懐かしい年への手紙
空港からNHKに向かっていると、
柴田周平デスクから電話が
あった。
「茂木さん、お弁当どうします?」
皆さんが食べるならば、ぼくも
一緒に、と答えて、10階の
社会情報番組の部屋に上がっていくと、
サンドウィッチがいくつか机の
上に置いてあった。
「お弁当、終わっていたんですよ。」
「これ、自動販売機のやつでしょ!」
サンドウィッチもおいしそうだった
けれども、
有吉伸人さんが、「五食に行きますか」
というので、第五食堂に行って、
海鮮ちらしを食べた。
サンドウィッチは、柴田デスクが
食べた。
折しも、五食には編集中の荒川格さんと
渦波亜朱佳さんがいらして
となりに座る。
「イスラエルで思い出しましたが、
ぼくの大学時代の卒論はフランクフルト学派
なんですよ。」
有吉さんは、京都大学の社会学科の卒業である。
「卒論が合格する条件は、30枚以上
書くことだけで、というのはあくまでも
噂なのですが、ぼくらよりも何年か前に
不合格になった学生が、29枚しか書いて
いなかったからで。」
「口頭試問があって、二時間ずっと
いじめられるのです。ぼくは下を向いて
ひたすら耐え抜いていましたが。何を質問
されたのか、全く覚えていないのですが、
ただ一つ覚えているのが、君は
これをどれくらいの時間をかけて書きましたか
という質問で、一ヶ月です、と答えたら、
そうでしょうねえ、と教授がため息をついたのは
おぼえています。」
「われわれ、(劇団)卒塔婆小町の人間は、
当時必修単位が一番少なかった社会学科に
行く人間が多かったんですねえ。」
「ぼくの一つ前に口頭試問を受けた
女性は、泣きながら出て来ましたよ。
いわば、一つの、通過儀礼ですね。今思うと。」
打ち合わせ室に戻る。
九州は五島列島出身の大坪悦郎ディレクターが、
この度、『クローズアップ現代』班に
移籍することになった。
大坪さんは、
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
では最後の仕事。
さびしい。
男の中の男、がつんと一発、大坪悦郎。
(「NHK100人メッセージ」で熱く語る
大坪悦郎さん
http://www.nhk.or.jp/saiyo/message/01/01.html)
ゲストは、上野動物園飼育員の
細田孝久さん。
細田孝久さん
画面からも、その温かいお人柄が伝わってくる
細田さん。
横顔が、プロフェッショナルのデスクを
長らくつとめ、名古屋放送局へ赴任して
いった「タカさん」こと、山本隆之さんに
とても似ている。
細田孝久さん
山本隆之さん
(タカさんの写真特集
2008年6月13日 クオリア日記)
心の中に、「懐かしい年への手紙」
が出来上がった。
9月 18, 2008 at 08:43 午前 | Permalink
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» 「あ」という言葉は凄い トラックバック 須磨寺ものがたり
言葉の意味が、どんなものかを知ることは、
そのものの持つ精神に繋がると考えられる。
「あ」という言葉がどんな意味をもつかなんて、
考えも及ばないことであった。 [続きを読む]
受信: 2008/09/18 13:52:06
» 考えることと書くこと トラックバック 御林守河村家を守る会
考えていることは
書かないようにしてきました。
「論理は最低の真理である」
と若いときに思いこんでしまったので、
理屈をこねるのは
みっともないことと
ずっと思っていたのです。
たとえば
「人間が歴史から学んだことは、
歴史から何も学んでないということだ」... [続きを読む]
受信: 2008/09/19 8:04:30
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コメント
「懐かしい年への手紙」ー大江さんの作品を彷彿とさせられる言葉でした。
茂木さん、こんにちは。
「懐かしい」ものへの思い、「思い出」の中より新しいものが生まれる、との茂木さんの最近の思索に、つくづく同感です。
音楽家で、当方にとりまして、懐かしく、思い出の一杯つまっている人はヴァイオリンのクレーメルで、かつて、フランスやスイスへ行ったときも名所観光もそこそこに地場のCD屋さんを巡って、旧ソビエト時代の音源を探したりしたものでした(当時は、現在のようなネット通販もなく苦労しました。)
そのクレーメルさん、現在、当地(石川)に1週間も!滞在型のコンサートをやってくれています。世界中を巡って探した(と言えば大げさですが)「青い鳥」は「今、ここ」におられます。
今日がホンチャンのシベリウスの協奏曲でした。弱音でのクリスタル・クリアー・トーン、そして、クライマックスでの走るように突っ込んでいく鬼気迫る演奏、やってくれました。(今日の演奏、ライブCDとして発売予定とのことです。)
また、昨日はクレーメルさんのトーク会でした。「こんなこと、普通、あり得ねー!」とお相手の池辺晋一郎さんが言っていました(別名、ダジャレおじさん。)。もう1人は地元オケの指揮者の井上道義さんで、3人で漫談のような楽しい会でした。池辺ダジャレおじさん、井上さんのツッコミに「そんなことやめてクレーメル」って。う~ん、ふつう、本人の前では言わないってば。
通訳を通してですが、クレーメルさんも笑っていました。(ダジャレも通じるのであるか。ちなみに、昨日、クレーメルさんは、英語でお話されていました。)
このトーク会でも話題に上がっていましたが、ゴールデンウィークに行われました「ラ・フォル・ジュルネ金沢」、7日間で8万5000人の人が参加したとのことです(茂木さんには、正式ルートで報告が行っていることかと思います。)。
この数字、もちろん、延べ人数ですが、これもあり得ねー!数字が出ました。地方の45万都市で8万5000人って。5人に1人。1000万都市の東京でいうと、延べ200万人の人が参加したイベントになります。1つのイベントで200万人動員するとき、東京ドーム満員のイベントをいったい何日やることになるか、という数でした。
文字どおり「熱狂」だったのか、と言われて初めて。
最初の「思い出」に戻り、茂木さん、最近だけでも、スコットランド、シンガポール、コスタリカ、イスラエル、と旅に出られているのは、もちろん、お仕事ということはあるにしても、その間、少年時代や学生時代に戻って思索されているのかも、と。
「自分の『生』の履歴は余さず音楽として感じることができるのではないか。」(「すべては音楽から生まれる」より。)
当方も、もっと気合いを入れて「思い出」と「懐かしい年」への旅を始めることとしましょう。そのとき、きっと、音楽は大きなよすがになってくれるはず・・・。
投稿: 砂山鉄夫 | 2008/09/19 0:30:33
茂木さん、こんばんは
いくつかのサンドウィッチは、それらあわせて一人前だったのでしょうか。それとも…??
あれれ
有吉さんの大学の頃のお話は、その大学、大学で先輩から伝わる言い伝えかしら
お二人の顔、本当に似てらっしゃいますね
私も先日とある場所で…私の中で、とても大切な方と本当に本当に顔と雰囲気がよく似ている方と会いました
ま、まさかっと思う半面、そうかもしれないという思い等々が ない交ぜで…そんなに何度もその方を見るわけにもゆかず、後ろ髪を引かれつつ、その場を離れました。
茂木さんのお話と似ていて、驚きつつ。。
投稿: 奏。 | 2008/09/18 23:13:57
日記のお写真、拝見しました。
細田さんの横顔、本当に、あの山本タカさんにそっくりですね!
この日記の以前のエントリーで、茂木さんがタカさんの顔をチョコボールに見たてて撮られた、おちゃめなお写真が載っていたのを、思い出します。
子供の頃から上野動物園に出かけて、動物たちを見るのが大好きだった。辛い出来事のあった翌日が休みの日や土曜の時に、個性も生態も様々な動物たちの姿やシグサを見ていると、胸のつかえがすっととれ、脳内で渦巻くモヤモヤも晴れて、前日の辛さが吹っ飛んでしまいます。
私は特に鳥の姿を見るのが好きで、様々な姿や色あい、大きさの鳥たちを見ていると哺乳類を見ているのとは、どこか違うクオリアが感じられます。
不忍池の蓮や葦の間にいる鳥たちや、池の水面を進み行く鴨や鵜、ペリカンたちのしぐさは見ていて本当に飽きが来ない。出来ればずっと眺めていたいと思うくらいだ。
大人になっても、動物園のような人以外の生き物に出会え、触れられる場所というのは、センス・オブ・ワンダーというか、不思議の宝庫というか、野山を駆け巡った経験が、どちらかというと少ない私にとっては、とても楽しい場所といえる。
東京の町の中で生まれてしまった為、小さな頃から野山を駆け巡り、色々な野生の生き物に出会ったことがほとんどなかった私は、動物園に行くことで初めて「自然界の法則に随って生きている、人間以外の種」に出会う経験をしたのかもしれない。
それはさておいて、細田さんの出られる今度の「プロフェッショナル」の放映が、いまから楽しみですね。いつものように眠い眼をこすりつつ、拝見したいと思います…!
それではこの辺で失礼します。
投稿: 銀鏡反応 | 2008/09/18 22:36:19
茂木さん、こんにちは。帰国されてから随分マメに動向報告があるのですね。いろんな意味で、ファンに対してお優しい方なのだなぁ~と思っています。(笑)パンの自動販売機で私は大阪のNHKを思い出しました。今からもう何十年前になるのかな?!大阪のNHKで研修生としてアルバイトをしておりました頃、政見放送のお手伝いも致しましたが、当時(25~26年前・爆)にしては珍しく、パンの自販機がBKにありました。私はそのパンを食べて、広告代理店が行なっていたスクールへ行っていました。確かそのころ、大分県別府市扇山にあるNHKの保養所にも宿泊をしたことがありました。綺麗なお部屋でした。懐かしい想い出です。BKも今は綺麗なビルになりました。さて、有吉様は京大なのですか?皆さん、優秀な方ばかりなのですね!「ひとつの通過儀礼
」とは・・・どこでも厳しい何かがあるものですね。それから飼育係の細田様と山本隆之様!これは本当に似ていらっしゃいます!(笑)
最後に「懐かしい年への手紙」・・・どんな内容なのかなぁ~?!私も返信したい気分です。このクオリア日記のように。(笑)そういえば、メールを待っているのに、してこない人がいて困ったものです。どうしたものか・・・。茂木さんは、帰国直後からクオリア日記を書かれ、偉いですね。お疲れは出ていませんか?お忙しくて大変だとは思います
が、あまり無理をしないでくださいね。では・・・。
投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/09/18 16:15:47
こんにちわ
現在では論文を30枚以上といった条件の場合、インターネットのコピペしてきた論文になってしまう気がします。
私の場合、卒業研究を発表した時、非生産的な厳しい質問をする教授と、比較的生産的な質問をする教授がいました。有吉さんは、運が悪かったのかも?
教授も学生が「面白い」と思うような事をしないと、教授から見て面白い論文にならないと思います。
細田さんと、タカさん、横顔が良く似ていますね。(^^)
投稿: コピペ論文のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/09/18 13:01:01
茂木さんはいつお風呂に入りますか?
イギリス人は朝入るのが普通だそう。だって、朝人に会うから綺麗にして会うのが理論的だ。でも、日本人は夜。宗教的に床に入る前に1日の汚れを落として…。べ、勉強しなきゃ…
投稿: たかやまなおこ | 2008/09/18 11:14:24