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2008/03/17

「受胎告知」

六甲の山並を見つめ、
春の息吹を感じながら
知性というものが胎動である
ということを考えていた。

ああ、そうかと思った。
新しいアイデアの端緒が
脳の中に生まれた瞬間のことを
記述するメタファー。


想念の端緒は、つまりは
「受胎告知」である。


The Annunciation by Leonardo da Vinci

その瞬間、天使ガブリエルがひざまずき、
新しい想念という生命が脳内で
動き始めたことを伝えるのだ。

1994年の2月、電車に乗っていて
「クオリア」の問題に気づいた時、
私の中で一つの想念が生まれた。

それは有機体としてうごめき、
今でも育ち続けている。

我が生涯の最大の出来事。

あの時、電車の連結部分で、
天使ガブリエルは私の前にひざまづいて
いたのだろうか。

英語では、受胎することも考えを
思いつくこともどちらも"conceive"という。

想念が次々とつながり、広がっていく。

東京へ。

黛まどかさんとの
対談。

黛まどかさんの大ファンである
電通の佐々木厚さんもかけつける。

黛まどかさんは、最近、メールマガジンでの
配信時にも大きな反響を詠んだ
「生きるための力」を
与えてくれる古今の名句のアンソロジー
『あなたへの一句』を出版されている。

「俳句」を読むことができる
環境についての、黛さんのお話が
面白かった。

 生活のある場所でなければならない。
 人工的な設いの庭園などは、
案外俳句を詠むことができない。

 俳句は、一つのway of lifeであり、
俳句を詠むことができるような生活を
続けている限り、「日本人は大丈夫」
とまどかさん。

 自分のやっていることに
命を懸けられない人は
許せないとまどかさんは言った。

 まどかさんとの対談は、
角川書店から6月頃に出版される予定。

(photos by Atsushi Sasaki)

 チベットで起こっていることに
重大な関心がある。
 
『プロセス・アイ』 
にも書いたように、この問題についての
私のスタンスははっきりしている。

http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2005/12/post_d8d3.html 

新幹線の中で、Japan Timesの記事を
読みながら、全ての人間にとっての
普遍的価値について考えた。

多様性の背後にある普遍を志向して
活き活きと生きる時にこそ、
人は「受胎告知」に出会う
ことができる。

 富士山がくっきりと見えた。
 その姿は大きく、神々しく、
どこか怖ろしさを秘めているようでもあり、
 目を離すことができなかった。

3月 17, 2008 at 07:21 午前 |

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コメント

はじめまして、2月よりブロガーの仲間入りをしました新米おばさんです。茂木先生のブログにお目にかかることが出来ました。時々お邪魔して少しでも「わたしの脳」に風が送れたらと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

投稿: よっちゃんです | 2008/03/26 22:55:27

まどかさんの、自分のやっていることに命をかけられない人は許せない。
と、云う言葉。正直、心にグサリと突き刺さりました。
それと同時に、ここ2〜3日、私を悩ませていた“問題”に、しっかりと目を向けました。

今は答えも出て、その答えに私も命をかけたいと思った。

投稿: 奏。 | 2008/03/19 2:32:17

音の補足です、身体の中の音と言うのは、心臓の音や血流の音や、官類に流れる空気や、その他もろもろの肉体が持っている、発している「音」のことです。

投稿: あすか | 2008/03/18 9:52:25

チベットで僧侶達のデモ行進に、人民解放軍が発砲したというニュースに、我が耳と眼を疑った。

何故仏教徒達に発砲したのか。彼等は魂の自由を只管(ひたすら)求めていたというのに。僧侶だけでなく、街の人々も…。

ダライ・ラマ14世の声明を聴き“文化的殺戮”という言葉に、かつて日本でも(明治の頃に)行われたアイヌ人の“同化政策”を思いだし、暗澹たる気持ちになった。

何もかも同じ色に染め上げようとすることは、結局、その世界の普遍を含んだ多様さをつぶしてしまう。

色々な草木が互いに伸び合って育つように、是非共生していってほしいと、かの地の大きな事態に思う。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/03/17 23:32:25

茂木さん,おこんばんは。
「思考の補助線」パッとページをひらいたところから,すこしずつ読んでいます。
5年前,構造主義に興味があってその類の本を読んでいました。浅い知識です。でもどの人がどんな考えを持っていたか,あたしは誰の考えが好みであったか,記憶していました。ここ(思考の補助線)で,これらの人物に遭うとは…!?
何がどう繋がっているかそのときは考えもしないけれど,これからも興味の赴くまま。偶然?必然?どちらでも。出会いを抱きしめたい

投稿: 柴田愛 | 2008/03/17 18:29:20

茂木さん、こんにちは♪

茂木さんの今日の日記を読んでいて、壮大な交響曲を聴いている気持ちになり感動しました!

多様性→普遍性→富士山…、
個の煌めきと、全ての生命を貫く理と、宇宙の全体像。

受胎告知、きっとガブリエルが、茂木さんに『クオリア』を伝えにやって来たのでしょうね!

私にとっての受胎告知は、ちょうど一年前にやって来ました。
それを暗示させる予兆のようなものはありましたが…
まるでミラクル、奇跡だと思いました。

受胎告知は、生きる人それぞれの人生に、それぞれにあった形の告知が予定されており、

受胎告知に気づくか気づかないかは、個人の自由に委ねられているのでしょうね。


ところでチベットで起きている暴動。私には人事に思えません。
明日、我が身にふりかかる事かもしれない、とさえ思います。

投稿: ももすけ | 2008/03/17 14:15:17

『多様性の背後にある普遍を志向して活き活きと生きる時にこそ、人は「受胎告知」に出会う』あたしもそう思います。2年半位まえ日経新聞に茂木さんが『脳』整理法について一例を紹介していた記事があったと思うのですが。そのとき,なんて面白い記事なんだろうと会社の朝会で発表したのを覚えています。当時読み慣れない日経新聞で,茂木さんの記事がパッと脳に焼き付きました。
2年半の時を経て「脳を活かす勉強法」に引き寄せられました。自ら求めたのでしょうね。自身が何を欲しているのかみえてきたんだと思います。
学問を愛し,世界を愛する茂木さんに感謝と尊敬と勇気を感じています。
そして,一歩ずつ前に進もう♪♪です。

投稿: 柴田愛 | 2008/03/17 14:14:59

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