人生というチェス盤
このところ、時折
むかしのことを思い出してみるのは、
個人的になつかしいという
こともあるが、時代がすっかり
変質してしまって、
また今も流れつつあり、
そうではなかった時代のあり方、
その中での人間の生き方というものを
想起することで、バランスをとり、
行き交い、豊かにしようと
しているのであろう。
しりあがり寿さんに
お目にかかる。
対談に先立ち、
「スーパーライター」の
和田京子さんが、
「新生児微笑というのは、実は
あれは笑っているんじゃないんですよね。」
とおそろしいことを言った。
ギャク、笑いというものは、
突きつめると「詰め将棋」
のように理詰めの領域に属する
ことであり、
うまく配置し、並べ、
文脈付けることで
人類が初めて手にした
鉄を鍛錬する炎の中の
「黄金」の輝きのように、
独特の光を放つ。
男の子にとっては、
笑いというものが、自らの
内なる攻撃性に対する解毒剤となる。
しりあがり寿さんは、
死との闘いは、最初から負けるに
決まっているじゃん、と言われる。
いつまでも若くいられるはずもない。
負けることが定められた闘い。
このしりあがり寿さんの視点は、
アメリカ文明を相対化する時に
とても大切な視点となる。
話がはずんで、いくらでも続けられる
感じであった。
またしりあがり寿さんにお目にかかるのを
楽しみにしている。
小平市の国立精神・神経センターへ。
本田学さん、花川隆さんを中心とする
研究グループと、
東京工業大学 茂木研究室の
合同ワークショップ。
須藤珠水、箆伊智充が
それぞれイミテーションと主観的時間知覚に
ついて話した後、
花川隆さんが機能的イメージングの
最新の話題について紹介。
続いて、私がThe contingent brainという
タイトルで話し、
最後に本田学さんがhypersonic effectに
ついてお話下さった。
本田学さん
企画してくれたのは、小俣圭クン。
小俣圭は、私と一緒に研究して
博士号を取得した後、今は本田学さんの
研究グループで仕事をさせていただいている。
小俣の新しい活動の場を見るのは、
初めて。
「ここが小俣の机か!」
というと、小俣は照れくさそうに笑った。
小俣圭くんの新しい机
国分寺駅の近くで、懇談。
本田学さん、花川隆さんを始め、
たくさんの方々に興味深いお話を
うかがった。
本田さんは、大橋力さん(山城祥二さん)
の主宰される「芸能山城組」
の活動にもかかわって来られた。
バリ島のガムラン音楽の話、
バリの社会構造の話など、
興味深い話に、時が経つのを忘れた。
小俣が研究室に最初に来たときに、
熱力学の第二法則に興味がある、
と言っていたことを考えると、
人生というチェス盤の上のふしぎな
符合に思いが至る。
7月 2, 2008 at 07:23 午前 | Permalink
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コメント
おはようございます 茂木サン。
書き込みで 「泣くは修行! 怒りは無知! 笑顔は悟り!」 のお言葉。大事にします。
たくさん お話が聞けたらいいな と想います。
投稿: サラリン | 2009/10/11 0:15:54
季刊『考える人』対談(福岡伸一×養老孟司)を拝読しました。
「観世家のアーカイブ ―世阿弥直筆本と能楽テクストの世界―」展 駒場博物館http://museum.c.u-tokyo.ac.jp/exihibition.html
投稿: 白井 | 2009/10/10 7:04:57
生物多様性
岩槻邦男さんと茂木先生の対話を見てみたい。
投稿: 白井 | 2009/05/23 7:32:41
「期待していない方が、いい仕事をする」とは、住吉女史、鋭い。
今晩の視点・論点で「自然とともに」というテーマで話された染色家・吉岡幸雄氏の催しが日本橋高島屋8Fで12月11日(木)~16日(火)。http://www.takashimaya.co.jp/tokyo/event2/index.html#event2_3
単調に済まない色の世界を堪能できると思います。お知らせまで。
投稿: 白井 | 2008/12/11 0:51:34
・次週 岩田守弘さん『プロフェッショナル 仕事の流儀』 たのしみです。「いい騎手になりたい」、武豊さんの言葉が、すっと心に届きました。「いい○○になりたい」と、自分の想いを重ねた視聴者も多いと存じます。ありがたい番組です。
・「赤と白」つながりで、『White King and Red Queen: How the Cold War Was Fought on the Chessboard』http://www.atlantic-books.co.uk/
投稿: 白井 | 2008/12/04 0:06:31
・『ダイアローグ 対立から共生へ、議論から対話へ』英治出版。
高野明彦さんが週刊ブックレビューで紹介され、そのときの司会・書評者の反応があまりに良いので、映像を見た足で恵比寿英治出版を訪ね購入致しました。翻訳主体に志を感じさせるオフィスでした。
http://www.nhk.or.jp/book/review/review/20080419.html
・『新潮』12月号
付録CD(小林秀雄の「響き」)に惹かれて昨晩購入。初めて声を聴きました。文章のみでは伝わらないものが立ち上がった感じです。矢来町にはまだまだ音源があるかもしれませんね。
・憲政記念館で「怒涛の幕末維新」開催中。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/kensei/kensei-tokubetsu.htm
お知らせまで。
投稿: 白井 | 2008/11/08 7:57:41
・書店で『銀の感覚』あとがきを眺め、勝ったあとの振る舞いについて思うところがありました。http://www.wako.ac.jp/sougou/blog/sakayori/2008/07/post_94.php
いい一日を。
・志賀卯助追悼展 ~7/13 @新潟県十日町 市立里山科学館 http://www.matsunoyama.com/kyororo/modules/bulletin/article.php?storyid=25
・知知夫国(秩父神社創建由緒)、和銅奉献1300年です。 http://www.chichibu-jinja.or.jp/saijin/index.htm
投稿: 白井 | 2008/07/11 6:28:04
時代が変質してしまった。ッテコトハ・・。質が変わったってコト?質感がかわってしまったってコト?茂木さんでもバランスをとらないと生きにくいって・・コト? 地球上の人間以外はきっとずっとずっと同じ次元を今も生きていて・・。たぶん人間たちを観つづけてきたのでしょうか?ARTがなにか橋渡しをするような気がしているのですが?どうなのでしょうか?
投稿: 井上良子 | 2008/07/03 12:32:35
“ふしぎだと思うこと これが科学の芽です。よく観察してたしかめ そして考えること これが科学の茎です。そうして最後になぞがとける。これが科学の花です。”(朝永振一郎)
あおいくんとせんとくんは、つるむことなく切磋琢磨する仲間でいられるでしょう。ttp://www.1300.jp/
人生の肝心を体現したようなあおいくん。しりあがり寿さんのような心持ちの人であれば、世界中の人と友だちになれる気がします。
投稿: 白井 | 2008/07/03 7:01:19
小俣さんの新しい机を見に行かれた茂木さん。
なんだか日記の雰囲気が親みたいです。。
子を見守るような…温かさ。ふんわり包まれて。
人生というチェス盤の不思議な符合…。
駒を動かすのは、人の手?コンピュータというのもありでしょうか?
でも…人知を越えたもの。これが一番しっくり来るように思えます。
投稿: 奏。 | 2008/07/02 19:47:08
こんにちわ
マルチチュードの事で、インターネットのルーター(中継器)が、ニューロンネットワークと情報通行の最適化で近い働きをするのではないかと考えています。たとえば、「ネジをしめる」→「ドライバー」とつながるときに、情報通行の最適化と関係しているのではないかと考えています。
Windows創世記の時、WinTechと言う雑誌で、しりあがり寿さんの作品を楽しませていただいた事を思い出しました。(^^)
投稿: 笑いのクオリアby片上泰助(^^) | 2008/07/02 16:49:38
ところで「新生児微笑」について、私も全く同じ事を専門家の方から伺った事があるのですが、何故か、忘れてしまい…スミマセン!それからギャグの笑いに直結することではありませんが、何年か前に有名な方がおっしゃっていた言葉で「泣くは修行!怒りは無知!笑うは悟り!」良い言葉だなぁ~と思い、心に刻みました。出来ることなら日々、笑って過ごしたいものです!最後に…田森様もアンブックスのファンなのですか?私の身近には男性ファンは一人としていませんでしたが、茂木さんと田森様の共通点は??? 何かしらおありなのでしょうね?!
投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/07/02 13:19:36
茂木さん、“昔へタイムスリップ”ですか?!私もこの頃よくあります。私の場合は「クオリア日記」を読ませていただくようになってから度々…。アンブックスの影響もあるのかもしれませんが…。あの本を身近に感じた時は故里の山河、同級生の顔、私にとってのレイチェルおばさんやステイシー先生が脳裏に浮かんできます。どうしてでしょうね?年を取ったから!とは思いたくないのですが…。やはり想起することでバランスをとっているのでしょうね。茂木さんは佐賀で大叔父様にお会いになったから、懐かしさに拍車がかかっているのかもしれませんね?!
投稿: 茂木さんの崇拝者より | 2008/07/02 13:00:44
人生のチェックメイトが死ならば、
手数の長短にも、
「究極の平等」が存在するかも〜♪
一手の読みに無限の広がりを
感じる瞬間がありますわん。
投稿: 亀井隆行 | 2008/07/02 12:29:07