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2008/07/20

レインボウブリッジ

少し離れてものごとを見た方が
本質がわかることがある。

2008年7月10日のNatureに
掲載されている

Social diversity promotes the emergence of cooperation in public goods games
という論文。

社会の中の結びつきを
スケール・フリー・ネットワークを導入して
多様にすることで、公共財の構築に
協力的な人の割合が増えるという趣旨。

注目すべきは、「利得」の分布が
power lawになることで、
低い利得の人がたくさんいる
一方で、ごく少数の人たちが大きな利得を
得るようになる。

社会の中の所得の分布は、正義不正義の
問題ではなく、人間が相互に協力関係を
結ぶ際の法則性に依拠しているのかもしれない。

そう見ることで、さまざまな問題に対する
対応が変わってくる。

所得分布のpower lawは避けられないことであり、
累進課税などの税制でそれを補うことが
必然であるというように。

科学の恵みは、距離を置くことでものごとの
本質が見える、そのひんやりとした感触の
中にある。

東京大学医学部鉄門記念講堂。
東京芸術大学の
須甲松信教授にお誘いを受けて、
「芸術療法と脳科学」という
タイトルでお話させていただいた。

この学術大会(第39回日本職業・環境アレルギー
学会総会)では、
布施英利さんや、小泉英明さんも
講演された。
異分野交流をしようという、
須甲さんの発案である。

講演中、ふしぎなことが起こった。
パワーポイントが、ふわふわと
動いている。

話しながら、「あれ、なんでこのパワーポイントは
動いているんだろう。誰かがゆすぶっている
のかな?」などとぼんやり考えていた。

地震だ! と気付いたのは数秒後。
見ると、天井から下がるプロジェクタが
大きく揺れている。

「えーみなさま、地震のようです。
こういう耐震構造の建物は、上にいくほど
振れ幅がおおきくなりますから、
地上ではここまで揺れていないかもしれません。
それにしても案外長く揺れていますね。
これが初期微動だとしたら、困りますが」
などとつなぐが、
パワーポイントが揺れているのでは
気分が出ない。

やっと収まって、気を取り直して
話す。

大地は、時々その存在を私たちに
思い出させる。

フジテレビ。

朝倉千代子さんや齋藤智礼さんと
打ち合わせ。

朝倉千代子さんや齋藤智礼さん、それに
冨田英男さんとキム・ピークを取材した
映像を元に、私がサヴァン能力について
解説した回が、16.4%でその日の
同じ時間帯のトップだったと聞いていた。

「良かったですねえ。その時間帯の
トップで。」

「何言っているんですか、茂木さん、
あの回は、ベストハウス123の番組
始まって以来の最高視聴率だったんですよ。」
と朝倉さん。

「えっ」
「いきなり大ホームランですよお」
と齊藤さん。

そうだったのか!
じゃあ、あの時日記を
もっと派手に書けば良かった。

私が朝倉さんからのメールを
返事し忘れていて、
打ち合わせだけの
はずだったのだけれども、
せっかく来たんだから、ということで、
なぜか急遽ベストハウス123の
収録にも出ることになった。

荒俣宏さんやYOUさんと話した。

精神の若さというのは、ある種の
違和感やざらつきを伴う。

春芽を出してぐんぐん伸びる植物
の組織に含まれる苦味のように、
「今、ここ」に対するいらだちが
精神の成長に伴う。

そのいらだちのダイナミクスには
無限の階層があって、
苦味を、うまく土の滋養と
結びつけなければならない。

レインボウブリッジを渡りながら、
パワーポイントの画像がゆらゆらと
動き始めてその原因を知らなかった
数秒間のふしぎを思い出した。

7月 20, 2008 at 10:14 午前 |

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コメント

こんにちわ

利得≒所得でしょうか?
生産性及び、付加価値生産性が高い人ほど、所得が高く、人とのつながりが多いと言う事でしょう。それを考えるとたとえば、漫画の背景画を書く人が、人気の漫画家の背景画を書けば収入が多くなるでしょう。もちろん、背景画うまいと言う要因もあるでしょうが。別々で働くより、互いに協力する事に付加価値生産性が高くなると言う事です。社員200人≒500人力とか800人力、と、なるのが法人でしょう。

派遣社員の増加は、小泉政権の影響だとよく言われますが、その当時は、人・モノ・設備投資の三つの過剰で、仕事が無く、ワークシェアリングが必用だと言われていました。三つの過剰が無くなってきた現在では、経団連などはそれに気づき、賃金を出せるところは出そうと言う事になったのですが、サブプライム問題が起こり、その連鎖で、原油商品高を引き起こしてしまい、日本の経営の圧迫が起こり、賃金アップや正社員人数アップが難しくなっていますが。一速から二速に入った今は、賃金アップ、正社員人数アップが日本経済のアップになると思います。


所得のPower lawが当てはまる場合、底辺の人の所得を上げる事により、利得の高い人も所得がより上がる事だと思います。
茂木さんも読者が金持ちになればなるほど、本が売れるでしょ?(^^)


投稿: 経済のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/07/21 22:05:55

茂木さん、おはようございます

キム・ピークさんの放送、
ベストハウス123の中でも
トップの視聴率だったんですね~
すごい、おめでとうございます

芸術療法のお話、興味深いですね!
アートセラピーや音楽療法。
お医者さまで有名な日野原重明先生も
日本における音楽療法を拡げる活動もされていますものね。

病気を経験したことで、
音楽療法にはすごく興味ありました。

規定されている音楽療法とは違うのですが、
昔、植物が歌っているのが聞こえるという少女がいて、
聞き取った音楽を、歌っている方がいました。
一時期けっこう有名になって、
書店でもレジ前にこの自然音楽の本が
並べてありましたし、
NHKのおはよう日本でも取り上げられたくらいなので
私も一度治療を受けたのですが!

むは~~~
周りは暑いのに、
いきなり手だけが冷凍庫に突っ込んでいるくらい冷えてきました。
悪い気?が出て行っているそうで・・・

そこは北鎌倉にあったのですが、
私の住んでいるところからは遠くて・・・
病気がつらくて、長時間移動が
できなくて一回しか受けられませんでした。

植物の歌を聴きとることのできる少女は、
植物の妖精も見えるそうで、
一番可愛いなあ!と思ったのが、
もみじの妖精でした。
赤ちゃんみたいで、
紅葉すると、
きゃっきゃ、と笑いながら、
くるくる遊んで舞い散るそうです!

想像するだけでも、
なんて可愛らしい!!

植物は、人が喜ぶとうれしいそうです。
植物にクラシック聞かせると
育ちがいいってよく聞きますしね~~

病気がよくなって、
心がもっときれいになったら、
こういう植物や自然の妖精が見れるといいなあ・・・
お話しできたら、
きっと楽しいでしょうね!!

茂木さんが以前日記にちらっとお名前をのせていた
画家の天野喜孝さんも
やさいのようせいって
素敵なお話描かれていますよね~~~★

私ももっと心をきれいにして
病気を治そう~!
今の自分は、
自分の意思で選択したことの積み重ねですから、
考え方の傾向性や悪い癖を
浄化すると、病気も治るのでは!
もちろん体を治すことも大事ですけど、
色心不二と仏教でも言ってますし、
心の面のアプローチも大事なのでは、と思います。

あらっ、話が大幅にそれてしまいました!
自然音楽については、いっけん非科学的ですが、
治った人もたくさんいるというので・・・

全然関係ないコメントにしてしまってすみません。

今日も暑いかと思いますが、
お仕事がんばってくださいね~~

投稿: ももすけ | 2008/07/21 7:13:38

初めてメールします。

本田と申します。
いつもブログ楽しみに見させていただいております。


ちょっとお願いといいますか。。。


「脳を活かす勉強法」を読ませていただきました。

この中で、「一回性」という言葉がでてきます。
とても興味深い言葉だと思いますが、
語句の読み方がわかりません。

ネットで調べても読み仮名がなかなかでてきません。

何と読むのでしょうか。

興味深い言葉なので、周りの人にも紹介したいのですが、
正しく伝えられないのは、なんだかもどかしく感じてしまいます。

お時間がある時で結構ですので、
お教えいただけますとありがたいです。


よろしくお願いします。

本田さま
メールをいただきありがとうございます。

「一回性」(いっかいせい)、
英語ではoncenessといいます。

茂木健一郎

投稿: お願いです。 | 2008/07/21 0:43:07

春はじめの草の芽・・。苦い。苦味によって覚醒するのかしらん。
「いら」は立つのですね。虹が立つように。夕立ちのように。

投稿: 井上良子 | 2008/07/21 0:27:19

こんにちわ

「苦味」の言葉で思ったのですが、外国人が、茶道で抹茶を飲む時、「苦味」の「後味の甘み」を説明しなければ、「苦い」、「苦い」と抹茶を避けてしまうと思います。

飴の甘み後味は苦味、紅茶とブラックコーヒーの渋みの後味は旨味、それを考えれば、チョコレートはうまく苦味と甘みを利用したお菓子だと思います。他の人に確かめたけではないので、私だけの感覚かも知れませんが。(^^)


投稿: 苦味のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/07/20 21:37:20

茂木さん、今日は。所得のバランスは崩れていくばかり。このままだと英国のように益々、ひらいていくばかりでしょうね。一度、政党も変わって改めるべきは改め、見直さなければ、このままでは破綻を来たすことばかり。累進課税などの税制で補うということは、茂木さん、ここでも大活躍!ですね。(笑)でもそれは急務かと・・・。科学の恵みですか?そういえば気づきにくいといいますか、わかり辛いことなのかもしれませんが、この頃は学者の方々がマスメディアでご活躍されるようになりかなり見えるようになってきたのではないかと思いますし、科学者の方々もマスメディアを通じ取り上げられることをプラス面が多い!と
考えていらっしゃると先日の朝日新聞で読みました。(世界の学者さんの声からとありましたが。)私は茂木先生を通じお勉強中です。(笑)それから、関西では「異業種交流会」のパーティー、結構ありますね。お名刺交換をし、美味しそうなお食事を召し上がっておられますが、見ていてとても良いことだと思います。特に県人会とかは和気あいあい・
・・。パワーポイントが揺れた?!びっくりしますね?(笑)精神の若さ・ゆらぎ・・・意外といくつになってもなくならないといいますか、あった方が良いのでしょうね。苦味や渋みというのは男性にはよくても女性には???この頃、ビリージョエルさんをみる度、変わったなぁ~と思います。ジョン・レノンさんの変貌くらい、変わっているように思います。ジャズテイストの「ニューヨークの想い」なんかは、年を重ねられた今の歌声の方が素敵だと思います、私は。美学をもって、年と共に円熟味を増すということは大事なことですね。純粋さを失わずにそうなれたら、素敵ですね、茂木さん!

投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/07/20 16:51:43

昨日の朝は、涼しくて、高原にいるような鳥さんが近くで鳴いていて、高原の朝のようでした(^O^)

茂木さん。浴衣姿、お似合いでした(^ ^)

「今、ここ」に対しての、いらだち。
私も感じます。

だからこそかもしれませんが…自然(大地)に育まれている植物のように、私たちの心もしっかりと育まれていくのだと思う。

いらだちという苦味を上手く土の滋養と結びつけたものは、どんな花が咲き、どんな実をつけるのでしょう?(*^□^*)

一度遠くから見渡してみたコタエ。とも思います。←そう思いたいワタシ(^^)

ありがとうございます☆

投稿: 奏。 | 2008/07/20 15:17:50

多様化している社会で生きる上で、やはり…協調する、ということが、大切なのだ、としみじみ思う。

昨日は地震が起こったのですか…。気付きませんでした。昨日は自分は、雑司が谷の方にいたのですが、まったく体感しませんでした。

おそらく、今読んでいる文庫本に熱中するあまり、地震のゆれを身体が感知しなかったのでしょう。


「社会の中の所得の分布は、正義不正義の問題ではなく、人間が相互に協力関係を結ぶ際の法則性に依拠しているのかもしれない」

今、世に流布している、所謂「格差問題」を扱った評論は、何故かみな、格差は「正義」か「不正義」かという観点でしか説明していないようなものが目立つように思える。
(それもだいたい、単に“格差はいけないこと”という予め決まった「結論」に帰結してばかりのものが多いようだ)。

この多面的で、広く複雑で、スケールフリーな人間社会の中で、お互いに協力・協調していくことが如何に大切か。

科学の眼を持ってその点を見ていくと、その、相互協力・協調という営みの美点が他の視点から見るより、ハッキリ見えてくるのだな、と一昨日の朝カルを思い起こしている。


過去の歴史においてもそうであったが、今も実際、世界の何処かの国々では、リーダーと民衆が「互いに協力して」どころか、リーダーが「勝手に暴走」して民衆の信頼を「裏切った」ゆえに、社会が不安定化し、テロや紛争など数限り無い「悲劇」が繰り返されている。

そしてもともと、我々人間の居場所だった、自然界との共存すらもしにくくなっている…。

イデオロギーとか、主義主張が如何のこうの、というのを超越して、リーダーをはじめ、社会を構成する一人一人が互いに手を結び、今回の論文での結論のように協調していくなら、人間世界は自然界とも調和しながら、生き長らえていくのではないか。

そのためにも、まずは今自分がいるこの場所で、他者を本当に大切にしていきたい。

そして、イザという時も含め、互いに気持ちを合わせて、この地上で助け合って生きていくことを志向したいものだ。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/07/20 14:53:58

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