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2008/08/17

鮮烈な淡さ

モンテ・ヴェルデからサンホセに戻ってきた。

すでに文明の中に包まれているという感覚を
持つ。

熱帯雨林や、雲霧林がなつかしい。

いつも雨が降り、霧に包まれ、さまざまな
生きものの気配がするあの場所。

ただ一つ良いことがあるとすれば、
ホテルに入ってすぐにせっけんで
洗った下着やくつしたが乾きやすい
ということだけだろうか。

同行してずっと撮影し続けて
下さった中野義樹さんは、昆虫写真への
関心が開花したようである。

「昆虫にも、一つひとつ表情があるんですよね。」
中野さんは言う。

中野さんが撮影した写真が、
「すばる」や『熱帯の夢』(仮題)を
飾るはずである。


昆虫を撮影する中野義樹さん

こちらで求めた
Philip J. DeVries. The Butterflies of Costa
Rica and their natural history.
Volume II: Riodinidaeは、
大好きなシジミタテハ科の解説書。

多くの種の解説に、
This butterfly is encountered as rare, solitary
indiviuals.....

と書かれている。

温帯では、同じ種の蝶が群れて
たくさん飛んでいることがよく
あるが、
熱帯では、種の数が圧倒的に多いことも
あって、
飛んでいる蝶が極端なことを言えば
すべて違う。

rare, solitary individuals

という言葉を繰り返し味わう。
そこから広がる詩的宇宙は無限である。

モンテヴェルデで、最後に
訪れたリザーヴ。

ケツァールはこの季節はいない、
と言われていたのだけれども、
最後のさいごになって、ガイドのイアンが
「ケツァール! ケツァール!」と叫んだ。

目を凝らしても、あまりにも高い場所に
いるのでわからない。

さまざまな国籍の人たちが殺到して、
ガイドがセットした望遠鏡を
のぞいている。

しばらく探ったあと、私も
見せてもらった。

いた!

その色彩の美しさに息をのむ。

ふしぎな印象であった。緑と赤の
コントラストが美しい。

ジャングルの中にはさまざまな
色彩があふれているけれども、
ケツァールの色は、そのどれとも
違っていた。

 少年の頃、ハドソンの小説
『緑の館』を夢中になって読んだ。
ジャングルの中からふしぎな少女
が現れる。

たとえばその可憐な奇跡のような、
密林の空気その
ものから析出したような気配に
満ちていた。

苦労して、やっと自分の肉眼で
確認できた時には、何かがとろけそうに
なった。

あまりにも高くにとまっていて、
木々の葉が邪魔をし、
すぐに飛び去ってしまったから、
写真には、色彩の印象として
しか定着されなかったけれども、
その鮮烈な淡さが、
今回の旅の印象として
きっといつまでも残る。

私たちが見たケツァールは、
孤独な若いオスだったのだという。



はるか頭上のケツァール。ワンチャンス。
ピントが合わず。


「鮮烈な淡さ」の印象。

8月 17, 2008 at 10:34 午後 |

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コメント

茂木さん★
ケツァールのこと、よく知らなかったので、
調べてみました☆

世界一美しい鳥で、
ケツァールを見たものは、
幸せになれるとか!

わぉ!茂木さん、よかったですね~~!

ケツァールを調べる前に
茂木さんの写真だけで見た印象は、
緑の中に鮮やかな色彩。
きれいな蝶なんだろうなぁ・・・

茂木さんは蝶がお好きだから、
てっきり蝶のことだと思い込んでました!

まるでケツァールのようだなあ、と
思わせる人がいます。

初めて会ったとき
その人は頑なに自分の中に閉じこもっていて、
周りの人を避けていましたが。
私が声をかけた時の第一印象も
「こ、怖い~~~」
でした。

しかし、心閉ざすも
高貴ささえ感じさせる
しぐさや立ち居振る舞いといい
ファッションセンスといい、
なんて美しい人なんだろう、
孤高の中でケツァールのように
抑えきれない光を放っていました。
(ちなみに男性です・・・性格は
めちゃくちゃワイルドなお方・・・)

けれど
その人は今、
いるべき場所にたどり着き、
周りの人と調和しつつも
信ずるところに従って
ぐんぐん成長中☆

動物の中にも、
ケツァールなどのように
幻の美しい存在がいて
カリスマ性を放っているように
人間の中にも
そういう方っているんですよねえ。


それから、
茂木さんのコスタリカ通信を読ませていただいて、
私も中野さんのように
昆虫に興味が出てきました!
昆虫ってきれいですねえ・・・ほれぼれ。。。

投稿: ももすけ | 2008/08/22 3:22:15

ロスコの色彩のような淡さで美しいです
ケツァールの姿形を知らないせいか 
ピントのズレが余計に想像力をかきたてますね
貴重な一枚に感謝します

投稿: | 2008/08/21 2:48:04

おお…あの“ケツァール”を見たのですね!

コスタリカでの最後の日に“幻の鳥”と遭遇できたなんて…!何という奇跡でしょうか。

たしか南米の先住民があがめる神「ケツァルコアトル」のモデルになった鳥だとのこと…。

そんな神々しく、美しい奇跡の鳥と、素晴らしい出会いをされて、本当によかったですね。帰路が御無事でありますように。

p・s・『熱帯の夢』今から楽しみにしています。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/08/18 21:37:31

鮮烈な淡さ・・・美しい色のコントラストって、
何故こんなにも私たちを魅了するのでしょう!
ケツァールのブルーとオレンジは、楽園の香りがします。
蝶の羽の柄も、何やらホッとする色合い。

自然のさまざまな美しい色、
そして、それを表す茂木さんの言葉の豊かな色合いに
心が喜んでいます。
素晴らしいお写真の数々、ありがとうございます!

投稿: | 2008/08/18 19:03:40

コスタリカ、日高先生とご一緒のこと。自然のなかにかこまれ、感覚を研ぎ澄まされていることと思います。東京もこの二日間はそれほどでもないものの、猛暑が続く毎日です。無事のご帰還お祈り申し上げます。

投稿: | 2008/08/18 16:00:47

「緑の館」懐かしい響きです。映画ではオードリー・ヘップバーンの幻想的な美しさに子どもながらにも魅了されたものです。

投稿: | 2008/08/18 13:33:25

ケツァ―ル  よくぞ撮ってくださいました。 気配がむしろ感じられます。
幻のように。  淡さが、 鮮烈 とは?   と、見る前に 想像させられました。  少しでも見られないのかなぁ~と、諦めていたのでとても嬉しいお写真でした。

投稿: | 2008/08/18 12:14:37

こんにちは
虫や動物溢れる自然から一歩づつ、人の作った文明の香り漂う街へ。。
茂木さん、おかえりなさい

ひきつづき…
日本への道中、お気をつけて(o‘∀‘o)

ラッキーでしたね♪ケツァール見ることできて☆
なんだか良いことがありそうな、感じがしてしまいます

今は見る時期ではない…とのことですが、よく見られる時期って、いつなのかしら??と、興味津々です

投稿: | 2008/08/18 10:29:12

『緑の館』
その密林のなかに先生はいるのですねっ!

リーマを見つけてきて下さい!!

リーマの声を聞かせて下さい!!

投稿: 河村隆夫 | 2008/08/18 9:58:45

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