でものを考えること、そしてその結果を、人のせいにせず、自分の責任としてきちんと受け止めるということを徹底して習慣化することから始めなければならないのでしょう。至極当たり前のことなのに、どうしてそれができないのでしょうね。「和の精神」というと聞こえはいいですが、自分でものを考えないことを正当化する言葉のように思えることがあります。時には椎名さんのように自分の肉体を言葉として相手にぶつけることが必要なのでしょう。椎名誠、かっこいいなあ。

最後になりましたが、私も恋がしたくなりました(笑)。

投稿: ちはる | 2008/11/23 6:35:17

茂木先生、昨夜の講演会の前に、東京芸術大学で授業(講義)をされていたのですか。。

茂木先生のお話しを聞いた10名の学生さんは、幸せですね♪
もの凄く近くで、茂木先生のお話しを聞けますし、素敵な一時を過ごされた事でしょう。


『本筋』の…という辺りからのお話。多分、今までは分からなかったと思いますが、今は分かります!(と…思っています。)


昨日の講演会でのお話しにもありました、「何のために生きているのか(人生の意味)」にも繋がりを見せますね。


プロレスの試合前の控え室とは…凄いですね!今回の場合は、やる気(闘志)が漲っていく感じ…を受けます。


昨日は、高速バスでの行き帰りだった為、サインを頂き名残惜しかったのですが、バス停へ走りました。

バスに乗ってからも、お話し・頂いたサイン等、色々と感じられる物が私の中に残り、素敵な一時を過ごせた事、とても嬉しく思いました!

投稿: 奏。 | 2008/11/23 0:45:52

きょう、上野公園を散歩してきたら、銀杏の葉がまぶしいほどの黄色に変わっていた…。

その黄色の美しさに、自然というのは本当に優れた藝術家なのだなぁ、としみじみ感じ入った。

自然それ自体に、巧まざる美を生み出す力がある。秋の木の葉の鮮やかな色づきを見ているだけでも、それを実感する…。

最近、「現代藝術」との出遭いがとみに少なくなってきていると、我ながら感じていた。

“認知神経科学の最先端問題と結びついている作品”たちとの出遭いをもっと増やしたい。

もちろん、歴史の流れの中で生まれてきた数多の古典的な作品とのふれあいもしていきたい

とにかく、嗚呼!もっともっと、優れた藝術に触れ合いたい…!という心の叫びは、何時も渦巻いている。

プロレス…そういえば、小学生から中学生の頃、毎週金曜のゴールデンタイムや日曜日に試合が放映されているのをよく見たものだ…。

よく考えたら、私達は人生という“リング”で、様々な試練と闘い続けるレスラーのようなものかもしれない。


投稿: 銀鏡反応 | 2008/11/22 20:07:58

昨日の「椎名誠さん」との対談。
皆さんのコメントを読ませていただきました。

タイトルには「恋」とありますが、それ以外でも
自分の気持ちが向くもの、自分が真剣に打ち込める
もの、な~んでも良いのでしょう!
それがあるか、ないかでは、生き方も感じ方も違って
くると思います。
何かを対象とした熱い気持ちは、私にもあります。

仕事や友情はさることながら、犬に接している時は
自然と笑みがこぼれて、顔がクチャクチャになって
いる事が多いです。(笑)
動物が身近にいるっていいものです。

「脳科学と芸術」の関係。
茂木さんのおっしゃっている「多様性の背後の普遍性
を支える基盤にフォーカスを当てることによって・・・。」
これは、人と人との関係には男女の愛だけではなく、友情で
あったり、いろ~んな関係性が成り立っているから、そこで
アプローチの仕方がいろいろある。
と受け取りました。

自分を取り巻く人たちとの間には、様々な関係性があるから
その多様性のなかで、育まれていく関係が大事なのですね!

かなり寒くなって参りましたが、私はジョギングよりも
ウォーキングの方が良くて、とにかく早足で歩いていますが
茂木さんは帰国されてまた、ジョギングをされるのでしょうか?
お濠の辺りをぐるっと歩いて、橋を渡り城内に差し掛かる手前に
甘酒やたこやき、フランクフルトなどなど売っているところがあり
寒いからついつい甘酒をいただいてしまいます。(笑)
愛犬が一緒の時は、フランクフルトソーセージになってしまうの
ですが。(笑)

寒いとついつい食欲が出てきてしまうので、ウォーキングを
続けなければと思っています。
茂木さんもジョギング、風邪をひかないようにお気をつけ
くださいね!

では・・・。

投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/11/22 14:12:46

こんにちわ

芸術作品を見たとき、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリン等の脳内物質が出る時、芸術作品に「脳内価値?」が出てくるのは、ないでしょうか?
(文明とかかわりの無い人が芸術作品を見たときの反応。)


人によっては「脳内価値」では、「缶コーヒー」と「モザリザ」は、あまり変わりないかも?(^^)

投稿: 芸術脳のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/11/22 13:44:12

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