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2008/03/30

上手に思い出すこと

「和樂」の取材で西表島に来た。

緑が濃い。さまざまな
生きものの気配がする。

案内してくださるのは、山下秀之さん。


夜、山下さんの案内で
山中に入り、八重山ホタルが
舞うのを見た。

日暮れの後、30分程度だけ
飛ぶ。

チラチラと暗がりを点滅する
光に包まれて、地上に星空
が降りてきたように感じた。

「今、ここ」をとどめておく
ことはできない。
時は流れ、消え去る。

かろうじてかすかな手がかりが
あるとすれば、それは記憶である。

だからこそ、上手に思い出すことが
大切なのだ。

意識の中でクオリアが
感じられるメカニズムには、
波動関数の収縮が関与している
かもしれない。

古典的な図式において、
収縮を起こすのは「観測」
である。

脳は、自分自身を「観測」
するのだ。

より技術的な記述の下では、
観測とはつまりミクロな
パラメータにマクロなパラメータが
関与する形式のことである。

脳は、「クオリア」がメタ認知の
メカニズムを通して「私」
に感じられるように、
上手に自己観測するのだ。
([8])

亜熱帯以南で板根が発達するのは、
有機物の分解が早く、
できるだけ地表近くに
根を張りめぐらせて
吸収しようという
植物の戦略と関連している。

圧倒的な速さで流れていく
「今、ここ」の現象学的
豊饒を留めておこうとする時、
精神がふしぎなかたちの
うちに構造化される。


山下秀之さん


板根

3月 30, 2008 at 07:29 午前 |

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コメント

こんばんは。

「今、ここ」をとどめておくことはできない…

今日、私にもひとつの別れがありました。
職場を去る人、職場を動く人。
今は特別な思いが残ります。
去っていく人は何も知らなかった私に
親切に多くを教えてくれた先輩でした。
おそらく人知れぬ苦労を抱えていたはずでした。
お別れに向けてどうしても伝えたい思いがありました。
そんな思いを絞り出すように、整理するように、
言葉にし、手紙を書きました。
言葉で表せるのはわずかに過ぎないことに気付きました。
むしろ表せないことの中に本質があるのではないかと。
伝わらないニュアンスは
そっと自らのこころの内に留めておくことにしました。
流れてやがては消え去る時の中で、
たとえそれが無意識の層に潜り込んだとしても
いつか何かとシンクロしたとき、
蘇り、育てることができるかもしれないと信じています。

明日から環境が変わり、新たな文脈の中で時間が始まります。
今日からみる明日と、
明日になってから振り返る今日までの日々。
時の経過の中に異なる景色を見ます。
「時間が経過する」という性質の一部分に、
感情をくっつけて生きているのだなあと感じます。
性質から照らせば今日も明日もすべては等価なのでしょうが。

明日をみようとすれば不安です。
それでも不安のカーテンを思いっきり開けてみれば
案外、陽光が差し込むでしょうか。
いとも簡単に引っくり返る何かがあるでしょうか。
飛び込んで夢中になることさえできれば。
あるいは異質な他者が救ってくれるかもしれません。

新人当初、何がなんだか分からない状況を目の前に
頭が真っ白になったあの瞬間に、
不安だけど新鮮な気持ちでいっぱいだったあの空気の中に、
今一度、立ち戻り、
身を置いて歩んでいけたらと思っているところです。

私という一人称のほんの小さな日常でしかありませんが、
なんというか、うまく表せませんが、
等しい時間の経過の中さえも「今、ここ」の瞬きをもって貫いていく…。
そんな漠然としたものを思っています。

長々と当たり前のようなことを大げさに失礼しました。

投稿: | 2008/03/31 23:35:03

文章から、Claude Lévi-Straussを思い出しました。写真からは、軟弱の典型のような私でも、亜熱帯以南の密林に分け入り、野生のdynamicな驚異と出会いたいと思いました。

投稿: Nezuko S | 2008/03/31 5:25:35

塩谷さんの様な友人がいるなんて、茂木さんは本当に変人ですね♪

投稿: | 2008/03/31 1:50:14

 茂木先生、ご機嫌よう。
 最近、やっと先生が目指しておられることが分かりました。それを理解できるまでは、なぜそんなに躰を酷使され、疾駆されるのかと心を痛めました。
 先生はお気づきかどうか分かりませんが、先生の発するメッセージが多くの心に届いていることは間違いありません。
 わたくしが先生を知るようになった発端が何であったのか今では定かではありませんが、今や先生がわたくしに一番影響を与える存在であることは確かです。
 先生は、Sōkratēsのように、わたくしの全身を一瞬にして無知な存在に貶められるメッセージをされた方でもあります。それ以来、先生に負けないよう、同じ表現者として、同じように音楽・芸術を愛する者として、日々研鑽を積んでおります。
 本日は、マリア・カラスの『ノルマ』(清らかな女神よ)を聴きながら。

投稿: | 2008/03/30 17:56:33

茂木さん,こんにちは。

板根のド迫力!!
「生きる力」を見せつけられた。
西表島の自然
(好きな海を見ているとき、キレイだと感じる重さと同じ重さでこわいと感じるあたし…でも)見てみたい。

昨夜仕事を終え、
「脳内現象」
書店で受取り、帰りの電車で夢中読み。

静かな日ようびです。春には生き物を外に誘い出す力があります。
「出ておいで」
ふぅわりとやさしい春の声。動かずにはいられない本能の衝動。生き物としての証。

投稿: | 2008/03/30 14:08:37

こんにちは。

濃い緑の葉を見ると、じわーっと、心身に真水の洗礼をうけたような気がします。 落ち葉を見ても、不思議と穏やかに気持ちになります。土に身を吸収され、次代の糧となり、新しい芽吹きの誕生。このサイクルを思い浮かべるだけで、なんだか気持ちがよいのです。

ホタルは、夏にしか飛ばないのだと思っていました。幼少に横須賀の川べり、また数年前にフォーシーズンズホテルで見たきり、見ていません。 八重山のホタルは30分しか飛ばないのですね。
幻想的だったでしょうね。

投稿: | 2008/03/30 13:17:20

こんにちわ

視覚では自分の体が見え、聴覚では自分の出す音、触覚では自分の体の感覚等、感覚に自分自身が入っている。また、人によっては、自分の味、自分の匂いがわかる人がいるのかもしれません。(^^)

投稿: | 2008/03/30 13:09:13

昨日、仕事の帰りがてらに、春に浮かれる町を歩いているうちに、やさしい
空気のお蔭なのか、それまで心に引っかかっていた“何か”がほどけていくような気がした。

過去に自分がやってしまったいろんなエラー(失態・失敗)。何時までもそれに自分の思いを引っ掛けなくてもいいじゃないか。何時までも、悔やまなくたっていいじゃないか…そう思えるようになってきた。

私は昔から、友人知人との関係や仕事上、家族との間で関係がおかしくなったり、ミスを犯したり、怒りを爆発させたりした後に、めちゃくちゃに自分を責めるクセがあった。そしてそれが度を超えると、鬱に限り無く近い気分になったり、不安定になったりしていた。

気持ちの切り替えが人より遅いのは、たぶんにこの性分の所為だろうと思う。

この春の時期になって漸く、過去に引っ掛けて自分を責めるクセが薄れてきたような気がする。

おそらく、私の中に記憶として残った過去の痕跡を、緩やかでおだやかな気持ちで、引き出せるようになった、ということなのだろう。


さて、西表も若緑が萌えているようですね。亜熱帯の鬱蒼たる密林に覆われた遠くの山と、明るい新緑に見える木々、精悍な山下さんのお姿…。

そして、力強く巨大な板根の姿。

南の植物は本当に、迫力に満ち溢れる姿をしていますね…!

ホタルが暗がりにほんわり光りつつ、舞い飛ぶ姿を見て、亡き母の霊を見たと思ったのは、小林秀雄さんではなかったか。

八重山ホタルの瞬く姿を連想するに…かつての沖縄戦で沢山の人々が犠牲になったという歴史の記憶が重なった。

無数の星のようなホタルの光を思うに、あの戦で亡くなっていった人々の悲しみが重なってくる気がしている。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/03/30 10:36:15

茂木さん♪西表にいらっしゃるのですね~♪
昨日から南西諸島は天気が崩れているので残念です。
亜熱帯の生き物や気候は、生命力が強くて…あと湿度が高いせいか、色んな匂いがするんですよね。生活の匂い、生き物の匂い。
八重山ホタルの舞が見られて、良かったですね♪
私が小さかった頃、夏のホタルがとても綺麗だったのを今でもはっきり覚えています。

上手に思い出すこと…私の中で奇跡のように美しい思い出は、視覚化すると黄金の正五角形です、そして万華鏡のような。

生き生きとした未来を思い出すために、ゆらぎに則ったイメージを描きたいと思いました。

茂木さん、西表にいらっしゃる間は、1/fゆらぎを沢山堪能してくださいね~♪
ホタルの瞬きもきっと1/fゆらぎですよね★
地上の星空…うぅーむ、人間や大自然や大宇宙には神秘とロマンがぎっしり★ですね。


東京と温度差かなりあるので、どうぞお体ご自愛くださいませ。

とりとめのないコメントでごめんなさい(;^_^A

投稿: | 2008/03/30 8:42:23

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