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2008/09/21

感動

うかつに
気付いていないことは
時々ある。

知った時に、「ああ、これこそ
本質だ」と雷に打たれたように
なる。

バッハ『マタイ受難曲』。
ペテロが囚われたキリストを
二回「知らない」と言って、
そのあとニワトリが鳴いて、
キリストが、「あなたはニワトリが
鳴く前に私のことを二度否認する
だろう」と予言したことを思い出して
泣いた、という場面と、
その後の「神よ哀れみたまえ」のアリアは
奇跡的に美しい。

ずっと聴いていたが、関連して
聖書の中の重要なことを読み落として
いたことに一ヶ月くらい前に気付いた。

当時の慣習では、毎日民衆が一人の
囚人を選んで許すことができた。

ピラトは、ひそかに民衆がキリストを
選ぶだろうと考えたが、
実際には人々はそうせず、むしろキリストを
磔にしろと叫ぶ。

つまり、キリストを死に至らしめたのは
最終的には民衆である。

それを認識した時に、「ああ、ここに
こそ本質がある」と感じた。

イスラエルに行って、キリストの
話を倉田宝郎さんと
していた時に、私が上のことを言うと、
倉田さんは、「イエスが助かるチャンスは
二度あったんですよね。」と言う。

もう一度は、「お前が神の子だと言っている
ことを撤回すれば、許す」と言われたのに、
キリストはあくまでも「自分は神の子である」
と主張し通したこと。

それを聞いた時、「ああ、ここに本質がある」
と再び感じた。

どちらも、心の動揺はほんの一瞬のことで、
それから折りに触れ思い出してみるものの、
こうして初めて文字として定着させた。

どんな分野のことであれ、そのような
「気づき」が、アインシュタインの言う
「感動しない人は生きていないのと
同じである」の「感動」を支えてくれる。

お台場のフジテレビで
『ベストハウス123』の収録。

リョウさんの言葉に、YOUさんが
笑ってはまってしまって、大笑いの
収録となった。

朝倉千代子さんは小松純也さんと
新番組『エチカの鏡』を立ち上げたとの
こと。

働く人は、本当によく働いている。

9月 21, 2008 at 06:50 午前 |

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コメント

2008/09/21の記事、ニワトリは三度鳴いたのでは? このことを自分が調べていて、三度、を知りました。老婆心です‥。“ペトロは外にいて中庭に座っていた。そこへ一人の女中が近寄って来て、「あなたもガリラヤのイエスと一緒にいた」と言った。ペトロは皆の前でそれを打ち消して、「何のことを言っているのか、わたしには分からない」と言った。ペトロが門の方に行くと、ほかの女中が彼に目を留め、居合わせた人々に、「この人はナザレのイエスと一緒にいました」と言った。そこで、ペトロは再び、「そんな人は知らない」と誓って打ち消した。しばらくして、そこにいた人々が近寄って来てペトロに言った。「確かに、お前もあの連中の仲間だ。言葉遣いでそれが分かる。」そのとき、ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら、「そんな人は知らない」と誓い始めた。するとすぐ、鶏が鳴いた。ペトロは、「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言われたイエスの言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた。”

投稿: 谷 望 | 2010/01/28 21:43:32

初めまして、先生のファンです。

『ベストハウス123』でサヴァン症候群の方の特集を見て、

先生の頭脳明晰さの裏に先生の(何と表現したらいいのかわからないですが)

愛を感じました。私は直感型の人間で、ものの説明などもイメージが先行してしまい、
やたら擬音語が多くなるタイプですので(~_~;)

言葉で表現するのが下手なので、うまく言えませんが、すごく胸が熱くなって

涙が出ました。私は難しいことはわかりませんが、人というものに対して

特に好奇心旺盛ですので、先生がテレビで教えて下さることは大好きです。

これからも応援しています。

投稿: KYOKO | 2008/09/23 13:40:03

茂木さん、こんばんは☆★☆

皆さんのコメントを読ませていただき、
あぁ~、宗教的な意味なのかなあ・・・と、
またまた考えてしまいました。

宗教的に考えていくと、
とても難しいですし、
答えは、
イエスキリストが”わが父”と呼んだ存在しか
知り得ないのかもしれません。

私は、宗教を学ぶ者として、
一点だけ大事な視点をコメントさせていただくならば、
それは、
天国という存在と
目に見えない不思議な力、法則、奇蹟、
こうした視点なくして語れない部分も多いと思うのです。

たとえば、
キリストは、生きている間に、
奇蹟をたくさん起こしました。
死んでいるラザロを生き返らせたし、
パンや葡萄酒を何もないところから
たくさん出しました。

そして、最も驚くべき奇蹟は、
処刑された、キリスト自身が、
その後、復活を遂げていることです。


復活を遂げたのち、
逃げた弟子たちは、
その後殉教されるまで伝道に邁進するわけですが、
最後まで伝道に命を惜しむことはありませんでした。

キリスト自身が命を惜しむことなく
信念を貫き通した姿に、
弟子たちは何を見たのでしょうか。
追いつめられるまでは、
キリストを師として仰いできたわけです、
追いつめられて、人間としての業がいったんは
現れたが、

弟子が逃げても信念を貫き、一度死に、
そして復活を遂げたキリストの姿に、
何を見たのでしょうか。

弟子たちの心には、
キリストの信念を貫く心が
宿ったのだと私は考えます。
そしてここに奇蹟は起こり、
キリスト教は世界宗教となる基盤を築いたのではないか、と。

投稿: ももすけ | 2008/09/22 23:44:55

茂木様
わたしは、ルカ福音書にあるこの個所にひかれます。
ルカでは、鶏が鳴いて、主に見つめられた後、号泣します。
ペトロが
「わたしはあの人を知らない」
と言ってから出会った主のまなざし・・・。
そのまなざしに、バッハも出会ったのでしょうか・・・。

投稿: masami | 2008/09/22 17:57:09

うかつに気づいていないことが、私にもありました。
発達障害の疑いがある子供がこだわった『マイムマイム』の歌詞。
旧約聖書の一節らしいのですが、あなた方は救いの井戸から
喜びをもって水をくむであろう、という意味なのだそうです。

逆に晴れのありがたさに気づいた子供が、雨だからどうしよう…
と動揺していることを、今の今まで分かりませんでした。
でもやっと気づけました。感動させて頂いて、ありがとうございます。

投稿: うさぎ | 2008/09/22 9:20:22

モギー先生も負けじと
誰よりも忙しそうです!

こんにちは!

限られた時間を最大限に生かす…

日々難題です(笑

同じ京都出身でもあり
YOUNGPEAPLESのconcert活動に感銘うけて
佐渡先生を好きになりました。
本当に音楽を愛してる、情熱的な人だなーと!

モギー先生の共鳴は
同じところからきているんですね!
情熱powerで動く人は
本当に周りを引き込む存在ですね。動き学び教え、また動く…と
素敵なサイクルをもっているように思います。

私も敬愛する
アインシュタインの言葉にもあるように…

『何かを学ぶためには
自分で体験する以上に
いい方法はない』

情熱をもち好奇心をもち
学び立ち止まり気付く
そうして教え伝える。

情熱サイクルは人間power!
モギー先生のサイクルをいつも楽しみにしてます!

ツクツクホウシが木の枝にようようつかまり
最後の力を振り絞って鳴き…
コオロギが台頭して
雑草陣地を拡大してるような…
こちらはゆっくりと秋です。

投稿: | 2008/09/22 8:32:44

こんにちは。
茂木さんも本当によく働いておいでだと思います。

本質とはかけ離れた話ですが、ユダの裏切りを予見していた事を考えれば、助かるチャンスは捕らえられる以前にもあったのでしょう。何故それを甘受したのか。何故助かろうとしなかったのか。
有り得ない、と言われてしまう様な事ですが、イエスが磔刑を逃れて生き続けていたらその後の歴史はどう変わっていただろう、と考えてしまいます。もっと良い世の中になっていたのでは、と考えるのはイエスの神性を軽視しているでしょうか。

それと粗探しのつもりではないのですが、ペテロの否認は三度だったと思いますが・・・

投稿: CRX kz | 2008/09/22 1:36:32

初めまして。
投稿させていただきます。
毎日楽しく拝見させてもらってます。
このような場所に書き込むのは失礼だと思うのですが貴重なスペースお借りします。

自分は今、大学受験生です。
良い大学に入って環境経済学という学問を学びたいという
強い願望があるのですが、
それを上手く受験勉強に繋げられません…
勉強をする気はあるのですが
やり始めると、すぐに睡魔に襲われ頭に入ってきません。
自分は駄目人間なんじゃないかと毎回自分を責めています。

専門の学問を学ぶのは大学に行くことが全てなんでしょうか?

『受験勉強』という
カテゴリーを勉強している気がしてなりません…

簡単に卒業できる日本の大学制度にも納得がいきません。


清水さん

とにかく大学に行ってみれば、思いもかけぬ大きな世界が開けるものだから、それまでがんばってみてください!
茂木健一郎

投稿: 清水悠貴 | 2008/09/21 23:52:22

茂木健一郎さま

感動は心の動揺

心が動き揺すぶられる

心の真髄

感覚的に どうしよ?の際の妙なドキドキと似ていますが
できるならば
感動での動揺以外は・・・。
動揺にも種類があるんですね。

投稿: 町田市の高木英樹 | 2008/09/21 22:08:44

気づいていても、心の奥の奥へしまってしまった。

その本質が大切なものであればあるほど、その時 感じとれていても、…違ったら?とも考えてしまい…。

心の奥のものは、ふとした時に出る。人からは誤解されやすいかもしれません。

それでも大切なものは、大切なのだという気づき。


働くということ…家の中。外の仕事。どちらも突き詰めていけば、働くですね
だとすれば…今は、その準備期間かしら。。

投稿: 奏。 | 2008/09/21 20:47:30

いつも興味深く拝見しています。また、講演会がUPされることもとても楽しみにしています。最近某所で吉本隆明さんの聖書についての公演がUPされていて、これも非常に興味深いものでした。ネット上でこの様な機会を得ることが出来、有り難い事だと思っています。

さて、感動の本質とは関係がないのですが、ペテロがイエスを否認するのは三度だと思います。イエスが助かるチャンスも二度ではないように思いますが、如何でしょうか。

ご活躍をお祈りいたします。

投稿: ここやし | 2008/09/21 18:42:52

こんにちは。昨日、新約聖書マルコ伝についての吉本隆明さんの講演を聴いていたところに、今日の茂木さんのキリストの話を読むという流れがありまして、「あー、おんなじこと言ってるなあ」と思いました。
どちらも自分の奥深くの芯に届いて、日頃自分はこれではまずいのだろうかと思っていたことが、ああやっぱりそれでいいんだと思えて、しみじみと静かにありがたく感じました。
吉本さんの講演の音声はここで。9月24日までということです。
http://www.1101.com/yoshimototakaaki/no_008.html

投稿: yunta | 2008/09/21 14:12:36

おはよう御座います。


毎日を恙無く生きていると、普段は気がつかないこと、見落としていることは、結構多いですね。

何でもない日常の中に、ハッとする「気付き」。

その「気付いたこと」が重大なものであればあるほど、気づいた時の感動は
大きいですね…!目の前がほんとうにパッと開ける思いがします。

民衆(この場合は囚人)が最後はイエス・キリストを見捨て、結果イエスは磔刑にされたという、実に厳粛なエピソード。

キリストは彼等を救おうと、真摯に「神の道」を説いたのに、民衆はキリストを死に至らしめた。

当時の民衆にとって、彼の存在とは、一体何だったのだろうか…。深い思いを抱かずにおれない。

普段の生活の中で、私達が気づいていないことは、星の数ほどあるだろうし、それがキリスト磔刑の理由のように重大なことか、それよりもちいさなことかは、気づいて見ないと分からないし…。

こうして生きている時間の中で、どれだけのことにハッと気付き、感動するのだろうか。やっぱりわからない。

それはさておき、ベストハウス123、毎週のように楽しく拝見しています。何時も「ものすごいもの」が沢山出て来て、びっくりの連続です。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/09/21 10:52:57

茂木さん、おはようございます
わあ~、こんなに朝早くコメントさせて頂くの、
久々な気がします!

昨晩は、太王四神記を見て、(もうクライマックスに近いので)
主人公タムドクと恋人のスジニが
やっと再会を果たし、
涙涙で見ていました~~~~!

チャングムは人気あったのに、
なぜ太王四神記はあんまり人気ないのかな~~~
ヨン様が主役だからですかね??
(ヨン様ファンの方、すみませんm(__)m)
私はチャングム大好きだったけど、
太王四神記はもっと好きかも・・・。

ヨン様演じる、タムドクの王としての姿勢に、
現代にこんな政治家がいたらすごいよなあ・・・って
心に響くくらいの感動を覚えます。

昨日の放送で久々に再会した恋人スジニに、
タムドクは以前、こんなことを言われました。
「王様は、どんなに辛く悲しいことがあっても、
心の傷は一日で癒さなきゃ、王様は務まらないんだよ」
要するに、民あっての王だから、
個人的なことは、一日で解決しろ、と。
お付きの将軍にも
「ずっと戦ばかりの人生で、
王様に出会えて初めて、死ぬことが怖くなりました」
強い男性も虜にしてしまう、タムドクです!

冬ソナのときは、微笑みの貴公子でしたっけ?
タムドクの場合、微笑みどころか、
憂いをおびた表情と
その裏に高い志や優しさを持ち合わせる
あのなんともいえない表情が好きです~~~
あの哀愁の斜め45度、寂しいお顔の
タムドクヨン様が~~~!
かっこいいのです。
はぁはぁ。力説してしまった。


「つまり、キリストを死に至らしめたのは
最終的には民衆である。

それを認識した時に、「ああ、ここに
こそ本質がある」と感じた。」

「もう一度は、「お前が神の子だと言っている
ことを撤回すれば、許す」と言われたのに、
キリストはあくまでも「自分は神の子である」
と主張し通したこと。

それを聞いた時、「ああ、ここに本質がある」
と再び感じた。」

この本質とは、
バッハ『マタイ受難曲』の、

「「神よ哀れみたまえ」のアリアは
奇跡的に美しい。」

につながるのでしょうか?
悲しみと美は近い所にありますよね。
そこにドラマが生まれます。
それを茂木さんはおっしゃっているのでしょうか?
(間違ってたらごめんなさい~)


なぜか太王四神記の話を
書き始めたのですが、
そしたら茂木さんのおっしゃるところの本質が
これかな?と少しわかったような気がしました。
そのまま読んでいると、
本質って何のことだろう~~と意味がわかりませんでした。
身近なところで、理解できるように、
私の頭の中で導き?が起こったのかも知れませぬ(笑)

投稿: ももすけ | 2008/09/21 9:06:43

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