ソニーコンピュータサイエンス研究所にて、
所長の所眞理雄さんと議論。
イノベーションの進み方が、
今後どのように変化していくか
について。
おおっ!
と覚醒し、元気になるような
思考のダイナミクスに包まれる。
東京工業大学大岡山キャンパス。
研究室のゼミ。
田辺史子が、ラットに
おける「エピソード記憶」
が「今から何時間前」という
形で記銘されているか、
それとも「何時」という
形で記銘されているかを
解析する論文を紹介する。
Episodic-Like Memory in Rats: Is It Based on When or How Long Ago?
William A. Roberts,1* Miranda C. Feeney,1 Krista MacPherson,1 Mark Petter,2 Neil McMillan,1 Evanya Musolino1
Science Vol. 320. no. 5872, pp. 113 - 115 (2008)

田辺史子さん
人間は発達したエピソード記憶を
持つが、それがどのように
ゼロから構成されているのか
ということは興味深い問題である。
カレンダーや時計という概念は
後から「発明」されたもの。
脳が進化する長い歴史の中では、
カレンダーや時計といった
数字の目盛りなしで
エピソード記憶は記銘されなければ
ならなかった。
田辺が紹介したような
ラットの事例から、
私たちが確固たるものとして
信じているエピソード記憶の
基盤が逆照射される。
続いて、私の担当。
まずは、
Winners don't punish.
Anna Dreber, David G. Rand, Drew Fudenberg & Martin A. Nowak
Nature 452, 348-351 (20 March 2008)
を紹介。
自らがコストを引き受けつつ
非協力的な相手が損失を被るように
するcostly punishimentという
オプションを囚人のジレンマゲームに
付け加えた時に、
それが協力性を醸成することに
つながるかどうかということを
検証した論文。
結論としては、costly punishmentは、
coorperationやtotal payoff を増加
させない。
だとすれば、costly punishimentは、
協力を促すというのとは異なる
理由から進化して来たのであろう。
例えば、相手を支配するとか、
階層構造を作るとか。
続いて、Thomas PinkのFree will
(Oxford University Press)の
中から、自由意志と因果的決定論
の関係について、
Incompatibility theory,
Compatibility theory,
Libertarian theory,
Scepticism
を紹介。
決定的に重要なのは、自由意志の
概念が因果的決定論と両立しうる
という考え方で、
また、量子力学や力学系カオスのような
非決定論の導入が、
私たちが直観的に持っているような
自由意志の概念を導くわけではない
という論点。
これは、自発性に興味を持って
研究を続けている野澤真一クンの
ためにやったような解説だった。
野澤クン、荒野を目指してガンバレ!
続いて、件の野澤真一クンが、
Unconscious determinants of free decisions in the human brain
Chun Siong Soon, Marcel Brass, Hans-Jochen Heinze & John-Dylan Haynes Nature Neuroscience 11, 543 - 545 (2008)
を紹介。

野澤真一くん
野澤クンは、Benjamin Libetの一連
の研究にとても興味を持っているが、
この論文はfMRIによって、右左の
ボタン押しの前兆となる脳活動が
従来よりも前から起こっていることを
示したものである。
もともと、力学系的なセンスから
言えば、ある時点において右の
ボタンを押すか、左のボタンを押すか
という決定に寄与するパラメータは
butterfly effectに見られるように
ずっと以前の時点にも存在し得る。
fMRIのような粗い状態把握においては
たとえば十秒前に前兆が顕れると
しても、実質的な意味では
どれくらい遡るかわからない。
また、右左というlateralityが
関与する場合は今回のような
結果が得られるかもしれぬが、
よりgeneralな場合
(たとえば、野澤クンがよく
出す「そうだ、これから海に行こう」
と思いつくという例で言えば、
「これから海に行こう!」なのか、
「これから山に行こう!」なのか、
「海のものとも山のものともわからない」
脳活動がいつ分離するか)
いやあ野澤クン、この問題は実に
面白いね。
ソニーコンピュータサイエンス研究所に
戻る。
白石哲也さんが招聘して下さった
東北大学の曽良一郎先生から
さまざまな精神疾患と脳内伝達物質の
関係について興味深いお話を
うかがう。
曽良先生、ありがとうございました。
薩摩と長州の両藩が
明治維新の原動力となったのは、
どちらもイギリスを中心とする
西洋列強と直接交戦して
その実力を知ったことが
きっかけだった。
日本は、文化的にはまだ
鎖国しているような気がして
ならない。
日本のインテリが西洋列強と
本当の意味で直接交戦するのは
いつのことだろうか。
所眞理雄さんとお話したのは、
そのようなことだった。
Sometimes, the advancement of science is based on a very simple idea. On one occasion, the British evolutionist Richard Dawkins and the American philosopher Daniel Dennett was discussing the significance of the theory of evolution. Dennett remarked that in a sense Darwin's theory was greater than the theory of relativity of Albert Einstein, in that it could account for such a wide range of biological phenomenon starting from a set of very simple principles. Dawkins agreed, but then added that in order to bring about the revolution of Albert Einstein, you had to be pretty smart. On the other hand, with the benefit of hindsight, Darwin's revolution appears to be so easy to achieve. "I mean, any fool can think of it", Dawkins said.
It is indeed remarkable how the central idea of the theory of evolution, in which random mutation and natural selection take central positions, escaped people's attention for such a long time before Darwin. If you look back on the history of science, you encounter many similar cases. A very simple idea remains unnoticed for a long time. Science is about the awakening of dormant simple ideas.
[56BOS]