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2008/08/24

裏山の人

「九州創発塾」
の日程は無事終了。

お昼過ぎ、豪雨となり、雷鳴が聞こえた。

毎日のように稲妻が走っていたコスタリカを
思い出す。

空港に向かいながら。

薩英戦争で使われた砲台跡を見る。

薩摩藩主であった島津氏の別邸
「仙巌園」。

折からの「篤姫」ブームで
たくさんの人が訪れていた。

島津本家の養女から、13代将軍
徳川家定の正室となった篤姫。

家定の死後は出家し、「天璋院」となる。

私が「天璋院」という言葉を初めて知ったのは、
小学校の時に読んだ『吾輩は猫である』
だった。

主人公の名前がない「猫」が大好きな三毛子と
交わす会話の中に出てくる。

 障子の内で御師匠さんが二絃琴を弾き出す。「宜い声でしょう」と三毛子は自慢する。「宜いようだが、吾輩にはよくわからん。全体何というものですか」「あれ? あれは何とかってものよ。御師匠さんはあれが大好きなの。……御師匠さんはあれで六十二よ。随分丈夫だわね」六十二で生きているくらいだから丈夫と云わねばなるまい。吾輩は「はあ」と返事をした。少し間が抜けたようだが別に名答も出て来なかったから仕方がない。「あれでも、もとは身分が大変好かったんだって。いつでもそうおっしゃるの」「へえ元は何だったんです」「何でも天璋院様の御祐筆の妹の御嫁に行った先きの御っかさんの甥の娘なんだって」「何ですって?」「あの天璋院様の御祐筆の妹の御嫁にいった……」「なるほど。少し待って下さい。天璋院様の妹の御祐筆の……」「あらそうじゃないの、天璋院様の御祐筆の妹の……」「よろしい分りました天璋院様のでしょう」「ええ」「御祐筆のでしょう」「そうよ」「御嫁に行った」「妹の御嫁に行ったですよ」「そうそう間違った。妹の御嫁に入った先きの」「御っかさんの甥の娘なんですとさ」「御っかさんの甥の娘なんですか」「ええ。分ったでしょう」「いいえ。何だか混雑して要領を得ないですよ。詰るところ天璋院様の何になるんですか」「あなたもよっぽど分らないのね。だから天璋院様の御祐筆の妹の御嫁に行った先きの御っかさんの甥の娘なんだって、先っきっから言ってるんじゃありませんか」「それはすっかり分っているんですがね」「それが分りさえすればいいんでしょう」「ええ」と仕方がないから降参をした。吾々は時とすると理詰の虚言を吐かねばならぬ事がある。

意味がよくわからないままに、
「天璋院様の御祐筆」という言葉の響きに
魅せられて、子ども心に強く記銘された。

桜島と錦江湾を借景するという
スケールの大きな設いの庭園を
歩きながら、「テンショウインサマノゴユウヒツ」
という言葉が繰り返し頭の中に響いてならない。

島津家の別邸というのは実にいい。
とりわけ、裏山がいい。

本物の森がそこにあって、別邸から
歩いていけるようになっている。

裏山を見上げると、自然万物の
エネルギーが自分の心の中に注入されて
くる。

これでは、日本の夜明けは近いはずである。

さらに奥へと登る道の入り口まで行って、
もう閉園の時間となる。

島津の志士たちが、この道を上って
散歩をしながら想を構え、胆力を鍛えたのだと
白昼夢を見る。

篤姫もまた時には裏山の人となったのであろう。

8月 24, 2008 at 05:58 午前 |

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コメント

茂木さん
はじめまして、こんばんは。

屋久島旅の帰り道、鹿児島空港のエスカレーターで
茂木さんとすれ違いました!

屋久島でのすごい旅のあとで、ずっとお会いしたかった茂木さんと。
お忙しそうに携帯電話でお話されていた背中を
様々な興奮の上気につつまれながら
しばらく見送っていました。

またいつか、どこかで、お会いする事になるでしょう!
その時には、ぜひお話させてくださいね。

投稿: | 2008/09/03 0:15:15

茂木さん、こんばんは★☆
鹿児島では、島津家の別邸を散歩するお時間の余裕も
あったようで、よかったですね~~

桜島かあ。
桜島を常に見ていると、
情熱的な火山のようなエネルギーが
心の内に宿るんでしょうね!

茂木さんの情熱的な部分と
かつての島津の志士たちの思いが
交錯した瞬間だったのでしょうか。
素敵ですね

吾輩は猫であるの
天障院様の抜粋、
吹きだしちゃいました。

NHKの篤姫は、
筋を通す人でとても好きです。
天障院様は、
信念のお人だったのですね~
桜島を毎日毎日見て
心の中に育つもの。

その真っ直ぐな美しさを
私も見習いたいと思いました。

投稿: ももすけ | 2008/08/25 1:25:36

司馬遼太郎や池波正太郎の幕末物を好んで読んでいたので、島津の磯庭園を見たときの感激は大きかった。太陽の直射をキラキラ反射する錦江湾に浮かぶ桜島。ジーンときた。

状況が人を作ることが幕末年表を見るとよくわかる。しかも余りにも短期に激烈なことが起こっていることに驚く。外圧で熱が発生し、「どげんかせにゃいかん」精神が爆発した。

桜島の爆発は、遠く離れたところで二度経験した。雷のようなドーーンいう音とともにガラスが振動した。この音を西郷、大久保、桐野なども経験したんだなあと思いにふけった。

島津に暗君なし。
指宿出身の熱い先輩の口癖だった。

投稿: | 2008/08/25 1:15:10

「九州創発塾」おつかれさまでした!

雷鳴…今の時季、コスタリカでは雨季。毎日のように稲妻が走って、スコールがくる。自然のままのすがた… 

砲台跡や島津氏の別邸など篤姫ゆかりの地を回られたんですね
写真の場所、素敵なところですね
番組の終わりに、篤姫ゆかりの地の紹介がありますが、見るたびに行ってみたいと思います
「天璋院」という言葉、『吾輩は猫である』にのっていたんですね(思えば、私は最後まで読んでいなかったかも…この機会に読んでみたいです♪)
主人公の名前がない猫が大好きな三毛子と交わす会話(三毛子のお師匠さまと天璋院様との血筋…込みあってるぅ)…微笑ましいですねほんとうに大好きなんだなぁ
もし人なら…
三毛子が隣にいてくれれば、もうそれだけでいい。
って感じかしら?

天璋院様の御祐筆とは、どんな方なのかしら?
桜島の写っている写真、とてもステキで惹かれます。手前の植木がマークみたい

島津の志士たちが裏山を歩いたとき何を考えていたのかな…
日本の夜明け、近いですね!

投稿: | 2008/08/24 21:25:32

学問の世界に旅立つことにしました
殿方のライバルになるつもりなので
どうかまっていらしてね

投稿: | 2008/08/24 16:51:31

篤姫の実家・島津家の別邸のお写真を拝見しました。

とても広々としていて、緑も濃いですね…!裏山もコスタリカに負けないくらい、鬱蒼としていて、しかも瑞々しく見えて、中を歩くと、本当に元気をもらえそうです。

もしかしたら本当に篤姫も、まだ将軍家にお輿入れする前かなんかに、裏山をよく訪れ、元気をもらっていたのかもしれませんね。


「テンショウインサマノ御祐筆」…。

つい最近、『吾輩ハ猫デアル』を久々に読んだ時、その、主人公『吾輩』と『三毛子』との会話シーンを読み、
「御祐筆?はて、なんのことだろう??…」と、疑問に思ったが、そのまま忘れていた。

きょう、日記を読ませていただき、その“御祐筆”について調べようと思い、ググってみたら、江戸幕府の役職のひとつで若年寄の下にあり、奥御祐筆とも呼ばれ、主に幕府の機密文書の管理と作成をまかされる職で、今の企業や政治家の秘書職にあたるのだそうな。秘書と違うのは、かなりの権限を持っていて、自分より位が上の老中などの前でも、発言できたという点ぐらいだと言う事だ。

秘書職でも相当な権限が持てた、徳川幕府という世界。わたしなぞはココロなしか、空恐ろしいというか、もし江戸の頃に生まれて、サムライとして生き、幕府に上り“公務員”になって、そのうちそんな役職を自分が貰ってしまったら、やはりだんだん、人間的におかしくなるんじゃないか?という気がした。現代の庶民に生まれて本当によかった。(ホッ)

それはさておいて、島津藩が振興していた産業といえば、薩摩切子を思い出す。

アンティークのグラフ誌で、その頃作られた薩摩切子の名品を見た事があったが、その大胆な力強いカットと、深い藍色が未だに忘れられない。

名無しの猫『吾輩』も、『三毛子』も、ひょっとしたら薩摩切子を知っていたかもしれない。ただ猫ゆえに、人間みたいに言葉に出してその美しさについて語ろうとすると、“にゃ~”という声しか出せないのがかわいそうだな、と思う。

ところで、あのシーンの最初で三毛子は「テンショウインサマノ御祐筆の妹の御嫁に行った先きの娘」と言っていたが、最後は「テンショウインサマノ…御嫁に行った先きのおっかさんの甥の娘」なんて言ってしまっている。最初と最後で三毛子の言ってることが違ってくるのが、おもしろかったなぁ。

「九州創発塾」お疲れ様でした。桜島と緑あふれる鹿児島は、コスタリカに負けないくらい、茂木さんに元気を与えてくれたことでしょう。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/08/24 16:19:45

昨日は全国的にみても雨の所が多かったようですが、九州はとにかく雨がよく降り、降水量も多いです。きのう、琵琶湖の先までまいりましたが、「国境の長いトンネル(天王山トンネル)を抜けるとどしゃ降り」でありました!私の女友達が働く美術館へ夫と一緒に行ったのですが、
琵琶湖のほとりも歩けず、お陰で作品をじっくりと観る事ができました
。ドライブがてらいろいろと話は尽きず、茂木さんの話も結構しましたがクシャミは大丈夫でしたか?(笑)語彙が豊富であるとか、赤毛のアンについて等、もちろん称賛の意を込めてですが。ところで、上のお写真ですが緑がとっても美しいですね。私の記憶では、鹿児島は火山灰が飛んでくるので緑の色が少しばかりくすんで見えるのかしら?と思っていたのですが
、鮮やかな緑の色。雨上がりは格別、美しいのでしょうか?京都から琵琶湖までの間のグリーンも見事なまでのクッキリとした色で美しかったです。整えられたお庭はもちろん綺麗。島津家のお庭にはうっとりします。もう一方で、自然の山の方に瑞々しいまでのエネルギーを感じるのは、やはり自然のそのままの力って見るものの心も開放的なまでに自然体に包んでくれるようなところがあるのでしょうね。九州の田舎の方は一軒一軒の敷地が広いから、だいたいどこの家でも表の庭と裏庭または裏山がありそこで作物を作って自給自足の生活をしている家が多いです
。私の家もそうでした。夏場は足元をしっかりと見て歩かないと蛇がニョロニョロ・・・時々、蛇がすずめの赤ちゃんを呑み込むところを見たりしましたねー。最後に今晩、放送の「篤姫」。毎回、楽しみに観ていますが、あの宮崎あおいさんのキリリとした力強い声、台詞まわしは、何とも魅力的ですねー。それからいつもお写真を拝見して思うのですが
、カメラワークが素晴らしくて、お上手!と感心してしまいます。茂木さんが撮っていらっしゃるのですか?拍手を送りたくなるくらいベスト
ショット!の数々、ありがとうございます。


投稿: | 2008/08/24 14:45:27

NHK大河ドラマの「篤姫」は毎週なかなか高視聴率を示しているようです。私も毎週日曜日の8時にはすべての用事を済ませて、テレビの前で今か今かと楽しみにしています。ドラマの内容もさることながら、篤姫がドラマの中で何回も着替える着物に施された日本刺繍の素晴らしさに、目を皿のようにして見入っています。

今の日本刺繍は無撚糸を自分でよって刺繍をしますが、昔の作品を見ると糸は無撚糸のままです。今の糸は昔の糸に比べて弱くなってしまったのか、何度も生地を通るうちに糸が裂けてしまいます。糸をよることによって、強い糸にして刺繍をするのです。「篤姫」では無撚糸で刺繍をしているように見えるのですが・・・。今日の着物も本当に綺麗でした。ただ、将軍「家定」死去に伴い「天璋院」となってしまったので今までのような豪華な衣装はもう見られなくなるのかと思うと少し残念な気もします。

投稿: kaoru | 2008/08/24 12:56:53

茂木さん、こんにちは。
創発塾に参加していた学生です。
お疲れ様でした。

もっとたくさんお話を聞いてみたいと思っていましたが、
総括での最新の脳科学について、とても興味深く聞いていました。

また、
「脳と農」についてや、個人的に「脳と非日常、異文化」
等についても話をお聞きしてみたかったです。

九州まで、ありがとうござました。

投稿: 世良洋輔 | 2008/08/24 12:51:40

こんにちわ

「篤姫」は、母がファンで、私もテレビでよく観ています。(^^)

島津家の別邸と言う事は、島津家の保養地で、ヒーリングスポットのようにエネルギーが貯まるような所に作られたのではないでしょうか?(^^)

投稿: | 2008/08/24 7:38:50

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