かっぱの国
子どもの頃は自転車で次第に
行動範囲が広がっていった。
家から自転車で30分くらいのところに
森があり、
春先にそこを散歩していたら
ミヤマセセリがいた。
生まれて初めて見る蝶。
茶色の地に、白い斑点が愛らしい。
ミヤマセセリのいる森は、
奥へ奥へと広がっていて、
「探検」のわくわくする気持ちがあった。
一方、その頃仲間から、川の近くに
「かっぱの国」という森があると聞いた。
湿地帯で、足がずぶずぶになるが、
ものすごい数のクワガタがいるという。
木をけると、
「ノコギリクワガタが雨のように降ってくる」
という話に私はすっかり興奮してしまった。
かっぱの国には、ゼフィルスのミドリシジミも
いて、6月頃になると可憐なミドリの
羽を見せた。
ミヤマセセリの森と、かっぱの国は自転車で
10分くらいの距離で、週末になると、
あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、
ずいぶんと通った。
ある時、かっぱの国の森を歩いていて、
いつもの範囲を超え、
どんどん奥へと進んだ。
やがて、畑のような場所に来て、森に出会い、
さらに歩いていくと、なんだか
見慣れたような場所に出た。
そこが「ミヤマセセリの森」だと
気付いた時に、自分の立っている
大地が揺らぐような気がした。
「かっぱの国」と、「ミヤマセセリの森」は、
つながっている!
それまで全く別の、関係のない場所だと
思っていた二つの森が、実は一つながりであった。
あの時の、目眩がするような思いを、今でも
鮮明に覚えている。
部分と部分が全体に接続したのである。
仕事で大坂に日帰り。
リッツ・カールトン・ホテルで
打ち合わせをしている時に、必要が
あってある本を手に入れなければならなく
なった。
コンシェルジュで聞くと、
歩いて5分くらいのところに
ジュンク堂があるという。
「どうやったら行けますか?」
と聞くと、「BF2階から地下街を通って
5分くらいです。」と言う。
「えっ。リッツ・カールトンは、地下街と
つながっているのですか?」
私は驚いてたずねた。
「ええ。大坂の人は、皆、梅田から地下街を
通っていらっしゃいます。」
今まで、リッツ・カールトンに来るときは、
大坂か新大阪からタクシーに乗って、
それほど遠くないこのあたり、と思っていたから、
まさかの地下街には気付かなかった。
ジュンク堂で本を手に入れて戻るその道すがら、
幼き日の「かっぱの国」のことを
思いだした。
リッツ・カールトンは、確かに梅田に
つながっている。
新幹線に揺られながら、来し方行く末を思う。
別物だと思っていて、実はつながっている
ものは、まだまだたくさんあるのであろう
たとえばクオリア。
10月 23, 2008 at 06:34 午前 | Permalink
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コメント
茂木さん、はじめまして。
大阪に住んで30年余りです。
特にキタと呼ばれる梅田界隈は地上よりも地下の方が便利です。
ほぼ全域が地下からアクセス可能なんです。
私の記憶もキタの地下くらい自由に行き来できればいいのですが。
大阪人でもいまだに地下が頭の中でつながっていないという人はたくさんいますよ。
ちなみに、Whity(ホワイティ)という地下街の住所は、
大阪市北区堂山町梅田地下街○丁目・・・といった感じになります。
地上と地下2つの世界が存在していると考えるとちょっと面白いですよね。
投稿: あつし | 2008/10/29 10:48:03
こんにちは!!
懐かしさを感じる 心温まる 小さい時の不思議をふと思い出したしまった文章でした
小さい頃はとてつもなく遠く感じた道のり
大きく広く見えた 家や庭 そして公園
夢中になって遊んでいたから アッという間と思ったけど
今よりは比べものにならないくらい 長く感じた一日
点と点が繋がったて マジックのように思ってしまった景色
私にもありましたよ なんだか子供心に 恐かった!!
こんな事 知ってしまって・・・・ドキ!! ドキ!!って
今思えば なんていうこと無い事 それでも不思議の国のアリスでした
投稿: YABOI | 2008/10/24 14:15:05
こんにちは!!
懐かしさを感じる 心温まる 小さい時の不思議をふと思い出したしまった文章でした
小さい頃はとてつもなく遠く感じた道のり
大きく広く見えた 家や庭 そして公園
夢中になって遊んでいたから アッという間と思ったけど
今よりは比べものにならないくらい 長く感じた一日
点と点が繋がったて マジックのように思ってしまった景色
私にもありましたよ なんだか子供心に 恐かった!!
こんな事 知ってしまって・・・・ドキ!! ドキ!!って
今思えば なんていうこと無い事 それでも不思議の国のアリスでした
投稿: 進藤やよい | 2008/10/24 14:11:46
茂木先生お早うございます♪
ノコギリクワガタの雨に降られてみたいなあと思いました(笑) シジミ蝶もセセリ蝶も可憐で本当に可愛らしいですよね。あの時の目眩がするような思いを今でも鮮明に…私もまるでその場にいるような感覚で“かっぱの国”と“ミヤマセセリの森”のつながりに感動を覚えました。なんて美しい奇跡でしょう。((*´ω`*))
何気ない日常のつながりを見つけたとき、一瞬にして眩しいクオリアに包まれるそんな瞬間があります。
先生がおっしゃるように、空と私がつながっているように、海と大地、自然と宇宙、人と人、心と心、そしてクオリア…実はつながっているもので溢れているのかもしれません。
先生からの沢山の気づきにやはり感謝せずにはいられませんなあ。(●^ω^●)
全然関係ないのですが実家の家の前の川にかわうそくんを見つけました。( ̄∀ ̄ノ)ノ
しぐさが愛らしいです♪
それでは、今日も良い1日をお過ごし下さいませ。(*^▽^*)ノシ
投稿: WAHINE | 2008/10/24 7:41:27
はじめまして。
思っていないことが 実は繋がっていた、なんて ほんとワクワクしますね。驚きとか感動って、考え方によっては 無限にあるのですね。
読んでいて、子どもの頃を思い出しました。
私も自転車で”遠くへ”行くことが好きな子どもでした。駄菓子やさんで、食料を買って自転車のかごに入れて・・
心の中では、遭難も覚悟したのです。(ふつう 迷子っていいますが)
それにしても先生って、いろいろなことでワクワクできるのですね。
先生のお話しを楽しみにしてます。
投稿: ろばの耳 | 2008/10/24 0:01:29
たとえばPCですね。
いろんなメディアの結合体。どことどこを何で繋ぐか。
ひとそれぞれの状況でNETにつないで
みんないっしょになる。
わたしはDのPC、あなたはSのPCというぐあいに。
でも、どうにか幸せな世の中になってほしいなぁ。
投稿: かめさんの再送 | 2008/10/23 23:08:46
“かっぱの国とミヤマセセリの森”のエピソード、非常に興味深く読ませていただきました。
一見関係ないと思われていた複数の物事が、実は互いに何処かで繋がっている、というのは本当に沢山あるものなのですね…。
それにしても、昼まだ暗い森の中で舞い飛ぶゼフィルスたちというのは、どんなに美しいものなのだろう…。
頭の中で、暗闇を舞いながら、宝石のように輝く彼らの姿が浮かんできた。
あれは、等々力渓谷に遊びに行った時のこと。昼間も薄暗い渓谷の中を奥のほうまで歩きに歩いた。
“この先には、きっと私の知らない、なにかがあるはずだ”と思い、ドンドンと進むと、何時しか明るい場所に出た。
よく見ると、それは多摩川の河辺近くの通りだった。なぁんだ、とがっくりきた。
しかし、薄暗い渓谷を行く途中で見た、ウラナミジャノメと思しきジミな色合いの蝶に出遭うことが出来た。暗い渓谷を飛び回るシックな姿の妖精に出遭えたような気分だった。
私達がよって立つこの世界は、互いに何かで“つながって”いるのではないか。私達がそれになかなか気付かないだけなのではないか…。
きょうの日記を読ませていただき、そんな感想をもちました。
投稿: 銀鏡反応 | 2008/10/23 22:30:13
茂木先生 こんにちは♪
小学校の山の下にあった「かっぱの池」を思いだしました。そこは、それほど山の中ではなく前に車が通れる位の道があったと思います。少しだけよこ道に入った所で、まわりは木や草に覆われ木の根が池の上に張り出し、その下は池が深そうで奥まで続いていて、そこからはどうなっているんだろう?とほんとに河童がいそうな雰囲気がありました。実際はその池は米俵をつけておく溜池だそうですけど、小学生の間では「河童がいる!」と言われていて夕方男子が「河童がいたぁ~!」と走ってきたので「え~うそぉ~河童なんている訳ないよ」と思いながらも、ほんとに見たかも知れないとドキドキした思い出があります。森と森のつながりも、闇雲に歩いて「なんだぁ~ここに出てくるんだぁ!」と狐に包まれていたような感じがスッキリして、先生の「大地がゆらぐような気がした」と言うのはわかる気がします。自然と人のクオリアもどこかで繋がっている気がします♪
投稿: 平井礼子 | 2008/10/23 22:20:48
茂木健一郎さま
自転車と言えば
私は冬のスポーツ、スキーが大好き、ちなみに、どこで見たのかな?
NHKお天気解説の半井小絵さんも、趣味にスキー、と、どこかで書いてあった気がします
さて、自転車と言えば、F1レーサーの佐藤琢磨さんです。自転車、私の弟が自転車屋さんのチームに入っていた以前のこと
琢磨くんも同じチームで、いつも写真を映す時、私の弟と一緒が多くと、数年後、テレビ局さんから昔の琢磨くんの写真を見せて下さいの時に周囲が気づいたとの
そういえば
スポーツドリンクのテレビCM
茂木健一郎さま
題名ってあるんですね、かなり以前のこと
ハンバーガーの代わりに
そういう題名に近いテレビCM
私の弟も参加したことが木村拓也さまが主人公で自転車レーサーと一緒にの、その、それに
事前に博報堂さまから通達
木村拓也さまに、お声などかけてはダメです!
と事前説明がと、当時、弟、申してました。撮影後、実はエキストラである自分たちに木村拓也さん、おはようございます!
挨拶されて、博報堂さまからは、お話してはダメ!で うーん、でも意外だった、エキストラに挨拶されるんだ!と
私、弟から聞いた、その話で
木村拓也さま 日本男児、思いましたこと
ふと
茂木健一郎さまが自動車で!とのことで思い出しました。
投稿: HIDEKI TOKYO | 2008/10/23 16:20:15
茂木さん、こんにちは
なんだか、宮崎駿さんの世界に近いような
幼い頃の茂木少年の
ドキドキと驚きが
伝わってくるような…
けれど、
今日は一日中体調がよくなくて、
もっと頭が冴えていたら、
茂木少年のあの世界観を堪能できただろうに。
と思うと悔しいやら何やら。
茂木さんが先日アップしてくださったご講義も未だ拝聴できず。
こんな日は
諦めることも肝心だと、
そうしなければ
どこかに後悔や自責の念があると
本当に休むことができないので…。
諦めるは忍耐につながり、
粘り強い姿勢を育むことを信じつつ。
なんだか関係ないコメントになってしまい
すみませんm(__)m
投稿: ももすけ | 2008/10/23 16:12:36
茂木さん、こんにちは。幼い頃のお話で蝶や虫を
追いかけて、自転車で森へ行かれていたのですか?
私は九州で育ちましたが、家の目の前に大きな森
があり、お友達や姉と一緒に野いちごや野花を摘
みによく出かけました。
春になると田畑に「土筆」がたくさん出来るので
み~んなで土筆を採って、朝市に出してお小遣
いにしていました。(笑)子供の頃って、探検心
が強いからどこまででも行ってある時、「あら?
見た事ある景色。繋がっていたんだ!」って、気
づくのですよね?!私も何度もあります。何とも
知れないホッ!とした気分になりますね。
昨日は「リッツ・カールトン・ホテル」でしたか?
私も昨日は、その近くに行きました。(笑)
茂木さんが行かれた「ジュンク堂」は、今年の6月
にサイン会があった場所でしょう?!茂木さんの頭
の中で繋がっていますかぁ~???(笑)
ジュンク堂の直ぐ近くに「堂島ホテル」があるのですが
ケーキ・パンの物販がありとにかく美味しいのです。笑
お料理もなかなかのものです。だから、ブライダルも人気
があります。
リッツ・カールトン・ホテルは人気があって、私たちの
事務所で時々、利用するのは地下のレストランと5階にある
バー。ここでは外国人の男性のピアニストがリクエストに応じて
演奏をしてくださいますが、調度品もなかなか重厚な感じで落ち
着けます。
大阪の街は、地下街がなかなか充実していて、だいたいメイン・ス
トリートとリンクされており、本当に便利です。北の梅田や南の
なんばは地下街が四方八方へと広がっていて、しかも距離も長くて
飽きさせません。
繋がっている!とわかると、心がほっこり!しますね。
人も同じでそこに気づくとそれだけで幸せ気分になれます。
案外、分かり合えている!というだけで十分なのかもしれませんね
大阪で何かイベントでもあるのでしょうか?!
では、今日も一日、お健やかにお過ごしください。
投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/10/23 12:36:55
おはようございます。
解体・再建が(悲喜こもごもながら)正式に発表された、
歌舞伎座も、銀座四丁目の交差点から、そのまま
地下道でつながっています。
天井の低い、ちょっと独特の雰囲気のある道です。
ふだんは、劇場真ん前の東銀座駅で、
日比谷線にすぐ乗り降りしていますが、
ときどき、ふと、この地下道で
(リッツ~ジュンク堂とちがってすぐ近くの距離ですが)
銀座駅まで歩きたくなるときがあります。
同様に、地上の道で四丁目の交差点まで
歩きたいときもあるし、
いっそ有楽町まで、というときもあるし。
芝居が終わってから、どの道をたどって帰るか、
(その途中で飲んだり食べたりの寄り道もふくめて)
も、その日の芝居の一部なんですよね。
芝居がよかったときはこのルート、
悪かったときはこのルート、とかいった
理屈や決まり事ではないのですが、
やはりそこには、
芝居を見る・見たことと、
いずれかの道を選んで帰路につくこと、との
なんらかの繋がりがあるわけでしょうし。
そこには、その選択をしただけの
なんらかの「こころの動き」があるのでしょうし。
日常の、どんなことも、
どんなふうにも掘り下げていける。
それに気づくかどうかで
人生の楽しさは決定的に違ってくるんだと思います。
ところで。。。
茂木さんは、
歌舞伎座の建て替えについては、
どんなお考えですか?
耐震構造など、やむをえぬ問題はともかく、
「日本って、ものを残さない(遺さない)国に
なってしまったなぁ」と、日頃感じている私です。
ついに、その波に、歌舞伎座も呑み込まれるのか。。。
すなおな正直な私の思いです。
自然の景色、町並み、歴史的な趣きの建物。。。
ことごとく、なくなっていく日本。
「なくしていく国」日本。
現在の歌舞伎座の建物は、
空襲焼失をへて戦後に再建されたものですが、
戦前は、いまよりさらに桃山様式の壮麗さにあふれた
なんともいえぬ風格だったことが、
写真などからもわかります。
(初期の小津映画にも出てたはずです)
解体~再建ならば、
いっそその忠実な再現を。。。といかずに
複合高層ビルとならざるをえないのが、哀しい現実。
でも、東京駅の丸の内口は、
オリジナルのかたちを復活させるべく
いま立て直しているわけで。
これを、劇場においても実現させるだけの文化力は、
日本にはないのかなぁ。。。経済的な効率には
勝てないのでしょうか?
脳のはたらきには
「効率性を無条件にえらぶ」
「はじめに効率性ありき、と決めてかかる」
といったことを、だんだん学習・習慣化してしまう、
という側面はあるんですか?
あるいは、「なくすことの妙な快感」とか。。。
すいません、ブログの場をお借りして
個人的なジャンルのことをお聞きしてしまって。。。
おくだ健太郎・歌舞伎ソムリエ
投稿: おくだ健太郎 | 2008/10/23 11:06:43
何かに繋がってる。この気持ちがあるから。頑張れます。ありがとうございます。
投稿: 邦之 | 2008/10/23 10:15:50
「ミヤマセセリの森」と「かっぱの国」って
なぁんて かわいい ファンタジー なのだろうっ
と感激しました。
自然の匂いとかわいい茂木少年をくんくん嗅ぎました。
子供の頃にファンタジーな思い出がある人とない人では
思考が大分 変わるだろうなぁ・・・
心の音楽も 変わるだろうなぁ・・・
投稿: 穂 | 2008/10/23 9:34:50
茂木さん、はじめまして。
10月20日がお誕生日なのですね。
私も昨日10月22日が誕生日でした^^
それをきっかけに何か新しいことに挑戦したり、
自分の可能性を引き出せるものを探してみたいと思っています。
お仕事がんばってください☆
投稿: のぶ | 2008/10/23 8:14:40
会話も少なく全く似てない
私と父の繋がりが茂木先生でした。
父も茂木先生のファンだったことが
昨日判明したので本を貸してあげました。
共感って苦手意識を和らげるんですね(笑)
投稿: よこ | 2008/10/23 8:03:37