分水嶺のこと
「日本再発見塾」が行われた
赤倉温泉は、松尾芭蕉ゆかりの地。
『奥の細道』の紀行で訪れたのである。
河原で「いも煮」会。
呼びかけ人代表の黛まどかさんを
始め、参加者たちが「いも煮」を
味わった。
赤倉温泉にて。黛まどかさんと。
夕刻、集落を歩く。
小学校の横を抜けて、小径を上ると
そこに墓地があった。
歩いていける範囲に、祖先が祀ってある。
朝に夕に花をあげ、祈る人もいるだろう。
さらに歩くと、小径があった。
田んぼの中を続く細い道。
稔りの時を迎えた田んぼの風情はゆかしく、
自然に心がほぐれていく。
秋の風景が、寂しさを感じさせつつも、
深いところで慰撫してくれるのは
どうしてなのだろう。
盛りの季節が終わったということは、
疑いなく「死」のメタファーとなる。
やがて来る春の再生まで、
静かで厳かな季節が続くのである。
宿に戻り、夜のセッション。
皆温泉に入っているが、私は外を散歩していたから、
そのまま。
黛まどかさんに、「散歩をしてきた」
と言ったら、「何を見ましたか」
と言うので、「刈り入れの終わった田んぼを
見てきた」と答えた。
すると、まどかさんは、「昔の人はその様子を
一揆と表現したのです」という。
「なるほど」と思い出す。
確かに、兵(つわもの)どもが枯れ田の
暗がりに立っていた。
作曲家の千住明さんの友人で、
ミシュランガイド三つ星の「かんだ」
の御主人、神田裕行さんが肉を焼く。
おいしい肉とワインを友に、
楽しい時間はふけていく。
翌朝、仙台に出る途中に「分水嶺」
があった。
この流れが左右に分かれ、太平洋と
日本海に流れていくという。
「それじゃあ、笹舟を流すと、
どちらにいくか、ドキドキするね。」
分水嶺の様子があまりにも清冽で美しかったので、
なんだか本当のこととは思えなかった。
仙台から新幹線。
私は大宮で降りて、群馬へ。
高崎経済大学で、お話しする。
NHK前橋放送局と高崎経済大学主催の
学生向け講演会。
学生諸君に一時間話し、30分間
たっぷり対話した。
分水嶺のことが忘れられぬ。
今日一日の中にも潜んでいるかと
思うと、胸がざわめく。
10月 7, 2008 at 06:40 午前 | Permalink
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コメント
日本再発見塾、
最上町においでいただきありがとうございました。
マチの外のヒトから
自分の住んでいる故郷を
評価していただくこと、
どきどきわくわくもんです。
温泉と芭蕉と馬のマチに
またおいでくださいませ。
神田師匠に負けないよう
食材を揃えておきますよ。
投稿: mamo | 2008/10/16 6:54:02
分水嶺の写真、キレイですね。
川の水も澄んでいて、底が見える程。このような風景があるのですね。
稲刈りが終わった田んぼの写真と合わせ、なんだか懐かしくホッとする感じがします。
全ての水は、分水嶺で分かたれたものも太平洋・日本海の流れ出るものも一緒。
そして…分水嶺で分かたれた川の水が太平洋と日本海へ流れ出るまでに、植物や私たちの口も潤していく。。
このような懐かしくてステキな田舎の風景、後世に残していかなければ、いけないなぁと思います。
投稿: 奏。 | 2008/10/07 23:18:23
赤倉温泉の風景のお写真を見ていると、とても静かな感じがして、心が和らぐ気がします…。
何時ぞやかの秋の日に、等々力渓谷を訪れた時、もう木の葉が色づき始め、散って落ちた葉が水の流れに浮かび、ゆるゆると流れていくのを見つめていた。
その時、不思議に寂しさを伴った心の和みが訪れていたかと思う。
秋は何故か寂しくも、心に暖かさや和やかさを齎してくれる季節なのだ。
分水嶺のお写真、水がとても透き通っていて、せせらぎが今にも聞こえてきそうです。彼岸花(?)の朱赤が、冴え冴えとして眼にしみるほどに鮮やかですね…。
人は生まれてから死ぬまでに、人生の分水嶺に幾つ出会うのだろう。この先どんな分かれ目が待ち構えているのだろう。
都会の秋も深まりつつあり、近所の桜の葉も、ハラハラと散り始めている。
投稿: 銀鏡反応 | 2008/10/07 21:00:58
モギー先生、毎日楽しく拝見させていただいております。わたしのブログで
先生のイスラエルの記事を書かせていただきました。 分水嶺ほんとうに美しいですね!薫まどかさんも満面も笑みで、とてもうつくしいです。モギー先生、おとなりにいらして、とってもうれしそうにみえますのは、わたくし
だけでしょうか??笑゛ お身体くれぐれもお気をつけになられましてごゆるりとお仕事、ご研究されますよう。
投稿: じゃすみん | 2008/10/07 17:44:15
分水嶺 清冽な美しさこそ 。胸のざわめきが移ってきたよう 。
潜んでいるかと 眼を凝らす 。 金木犀の香りが部屋の中まで漂ってきました。
投稿: ぶらんか | 2008/10/07 10:25:51
゜.+:。(*´v`*)゜.+:。茂木さん、おはようございま~~す
「『奥の細道』の紀行で訪れたのである。」
松尾芭蕉ゆかりの地を訪れたのですね~!
松尾芭蕉のことはよくわからないのですが、
先日テレビで、松尾芭蕉の生涯が流れていて、
ああ、松尾芭蕉と荘子が現代に生きていて
対談でもしたらめちゃくちゃおもしろいんだろうなあ~と
思いながら見ていたら、
松尾芭蕉は荘子の影響も受けていたそうで、
なるほど~★
赤倉温泉や、
周囲の稲刈りが終わった様子、
とても風情がありきれいですね、
この中間色が、
私にはとても新鮮に感じるのです。
そして、黛まどかさん、とてもお綺麗ですね
分水嶺、
ここで太平洋側と日本海側に分かれるのですね、
そう思うと、
今日がその分水嶺かもしれない、
今日を境に違う世界へ旅立つかもしれない
そのようなきっかけがあるかもしれない。
ある意味、勇気のいることだろうなと思えば、
気がついていたら、どちらかの流れに
自然にのっていた、
そのようなものかもしれません。
どっちにしろ私は分水嶺を楽しみたい派です♪
投稿: ももすけ | 2008/10/07 8:53:44
お早うございます。なんだかとても懐かしい気持ちになりました。澄んだ空気と、枯れゆく草木の香りを秋の風とともにかいだようなそんな気分です。分水嶺ですか、初めて知りました。どちらにでても笹舟は大海へとたどり着くのですね。
ちろちろと静かにながれる水の音が聞こえてきそうです。
兵どもも美しい。美しいものは残していかないといけませんね。(*´_`*)
それでは茂木先生今日も良い1日をお過ごし下さいませ♪
投稿: WAHINE | 2008/10/07 7:49:35
茂木健一郎さま
分水嶺
私の心には
熊本の通潤橋です
そこだけでなく、車で少し移動、本流から支流のように取り入れ、そこの分水が印象的
丸い 私のイメージでは神聖な角界の土俵のように中心から水が湧き出て外側の分水に
茂木健さま、均等に分かち合えるよう円形の分水嶺に、数年前に参った際、読みました説明に確か記憶では。
そして、見所の通潤橋
高さかなりありますが、手すりはないです。なにせ水を流す目的の橋ですから。水道管が橋の中にで、お掃除のために放水!
橋の中央で小柄な係りの方が木製の栓を抜いて
今は観光放水で。
水圧が凄い!圧巻!
ところで放水を止めるには? 小柄に見えた係りの方が止めるんです。
筋力で!ではなく知恵で
取り入れ口をふさいで。ふさがれた水は横の水路から通潤橋の横
イメージ的に下から通潤橋に上がる階段横のスロープみたいに流れ落ちてくる水路が、それです。
通潤橋の放水を止めるまで見ていて 凄いシステム 英知の結晶です。
投稿: HIDEKI TOKYO | 2008/10/07 7:45:12
茂木健一郎さま
黄色のウエア、良いですよね!
あえて、ウエアと
私、スキーウエアが黄色なので!
投稿: HIDEKI TOKYO | 2008/10/07 7:02:35