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2008/04/09

偉大な先人から魂の感化がありますように

研究室合宿二日目の朝、
目覚めると、激しい雨だった。

隣りに眠っていた柳川透はいなかった。
呆然として、お風呂に入った。

部屋に戻ると、柳川がいた。
なぜか、柳川も呆然としている。

「海に行ってきたんですよお」
と柳川。
「横なぐりの雨でしたよお。」
さびしそうな柳川。

打ち寄せる波の音を聞きたいと、
嵐の中をひとり海岸まで
行ってきたのだろう。

その柳川と近くのコンビニまで
買い出しに行って、
カップの味噌汁とおにぎりを一人
二つずつ買ってきた。

 豚汁が食べたかったのだけれども、
全員の分はなくて、あとはなめこ汁と
あさり汁にした。

「あのさ、豚汁は150キロカロリーで、
なめこ汁とあさり汁は50キロカロリー
なんだよな」
と言ったら、野澤真一が、すかさず、
「じゃあ、茂木さんはなめこ汁ですね」
と言った。

豚汁が食べたかったんだよ。

なめこのぬるぬるは何のために
あるんだろう。

江ノ電で鎌倉に出る。

そうだ、と思い、円覚寺で
小津安二郎さんのお墓に皆で
詣でる。
「無」と書かれた墓石を
前に、頭を垂れる。

続いて、東慶寺に小林秀雄さんの
お墓に詣でる。
私はともかく、この学生たちに
偉大な先人から魂の感化があります
ように。

大船に出て、旧大船撮影所が
あった所の前にある「ミカサ」
に学生たちを連れて行き、
「君たち、ここでお昼をおいしく
食べなさいね、カツメシというのは、
映画の人たちが忙しくて、短い
時間に食事をとれるように発明
されたんだよ。」
と言い残して、一人大船駅に
戻った。

強風で、東海道線が止まり、
湘南新宿ラインもメドが立たない。

「困った」と思いながら、京浜東北線
で移動した。

予定より25分遅れてNHKに到着。
みなさん、すみませんでした。

『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の打ち合わせ。
つつみだディレクターの担当で、
工場再建のお話。

豚汁を食べられなかったし、
強風のせいでお昼も食べ損なったので、
打ち合わせが終わる頃には
エネルギー切れ。

有吉伸人さんと「めん亭」に
行く。本当は「ばらえ亭」というのだが、
私はどうしても「めん亭」と
言ってしまうのである。

餃子に有り難い滋味があった。

赤坂の全日空ホテル。
講談社「小説現代」の高橋典彦さんと
お話しする。

サントリーホール。
三枝成彰さんの新作オペラ『悲嘆』の
上演。

入っていくと、真っ先に
島田雅彦が目に入った。

「おう!」
と手を挙げながら、もう口元が
にやついている。

「あれ、韓国もう行ったんじゃ
なかったっけ?」
「まだだよ。」
「そうか、じゃあ、君が韓国に
行った直後にぼくも行くんだなあ」
「そうだよ。」

「悲嘆」は、226事件に取材した
モノオペラ。

台本はサー・アーノルド・ウェスカー。
ソプラノは中丸三千繪さん。

三枝さんは、現代日本のさまざまな
困難な状況を引き受けながら、
芸術のために闘っている。

Opus Magnumはこの作品と、
思い定めて、登攀を続けて
いるのだ。

少しだけ、と思って出た
お祝いのパーティーで、
結局ずっとしゃべっていた。

三枝さんは、自分こそが
祝福されるべき存在なのに、
会場に入ってくるや
マイクを持ち、「ささやかなパーティーですが」
とホストに徹している。

頭が下がる。真摯な努力の総量
というものを、人は必ず見てくれて
いるものである。

 いろいろな人にお目にかかる。
 林真理子さん、河口洋一郎さん、辰巳琢郎さん、
高野孟さん、下村満子さん、河原敏文さん、
江原啓之さん、布袋寅泰さん、
本当にたくさん。

 これも三枝さんの人望というもの。

 島田雅彦がいない。これは、
逃亡したな、と思っていたら、
 パーティーも終わりの頃になって
ひょいと顔を出した。

 「あれ、どこ行っていたんだよ!」
 「いや、人が少なくなるまで逃げてよう、
と思って、そこで編集者とビールを
飲んでいた。」

 愛すべき男、島田。

 こいつと交代だ、と思って、
ふいと外に出た。
 もう、雨はだいぶ止んでいた。


Humans have evolved as the result of the long history of biological succession over millions of years. As humans have gained deeper and more extensive knowledge about the universe, we have come at crossroads. We are on the verge of understanding the makeup of our own mentality, where some intractable problems await to be tackled.
Ever since the maturation of civilization, when we think of ourselves, we automatically and almost unconsciously associate the mirror image, especially that of the face, with the self. We look into the mirror to search for an assuring image of oneself. Mirrors have played important roles in the history of the evolution of the human mind. Only four species so far have been reported to reliably pass the mirror test [Gallup reference]--humans, chimpanzees, orangutans, and dolphins[Reiss and Marino 2001].
Understanding consciousness is essential in understanding our own peculiar condition. To solve the mind-brain problem is then similar to inventing a brand new form of mirror. How to design the mirror in an abstract and in-depth sense is the task awaiting those trying to solve the mind-brain problem.([16]) 

4月 9, 2008 at 08:53 午前 |

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コメント

茂木さん♪おはようございますo(^-^)o

なめこのヌルヌルは、きっと、なめこから私たちへの愛なんですよ★
なめこをより美味しくするためのヌルヌルかと思うと、私たちへの愛としか……ウッ(T^T)
なめこからの愛は、有り難く頂くと、きっと茂木さんのパワー倍増ですよ★

あと、もうひとつ推測されるのは、なめこの自己主張です!
私はなめこである…なめこのアイデンティティなんですよ。

そう考えると、なめこがいとおしくなって、毎日なめこ汁でも大丈夫かもしれません。

冗談のような本気?!コメント(笑)でした(笑)

投稿: ももすけ | 2008/04/10 5:50:21

茂木さん、おはようございます。
まだ夜明け前。
心地よいリズムで雨音がします。

『クオリア日記』
怒ったり、楽しそうだったり、憂いていたり喜んでいたり、さまざまに茂木さんが感じた出来事の一部を切り取ってみせてくれています。茂木さんの感じるパワー、本当にすごいな。

さきほど人に求めないとコメントしたことと矛盾しますが、茂木さんにずぅっと人間でいてほしい。超人になってほしくない。
あたしは矛盾を抱えたまま人間やっていきます。

投稿: | 2008/04/10 4:37:17

こんにちわ、二度目の投稿失礼します。

前回のこのブログで、受容体の話が出ていましたが、ニューロンの受容体は、脳内伝達物質で情報をやり取りしています。最近TVCMで、耳鳴りが止まる薬があるらしいです。そこで、たとえば、青赤緑の内、青の光が見えなくなる薬が発見された場合、受容体と脳内伝達物質がクオリアをつくる大きな要素の一つになると考えられないでしょうか?

投稿: | 2008/04/10 4:20:30

初めまして。
とろ子と申します。

私は茂木先生のファンであり、
島田先生のファンでもあるので、
お二方が友人同士であるとは、ビックリです!

茂木先生の言葉は、私には、
本によっては難しかったり、
逆に読んだだけでドーパミンが出て
勉強がとてもはかどったりします。
ありがとうございます!


投稿: | 2008/04/10 3:04:32

嵐の中を海へ。

思い出します。
夏休みにいつも田舎(高知県)に帰っていました。
必ず一つは台風や低気圧に出会い、わざわざ、嵐の海を見に、
堤防に行きました。雨が小降りになると、堤防は、北斎の絵に
でてくるような力強い、高波見物をする人があちらの路地から、
そちらの路地から、ざわざわと集まってきます。

堤防に立って竜馬の様に、何かに思いをはせていたように思います。

今は、侵食の影響で波が小さくなっていますが、あの当時の波は、
本当に怒涛と言う言葉がピッタリの、今にも龍がでてきそうな空、
その風景は忘れることができません。

そして、傘を折り、ビショビショに濡れながら堤防から帰った私が、
おばちゃんに怒られた思い出も・・・。

鎌倉と先人と言えば・・実は。
鎌倉の由比ヶ浜から名前の由来を頂いて由比乃と言う人が鎌倉時代に居たのですが、その女性にあこがれて、娘に、「由」と言う文字を一文字つけちゃいました。

オペラですか・・。
偶然ですが、ドクターからドクターストップがかかるのが嫌でドクターに
相談しなかった、音楽教室の発表会の出場のことで今日とうとう相談にいったんです。ドクターいわく、「(音楽の)先生が、それだけ薦めるならプログラムに名前だけ載せてもらって、
でれないようだったら、体調不良のため出演が中止となりました。と言って
貰えばいい。いろんなことを体験しなさい。」

記憶力が無くて歌詞が覚えられないと言うと、教室の先生は楽譜を見ながらでもいいと、そこまで言ってくださっているからこそ、断り続けては、「私だってでたい」と家で泣くという日々がドクターの言葉で涙ポロリに変わり「もっと早く相談すればよかった」。で終わってしまいました。

でも、嬉しいのか、悲しいのかよくわからない感情でした。
怖いですよね。2月に習い始めたばかりだし、200名ぐらいの小ホール。
想像もできなかった世界に一歩進んで行くようで、この先何が、私を待って
いるのでしょうか?臆病者の私は、今はただ、怖い。
あぁ。そうだ。 あの時の堤防に立っている自分に戻ればいいのかもしれないですね。

パートはソプラノ。
この間、ソの発声ができました。ちょっぴり嬉しかったです。
目指すは、キャサリン・バトル・・なんちゃって冗談です。(笑い)

投稿: | 2008/04/09 23:12:52

今日の文章はとっても面白かったです。
いつも面白いんですが、さらに面白かったですw
トン汁食べたかったのに、柳川さんの一言結構傷つきますね。
失礼ながら笑ってしまいました。
なんでも言い合える関係っていいですね。
全日空ホテルに泊まってサントリーホールで生オケを聴いた後食事してそのまま寝れるっていうの憧れてます。
一度止まってみたいホテルです。
お金がないので、サブウェイで上演始まる前に食事して
コンサートみてから、住友ビルかな?のしゃぶしゃぶ屋さんで軽く食事して帰宅するのが主になってます。
(いつものコース)
サブウェイはサントリーホール行った時に初めて行きました。
かなり好きです。
サントリーホールの音の響きとっても最高です。
オペラもされるんですね。
川崎のホールは行かれた事ありますか?
こっちに来てからクラシック好きになって色々行ってます
私のお気に入りホールはサントリーホールと川崎かな。
まだbunnkamuraとNHKホール行ってないのでどれがいいとはわかりませんが。
新宿に住んでいた頃オペラ座っていうのかな。
行っとけばよかったな・・
今、シャルル・ミュンシュさんの幻想聞いています。
ブラームス1番、ねっちょり系が好みです。
今度買ってみようかな。
ためてためてためる~ブラ1が好きかも☆
茂木先生はどんな音楽が好きですか?
コンサート行きたいな~・・
絵画や音楽と接している時って心が和みます。

投稿: | 2008/04/09 18:31:10

こんにちわ

(英語が苦手なので、よろしくお願いします。)
モチを食べている人を見た場合、モチを食べた事のない人は、食べると言うミラーニューロンが働きますが、モチを食べた事のある人は、食べると言うミラーニューロンと、モチの食感のミラーニューロンが働くと思います。
つまり、心の経験が多い人ほど、心のミラーニューロンが多い、と、考えられるのではないでしょうか?

最近、音楽の勉強をしているのですが、記憶の中の曲をキーボードで弾くと言う事をやっているのですが、和音が難しい、「これが、絶対音感の壁か?」、と、思っているしだいです。(^^)

投稿: | 2008/04/09 14:32:12

今日の日記を拝見し、このような考えが、ふと浮かぶ。

鏡=深層心理=私達一人一人が持っている内面の宇宙。
それに加え、私自身としては、揺らぎない心=“相変わらず”の毎日。
ということが浮かぶ。

相変わらずの毎日が、とても嬉しい事だと感じた時のクオリアと、アハ体験が私にはあった。


相変わらずという言葉のクオリアに、アハ体験した方、私の他にもいらっしゃいますか??

投稿: | 2008/04/09 11:43:29

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