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2008/04/20

よちよちは同じ

韓国に旅立つ日の朝、
歩いていて躓いて
左手を突き指をした。

中学校の授業でバレーを
やっていた時以来の、派手な
突き指だった。

それで、中指と薬指が
痛くて、重いものが持てない。

参ったなあ、と思いながら
羽田から機上の人となった。

さかのぼって金曜日。

杉並区の中瀬中学校で、生徒たちに
授業をした。

藤川章校長先生は、
「中瀬検定」を始めとするユニークな
授業を進めていらっしゃる。


藤川章校長先生と、「中瀬検定」のテクスト

生徒たちは本当に元気で、
活気に満ちていて、
心から楽しい時間を過ごした。

朝日カルチャーセンターにて、
林望先生と対談。

古典に通じ、英国にも造詣が
深く、総合的な知の輝きが
身体からにじみ出るリンボウ先生。

どの話題をとっても、その先に
さまざまな思索の糸が絡み合った
奥深い世界がかいま見えて、本当は
そこに入り込んで行きたいのに、
横目で通り過ぎながら、リンボウ先生と
概念世界を縦横無尽に疾走した。



林望先生と。(撮影 佐々木厚)

時間の経過を絵にしたら、
やはり髪が後を引いて
流れていくのだろうか。

金浦空港に到着したら、島田雅彦が
にやにや笑いながら「よう」と手を挙げた。

シャーマンに興味を持っている島田の、
はからいで
韓国随一のシャーマンの人に会いに
行った。

初めての韓国。
空港から車に乗って、着いたのが
そのシャーマンの人だったのである。

「神は美人を好む」と島田。
吉永小百合さんにどこか似ている。

さまざまな神像や仏像が置かれた敷地内を
歩いて、それから島田とシャーマンの
Seo Kyeong Wookさんに
インタビューした。

ひとしきり話を伺って、島田が、私の
方を指して
「それで、ここに座っているこの男は
どんなものでしょう?」
と聞いたら、彼女の表情が
一変した。

にこやかに笑っていたのが、急に
きりりとした顔になり、
流れるように話し始める。

通訳の林宰範さんが、どんなことを
言っているのか教えてくださった。

「この人は、30年くらい、同じことを
ずっと考えている人です。
一度始めたら、最後までそれをしつこく
やろうとする人です。
三年くらい前から、いろいろなことが
始まって、複雑で忙しくなっていますね。
二年後くらいから、きっと人生が
良くなるでしょう。」

内心どきりとした。
となりの島田を見ると、して
やったりという顔をしている。

「ここにいる作家はどうでしょう?」
と聞く。

Seo Kyeong Wookさんが、
島田を見る。

「この人は、二本足で歩く動物、
頭の黒い獣性の友だちには
恵まれていません。山を登ったり
孤独の中で、いつも何かを求めている。
しかし、人との関係に何かを求める
よりは、一人で模索する方が
きっと良いでしょう。」

島田は、曖昧な顔をしている。
どうやら、図星だったらしい。

シャーマンというものは、
一つの見事なバランスの上に
成り立っている。

脳科学的な説明をしようと
する場合でも、そのバランスが
もっとも大切となる。

正しいとか、正しくないとか、
そういう問題ではない。

島田がSeo Kyeong Wookさんの
ところに連れてきてくれたのは、
本当に素敵なことだった。


Seo Kyeong Wookさん、島田雅彦、林宰範さんと


Seo Kyeong Wookさんと

青瓦台、南大門の横を通り、ホテルに
チェックインする。

島田雅彦と、今経験したばかりの
シャーマンを巡る問題から発して、
縦横無尽に人間精神のことを語り尽くす。

何かが私たちを駆動して、記憶に残る
対談となった。

夕食は、当地で著名なSam won gardenへ。

通訳の林さんが言う。

「日本に最初に行った時、ラーメンを
頼んで、本当にラーメンしか出てこないので
びっくりしました。」

韓国では、何か頼めば、さまざまなキムチ
などの副菜が無料でついてくるのだという。

注文した料理以外に、こんなに!
というほどの料理がテーブルの上に
並んでびっくりする。
Seo Kyeong Wookさんの
お寺でいただいた昼食でも、本当に
たくさん出されて驚いたのだけれども。

ただ辛いというだけではない。
奥深い旨みがあって、辛さは
一つの句読点に過ぎないと知る。


Seo Kyeong Wookさんがご馳走してくださったランチ


Sam won gardenのディナー

ハングルを読むのにとても
時間がかかってしまって、
高麗大学で授業をしている
島田と一緒に、よちよち歩きの
子どものような遅さで車窓から
見える看板を読み上げる。

まさひこくんと
手こそつないでいないけど、
よちよちは同じ。

生まれたばかりの不安。
ときめき。
何も知らぬ、その白さがはらむ
内なる輝き。

赤ん坊のように感じる時、
世界は本当に大きく見える。

The significance of consciousness in its adaptive values is clearly in the domain of sensori-motor coordination executed in a spontaneous manner. The fact that sensory perceptions involved must exhibit phenomenal properties of qualia integrated under the umbrella of the subjectivity is at once surprising and revealing.
We tend to think of issues related to spontaneity such as free will in terms of the trajectory of "points", as in the discussion of determinism. However, the phenomenal aspects of subjective experience clearly indicates the necessity to incorporate wide-spread and distributed entities. How we can deal with the determinism or otherwise of such a "cloud" of processes is the key issue here. ([26])

4月 20, 2008 at 11:11 午前 |

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コメント

こんばんは。

韓国のその後。
お話し楽しみにしています。
最近、私のまわりでも韓国へ行った、これから行く、方々。
(いった事のない韓国、いいなぁ〜)と、思っていた矢先でした。

林望先生。
〜とは「衝動」と。
その意味バランスに心の奥底が波打つ。

まさひこ君とけんいちろう君(すみません・笑)の対談もぜひ聞きたいものです!。


クオリア日記。
毎朝、新聞が届くように日常のリズムになっていたようで。

更新された日記に、安堵したきのう!

投稿: 美容師 | 2008/04/21 1:03:53

林望先生との対談を拝聴させていただいたことが刺激となり、
早速、本居宣長の『うひ山ふみ』を買いました。
ついでに赤毛のアンのペーパーバックも買いました(笑)。

今から、類型化されない「ロンドンで戦える人間」を目指します!!

投稿: ちはる | 2008/04/21 0:05:05

茂木さん、こんばんは。

突き指はその後大丈夫ですか?お大事になさって下さいね。

さて、金曜日のリンボウ先生との対談、拝聴させて頂きました。
卒業以来、古典文学というものには全く触れてこなかったのですが、お二人のとても楽しく、興味深いお話しを大笑いしながら聴いていたら、もくもくと好奇心が湧きあがってきました。やはり日本人として、源氏物語等は読んでみよう、と。綿々と受け継がれてきた日本人の心の襞は、きっと私にも理解できるのではないだろうかと。

それにしても朗々と歌い上げるリンボウ先生は素敵でしたね。百人一首の歌一つとっても、あれほどビジュアル的に訴えるものがあったとは知りませんでした。茂木先生もとてもいい声をしているので、何か歌っているのを聴いてみたいです。

それにしても2時間、圧倒的な知識の波に、吸い寄せられて飲み込まれてしまうかのようで、本当にあっという間した。茂木先生の、いつものプロフェッショナル流インタビュー形式もとても楽しく、このような対談の度にいつももっともっと長くお話しを伺っていたいと思ってしまいます。

対談後、茂木さんの著作にサインを頂き、その際対談中とはまた違った茂木さんの一面が見えて、なんだかとても嬉しかったです。本当にありがとうございました。

ところで質問なのですが、茂木さんは幽霊とかは脳内現象の一つで信じてらっしゃらない、とどこかでお聞きしたのですが、シャーマンとか、予言を託される巫女さんなどのお言葉は、どこから来ると思いますか?
知り合いに所謂チャネラーと呼ばれる人がいるのですが、彼女がどこからか聞いている声は脳内現象にすぎないのでしょうか?

投稿: 楠 | 2008/04/20 23:15:44

こんにちわ

(英語が苦手なため、よろしくお願いします。)
赤ちゃんの時は、泣くしかなかったのが、ハイハイが出来るようになり、言葉をしゃべるようになる、自由意志とは、獲得していくものではないでしょうか?


韓国の料理店は気前が良いですね、日本で、頼んでいない品が出てくると、不安になりますね。(^^)

投稿: 自由意志のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/04/20 15:04:00

突き指された中指と薬指の調子はいかがでしょうか。うわぁ〜…と言いながら、読ませていただきました。

…痛みを堪えながらクオリア日記を書かれている茂木さんの姿を想像し、痛みにゾクッと…。


初の韓国旅行、お楽しみの様子が伺え、私もワクワクしてしまいました。


突き指、早く治ると良いですね。

投稿: 奏。 | 2008/04/20 14:09:44

2年くらい前、さまざまな「シャーマン」の映像記録を、何処かの博物館で見たことがある。

遠いとおい昔、人は様々な顔を見せる自然を畏怖しているうちに、神というものを自らイメージし、その神と人間界とを結びつける為に、シャーマンという名の“神職”を生み出したのだろう。

人間が、自然を見つめているうちにイメージした神への信仰から、様々な祈りや教えが生まれたのだ…。

それにしても、韓国でお二人が出会われたシャーマンの方は本当に凄い。ほとんどお二人のことを見事に言い当てていらっしゃる。

如何してそんなに的確に他者のことを言い当てられるのか、私もとても不思議に思います。


そして沢山のお料理。小さな島国にいるだけでは、韓国の食世界の豊かさがどんなものか、わからないものですね…。

私には韓国旅行の経験はない(東京圏から出たことは滅多にない)けれど、かの国には本当に奥の深い豊かな文化が形作られていることを思えば、もっとお互いに行き来し、いろいろなことを学びあうのが、何時までも反発し会うよりはよっぽどいいことなんだなと思う。


投稿: 銀鏡反応 | 2008/04/20 13:38:22

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