ストロベリー
熱帯雨林の自然をたっぷりと観察したラ・セルヴァに別れを告げて、活火山であるアレナル山のあるフォルトゥナに向かう。
アレックスの運転する黄色いバスが道を行くにつれて標高が上がる。結果として気温が下がってくる。赤道直下ながら、温帯と似た環境に発展する雲霧林。それでも、日本の対応する生態系に比べて生物の数は多いように思われる。
途中、激しい勢いで水の落ちる滝のある場所を通る。「ほら、見てごらん。前は木の橋がかかっていたんだけれども、10年くらい前に大きなトラックが通って、橋と一緒に落ちたんだ。」とアレックスが教えてくれる。
川の下をのぞき込んでいると、アレックスが、「今でも木の橋の残骸を見ることができるだろう」と後ろから声をかけた。
ラ・セルヴァで見た低地熱帯雨林のように、「生物多様性」の密度の高い場所が、地域の生命を育む「コア」のような役割を果たすのだろうか。局所的に見れば日本の森林と同じ環境でも、生物多様性がより高いような印象がある。
モルフォチョウやドクチョウ、シジミタテハなど、コスタリカ特有の蝶の標本をお土産として売る露天の上を、件のモルフォチョウがひらひらと飛んでいった。
昼食は、さくらトラベルの下村昌也さんがアレンジして下さったレストランでとった。
ラ・セルヴァと同じコスタリカにあるとは思えない、高原のような気候と景観。緑の牧場が広がる中を、道が大きくカーブするちょうどその場所にそのレストランはあった。
レストランの外に出てみると、不思議な光景に出くわした。高原の向こうの方は激しく雨が降っているのが見えるのに、自分が立っているところはぽつりぽつりとしか降っていない。
はて面妖な、と空を見上げると、びっしりと厚い雲に覆われている。やはり、と思っているうちにざーっと雨が降ってきた。
みるみるうちにたたき付けるような激雨となった。天の底が抜けたように大量の水が落ちてくる。屋根に当たる音で、注文のやりとりも聞こえないほどである。
大声を張り上げて、セットメニューをポーク、ビーフ、チキンの中から選ぶ。日高先生はビーフ、私はチキンにした。
ジュースは、パパイヤ、ストロベリー、パイナップルの中から選べという。
「パパイヤはやめておいた方がいいです。」
すかさず、西田賢司さんが言う。これまでの経験で、この人の言うことは信頼しておいて良いとわかっていたので、素直に従った。
日高先生も、「パパイヤ!」と一度言いかけてから「ストロベリー」を選びなおす。
莓ジュースは新鮮でおいしかった。
食事も美味である。
「イチゴはこのあたりでとれるんでね。さくらトラベルのマサヤは、何ごとにもパーフェクトを求めるんだよ。」
レストランのオーナーが満面の笑みを浮かべて言った。
8月 15, 2008 at 05:58 午前 | Permalink
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コメント
探検昆虫学者様、
素朴な質問にお答えいただき、ありがとうございました。
なるほど、たんぱく質消化酵素ですか。。。
そういえば、パパイヤの強力な酵素が洗顔石鹸になっていたりしていたような。。。パイナップルも豚肉と付け合せて、お肉を柔らかくしたりしますものね。
投稿: 楠 | 2008/09/01 20:18:40
ストロベリーとパパイヤの突っ込みがありましたので、お答えします。
あの時、昼食が遅れ皆さんおなかが空いていて、またお疲れなのでパパイヤ(パパインのたんぱく質消化酵素を多量に含む)新鮮ジュースはおそらく刺激が強すぎ(胃にあなが開くでぇ?)、あとで応えるかも。。。と判断。その際皆さんには理由はお伝えしませんでした。。。レストランがあった場所周辺ではイチゴの栽培が盛んで、産地というのも考慮したうえで。。。 ちなみにパイナップルも消化酵素がぁ。次回は皆さんにパパイヤジュースを試してもらいましょう。
投稿: 探検昆虫学者 | 2008/08/31 16:37:27
茂木先生、
今回の日記はいつもと形が違うので、おやっ?っと思いました。
なんというか、一日の出来事綴った日記みたいで。
コスタリカでの煌く日々の断片を切り取って、教えてくれたのですね?
雄大な大地から雨が向かってやって来る様子が目に浮かびます。おいしそうな苺のジュースも。なんでパパイヤはダメだったのかなぁ??
探検昆虫学者のところで、手に昆虫採集のアミを持って、日高先生と写ってらっしゃる写真、まるで少年のような表情でとても可愛らしかったです。(というのは、やはり失礼かしら。。。)
クレイジーな日本での生活を忘れて、コスタリカを満喫して下さいね。怪我などされませんよう、お気をつけて。
投稿: 楠 | 2008/08/16 11:04:58
鬱蒼たる深緑の、巧まざる生命の力に満ち満ちた世界。
変化激しき自然の驚異と、力強い生きる息吹き、そして弱肉強食の厳しき掟。
その中で虫も、鳥も、亀も鰐も、蝙蝠たちも、みんな目いっぱいの生を生きて居る。
私達の傲慢で、この手付かずの世界を、ゆめゆめ、壊してはなるまい。
壊したら私達の、存在も何時しか、消えてしまうのだから。
投稿: 銀鏡反応 | 2008/08/16 3:53:29
多様なコスタリカ。
緑あふれた生物の憩う場所。
生命の縮図。。。
素敵ですね☆
守りたいですね!
投稿: 奏。 | 2008/08/15 20:53:57
茂木さん、お元気ですか?環境因子によるご病気などの心配は?!標高の高い所に上ると低気圧、低酸素に体が適応できないことがありますが
、高山病の心配はありませんか?日本旅行医学界がダイアモックス(成分名・アセタゾラミド)を進めていますが、持っていらっしゃるのかなぁ~。十分な水分と栄養補給が大事でアルコールは利尿作用があるので逆効果ですね?茂木さん、気分が優れないようでしたら、アルコールを我慢しなくては、あとで大変な思いをすることになるかもしれませんね
???(要注意!)それから木の橋がトラックと一緒に落ちたのですかぁ~?!怖いですねー。私、トラックと聞いただけで今はもう、気をつけなくては!と思います。アクシデントが・・・でも人間の体って結構強くて、治癒力もあり、回復も早いものですね。夫いわく、「おそるべし、君の身体。」と。(笑)茂木さんも事故や怪我、災難にはどうぞお気をつけください。そして「生物多様性」の密度の高い場所が、地域の生命を育む「コア」のような役割を果たす?・・・日本で暮らしているのにそのようなことを考えたことがなくてよくはわかりませんが、私たちからすれば過酷とも思えるような条件の下であっても生きられる生命体があり、しかも日本などより種類も多種多様である印象ですか?それは昆虫や鳥類などの生き物だけの生命力というだけではなくて、植物の恩恵とかも関係しているわけですね?現地での地球温暖化現象などの悪影響等々はどのようなものなのでしょうか?何かしら影響はあるのでしょうね。レストランで激雨?大阪でも毎日放送の千里丘の手前の方でハッキリと雲が分かれ、片方が雨、もう片方は晴れ!というのはよく知られていて有名です。空って不思議、面白いですね。大声を張り上げてメニューオーダーをされたのですか?(笑)イチゴジュースはまるまるイチゴだったのでしょうか?日本だったらいったいいくら?と考えてしまいました。(笑)以前、「赤毛のアンのイチゴのスムージー」というメニューを考案した時はイチゴが高いので氷をミキサーにかけてジュースではなくスムージーに!きっとコスタリカでは考えられないくらいチープで美味しいのでしょうね。日本ではフルーツが高いから直ぐ「スリーベリージュース」とかになってしまいます。ところでコスタリカの紙幣はカラーですごく綺麗なのですね?お料理は「ケサディーリャ」という
タコスのチーズサンドが美味しいらしいです。昨日の夕刊の広告に茂木さんの「俳句脳」、なにやらまた美人の方とのツーショットがありましたが、その同じ欄に日高先生の著書の紹介もあって「動物の言い分、人間の言い分」、はて、どちらから読ませていただこうか?と(笑)そういえば、「ブルータス」に「チルアウト」という言葉が。今回の茂木さんのコスタリカは「チル」な旅!なのでしょうね?!どうぞ、この後も日高先生たち(?)と楽しい旅をお続けください。最後にひとつだけご質問があるのですが、さりげなくでも日記の中で答えてくださると嬉しいのですが(笑)あのぉ~、ホテルでお泊りなのですか?それともテント?!(笑)ホテルだとしたらコスタリカのホテルってどんな感じなのかしら?と思いました。食事とかサービスとかお部屋の感じだとか、茂木さんの元気フォトも見たいかなぁ~!図々しくもたくさん書き込みました。では、次回のクオリア日記に大いに期待しています。(笑)
投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/08/15 11:27:36
There are the important things what I omitted in your blog.
I have been impressed by everything.
I appreriate opportunities to know such a wonderful world.
I hope have a nice day.
投稿: yuzuriha | 2008/08/15 9:44:03
‘局所的に見れば日本の森林と同じ環境でも、生物多様性がより高いような印象がある’という見方、私は共感、日常の出来事にも多いようなクオリア。パパイヤ、ストロベリー、パイナップルの中からパパイヤを外した理由、知りたかったなー(局所的なデジタル人間?)。
投稿: 宗竹斉 | 2008/08/15 8:40:57
昆虫出没率 求めれば 与えられん
大自然の一瞬 出くわし率
さすが 高い ! 今日の場所 が 今の場所
お気をつけて
投稿: 一光 | 2008/08/15 6:37:08