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2008/03/18

実軸と虚軸

荒俣宏さんと対談する。

何回かお目にかかっていたけれども、
実際にゆっくりとお話するのは
初めてだった。

荒俣さんは、子どもの頃、
幻想的なものへの関心に
自覚的になり、それが世間に
おいてあまり良い目で見られない
ことにも気づいたが、
「まあ、いいか」
と開き直ることをかなり早い
時期に覚ったのだという。

ぼくは思った。

現実と仮想の関係は、
いわば、実数論における
real numberとimaginary numberの
関係に相当する。

量子力学などの多くの計算において、
実軸と虚軸の両方がそろって
いなければ完備にはならない
ように、
精神運動においても
実軸と虚軸の両方が必要
なのではないか。

実軸だけに限定してしまうと、
遂行することのできない
計算がある。

一度虚軸に「潜って」、
それから実軸に「戻って」
くる。
その往還運動において
初めて可能になることがあるのだ。

荒俣さんの大変粘り強い、
うねるような精神運動の
感触を確かに受け取った。

1986年と言えば、
今から21年前。

その年に毎日小学生新聞に
連載された
『トゥープゥートゥーのすむエリー星』
がこのほど毎日新聞から出版される
ことになった。

イラストを描いてくれたのは、
小学校時代からの親友井上智陽。

編集を担当してくださる
大場葉子さんから、
「井上智陽が当時のイラストの
写真を送ってきた」
とメールがきた。

井上智陽のブログに、
連載の一部が掲載されている。

井上も言っていたが、
まさに「青春」であって、
眺めると
さまざまに甦る。

http://white.ap.teacup.com/applet/chii/20080115/archive 

3月 18, 2008 at 07:56 午前 |

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コメント

応援してるよ!
世界一受けたい授業の面白いクイズ、まってるよ!
僕のホームページにも、来てくれたら、うれしいな。
もし来てくれたら、bbs(掲示板)にも、茂木健一郎って言う名前で、
書き込んでね!

投稿: ルアサード | 2008/03/28 8:50:41

>一度虚軸に「潜って」、
>それから実軸に「戻って」
>くる。
>その往還運動において
>初めて可能になることがあるのだ。

これを見て真っ先に思い出したのは、
実関数積分の留数解析です。

なぜかはよくわからないけど、
複素平面上にcontourを描いて
そのcontour内の留数がわかれば
留数定理から、実軸だけでは到底求められない
積分が、いとも簡単に求まる。

3次方程式の解法や、
量子力学の波動関数なんかで
虚数が数学でも、物理でも、
必要不可欠であることは
このとき知っていたのですが、

複素平面上をぐるっと一周することで
実数の困難を解決するそのアプローチは
自分にとってかなり衝撃的でした。


このエントリーを見たら、
なんか、また、複素解析の本を読みたくなってきました(笑)

投稿: zitterbewegung | 2008/03/19 23:59:10

実軸と虚軸について調べるために、本を開くと、数学には「神の予言」の響を持つものが多いらしいとの文が目に入り、リーマン予想に夢を抱いている人間は世界中にどれ位いるのだろうかと思いました。
加藤和也先生や黒川信重先生がゼータの神のお告げと、東工大の廊下で、神様の戯れ事のごとき会話をかわされていたそう。
博士はご存知でしたか?

投稿: Nezuko S | 2008/03/19 3:56:03

茂木さん、こんばんは★

実数論、虚軸、実軸について知識がなく、荒俣さんについて茂木さんが感じられたこと、なんとなく大雑把にしか意味が掴めなかったです。
それが、茂木さんがおっしゃることと一致するかわからないのですが(^_^;)、

私自身も、抽象的で幻想的な世界観に身を置くことが多いので…

なんというか、それを何らかの実(じつ)とすることは大事だな、というのは常に感じています。

それができないと、肉体を持ち、今ここに生きる意味がないので…

しかし私の場合は、仕事がこれから益々ハードになりそうなので、

幻想的な世界観は、自らのエネルギー補給のための拠り所となりそうです。

茂木さんが大学生の時に書かれた、「トゥープートゥーのすむエリー星」が書店に並ぶのを楽しみにしています。

青春かぁー私はまだ片足半分突っ込んでいます(笑)

投稿: ももすけ | 2008/03/19 2:38:02

本日(3月18日)、Webでプロセス・アイを購入。届くのが楽しみです!

待ちきれず、図書館に行くかもしれませんが…。

投稿: 奏。 | 2008/03/19 2:22:05

何が「潜って」「戻って」くるのか考察した場合
それは「私」であるという強烈な信念がある。

しかし、この信念もまた実軸化される。
信念は、そうである(実)と、そうではない(虚)があって、はじめて成立するものであるのに、
その信念が事実そうであることをもって、もはや信じるまでもない、そのような信念があったという事実に実軸化される。
きっと、後悔の念もそうだろう。
そうでありえた無限の可能性(虚実)の中でたった一つの事(実)を決断した。しかしその後悔は事(実)、そのような後悔であったことをもって実軸化されてしまっている。

投稿: 金田恭俊 | 2008/03/18 23:17:19

実数と虚数、実時間と虚時間、実宇宙と虚宇宙・・・
「虚」を想定しないと破綻する理論・・・
(↑すみませんっ、知っているのは言葉だけです)
現実も、仮想によって支えられているように思います。
目の前にある現実の中にも、脳内に広がる幻想の中にも、
その人にとって本当に意味のあることが真実であるように思います。

>一度虚軸に「潜って」、それから実軸に「戻って」くる。

虚の領域に潜ったとき実時空は消えるが、
虚の領域を脱したとき実時空が生まれる?

そうだ、精神運動においても、潜ったり這い上がったりをしないと
しなやかさは育まれない、ですね。

『トゥープゥートゥーのすむエリー星』
やったあああーーーーー!! ヤバイです!
ずっと続きが気になってました。
(ちなみに文中の、飛び疲れたオウムのラッキーの目の横を
なでてあげる場面などにもやさしさがあって癒されます。)
これで1986年の小学生時代に戻ってエリー星旅行ができます。
大学生の健一郎お兄さんありがとう☆
たくさんの子供たちに読まれますように。

投稿: s.kazumi | 2008/03/18 22:54:55

リアル(現実=実軸)とイマジネーション(夢=虚軸)の往復運動…!

そういえば、
(これはあくまで個人的なことですが)小さな頃から現実の世界にいながら、心を虚構の世界に遊ばせるのが好きだったような気がする。

それは今でも、そんなに変わらない。

何かの本を読みながら、また仕事をし乍ら、頭の何処かでは虚構の世界で遊んでいることが多い。

そこからまた新たな夢の世界が、生まれては消えて、また生まれては消える。その夢をどんなかたちでもよいからうつつの世界に表現する。文章というかたちでも、また絵やオブジェ、などとしても。

荒俣宏さんといえば、自分の中では「帝都物語」の作者として、また「広告図像の誘惑」という本を書かれた方として、いたく印象に残っている。

特に「広告図像の誘惑」は読んでみて非常に面白く、「仁丹」のナポレオンハットおじさんのマークや、昔の「カルピス」のマークなど、昔からお馴染みの商品のマークの由来や、それについての面白い考察が書かれていて、あまりに興味津々なので、半ばボロボロ(!)になるまで読みこんだことを覚えている。

ところで『トゥープゥートゥーのすむエリー星』がいよいよ出版されるのですね…!

茂木博士の、青春の大切な思い出の1ページでもあり、当時の少年少女へ向けられた、大いなる夢が溢れる物語。今の時代の子供達にも、この物語の世界が彼等の未来を生きる糧になることを、願って止みません。

大人の私も是非、読まさせていただきます…!

投稿: 銀鏡反応 | 2008/03/18 19:00:15

茂木さん,おこんばんは。
虚と実。

いま過ぎゆく時間から過去になり,目の前が現在,それを続けることが明日であり未来という前提があるとしたらあたしは時々…いやよく迷子になる。どこで見せている顔もあたしだ。ぜんぶ嘘かも。でもぜんぶ本当かも。
目にみえている部分や言葉にしにくいけど確かに存在する,行間のようなキモチ。
絶対はないけど,一瞬のなかに永遠はある。証明はできないけど。

ほんとうに少しのたよりないあたしの真実であたしは生きてるんだなぁと思うとこわくなる。
でもこわいと思うことに突き進む。一歩ずつ。そのために勇敢でいなくては!冷静でいなくては!と,いつも勇気(楽しい美しい美味しい悲しいムカつくヘェ〜…などなど)を仕入て今日も生きています。

投稿: 柴田愛 | 2008/03/18 18:29:45

こんにちわ

制御問題を扱うと、実数軸、虚数軸が必要になります。人間も体全体で筋肉を動かす時、実数軸、虚数軸の制御を行っているのではないか?と、考えたことがあります。


もしかしたら、虚数軸計算のため、意識が必要なのかも知れませんね?(^^)

投稿: イメージナンバーのクオリアby片上泰助(^^) | 2008/03/18 14:06:06

はじめまして!

過去は事実。未来は夢。
そして「今」とはその事実と夢の結像点だ、と最近感じています。

人にとって、「今」は時の流れの最先端ではなく、「夢と現の際」ではないかと思います。

実と虚の間で、
人は現実に向かって走るのでなく、実現に向かって走るのだと思います。

なんだかそう思うと、「今」という時は相当ロマンがある。日常とは熱いものなんだな、と感じます。

今日の実軸と虚軸とはそれた話になってしまいましたが、こんなことを思いました。

茂木さんの言葉と出会い、脳に油を差してもらった気がしています。
これからも楽しみにしています!!

投稿: りょんりょん | 2008/03/18 10:21:41

初めまして

明日は息子の小学校の卒業式です。
実軸と虚軸、私は今ほっとしています。
運動会で応援団の副団長になり毎日きつい練習を
してくるのに、家に帰るなり趣味の手芸を
始めて 疲れるからやめなさい。といっても聞かず
オリジナルキャラクターの制作に没入。
私は、運動会が終わったらいくらでも時間も体力も
あるのに、なんで今なのか全くわかりませんでした。
あと、テストとテストの裏のらくがきもそうなのかな。

投稿: シンシア | 2008/03/18 9:54:37

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