世界の大三角形
椎名誠さんと会った直後だけは、
腕立て伏せと腹筋をする
(椎名さんは、それぞれ200回ずつやる。
夜寝る前にやる)と発作的に
思って実行する人生を送ってきた。
2月上旬に偶然お目にかかって以来、
今回だけはなぜか続いている。
時々走ってもいる。
なぜか、気分は中学校の部活の
ようになっているんだなあ。
「空気イス」こそしないけれども。
近くの公園のビオトープに、
二日前の朝、はじめてアメンボの
姿を見た。
近くの枯れ葉の下で越冬して
いたのであろう。
モンシロチョウが飛んでいるのを
今年初めてみた。
お前は偉いなあ、
とぼくは声をかけたくなった。
サナギのまま、どこかの片隅で、
冬の寒さに耐えていたのである。
こうして羽化し、オレンジ色の分子が
増えてきた空気の中をはばたく
ことができるのは、一つの奇跡である。
その気になってみれば、
この世は至るところ奇跡に満ちている。
ものが安定してずっと同じままに
存在できるという当たり前の事実で
さえも。
モンシロチョウが春飛ぶのを
子どもの頃から何回も見てきたが、
そのかけがえのない奇跡を
胸に深く刻み込んだ。
意識の「今、ここ」には
明白な時間の非対称性はない。
記憶のシステムにおいては、
「過去」と「未来」についての
明らかな時間の非対称性がある。
なぜ、私たちは「過去」のみを
覚えていて、「未来」を覚えていないの
か。
熱力学の第二法則と結びつけて
きちんと議論した明確なロジックは
存在しない。
物理学においては、統計的法則である
熱力学の第二法則に加えて、
量子力学における波動関数の収縮
という明らかな時間の非対称性がある。
ミクロな時間の非対称性、
マクロな時間の非対称性、
そして意識はどのように結びついて
いるのか。
意識は、ミクロであり、しかも
マクロでもある現象である。
意識、熱力学の第二法則、
波動関数の収縮。
この「世界の大三角形」をいかに
解くか。
([6])
昨日走っている時に思いついて、
ばかだなあ、と思ったが、
地面に手をついて腕立てふせをした。
通行人が見たら、どう思うだろう。
大地そのものに自分の身体を
ぶつける。
手のひらが土だらけになって、
ぼくははははははと笑った。
パタパタと払いながら、走り続ける。
土がつく。幸せな洗礼。
3月 28, 2008 at 09:06 午前 | Permalink
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パイレーツでメジャーに挑戦していたが、
昇格はないと、告げられ現役を引退することを、
決意したと、昨日TVで報道された。 [続きを読む]
受信: 2008/03/28 9:37:51
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コメント
茂木さん、おこんばんは。
『意識、熱力学の第二法則、波動関数の収縮。この「世界の大三角形」をいかに解くか。([6])』←(この通し番号、あたしも気になっていました)
解が気になります。わからないんだけども知りたい。
投稿: 柴田愛 | 2008/03/30 18:33:18
>記憶のシステムにおいては、
「過去」と「未来」についての
明らかな時間の非対称性がある。
なぜ、私たちは「過去」のみを
覚えていて、「未来」を覚えていないの
か。
非対称性と言う意味がわからないので、文書を読みきれていないので、
内容的に理解できていないかもしれませんが、「未来の記憶」と
言う言葉で私のこころが腑に落ちた経験が一度だけありました。
友人に「予知が一度だけあったけど、、、だけど、あれを予知って
呼ぶのかな、、、なんか違う、、、でも、、、未来のことだったし」と。
その不思議な体験には、未来予知よりも「未来からのフラッシュバック」と
言った方が本当にピッタリします。
でも、、でも!そんなことあるの?!って、体験しながら信じられないし、じゃぁ、、、、じゃぁ、、、。
わかんないです。
昨日の共感者の方のように、自分を知ることができたらどんなに安堵な
毎日を過ごすことができるだろうと思います。
でも、私の体質は、殆どが一度か二度のことばかり、解明などできるはずも
ないですよね。
変わった体質の持ち主ってことで生きてます。
脳科学の情報いつもありがとうございます。
それなのに略レスみたいなもので申し訳ないです。
昨日の日記もまだ読みきれてないので、明日の休みにゆっくりと
読ませていただきます。
投稿: あすか | 2008/03/29 7:14:16
未来への希望は、はかりしれない。
軌跡の足跡を振り返ったとき、歩んできた歩幅を胸へと刻む。
その、重さを忘れてはいけない。
いま、ここからの始まりが、誰のせいでもなく自身がえらぶ未来。
えらばなかった事の重さに潰される時。
迷いで、視野にはいるすべては灰色の時。
未来への喜びを想うことは、
人知れず、いまここからを歩みはじめる。
投稿: 美容師 | 2008/03/29 1:35:41
こんばんは。
私は大抵の運動は、縄跳びでもマラソンでも、それらは「よし、続けよう!」と思って始めても、途中で根気が途切れる為、ほとんど続いた験しがなく、唯一何故か続いているのは、土曜日、半ドン仕事が終わったあとにする「街歩き」なのです。
今日は朝から雨だ、と前日の予報で言っていたが、昼間は打って変わって温かい春の日が照り、桜も一層ふわりと雲のように咲き誇りつつある。
こんな日は本当に、何処かへ出かけて、うすピンクの桜や油菜の鮮やかな黄色、紫花菜の優しいラベンダー色に出会いたくなる。
夕方になり急に北風が来て冷えこみ、雨がパラパラと振ってきたが、程無くやみ、今は道路も乾いている。
春の天気はよくいわれるように猫目のように変わりやすく、それだからこそ今この地上に生きる全てのものたちが、命を新たに出来るのだ…。
そんな春の明るい暖色の気配を感じる時、まだ見ぬ白紙の未来が限り無く広がっていく思いがする、希望という名の、弾むような喜びの感情を伴って。
去年の4月~5月頃か、目黒不動の近くにある「林試の森公園」を訪れた際、公園の奥まったほうにある池を覗きこんだら、黒々としたオタマジャクシがいっぱい、元気に泳いでいた。
今思うにそれは恰も、沢山の四分音符が水の中で蠢きながら、音にならないシンフォニーを奏でているようだった。
未来のカエル達は、既に幼児の頃から、音楽のセンスをかいま見せている(?)のだなぁ。
p・s・腹筋と腕立て、これからもがんばって続けてくださいね…!
投稿: 銀鏡反応 | 2008/03/28 20:41:27
茂木さん,おこんばんは。
桜がいっせいに花を咲かせ,自然のパワーに少々気圧されてます。寒い冬の間,花開くのを信じてこのときを待っていたのかなと,あたしまでココロときめきます。
小雨がぱらついてきた
今夜は花冷えだそうです。
昨夜,クオリア日記2005年12月のほろ酔いにコメントが寄せられていたのでタイムトリップ。読みました。
同じ茂木さんが書いたものだろうか?!と。。差異がなんであるのか,わからなかった。そんな驚きがあった。
投稿: 柴田愛 | 2008/03/28 18:30:56
初めまして、こんにちは。
「無事これ名馬」健康が一番ですね。
私も「意識」にはとても興味があります。
でも、もしかしたら、、、
人間には「意識」を解明するためのパーツが
もともと装備されてないのでは、、
と、思う時があります。
これからも元気にご活躍ください☆
投稿: 亀井隆行 | 2008/03/28 14:09:46
こんにちわ
人間の場合体温が下がると、意識を失いますが、変温動物の場合、気温および、体温が下がると動作が鈍くなります。この場合、熱力学の第二法則、波動関数の収縮、意識と関係しているのではないでしょうか?
東京より南にある、愛媛県では、桜はまだ、つぼみです。東京の桜の開花が速いのは、ヒートアイランド現象でしょうか?(^^)
投稿: 変温動物のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/03/28 12:04:05
本日のクオリア日記と昨日のクオリア日記から投稿された皆さまの言葉(の中から少し)をノートに書き写す。
噛み砕いて噛み砕いて、考える。
ここ最近、コメントをさせて頂くのに2回を要する。
何故かな?と自分なりに考える。朝の最初に読むクオリア日記と一日の最後になって感じるクオリア日記へのクオリアが少し違い、それを勝手ながら書かせて頂きたかったから。と、行き着きました。
温かいなぁと。一緒に頑張ろうと。温かな気持ちになった。
さて、今日は甥っ子達を連れて、何処へ行こう。夕飯は、何にしようかな?
ドキドキ、ワクワク、ウキウキです。
投稿: 奏。 | 2008/03/28 10:50:15
茂木さん、おはようございます♪
何故未来を覚えていないのか。
量子力学などの難しいことは分かりませんが、このお言葉に閃光が(☆o☆)!!
ラフマニノフは大きな失敗を体験し心の病になった。しかし『次は大成功を収める』と催眠療法の暗示の力により、名曲ピアノ交響曲2番を書き、演奏会において大成功をおさめた。
これは本来あるべき未来の姿を思い出し現在にたぐりよせることに繋がるのではないでしょうか…
多くの人が過去に捕らわれ今を見失うなら、未来を思い出し、こうあるべし!という強い信念の元に行動していくなら、過去に捕らわれ過ぎることはないのかも!
難しいとは思いますがやらねばならぬ、という時は誰にもあるわけで。自分の生まれた意味を形にするなら、我が心に刻み込まれた良きDNAを読み解き、それを手掛かりに未来を創造していくしかないのかもしれません。
飛躍しすぎでしょうか(笑)でも書いていて元気出てきました(笑)
茂木さん、いつもありがとうございます♪
投稿: ももすけ | 2008/03/28 10:48:37
なんて素敵な文章。音楽に酔ってる時と同じ気持感覚になる。おととい、ついに見付けてしまった。江原さんと茂木さんの対談本。そして、生きて死ぬ私。書店でちょっと立ち読みしたら、熱い気持に触れ合った。今日の茂木さんのこの文章そのままの感じがした。だって、情景や、土の匂いや、蝶や、そして、手の平に土や石ころのアトがついてた子供の頃のままの映像がうかんできたのだから。朝ドミンゴを愉しんだので、脳が活性化したのかしら。そして、しばらく振りに、シューベルトの即興曲をなぞってみたくなって、恐る恐る、対話を試みました。
投稿: ぶらんか | 2008/03/28 9:55:43