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2008/09/15

「すべては統一されなければならない」

トランジットの待ち時間は数時間あり、
その間ずっと仕事をしていたら、
さすがに疲れてきた。

ずっと座っていたからだろう。
ぶつぶついいながら、歩き回る。

イェルサレムに行く飛行機に乗った
時はほっとした。

目が覚めると、窓から乾いた大地が
見えた。

写真家の森本美絵さんと一緒に
入国審査を受ける。

空港でブルータス・トリップの
石渡健文編集長、橋本麻里さん、
イスラエル在住15年で、現地事情に詳しい
倉田宝郎さんが待っていて下さった。

空港のあるテル・アヴィヴから
イェルサレムへの道を走る。

「一神教」という発明について考える。

ユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教は、
つまりは「旧約聖書」の中に記述された
「一神教」という思想的な装置に
基づいて発達した。

ユダヤの人たちの知的な卓越はきわめて顕著な
事実で、今でも、学会の至るところにユダヤ系の
人たちがいる。

アインシュタイン、マルクス、カフカ・・・

人類の知的な前進にユダヤの人たちが果たした
貢献は大きい。

「ユダヤの母親から生まれた、あるいは
正式にユダヤ教に改宗した」というHalachaの
定義による、ユダヤ系の人たちのノーベル賞
受賞者の数は、平和賞を除いて155名である。

生理医学賞 49名
化学賞 27名
経済学賞 23名
物理学賞 44名
文学賞 12名


http://www.science.co.il/nobel.asp

現在、全世界にユダヤ系の人たちは
約1300万人いて、そのうちの5百万人余りが
イスラエルに住んでいる。

http://en.wikipedia.org/wiki/Jew

人口一億余りの日本と比べても、ノーベル賞
を受けた人の数は余りにも多い。

宗教としての「一神教」と並んで、思想文化の
スタイルとしての「一神教」があるのではないか。

私が知っているユダヤ系の人たちと話している
時に感じるのは、強烈な知性の粘性と、
最後まで突きつめていこうという意志で、
やはりそこには「一神教」的な志向性を
感じざるを得ない。

アインシュタインが宇宙の法則の実在を
信じたように、
「すべては統一されなければならない」
という強い信念があるように思うのだ。

夜の到着。
旧市街で食事。
倉田さんに、イスラエルのさまざまな
面白い話をうかがった。


イェルサレム市街にて。家の上にかかる月。


ホテルからイェルサレム旧市街を望む。

9月 15, 2008 at 12:40 午後 |

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受信: 2008/09/16 12:13:25

コメント

初めまして
私は、神代の事について日々調べたりしているのですが、
記紀にあるような事が日本でだけの出来事だったとは
最近思えなくなって来ました。理由は記紀に載せられた
出来事は世界中の至るところに似たようなものとして話が
あることです。脳細胞的に言い換えると同じものが折り返す様に
偏在しているような感覚です。
一神教についても調べると根源が一つに繋がっているのは
ご存じかと思います。
人間は、歴史を残された書物で追いますが、実は頭の中に
答えが遍在している可能性があると思います。
ユダヤ人の血縁が日本人にもあるという同租論も実は
本当なのではないかと思います。

投稿: sydney | 2008/09/26 5:33:53

改めてノーベル賞受賞者リストを眺めると、医学生理学賞の分野だけでも、これらのユダヤ系学者がいなかったら今日の教科書は大層違ったものになっていたことが容易に想像できます。
例えば、免疫分野でも名前と業績は知っていたが、ユダヤ系として知っている人たちは少なかった。

水に流すということを美徳の一つとする島国の人間にとって容易に想像できることは、日本人とユダヤの人たちは正反対であろうということです。しつこく思えることがユダヤ人にとっては当然なのだろう。

調べるまでもなく、リーマンブラザーズ証券の創業者もユダヤ系でした。

科学に限らず、1300万人が世界を動かしています。

投稿: fructose | 2008/09/18 15:53:49

強烈な知性の粘性、ちょっと捉え方は微妙に異なりますが知的分野に置ける考え方が迷信に惑わされず探求、そんなところが“タオ”と被ります。

イスラムでは教え、つまり“書いてある事”が絶対であり軸ですが、同じ一神教でも現実に根ざしたものと独特に体系化された教義、中核を成す“生命の樹”なんかも。

私の場合はユダヤの流れを汲むタロットや召喚魔術から知りました。

仏教、一般に知られる教えの多くは“心の健康法”が散りばめられてますが、ユダヤの場合余計なものが少ないのかも知れませんね。

ただ統一は成ったところから徐々に崩れ行く、統一を認識する対象が無くなってしまうから。
悪が無くなれば正義も消える、表裏一体ですね(^-^)

投稿: 陽炎 | 2008/09/16 12:51:21

茂木さん、こちらの時間に合わせておはようございます。イスラエルですか。私も海外には何度か訪れましたが、コンサートが目的だったのでヨーロッパが中心でイスラエルの辺りには行ったことがありません。古い歴史のある街ですから、素敵なんでしょうね。茂木さんが送ってくださる写真で楽しませていただきます。慌ただしく短い滞在のようですが、気を付けて帰っていらしてください。

投稿: kaoru | 2008/09/16 9:49:52


私が見ていた月
イェルサレムでモギ―先生が見ていらした月
幻想のルサルカの月

ひとつの存在のさまざまなクオリア

投稿: ぶらんか | 2008/09/16 9:46:42

するすると空に向って伸びていく つる  

    ジャック 登れ  どんどん 登れ


         月棲む 空へ

        朝から 空元気   おはやし 一声 (ドッコイショ)

投稿: 一光 | 2008/09/16 6:43:17

茂木さんはじめまして! ユダヤ人の人の考え方は僕は素晴らしいと思います。宗教が統一されたら世界はどうなるんでしょうかね。

投稿: 中三★H | 2008/09/16 1:10:06

日本の学校では世界史を習う時に宗教を絡めて教えないです。

でも、ヨーロッパの歴史は宗教を抜きにしては考えられないと、ロシア人、ブルガリア人、ハンガリー人・・・と話していて強く感じます。

過去の歴史を正しく理解して、それを未来の平和に繋げられないのかなといつも思います。

「すべてが統一されなければいけない」のならば、「統一されないものは世の中には無い」ということになるのでしょうか?

私は、「統一されないもの」は世の中にいっぱいあると思うのです。

投稿: スギ | 2008/09/16 0:50:34

時は十五夜
みな同じ月を見たはず。
○○○○、
自分の見た月は、特別ですけどね!

投稿: のもと | 2008/09/16 0:01:22

イスラエルの街でも、満月なんですね。
昨日中秋の名月で、今日15日敬老の日が満月。
日本の東京の本日の満月は、曇ってて見られなかったんです。
お写真アップありがとうございます。
月からみると、地球はひとつ。
イェルサレムの街に照らされる満月が、綺麗です。
お仕事、いつも応援してま〜す!

投稿: かっこ | 2008/09/15 22:33:20

こんにちは

テル・アヴィヴを調べたらすごく栄えてる(死語かも〜と思い、何とか絞りだしてコチラ→)…都会的な街ですね☆
オーケストラの演奏会もあったとか

ユダヤ系の人たちのノーベル賞の受賞者数を見て驚きました
知識や科学、発明に関して等々 学びの意欲がとても高いのですね

それから
ちょっと怖い感じの家に、まんまるのお月様。とてもきれいです
ホテルから見た旧市街の写真は、紫のグラデーションが好きです!

「すべては統一されなければならない」という信念。少し前まで深く考えられませんでしたが、私達が生きていく上でも必要な時があると今では思えます。

投稿: 奏。 | 2008/09/15 21:26:22

お写真、拝見しました。

淡い茜色にシルエットとして浮かぶイェルサレム旧市街、そして青い夜空にかかる、白くてまるいお月様。

日本で見る月と変わらない、優しい風情に心が和みます。

昨日、東京では、曇りがちで中秋の月も仰げず…。

でも心の中には澄んだ月が煌々と照っている心持でいたいと思いつつ、秋の夜長を過ごしていました。

ユダヤの人々の不屈といえる粘り強さ、力強い知性には本当に感服しています。歴史上の幾多の迫害を乗り越えながら、営々と知の限界を突き詰めていくその姿勢には、本当に見習う所が多いと思います。

因みに私の好きなユダヤ系の偉人のひとりは、「大地の歌」などを作曲したグスタフ・マーラー。

初めてマーラーの「大地の歌」のCDを手に入れ、静かに耳を澄ませて聞いた時、まさに『疾風怒濤』のような、激しく渦巻いて、あるいは軽やかに、またあるいは重々しく展開し、聴き終わった後、雨に濡れる湿った森の中にいるような感覚におそわれた。

今思えば、彼の音楽の中にも、何かを突き詰めよう、突き抜けようとする意思があるような気がしている。

おりしも日本のCM音楽でマーラーの楽曲が使われた時期のことで、その流れで購入して聴いたのだが、その素晴らしさをCDで聴いて初めて体験した。因みにCDに納められた楽曲を指揮していたのは、彼と同じユダヤの人であるレナード・バーンスタインだった。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/09/15 21:25:34

            


                       同じ月を見てる

                       当たり前のこと


         .........


......... .....


            

            
          

投稿: 一光 | 2008/09/15 21:16:53

私も前々からユダヤ人に対し文化及び民族性について興味がありました。なぜ、そのようなそのような天才的頭脳がうまれたのか。そのうまれる背景-素地、環境-はいかなるものか。ユダヤ人は選民思想ゆえ、何世紀にも渡り迫害、隔離されてきたけれど、そのため、同朋間でのお互いの情報交換が重要であった。その情報共有には「知識の共有」も含まれ、現在のユダヤ人の知的発達(知的向上心・追求)の背景にはこのような流れがあったのではないかと思います。もしかしたら、彼らは遺伝的に本当に秀でているのかも知れませんが(漠然とした表現ですが汗)、私は環境要因が大きいと思います。ユダヤ人の家庭は教育熱心だと聞いた事があります。私のひそかなる企みはユダヤ人の友達をつくることです。(因みに私の婚約者の曾祖父はドイツ系ユダヤ人です) それにしても写真美しいですね!詩的で幻想的で…そう!茂木さん、いつか写真集お出しになったらいかがですか!?私なら購入します(^-^)

投稿: 山川 | 2008/09/15 20:39:17

茂木さん、こんにちは。今日は、少し時間があったので「赤毛のアン」の音声ファイルを改めてお聴きしました。茂木さんの「大切な人を思い浮かべてよ。」というメッセージが私の耳に残りました。「奇蹟」って改めて考えてみると本当に不思議ですね?!人と人が出会うことのタイミングも「何故、今・・・」と思うことって、やっぱりありますね?!
茂木さんの音声ファイルが、この頃たくさんあって、私なりにいろいろ考えています。考えても考えても真っ白なままなのだけれど・・・。
でも、茂木さんは毎日お忙しいのによくこんな「奇蹟」など、考えられますね?!私は「赤毛のアン」を読んでいて「奇蹟」という二文字は思い浮かびませんでした!今年のお正月、「赤毛のアン」の特番を観ていなければ、サイン会に足が向くこともなかったでしょう。不思議なものですね。(笑)自然にしていればいつかどこかで仕事を通してお会いすることになるのかもしれません。アンのように五年先とかね。(笑)
そう考えると楽しいですね。いつもクオリア日記を拝見していて、「茂木さんは何について考えなさい。」とおっしゃっているのかな?!と思いをめぐらせているのですが、こういう感じで大丈夫でしょうか???
クオリアノートも順調に進んでいます。楽しみながら学べるというのはなかなかよいものです。うまくパスまわしをしなくてはいけませんね。
(笑)イェルサレムの満月も変わりなく美しく感じます。お写真、ありがとうございました。このコメントは割愛してくださって結構ですので
。では・・・。

投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/09/15 20:34:56

こんにちわ


ロシア正教とイスラム教は、排像主義、ユダヤ教とイスラム教は、親文主義、立体の像も網膜に映れば、平面の写真と同じである、と、中東の宗教問題を考えた事があります。

1300万人の内、ノーベル賞155名はすごいですね、10万人弱に一人、日本人なら1000人ぐらいノーベル賞を取らないとおかしな数、日本人もがんばらなくては!!(^^)

投稿: 宗教のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/09/15 19:15:17

茂木さん、こんばんは
イスラエルまで、遠い道のり、
お疲れ様です


果物は甘くてお疲れ取れますよ★


おにぎりとラーメン!
いかがですか?!


今日はケーキバイキングのサービス付き


またコメントしに来ますね~~~

投稿: ももすけ | 2008/09/15 18:54:39

お忙しい時にすばらしいイスラエルの満月の写真ありがとうございます。

現在の治安などどうですか?旧市街の様子懐かしく思い出します。

いろいろなお話楽しみにしてます。

気をつけてお帰りください。

投稿: tori  | 2008/09/15 18:47:20

やはり世界は広いですね。国民性というかIdentityというのか、その違いを改めて認識。
昨日、天候不順(これも温暖化の影響か)のシンガポールから帰国。
シンガポールのスターバックスで、『ひらめき脳』を読む。
不確実性と偶有性に妙に納得。”脳の中の空白”で感動。
内なる自分を未だ理解できずに編集中の自分

仲の良いシンガポール人から自分の欠点を指摘された。(気にはなっていたが、改めて指摘され、やっぱりの想い)
大事にしているシンガポール人と新たなビジネスの話。かみ合わず、ちょっと意気消沈。
シンガポール人と日本人の差を考える自分と今を見つめる自分。
もう少し無意識の自分と語りあう日々が続くのか

投稿: CK Chan | 2008/09/15 16:42:20

茂木健一郎さま

NHKテレビの世界遺産にて
黄金のドームに護られている聖地

とても印象的でした。

投稿: 町田市の高木英樹 | 2008/09/15 15:49:15

茂木さん、おはようございます。今回の旅はプライベート旅行だと思っていましたら大きな勘違いで、お仕事だったのですね。またまた失礼いたしました。茂木さんはこの頃、「一神教」についてのご発言が多いですが、やはり何か極めたり、考えたりする上での執着心だったり、継続することへの力への精神作用が宗教によるもので、大きな力が及んでいると感じていらっしゃるのでしょうか?!確かにユダヤの人たちが果たした貢献は凄いと思います。何故なのか、何故でしょうね?!日本人のこつこつと・・・というのとは全然、違うものを感じます。それは「最後まで突き詰めていこう。」という強い意志や「統一されなければならない。」という強い信念をもっているから・・・そうなのかもしれませんね?!そもそも「ノーベル賞」というのは、そのような気質がなければ戴けない、届かないものだとも思いますし・・・。茂木さんも内に秘めた思いが何やらありそうですが???アンに起こった「奇蹟」を茂木さんなら起こせるかもしれませんね。これからも応援しています。

投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/09/15 14:58:34

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