Wの見ていたもの
サンデー毎日
2008年10月26日号
茂木健一郎
歴史エッセイ
『文明の星時間』
第35回 Wの見ていたもの
一部抜粋
高校の時の同級生のWは、大変な俊才であった。何しろ、私たちの学年の共通一次試験(現在のセンター試験)の全国1位。1000点満点中、981点であったと記憶している。
もっとも、Wの輝きは偏差値などで測れるものではなかった。受験などというものは超越していた。「早く大学に入って、思う存分ドイツ語の文献が読みたい」と言うような男だったのである。
卒業文集で、皆が高校時代の思い出などについて書くなかで、Wのタイトルは、「ラテン民族における栄光の概念について」。Wと二年間同じクラスだったことを、私は自分の人生に起こった「奇跡」の一つだと思っている。
あれは受験を控えた11月頃だった。高校からの帰り道、最寄り駅のホームに上がると、Wが一人で本を読んでいた。「何を読んでいるの?」と聞くと、彼は「ぼくはふだん勉強で忙しいから、こういう時くらいこんな本を読まないと、精神のバランスが保てないんだ」と答えた。
Wが表紙を見せてくれた。英語で書かれた、イングランド女王、エリザベス1世の伝記。セピア色の思い出の中にあるシーンである。
全文は「サンデー毎日」でお読みください。
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10月 14, 2008 at 07:01 午前 | Permalink
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