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2008/11/18

情報動物

SfNの会場を動き回り、
ポスターを見て、
スライド・プレゼンテーションを聴く。

私たちのグループは8件の発表をしている。

旧知の友人に会い、会話を交わす。
お互いの記憶の中の煮こごりを温める。

街を歩く。目を見開く。

そんなことをしながら、
人間はサファリだなと思う。

この世のどこにもない空間の中で、奇妙な
情報動物を求めて
さ迷っているのだ。

私たちはみな、一人残らずハンターである。

タクシーに載ったら、ナイジェリアからの
人だった。

ナショナル・モールからチャイナタウンに
向かう道で、突然ビルを指して言った。

「このビルが、オバマの政権移行準備を
やっているところだよ。」

「この右側のが?」

「そう。ビル全体が。見ろよ、FBIの
人たちがいる。」

男は、誇らしげだった。

「ナイジェリアとケニアは近いね。」

「ああ、そうだな。」

「あなたはスワヒリ語がわかるのですか?」

「ある程度言葉に共通点があるからね。」

「オバマの名前は、どのような意味ですか。」

「さあ、なんだったかな。確か、未来は明るいとか、
そういう意味だったと思う。」

「あなたには子どもはいますか?」

「ああ、息子が一人いるよ。」

「将来、彼はアメリカ合衆国大統領になるかも
しれませんね。」

「そうだね。わからないな。まったく、
そうなるかもしれないね。」

コンベンション・センターに着き、
握手をして別れた。

夜、柳川透くん、藤井直敬さんさん、中沢一俊さん、
吉井あきらさん、二井健介さんとご飯をたべた。


藤井さんはかつてMITに留学していた。
中沢さんはMITから現在NIHへ。
吉井さん、二井さんは現在MITにいらっしゃる。

「オバマの勝利が決まった夜は、ワシントン中で
黒人たちがパーティーをやっていましたよ。」
と中沢さん。

「研究室のやつも、翌朝どうした、と聞いたら、
昨日は一日中パーティーをやっていたと
言っていたなあ。」

二井さんが受ける。

「あの時は凄かったですねえ。ボストンでも、
至るところでお祝いをしていましたからねえ。
あんな様子は、見たことがありませんでした。
4年前にももちろんなかったし。特別なこと
でしたね。」

ワシントンでわが生涯の何日かを生き、
サファリをする中で情報動物を発見。
そのありさまに心を動かされた。

11月 18, 2008 at 10:21 午後 |

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受信: 2008/11/21 2:00:56

コメント

先生がアフリカンなことを考えていらしたら
タクシーの運転手さんがナイジェリアの方だったとは
そういうのって、何かお互い呼ぶものがあるんでしょうかねぇ?
面白くて不思議で、吹き出してしまいました。
へー、サファリにハンター・・・
なるほどですね。
先生のそういう様々な素敵な感じ方って大好きです。

投稿: 穂 | 2008/11/19 18:15:37

茂木先生こんばんは♪お互いの記憶の中の煮こごりを温める…何だか素敵です。
サファリも語源はスワヒリ語なのですね。私たちはハンターであり、旅人なのでしょうか。
先日人類が滅亡したら地球はどうなるのか?というシュミレーション番組を観たのですが、20年後にはアスファルトは雑草に覆われ、100年もすれば、ビル群も街並もすっかりジャングルと還り海も生態系を取り戻し、野生の生物たちが息を吹き返す。
チェルノブイリも事故後たった20年で緑が戻ったように自然の力は計り知れず、地球レベルで見たら人間もただの動物、“情報動物”ああまさにその通りだなあと思いました。
オバマ氏の名の意味、「未来は明るい」素晴らしいです。先生は、まさに歴史的瞬間が起こった地で、希望に満ちた空気を実際に肌で感じていらっしゃるのでしょうか。
今の日本では一般家庭の子供が将来、総理になるという事は考えにくいですが、タクシーの運転手さんが先生の質問に対し、自分の子供も将来大統領になるかもしれないと自然に想像されたのが凄い事だと思いました。。
オバマ氏のもたらした変化は庶民1人1人にも希望を与えたのですね。改めて感動致しました。
先生いつも素晴らしい記事を有り難うございます♪
そちらはもう深夜ですね。お休みなさ

投稿: wahine | 2008/11/19 13:55:01

茂木さん、こんにちは。
新潮の今月号ですが未だ入手できていません。2件の書店で品切れでした。もう少し探してみます。
「この世のどこにもない空間の中で、奇妙な情報動物を求めてさ迷っているのだ。私たちはみな、一人残らずハンターである。」
頷くばかりです。いくつになっても探し歩いて、さ迷っている感覚があります。つねに右往左往しています。

投稿: 柴田愛 | 2008/11/19 12:39:58

人間は誰しもが、玉石混交の情報が飛び交う空間で、己にとって面白く、かつためになるだろう“情報”と“物語”を捜し続ける生き物…確かにそうだ、と思う。

だが、反面、それに振りまわされやすい生き物でもある。

情報という名の動物を求めて、本当に面白い、奇妙なそれに出遭うという、人生の不思議な一面を思う。

オバマの名前の由来が「未来は明るい」とは、いいエピソードですね。
それでは。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/11/19 5:53:12

ワシントンにてお忙しい中、
ブログをたくさんアップして下さり、
そればかりか私の拙いコメントも再三 載せて頂いたり、
たいへん有難うございます。
茂木先生は今でも十二分に愚行(神業と同じ意味)
なさっていると思います。こんな忙しい脳は
私には想像もできないです。

今、集英社新書『欲望する脳』をまだ読んでいる途中です
(私にはなかなか読みづらい本です)。
著書やブログで、
こんな見え方も隠れていたのか、と思わせられる、
世の中の、いつもとは違う隠れ図形を 次々と提示して下さり、
たまに理解が追いつかないこともありますが、
ゆったりしてきます。

矛盾はあって当たり前、ということを言った人がいて、
私はそれを座右の銘に加えようと思ったのに
ここ半月ばかり すっかり忘れていました。
”偶有性”に寄り添って生きるとは、
矛盾を引き受けることと、同じ意味かも知れない
と思いました。
取り返しがつかないほどに 人々の矛盾が増幅するのを、
脳科学の力で防ぐことは、できるのでしょうか?

乱文にて失礼いたします。

投稿: MiznoYuli(u-cat) | 2008/11/19 3:17:52

こんにちわ

ニュースで、オバマ次期大統領のインタビューを見て、若くて優秀でエネルギッシュに感じました。なぜか分かりませんが、私は、10歳も下ですが、優秀な若者に見えました。

オバマ次期大統領が若いのか、私が老けているのか?、茂木さんはどう思います?(^^)

投稿: 大統領のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/11/19 1:28:00

茂木さん、お元気そうでなによりですね!               
人は皆、ハンターですか?
「情報」には、敏感でありたいと思っている
のでしょうか?!
現代を生きる私たちはそうなのかもしれませんね。

それにしてもオバマ次期アメリカ大統領は、いろ~んな
人に夢と希望をもたらしたことは間違いのない事実ですね!

「サファリ」とは、様々な人が行き交っている様子が
想像できます。
その中で、「もじゃもじゃヘアー」の茂木さんは、どんな
感じなのでしょう?!(笑)

お忙しい中、美術館や街を散策できてよろしかったですね!

では、残された日々、有意義にお過ごしください。

投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/11/19 1:06:46

茂木健一郎さま

事実、普通にタクシーの運転手さんと普通に会話されたり。
ワシントンに行こうと茂木健一郎さまが望めば、思った翌日にはワシントン
それが可能な茂木健一郎さまが、ご自身の生涯の記憶に今回、ワシントン滞在を、お認めには、事実は凄いです。

日本語では、愚行
でも、もしかしたら
アメリカでは愚行を
チャレンジャー
日本語でも、愚行を躍動的に言葉にすると
挑戦者
私は個人的には、そう感じます。
地球人 茂木健一郎さま
宮崎駿さまが
オープンカーで雨、小学校一年生、あの子供さんの小学校一年生は、その時にしかなく、雨で車がとか
小さな!と、宮崎駿さま。
私は
茂木健一郎さまがタクシーにて普通に運転手さんと会話され、に
格好良くスマート

地球人 茂木健一郎さまアメリカでも普通に格好良いです。

ちなみに宮崎駿さまも
オープンカーのお話を、あえて申されが格好良すぎ位、格好良いです。

投稿: TOKYO / HIDEKI | 2008/11/19 0:15:59

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