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2008/08/15

樹冠を伸ばしていく

このところ、海外に出るといっても
せいぜい4泊6日。
2泊4日などは当たり前で、
今回のコスタリカの11日の旅程
は最後にそうだったのがいつくらいだったか
思い出せないほど久しぶりである。

いつもの感じだと、そろそろ日本に
帰っている頃であろう。

そのしきい値を超えたせいかもしれない。

長く外に出ている時に見られる一つの徴候が
現れた。
日本の夢を見た。

その中で私は忙しく立ち働いていて、
一つの仕事が終わって、
タクシーを拾って次の現場に行こうと
するのだが、なかなかタクシーが
捕まらない。

奇妙なディテールに満ちた長い
夢だった。

目覚めて、全体として
クレイジーだなあと思った。

日本における私の日常は、
どう考えても狂っている。

文明全体が一つの狂気の
中にある。
しかし、それに付き合うという
ことが現代人にとって「生きる」
ということである。

森の中を歩いていると、ふと
した瞬間に自分の内面に帰る。

先に山中温泉を訪れた時に得た
大切なインスピレーションが
自分の中で育ちつつある。

グローバリズムの中で、
人々と行き交い、
世界に広く発信し、
できるだけ大きなプラットフォームの
中で表現することを目指すこと。

その一方で、仕事の価値の基準は、
あくまでも自分の内なるクオリアに
寄り添うこと。

「私」の内部にもまた、さまざまな生物
たちが密接なネットワークをつくり出す
一つの熱帯雨林があり、
その木々たちが天上からの光を
求めて樹冠を伸ばしていくその
精神運動のうちに、
私の内的発展はなければならない。

グローバリズムの中で、他律的な
価値観を安易に取り入れることは、
ブルドーザーで固有の生態系を
根絶やしにすることに等しい。

8月 15, 2008 at 10:12 午後 |

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コメント

ジャングルの写真をまた見たくなって、今夜もクオリア日記を見ています。

当たり前のことを書いて失礼ですが、茂木さんのジャングルへの傾倒の強さは日常の多忙さと比例してるに違いありません。ただ、茂木さんの場合はどちらも常人の傾倒の域を超えていることですね。
話題転換:
星野ジャパンが韓国(ほんまに強うなったなあ)に負けたのがこたえて、イライラして今夜はエンターキーを力任せに叩くので、傍で愛猫がびっくりしています。

投稿: | 2008/08/17 0:47:33

木々が枝を広げ、下から見上げると太陽光をいただきながら緑に包まれている。
そんな感じもした今日のクオリア日記(^ ^)


皆さんのコメントを読ませて頂ながら、色々考え、中でも相互作用について書かれていた方の
「自分の内的発展が誰かの内的発展につながり、誰かの内的発展が自分の内的発展につながる。」というところ。

そうそう!
これだ
私が求めているものは、こういう事だ

と、(発見?)思いいたりました。

勝つでも負けるでもなく…お互いに具合いの良い所。ちょうどいい所へ。

そのためにも…自分の内的な成長をさせていきたいと思う。

投稿: | 2008/08/16 20:10:04

茂木先生の綴る言葉には
考え方の深さが表れていて
憧れてしまいますo(^-^)o
暑さが続きますが
どうかお体に気をつけて
頑張ってください!

投稿: | 2008/08/16 14:38:57

今日は。

この数日の、コスタリカでの貴重な体験が、茂木さんにとって、掛け替えのない、内なるものを育てつつあるのですね…。

他律的な価値観を取り入れ過ぎてはいけない…おのおの、自分の「内なる声」に寄り添いながら、外の世界と闘っていくしかないのだという思いを強くした次第です。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/08/16 13:47:58

茂木さん、こんにちは。

コスタリカにてゆったりとした豊かな時間をお過ごしの茂木さんの写真や文章を鑑賞させていただいているうちに、こちらまで豊かな気持ちになってきます。

と、同時に、本当の豊かさとはなんだろう?とも。

六本木ヒルズ?違うだろう。ブロードウェイのミュージカル?やっぱり、違うだろうって。

きっと、山中温泉の森の中で見つける小さな生き物たちと語り合ったりすることが、その辺りに迫れる道に通じているのかもしれません。

当方の1000年来の友人である紀貫之さんが、またまた、どうしても茂木さんに時空を超えて一首送りたいと、申しておりますので、送らせてやってください。


夏と秋と行きかふ空のかよひぢは かたへすずしき風や吹くらむ  紀貫之


ここにも「すずしき風」(”cool breeze”)が吹いておりました。

まだまだ暑い日本ですが、茂木さんがお帰りのころには、ぼちぼち「目にはさやかに見えねども」(藤原の敏行)の候になっているかもしれません。

暑くて閉塞感ただよう日本へ、茂木さんの新たな”cool breeze”を吹かせてください。

ひょっとして、時空を超えているのは紀貫之さんのほうではなく、茂木さんのほうなのか・・・。

投稿: | 2008/08/16 10:20:09

お早う御座います。こちら東京はきょうも残暑であります…。

あちこちで聞かれる蝉の、命がけのラヴコールも、少しずつ力がなくなりつつあるようです。

こんな小さな島国の中では、まったくといって感じられないほど、複雑多岐な生物多様性に満ち溢れたコスタリカの森。

数えきれない恵み(福音)も在れば、罷り間違えば命に及ぶ危険も秘めている、不思議な生命体たちの棲む世界は、ご紹介してくださったお写真などを眺めるに、本当に本源的な、瑞々しい生命の躍動に満ち溢れているのだと感じ取れた。

それに比べて、ビルだらけ、クルマだらけの街の中に、箱庭のような緑がぽつぽつあるような世界を生んだ現代文明というのは、そこに生きるものたちが、何処か精神的に窒息状態に陥っているようだ。まるで文明社会を今奔流のように駆け巡る、グローバリズムの呪縛にとらわれているかのように。

そんな文明社会にまもなく戻られる茂木さんは、いよいよ、グローバリズムの奔流に抗いつつ、御自分の内面のかけがえのないものに寄り添いながら生き抜こうとされていると、エントリーの文を読みながら思った。

所謂グローバリズムの中で急激に、人間にとって生きる為に必要な、自律的な価値観に寄り添うことが省みられず、特にこの島国の都市では、仰るような、他律的価値観に安易に身をゆだねることを「よし」として奨めるが如く、沢山の「言辞」や「オピニオン」といわれるものが私達の頭上を常に飛び交っている…!身近な例では、電車の雑誌の中吊りや、TVのコメンテーターの言辞などがそれにあたると思われる。

そんなものたちが充満している文明世界を、何時もさ迷うように歩いていると、一体誰が言っているのが正しいのか…というよりも、結局彼等は何が言いたいのか、迷いにまようような錯覚に襲われかける時が在る。

そんな混沌に溢れる今の時代、各々の立場、考えで、自らの中のネットワークを複雑化し、その中で自律的な価値観を培うことが、私達にとってもこれから一層大切に思われてくる。

その上で、己の外にいる他者との触れ合い、交わり合いも本当に大切に思われる。

他者との触れ合い交わり合いを大切にしながら、自分の中の“本当に掛け替えのないもの”に寄り添い、それに随って生きること。

おそらくそんな生きかたが、グローバリズムの嵐に流されずに生きていく為にはいっそう大切なものになる筈だと、私も心から思います…!

コスタリカでの素晴らしい日々もあとわずかですね…何卒くれぐれも、危険なことには遭われないようにお気をつけて、お過ごし下さい。

☆長文乱筆になりました事を何卒お許し下さい。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/08/16 9:52:33

11日の旅程は久しぶりの長旅とは意外でした、TV・新聞・雑誌をみるにつけ登場されていることを思えば当然かと・・・。
非日常的な今回のコスタリカ旅行は、新たなクオリアの探検になるのでしょう。

投稿: | 2008/08/16 7:54:10

「神仏のすみか」 日高敏隆・梅原猛

利己的な遺伝子の利他的なふるまい  解説本がほしいです。

・盲目の意志 自由意志は遺伝子上

 過ぎて解かる 結果付随 ・・ 盲目の意志の範疇を知りたいです。

投稿: | 2008/08/16 6:41:11

こんにちわ

自分の内なる発展が、誰かの内なる発展につながる、誰かの内なる発見が、自分の内なる発展につながる。

花と花が花粉で相互作用するように、内なる文化と内なる文化の相互作用ではないでしょうか?(^^)


タクシーがつかまらないのは、花粉がつかまらない事ではないでしょうか?
何か、花粉のような言葉を一生懸命探している事では?。
勝手に夢診断しました!!(^^;)

投稿: | 2008/08/16 5:22:43

こんにちわ。茂木さん。日高先生とアミを持って撮られたお写真とても素敵です。お二方とても穏やかなお顔で素敵です。日高先生の前の茂木さんは少年のお顔になられてらっしゃいますね!

今日は私にとってとてもつらく悲しい事がありましたが、茂木さんの柔らかなお顔が拝見出来て少し元気が出ました。

お身体にお気をつけて下さいね!

投稿: | 2008/08/16 1:42:16

茂木さん、おはようございます。「文明全体が一つの狂気の中にある。
」本当にそうですね。この頃、あちらもこちらも「おかしいのじゃない?」と思う事がたくさんありますね。よく「この頃のマスコミはおかしい」とか言われます。確かにおかしいところやおかしい人もいて、ジャーナリズムは何処へ?と思うことも度々・・・。ただマスコミも世の中の問題を取り扱っているわけで、社会全体がおかしいから報道自体がよじれていくおかしさもまたあるのだ!と思う面もあります。茂木さんの仕事の事は、何も言えません。ただやはりお疲れだったのだなぁ~!とこの文章を読んで思いました。そうですね、茂木さんは大きなところで仕事をされる方、そう思います。それから茂木さんの中にある熱帯雨林、日々、研究者の方々の成長を楽しみに、また、茂木さんを必要とされているわけですね。いろいろおありなのでしょうけれど、大切なものや人たちを見失うことのないように!と思うばかりです。「忙しい」という文字は「心をなくす」と書きますね?今回の旅は「チル」な旅だったようで、本当によかったですね。何があってもいちファンとして応援してまいりますが、茂木さんのような方がこうして悩んでおられるのは何か、どこか人間らしくて素敵ですよ~。私なんて仕事ではよくよく悩んでいますが、なかなかねー、仕事も家庭も趣味も何もかも大事と思うと難しいこともあって、バランスを保つことが常に頭の中にあります。夫の仕事、第一ですからね。国内・海外出張のスケジュールを頭に入れ
今までは空いたところで自分の仕事をドォ~!っと入れていました。笑
グローバリズムの中で茂木さんらしく目一杯、闘ってください!応援しています!(私は赤毛のアンつながり?!でファンですから)

投稿: | 2008/08/16 1:04:28

茂木さん★
二回目のコメントです。

自らの内的発展は、
時間が熟したとき、
外界をイノベーションする圧倒的な力にも成り得る。
と感じました。

今の日本社会は、
茂木さんがおっしゃるように、
若者がなかなか伸びない、
押しつぶされる、圧迫される状況だと思いますが・・・

きっと、
一人でもいい、
時間を耐えて
自らの内的発展と充実に専念した若者に
時が来たとき、

閉塞感漂う社会の空気を
イノベーションしてくれる、
そんな強い力を発揮するのだと
観ました。

私は基本的に平和主義、調和を重んじるタイプですが、
やはり、
壊さねばならない自分の壁、
自分の環境の中の壁というのはあります。

バランスをとりながら、
時には闘う勇気も必要だと。
そして、
その勇気の源泉は、
自らの内的発展にある。
ということを勉強させていただきました。

投稿: ももすけ | 2008/08/16 0:10:21

茂木さん★
先ほど、昨日の日記にコメントさせていただいたら、
その間に新たな日記がUPされていて、

むむーーん、、
深い内容ですね・・・
また改めてこちらにコメントさせていただきたいと
思うのですが、

改めて、
コスタリカへの長期旅行は正解でしたね☆

狂気のような現代文明、そのスピード。

私は、東京のスピード感が自分には合わなくて
結局体を壊したようなものですが、
沖縄に帰ってきてひとつ発見したのは、

私の脳の中身は、
変わらず東京モードであるということ。

様々な情報が交差し、
様々なことに精神を集中させ
時には混乱状態になり。
混乱の方が私は多いのかな。

沖縄にいても、
精神状態は東京にいるときとかわらず、
むしろ沖縄は
東京より別な意味での厳しさがあって
余計、精神的にまいることが多いです・・・

だから、
茂木さんのこちらの日記は、
私にとってもひじょうに
教えられるところが大きくて・・・

やはり、
外界に有意義なエネルギーを注ぐためには、
それ以上の内面的充実が必須である、
そして、
忙しい中にありながら、
どうやって内面的充実を確保するのか。
それには
それぞれの工夫の余地があると感じました。

ヨッシャーーー!!
がんばるぞ!!
茂木さん、
ありがとうございました!!!

投稿: ももすけ | 2008/08/15 22:59:42

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