文化の汽水域
ソニーコンピュータサイエンス研究所にて、
脳科学研究グループの会合。
高野委未とisolationの研究について
議論。
高川華瑠奈と表情認知の研究について
議論。
田谷文彦と、神経経済学の問題について
議論。
有楽町の外国特派員クラブにて、
English AgencyのWilliam Millerさん、
澤潤蔵さんにお目にかかる。
大場葉子さんのアレンジ。
ウィリアム・ミラーさんは、
1979年の来日以来、
出版の仕事にずっとかかわって
きた。
「サッチャー政権ができたから、
英国を出て来たのさ」
と語るウィリアムさんは、
とてもチャーミングな方だった。
日本に来た時、文芸春秋や
新潮社などのさまざまな出版社への
手紙を書いて紹介してくれたのは、
遠藤周作さんだったという。
イギリスの音楽の話をしていて、
私が、「昔大英博物館に行ったら、
イギリスゆかりの歴代の作曲家の
作品原稿の展示があって、ヘンデルの次が
ビートルズだった」
と言うと、ウィリアムさんが
「少し自慢話になるけれども」
とあるパーティーの話をしてくれた。
会場で映画が上映されていて、それは
もう何度も見た作品だったので、
ウィリアムさんが外に出て
バーに行くと、そこにポール・マッカートニー
がいた。
二人ともワインが飲みたくて、しかし
グラスがもうなかったので、
一つのボトルからかわりばんこにラッパ飲み
したという。
シェークスピアの話を
していた時、ウィリアムさんが考え込むような
表情になった。
「シェークスピアの謎はね、あれだけ
キリスト教が支配的な時代に活躍していながら、
宗教的な題材が一個もないということなんだ。
人によっては、『テンペスト』がそうだと言うかも
しれないけれども、あれは、神がその支配を
解くという物語だからね。」
澤さん、ウィリアムさんにお目にかかったのは、
英語圏での出版をどのようにしていくか
という相談を兼ねて。
ウィリアムさんには「宿題」をいただいて、
またしばらく経ったらお目にかかることに
なった。
外国特派員クラブは独特の活気に満ちていて、
その中にいるだけで何かが入り込んでくる
ようだった。
文化の汽水域は、心をざわざわさせる。
9月 25, 2008 at 06:47 午前 | Permalink
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» 人生は宝物をさがす旅 トラックバック 須磨寺ものがたり
宝物?私には縁のないものと、
思っていたら、
年齢を重ねても宝物を見つけるチャンスが、
あるかもしれないという。 [続きを読む]
受信: 2008/09/25 10:54:23
» ある朝のスクーリング トラックバック Tiptree's Zone
七歳のジェームズはある日の朝、母親の保護の元で、直径一ミリメートルほどのカプセルを右側の鼻孔の奥にピンセットを使用して入れた。これで、その日の学習は終了したことになる。そのカプセルは脳内へ入り込みナノテク・ロボットを解き放ち、そのロボットたちが海馬に知....... [続きを読む]
受信: 2008/09/25 19:47:40
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コメント
こんにちは、毎日お疲れ様です。
海外でのご出版、様々なハードルがある分、過程も結果も他をもって代え難いご経験が得られそうですね。よりよい形でのご発刊をお祈り致します。
シェークスピアに関する部分を拝見して、ちょっと思いついたことをコメントさせて頂きます。(ミラー氏とのお話の行方は解りませんし、あくまで素人の私見にしか過ぎませんが)
確かにシェークスピアの作品に、布教や宗教的権威を強調するものなどは少ないように思います。
(現存作品すべてが本当に彼の作なのか、また、彼の作品で現存しないものがあるのかについては存じませんが)
これは幾つかの視点から考えることが可能でしょうが、ひとつには、シェークスピアの最大のパトロンが、エリザベス1世だった事が大きいのではないでしょうか? つまり、「イギリス国教会」「国王」に対して、お芝居に仕立てやすいマリアやセイント、奇跡などのカトリックネタや宗教者(の権威)を持ち出すのは、相当危険なことだったのでは?と思うのです。
また、シェークスピア劇は、基本的には歌舞伎のように庶民のものなので、権威的だったり抹香臭いものは望まれなかった、ということも考えられます。
ただ、個人的にはシェークスピア劇は、キリスト教と深い関係を持っているという印象があります。『ハムレット』を例に挙げれば、ハムレットの父が成仏できなかったのは、懺悔する間もなく殺されたからですし、ハムレットがクローディアスを殺すチャンス?を無駄?にしたのは、彼が懺悔中だった、というのもキリスト教ならでは、な設定です。また、最終的に主要登場人物の中で、宗教的罪を犯していないホレーショーのみが生き残ることになりますが、一見無実に見えるオフェーリアも、ハムレットとの婚前交渉という立派な「罪」を犯し、さんざんな目に遭っています。(もしも舞台が平安時代の日本だったら、こんな展開にはならないでしょう。河合隼雄氏が生前、平安の物語にはシェークスピアに於ける殺人の代わりに密通が描かれるともご指摘になっていたのを思い出します)
『マクベス』でも、キリスト教社会で最も忌むべき存在である魔女の指示に従った時点で、「おまえはすでに死んでいる」(古くてすみません)ということになります。
なので、宗教的題材がはっきりと扱われこそしませんが、シェークスピア作品とキリスト教とは、歌舞伎と仏教のようにアツアツな仲であり、それが作品の魅力を高めているのではないかしら…と思っているような人間がいることを、ちょこっと書いてみました。
では長々と、失礼致しました。
投稿: コバヤシアヅミ | 2008/09/28 11:54:16
ウィリアムさんがポール・マッカートニーと会ったお話。
すごい偶然ですね!
パーティーに行かなければ…
映画を見ていれば…
ポール・マッカートニーとは会えなかったかもしれない。
そう思うと偶然に偶然が重なり、二人の出会いは必然だった…。とも考えられます。
投稿: 奏。 | 2008/09/25 22:35:49
茂木さん、こんばんは~~
☆★☆
「澤さん、ウィリアムさんにお目にかかったのは、
英語圏での出版をどのようにしていくか
という相談を兼ねて。」
おぉ、茂木さんヨーロッパ進出に向けて
!
着実に進んでいるのですね~!
頑張ってください(^○^)
投稿: ももすけ | 2008/09/25 21:41:54
世界の感覚を感じる中にいると 感性が磨かれるんでしょうね。
茂木さんの文面から 世界感が伝わってきました。
またまた 人をチャーミングだと見られる茂木さんは かなり チャーミングでいらっしゃるんでしょうね。
茂木さんの文面は 感性豊かで ウキウキします。
投稿: 平井ななえ | 2008/09/25 19:35:51
こんにちわ
アマゾンで売れば、英語の内容でも、日本で、買う人がいるのではないでしょうか。(^^)
投稿: 英語圏のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/09/25 14:20:15
茂木さん、お元気そうで何よりです。ウィリアム・ミルズさんが来日され、出版社とのパイプ役をあの遠藤周作先生がなさったとは!すごいエピソードですね。ご親切な方だったのですね、きっと。それから、あの
ポール・マッカートニーとラッパ飲みをされた!何ともお幸せな方ではないですか!と言っても、私がラッパ飲みをしたいわけではないのですが。(笑)ビートルズのファンからすれば羨ましいと思う方はたくさんいらっしゃることでしょう。そして、シェークスピア。中高校時代には、はまりました!川端康成先生と同様に、と私が勝手に思っているのですが、描写が見事でその文章から頭の中で絵が浮かんでくるようです。
専門スクール時代にシェークスピアの「ロミオとジュリエット」の名台詞で「おー、ロミオロミオ!どうしてあなたはロミオなの?」をひとりづつ、言わなければならず、でも、私はあまりにも有名な台詞で、「これを私が言うの?」と思った瞬間、可笑しくなって笑ってしまい、教官まで笑わせてしまい、授業を中断させてしまったという、愚かなエピソードを今、思い出してしまいました。今は、どんなことだって言えますが、あれはどうして?!きっと、嬉しくて笑いが止まらなかったのでしょうか?でも、どうして宗教的な題材がないのでしょうね?不思議ですね?ところで、英語圏での出版の道筋が出来て(?!)おめでとうございます!茂木さんの「夢」のひとつが、実現できそうですね。宿題があるとは・・・たいへんそうですが、ハードルを越えた向こうには素敵な何かがありそうでよいですね!最後に「文化の汽水域」って???検索をしてみましたら随分前の茂木さんを発見!そこには「作家(予定)」
とありました。茂木さんにこんな時代があったの?!って思うと同時に随分と頑張って駆け抜けて来られたのだなぁ~!って思いました。茂木さんに歴史あり!では、今日も一日、お元気にお過ごしください。
投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/09/25 13:09:42
茂木さん、お元気そうで何よりです。ウィリアム・ミルズさんが来日され、出版社とのパイプ役をあの遠藤周作先生がなさったとは!すごいエピソードですね。ご親切な方だったのですね、きっと。それから、あの
ポール・マッカートニーとラッパ飲みをされた!何ともお幸せな方ではないですか!と言っても、私がラッパ飲みをしたいわけではないのですが。(笑)ビートルズのファンからすれば羨ましいと思う方はたくさんいらっしゃることでしょう。そして、シェークスピア。中高校時代には、はまりました!川端康成先生と同様に、と私が勝手に思っているのですが、描写が見事でその文章から頭の中で絵が浮かんでくるようです。
専門スクール時代にシェークスピアの「ロミオとジュリエット」の名台詞で「おー、ロミオロミオ!どうしてあなたはロミオなの?」をひとりづつ、言わなければならず、でも、私はあまりにも有名な台詞で、「これを私が言うの?」と思った瞬間、可笑しくなって笑ってしまい、教官まで笑わせてしまい、授業を中断させてしまったという、愚かなエピソードを今、思い出してしまいました。今は、どんなことだって言えますが、あれはどうして?!きっと、嬉しくて笑いが止まらなかったのでしょうか?でも、どうして宗教的な題材がないのでしょうね?不思議ですね?ところで、英語圏での出版の道筋が出来て(?!)おめでとうございます!茂木さんの「夢」のひとつが、実現できそうですね。宿題があるとは・・・たいへんそうですが、ハードルを越えた向こうには素敵な何かがありそうでよいですね!最後に「文化の汽水域」って???検索をしてみましたら随分前の茂木さんを発見!そこには「作家(予定)」
とありました。茂木さんにこんな時代があったの?!って思うと同時に随分と頑張って駆け抜けて来られたのだなぁ~!って思いました。茂木さんに歴史あり!では、今日も一日、お元気にお過ごしください。
投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/09/25 12:57:41
茂木健一郎さま
海外と日本では違う
私の体験
日本航空さまでの公式搭乗名 TOKYO HIDEKI
茂木さま
数年前にインターネットでシートもブログに、機内販売でクレジットカードを使用の際
高木英樹の友人です、と
日本航空スチュワーデスさん申され
別人の私、公式搭乗名
東京英樹なんです
投稿: 町田市の高木英樹 | 2008/09/25 8:51:20