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2008/04/22

片道切符の旅

どうも、移動中はうとうとと
眠ってしまって、
その何もしない感覚が
本当に心地よい。

朝の飛行機でソウルの金浦空港から
済州島へと来た。

今回の旅程は、すべて、島田雅彦が
決めている。

「済州島は、韓国民にアンケートを
とると、住みたい場所一位のところ
なんだよ」
しきりに島田が繰り返す。

空港で外に出ると、強い風が
包んだ。
ソウルよりもむしろ寒い。
しかし、さわやかである。

「済州島は、風と石と、女が
多いところと言われているのです。」
と林宰範さん。

林さんの後輩で、プログラマーを
しているという姜さんが加わった。

至る所にある小高い山を背景として、
石積の壁が歴史を伝える。

島田雅彦も眠いらしく、ふと横を見ると
うとうとしている。

島田とふたり、時々うとうとしながら
済州島を行くなり。

済州島には、世界自然遺産が三つある。

標高1950メートルで、韓国最高峰
(北朝鮮の白頭山を除く)の
ハルラ山。拒文岳溶岩洞窟。そして、城山日出峰。

 溶岩洞窟は全長7キロメートル以上あり、
人間がつくったかのようなトンネルが
延々続いている。

 入り口から一キロだけ行くことが
できる。

 地底に降りると、不思議な沈潜の
時間が訪れる。

 大いなる安らぎの国。

 一番奥で、中野義樹さんが
ライティングが難しい中超絶技巧を
駆使して、島田と私の写真を撮った。

 日出岬は、海に突き出した半島に
カルデラがある。

 一気に登ると、内側のなだらかな
斜面にうさぎがいた。

 降りてくると今度は花に迎えられる。

 島田雅彦と二人、花に包まれて
海を見やった。



 車は再び動き出し、
次に降ろされたのは岩の海岸。

 「ここで、オール・インがロケされた
んだよ!」
と島田がうれしそうに言っている。

 韓流ドラマで、説明してくれた
ところによると幼なじみの男と女が
ディーラーとギャンブラーになって
再会し、最後にこの海岸で結ばれる
らしい。

 島田は、全話見たらしい。

 「あの教会をバックにとってくれ」
というので、島田の写真を撮る。

 「そのディーラーの女の子は、金持ち
なのか?」
 「いや、孤児で、教会で育てられたんだ。」 
 「じゃあ、教会に住みながら、ディーラーに
なったのか?」
 「そうなんだよ!」

 岩に、美しくひとり鳴く孤独な鳥がいた。
 海を見て、何を想っているのだろう。
 その姿がとてもゆかしく、一緒に
しばらく佇んだ。

 

 夕食は、豚の焼き肉。
 暑いというので、島田がタンクトップに
なった。

 

 旅も終わり。
 
 二人で振り返る。

 思えば、岸尾昌子さんの肝いりで
まずはオペラを見て、それから出雲で
鉄を打ち、さまざまな言語を聴き、
焼き畑農業を見学し、そして韓国へと
歩き継ぎ、語り継いできた
「すばる」連載『クオリア再構築』
もこれにてとりあえずの完結。

 旅に出ると、人はいつかは
故郷に帰るものだと思っている。
 しかし、本当は、人生とは
決して元に還ることのない
片道切符の旅なのだ。

When seemingly out of the ordinary events related to mentality surprise us, they only do so by invoking an appreciation of the primitive and often brutal facts of consciousness. A prophesy, when it is apparently fulfilled, might astonish a would-be believer. However, a prophesy can serve as one only so far as the semantic intentionality of its constituent words are assured, thus touching upon the very basis of mentality. A paranormal experience might seem to be surprising, but we should not forget the fact that an experience is surprising in the first place in that it exists at all. ([28])

4月 22, 2008 at 06:18 午前 |

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コメント

おはようございます!

人には、人が生きている意味がそれぞれあるという。

楽しみや苦しみも後々の意味を悟らせてくれるもの。

…そう考えれば、今のこの苦しみや悩みも受け入れよう。ただ一人では、寂しいな。傍にいて、楽しいことがあれば一緒に笑い、苦しい時は一緒に悩んで涙して。そんな人がいてくれたらと思う。

人生、楽しいことだけって云うことはないと思う。苦しい時もあって。それらを二人で味わいながら、歳をとっていけたら幸せだなぁと思う。

これが私の生きている意味のように思う。
そうなりますように…。

投稿: 奏。 | 2008/05/02 6:31:54

きいろのキリンさんは、きいろい月に上るんですね..

感触のよいものが大好きで
バルーンジラフの肌触り、だんとつですね。
いつも触って悩んでしまうので、これは大きな喜びでした。

こういうのは幼児性が抜けていないとかなんとか...(笑)
まえに誰かが言ってました。

色を見ていたら、なんとなく毒きりんのことを。。
どこに行くのでしょう..


お二人と、鳥と。
とてもよいお写真ですね。

 >人生とは決して元に還ることのない
  片道切符の旅なのだ

このことばに衝撃を受けて、 (よき方向の)
しみじみとして、
久しぶりにコメントがしたくなりました。


脳スペシャル、楽しみにしています。
大きな頭の人形みたいな...博士でしょうか。


お忙しさが戻られているご様子、お体どうぞ大切になさってください..

投稿: M | 2008/04/24 2:59:07

茂木さんは島田雅彦氏とお友達なのでしょうか?
島田氏の新聞連載小説「徒然王子」にはまっております。
久々のマイブーム!

投稿: margaret | 2008/04/23 23:29:19

茂木先生 お帰りなさい!
突き指 ほんとにお大事にしてください。
島田雅彦さんとの韓国は 行く先々で 美人と会えたのではないでしょうか なんだかそんな気がしています(笑)それとお聞きしたいのですが 韓国の女性と日本の女性となんとなく おおまかにでも違うようなところってありますか?もちろん個人個人ではありますけれど… 脳の検知から女性の美について研究しているようなこと雑誌で拝見したので 韓国の女性から受けるクオリアは どんな感じだったのでしょうか?と思いました。この質問は島田雅彦さんにしたほうが 良かったかもしれませんね(笑)またどこかで韓国のお話し楽しみにしています。

投稿: 平井礼子 | 2008/04/23 14:07:21

茂木さん、お帰りなさい!

島田さんとの楽しいご道中、韓国という風土の発する、さまざまな素晴らしいクオリアに出会われたことと思います。

済州島の穏やかな、美しい風景。まるで目に沁みるようです。

『すばる』の「クオリア再構築」最終回、楽しみです。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/04/23 5:20:57

チェジュドのお写真、楽しませて頂きました。
お花畑で海をバックに撮られたもの。
オール・インで撮影に使われた教会等など。

ありがとうございます(^ ^)

何ともいえない懐かしいような温かな気持ちを感じつつ。。

投稿: 奏。 | 2008/04/23 0:30:13

楽しい旅の様子、写真を拝見しているだけでこちらも楽しくなってきました。島田さんの寝顔とタンクトップ姿はグッーーコォーです。。。
花畑でのツーショットも。。。かわいい私も旅に出たくなりましたです。ひとりはさみしいかな~。
今日のブログはすらすら読めました。(日本語だけですが…)無事の帰国お祈りします。失礼します。


投稿: バンダーラ | 2008/04/23 0:03:31

茂木さん、おこんばんは。

片道切符!!
ここ1週間あたしの頭の中/ミュージックリスト。
本田美奈子さんの
『one way generation』が流れている。突き進むしか知らなかったあの頃の「いけいけソング」だった。
まだまだ今よりも不安定で、でも今より向こう見ずで、なぜかとても不機嫌だった。よく口ずさんだ曲。懐かしい。
♪とまらないで
自分の道を
少し間違ってもいいから
脇目もふらずに♪
いま、歌うときなのかも。

投稿: 柴田愛 | 2008/04/22 18:34:24

韓国の旅、お疲れさまでした。
茂木先生は、
島田先生ファンの女子の心をようく理解しておられます!

投稿: とろ子 | 2008/04/22 17:16:17

こんにちわ

「日出岬、不思議で面白い地形だ!!」、と、思い、グーグルアースで探しました。解像度が悪く、詳しく分からず残念!!(^^)

投稿: カルデラのクオリアby片上泰助(^^) | 2008/04/22 13:52:36

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